PLD法で作製した積層磁石膜の微細構造解析
Pr-Fe-B/Fe-Co系磁性材料の透過電子顕微鏡による観察 日本電子株式会社 科学・計測機器サービス事業部 サービス企画推進本部 R&D推進部
透過電子顕微鏡(TEM)は、ミクロから原子レベルオーダーの微細構造解析において非常に有用な分析装置です。材料の諸特性は微細構造と密接な関係を持つため、その構造を解析し、材料開発へフィードバックすることは非常に重要と考えられます。ここでは、Nd2Fe14Bと比べて比較的高い結晶磁気異方性定数を有するPr2Fe14Bをハード相に、高飽和磁気分極を有するFe-Coをソフト相へ利用した、Pr-Fe-B/Fe-Co積層型ナノコンポジット磁石膜のTEMを用いた解析例をご紹介します。
PLD( Pulsed Laser Deposition )法の模式図と積層磁石膜の磁気特性
as-depo 試料のTEM観察結果
as-depo状態では、Ta基板上にPr-Fe-B層(20nm)とFe-Co層(10nm)が互いに拡散することなく、積層周期30nm程度で積層されていることが分かります。また、EDSマッピング分析によりFe-Co層におけるFeとCoの分布が異なっていることが明らかになりました。
熱処理後試料のTEM観察結果
熱処理を加えることにより積層型構造が消失し、結晶粒径10~30nm程度の微細な分散型構造へ変化することが確認されました。ソフト相(Fe-Co)とハード相(Pr2Fe14B)の結晶粒径が交換結合長(およそ10nm)程度に微細化されていることにより、J-Hループが2段化することなく、最大エネルギー積(BH)maxが100kJ/m3を超える優れた磁気特性を得られたと考えられます。
【ご提供:長崎大学大学院工学研究科 教授 中野正基 様】
使用装置
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