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実際の測定について

FT−IRは応用範囲が広く、様々な試料の測定を比較的簡単に行うことができますが、試料の形態や性質、あるいは測定環境をもとに、 より良いデータの取得と適切な解析を行うためには次のような点に注意する必要があります。

 

1.試料調整

赤外分光法では基本的に気体、液体、固体、いずれの形態でも測定可能ですが、吸収ピークが適度な強度になるように前処理を必要とする場合があります。

例えば固体や液体では密度が高いためそのまま測定にかけると吸収ピークが強くなりすぎてしまい(ピークが飽和する)、 正しいスペクトル波形が得られないことがあります。そのようなときは赤外吸収のない物質で希釈したり、試料の厚みを薄くするなど、ピーク強度を小さくするような前処理を行います。

主に透過測定において利用頻度の高い前処理法を以下にまとめました。KBr錠剤法やキャストフィルム法はその代表的な前処理法として、分散型IR全盛の時代からよく利用されています。

 
試料調整
 

2.測定法の選択

分散型IRでは感度不足からあまり多くの測定手法を用いることができませんでしたが、FT−IRではその高感度性から様々な測定法が利用できるようになりました。試料形態や測定目的に合わせて測定法の選択ができるようになったわけです。

ゴルフを例にとれば、ドライバーやアイアン、パターなど各種のクラブを状況に応じて使い分けるのと同じ事といえます。具体的には各種アタッチメントを本体に取り付けて、いろいろな測定法に対応します。以下によく用いられる測定法についてまとめました。測定法によっては目的部分だけのスペクトルを選択的に観測したり、試料の前処理を簡略化できるなどのメリットがあるため、 各測定法の特長や得意とする試料形態などを十分に理解し、目的に応じて正しく利用することが重要です。

 
測定法の選択
 

3.データ処理

FT−IRにはコンピュータが必ず付いており、いろいろなデータ処理ができることは「FT−IRの利点」の項で述べました。観測されたスペクトルから不要な情報をいかにして落し、必要な情報をいかにして抽出するかが、このデータ処理にかかっています。料理を例にとれば、食材が良くても調理法によってうまいかまずいかが左右されるのと同じ事といえます。

以下によく利用するデータ処理についてまとめました。各種データ処理の目的や性質を理解することも必要ですが、測定がどのような状況で行われたか、データの質は良いか悪いか、不要な情報が重なっていないかなどをスペクトルを見て読み取ることも適切なデータ処理を行う上で非常に重要といえます。

 
  • ベースライン補正
    試料の光散乱の影響などでスペクトル波形に生じるベースラインの傾きやうねりを矯正するための処理です。既存データとの波形比較やライブラリサーチなどを行う前に使用します。
ベースライン補正
 
  • スムージング
    スペクトル波形に重なった細かなノイズを平滑化して、S/Nを向上させるための処理です。分解能を下げる効果があるため、極度な処理にならないよう注意が必要です。
 
スムージング
 
  • 差スペクトル計算
    2つのスペクトル間で差計算(引き算)を行って、波形の違いを詳しく見るための処理です。混合物のスペクトルから既知成分のスペクトルを引けば、試料を物理的・化学的に分離することなしに未知成分のスペクトルが得られます。反応前後の試料に適用すれば、変化量を表すスペクトルが得られ、官能基ごとの量的な増減がはっきり判るようになります。
 
差スペクトル計算
 
  • 水蒸気除去
    スペクトル波形に重なった空気中の水蒸気による吸収ピークを自動差スペクトル計算により取り除くための処理です。計算には水蒸気のみのスペクトルが必要です。
 
水蒸気除去
 
  • ライブラリサーチ
    既知物質のスペクトルを数多く蓄えてデータベース化し、未知試料のスペクトルをコンピュータでそれらと波形照合させて、似ているものを選び出すことにより物質同定を行う処理です。データベース(ライブラリ)は数多く市販されており、それを購入して利用する他、ユーザ側で測定したデータを集めプライベートなライブラリを作成して 利用することもできます。
 
ライブラリサーチ
 

FT-IRの主な測定法について

 
試料形態と主に利用する測定法・試料調整法 試料形態と主に利用する測定法・試料調整法 試料形態と主に利用する測定法・試料調整法
試料形態と主に利用する測定法・試料調整法 試料形態と主に利用する測定法・試料調整法 試料形態と主に利用する測定法・試料調整法

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