透過電子顕微鏡 基本用語集

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用語説明
用語
(別表現)
英語表記
(英語略称)
説明
関連用語
FFT

fast Fourier transform
(FFT)

フーリエ変換を高速に行う計算方法。コンピューターを使うので連続的な積分の代わりに有限の離散的な和で実行される。離散的な和をいくつかのグループに分け、さらに計算の順序を工夫して計算量を大幅に減少させる方法。周期 N の離散フーリエ変換では、通常の変換では演算の回数がNの2乗に比例するが、FFTでは NlogN に比例する。高分解能像の解析等に使われる。

ガウス関数

Gaussian function

a exp { -(x - b)2 / c2} で与えられる関数。ここで、a, b, cは定数。分光分析においてスペクトルの波形分離の際、孤立スペクトルの形状、バックグラウンドの形状を仮定するときに用いる関数。この関数をもちいてバックグラウンドの前処理やスペクトル強度のフィッティングを行う。ローレンツ関数と比較すると、ピークから離れたすそ引きの部分で少し早く減衰する。実際のスペクトルの形状はローレンツ関数のほうがよく合うが、ガウス関数は数学的に取り扱い易いので便利に用いられる。

ガウス/ローレンツ混合関数

mixed Gaussian/Lorentzian function

分光分析においてスペクトルの波形分離の際、バックグラウンドの前処理やスペクトル強度のフィッティングに、ガウス関数またはローレンツ関数では不十分な場合に用いる両者を混合した関数。

ガンマカーブ

gamma curve

電顕像や収束電子回折図形の強度が大きなダイナミックレンジを持つとき、観測強度を可視範囲で表示できるように圧縮する強度圧縮曲線のこと。

逆フーリエ変換

inverse Fourier transform

ある変数の関数をその変数に共役な変数の関数に変換する方法をフーリエ変換というが、フーリエ変換された関数を逆に元の変数の関数に変換することを逆フーリエ変換という。例えば、位置の関数としての結晶ポテンシャルをフーリエ変換することにより、波数の関数として結晶構造因子(回折図形)が得られる。結晶構造因子を逆変換すると位置の関数としての結晶ポテンシャルが得られる。透過電子顕微鏡では、試料結晶のフーリエ変換と逆フーリエ変換を自動的に行なって回折図形、結晶構造像を得ている。

検量線

calibration curve

ある変数に対するある物理量の応答の関係をあらかじめ求め、その関係を曲線で示したもの。たとえば、ある元素からの発光X線の強度に対するその元素量の検量線をあらかじめ用意しておくと、測定した発光強度からその元素の定量解析を行うことができる。

最小二乗法

least-squares method

実験値と計算値の残差の二乗和を最小にするように未知パラメータを決定する方法。結晶構造解析や分光スペクトルの波形分離などに利用されている。未知パラメータの線形結合(Σai・xi + b)によって残差の二乗和を最小化する場合を(線形)最小二乗法という。フィッティングに非線形関数を用いる場合を非線形最小二乗法という。関数を仮定せず数値計算によって未知パラメータのフィッティングを行う場合も非線形最小二乗法である。たとえば、収束電子回折図形の強度と結晶構造モデルから計算される強度との残差二乗和の値を最小にするような構造パラメータ(原子位置、温度因子)を求めるのに使われる。ある構造パラメータの組について残差二乗和を求め、残差二乗和の各パラメータに対する微分が負になるような構造パラメータの組を発生させ、それらの値に対する残差二乗和を計算する。この過程を繰り返して残差二乗和の最小値に到達する。

自己相関関数

auto-correlation function

与えられた関数の形状に関する情報(鋭いとか、広がっているとか、円形からのずれの度合いなど、あるいは関数の周期性)を得るために用いられる。二つの同じ関数(あるいは図形)において、その関数に含まれるある変数の値を、二つの関数の間で相対的にずらして、二つの関数の重なりをその変数について積分した関数(あるいは図形)のこと。すなわち、対象とする関数をf、その積分変数をX、その変数の相対変位をxとすると、自己相関関数Rffは次のように書ける。Rff=∫f(X)f*(X-x)dX. ただし、*は複素共役を示す。像等の実関数の場合は、f*(X-x)=f(X-x)である。変数の相対変位xを大きくしても自己相関関数Rffが大きい場合は、オリジナルな関数(あるいは図形)は変数Xに関して広がっていることを意味する。相対変位を大きくするとRffが速く小さくなる場合は、オリジナル関数(あるいは図形)の広がりは小さい。関数が周期性を持っている場合には、あるxの整数倍ごとにRffが大きな値をとるので、その関数の周期性がわかる。このように自己相関関数を計算すれば、ある変数に関する関数や図形の形状についての知見を得ることができる。例として、電顕像では自己相関関数を計算して、像のボケから焦点ずれの度合い、像の伸びから2回非点の大きさが測定できる。自己相関関数の計算にはコンピューターでの計算の高速化を図るために、高速フーリエ変換法を利用して行う。この計算は「ある関数の自己相関関数のフーリエ変換は、関数のフーリエ変換の強度になる」という定理に基づいている。すなわち、関数のフーリエ変換を計算して、その強度を取り、その結果を逆フーリエ変換することによって自己相関関数を計算する。

ジーユーアイ

Graphical User Interface
(GUI)

コンピュータグラフィックスとポインティングデバイスを用いて、直感的な操作を提供するユーザインタフェース。GUIは、視認性、操作性に優れ、直感的な操作が可能なため、広く普及し、商用OSの主流インターフェイスになっている。電子顕微鏡においても、装置操作、画像データ表示等の機能に、GUIを使用して操作性を向上させている。しかし、GUIは一度の操作で一つの入力を基本としており、同時に複数操作を行えないため、GUIだけでは操作性が向上しない場合もある。

相互相関関数

cross-correlation function

二つの関数がどの程度似ているか、あるいはどの程度ずれているかを表すために用いられる関数。二つの異なる関数(あるいは図形)において、それらの関数に含まれるある変数の値を、二つの関数の間で相対的にずらして、それらの関数の重なりをその変数について積分した関数(あるいは図形)のこと。すなわち、対象とする関数をf、g、それらの積分変数をX、二つの関数の間でのその変数の相対変位をxとすると、相互相関関数Rfgは次のように書ける。Rfg=∫f(X)g*(X-x)dX. ただし、*は複素共役を示す。像等の実関数の場合は、g*(X-x)=g(X-x)である。対象となる二つの関数が同じ場合、相互相関関数は自己相関関数になる。Rfgの値が大きい場合は、二つの関数(あるいは図形)が似ていることを示している。また、ある特定のxについてRfgが大きくなる場合は、二つの関数の相対的なずれの量がわかる。例として、電顕像を二回撮影し、二つの像の間の相互相関関数を計算すると(この場合、xは時間の関数x(t))、撮影の間に像がどれだけドリフトしたかに関する知見を求めることができる。(xが小さいところで相関関数の値が大きければ、ドリフトが少ない。) 相互相関関数の計算にはコンピューターでの計算の高速化を図るために、高速フーリエ変換法を利用して行う。この計算は「相互相関関数のフーリエ変換は、それぞれの関数のフーリエ変換の強度になる」という定理に基づいている。すなわち、相互相関関数を構成する各関数のフーリエ変換を計算して、それらの強度を取り、その結果を逆フーリエ変換することによって相互相関関数を計算する。

第一原理計算

first principle calculation

量子力学の原理に基づいて電子の質量、電荷やクーロン力など基本物理量から物性量を直接に導く計算のこと。言いかえると、実験値に合わせるためのパラメータの導入や安易なモデル化などをせず、基本原理から直接物性量を導き出す計算。電子間,原子核間,および電子-原子核間のクーロン相互作用から出発し,物質の性質(主として電子状態)を非経験的に計算する。計算機の性能の向上と低価格化に伴って、より多くの原子を含む系についての計算が安価にかつ迅速に行うことができるようになり、急速に普及しつつある。新物質の物性の予測または既存物質の物性の理解や予測する手段として欠くことのできない研究手法となっている。TEMの分野では物質の状態密度を反映するEELSスペクトルの微細構造の理解に用いられている。

デコンボリューション

deconvolution

装置関数によるスペクトルなどのボケを取り除く手法。観測されたスペクトルが真のスペクトルと装置関数のコンボリュション(たたみ込み)で与えられているとき、観測されたスペクトルのフーリエ変換を行うと真のスペクトルのフーリエ変換と装置関数のフーリエ変換の積になる。したがって、真のスペクトルのフーリエ変換は観測されたスペクトルのフーリエ変換を装置関数のフーリエ変換で割り算したものになる。これを逆フーリエ変換すると真のスペクトルが得られる。フーリエ・ログ法、マキシマム・エントロピー法(MEM)、リチャードソン・ルーシー法などを適用して使われる。

動径分布関数

radial distribution function

等方的なアモルファス物質から得られる回折図形(ハロー図形)の強度曲線から、異なる原子間の干渉項のみを取り出して(具体的にはその強度曲線の起伏の真ん中を通るような滑らかなバックグラウンドを差し引いて)フーリエ変換したもの。隣接原子までの平均距離(距離の分布)や隣接原子の平均の個数、密度が分かる。

ノイズフィルタ

noise filter

様々な周波数成分の中から、ノイズ成分を取り除くフィルタのこと。

ハイパスフィルタ

high-pass filter

様々な周波数成分の中から、高域のある周波数以上の成分のみを通すフィルタのこと。

波形分離

curve fitting

多くの成分波形からなるスペクトルの全体波形を成分波形の和に分解すること。分光スペクトルの解析に頻繁に使われる。

ハフ変換

Hough transform

画像等の中のある位置を通る直線を一つの点に変換する手法。収束電子回折による格子歪みの解析においては、実験で得られるHOLZラインの位置をコンピューターシミュレーションで再現するように格子歪を決定する。その際、ハフ変換によってHOLZラインを点(座標)として表現すると、コンピューターによるフィッティングが容易になる。

非線形最小二乗法

nonlinear least-squares method

フーリエ合成

Fourier synthesis

結晶構造解析において、回折斑点の振幅に位相を付加して、多くの反射について和をとることをフーリエ合成という。この方法によってX線構造解析の場合、実空間での電子密度が求められる。電子回折でも同様な方法は、運動学的回折が適用できる蛋白などの生物系試料に用いられている。電子回折による構造解析の場合には結晶のポテンシャル分布が求められる。結晶ポテンシャルがわかると数学的に電子密度を求めることができる。動力学効果が強い材料系の試料の構造解析は収束電子回折によって行われる。

フーリエ変換

Fourier transform

ある関数をその変数に共役な変数の関数に変換する方法。例えば、時間の関数としての光や音を周波数の関数として表したり(スペクトル分解)、位置の関数としての物体(結晶ポテンシャル)を波数の関数としての結晶構造因子(回折図形)に変換したりするときに使われる。

フーリエマスク

Fourier mask

格子像、結晶構造像のノイズを取り除くために、回折斑点のみを透過させ、バックグラウンドノイズをカットするように回折面上に入れるマスク。

フーリエ・ログ・デコンボリューション

Fourier-log deconvolution

実験で得られたEELSスペクトルから、多重散乱がポアソン分布に従うと仮定して、多重散乱の効果を除いて一回散乱のスペクトルを得る方法。EgertonによってEELSのスペクトル処理のために導入された。同様なフーリエ・ログの信号処理法は、音波の解析などでも広く使われている。

平滑化(スムージング)

smoothing

連続するデータの集まりにおいて特異点やノイズをなくすために、ある点のデータをその近傍の点のデータを用いて、平均化処理を行い、スムーズにつながるデータの集まり(曲線)になるようにすること。たとえば、簡単な場合として、ある点のデータに両隣のデータを加算してその平均を取ってデータとすることなど。画像処理や分光スペクトルの処理で頻繁に使われる。

マキシマム・エントロピー法

maximum entropy method
(MEM)

情報理論から発展してきた解を推論する一方法。情報(測定)が不十分なときに、その情報からエントロピー(あいまいさ)を最大にするという方法によって、最も確からしい解を推論する方法。X線粉末回折による構造解析に用いられているほか、電顕ではEELSスペクトルにおいて、入射電子のエネルギー広がりによる効果を取り除いて、本来のスペクトルを取りだすことに使われている。

モンテカルロ法

Monte Carlo method

決定論および確率論的問題の処理に無作為な選択を利用する方法で、乱数を用いる数値計算法の総称。入射電子が試料内部で散乱し拡がってゆく過程をシミュレーションするのに用いられる。入射電子線のエネルギーが高いほど広がりは大きくなる。原子番号および密度が大きいほど広がりは小さくなる。特性X線分光における定量分析の際に、原子番号効果を求めるときなどに用いられている。

ラドン変換

Radon transform

フーリエ変換がカーテシアン座標x,yについての関数をその共役な変数の関数に変換するが、ラドン変換は二次元極座標r,θについての関数をその共役な変数の関数に変換する。試料への電子線の入射角度を変えて撮影した沢山の画像から3次元像を再構成する手法であるトモグラフィーで使われる。

リチャードソン・ルーシー法

Richardson-Lucy method

画像鮮明化処理の一つにデコンボリューション法がある。その際に併用される方法が、リチャードソン・ルーシー法である。デコンボリューション法では、観測像は、真の像と像の劣化の原因であるPoint Spread Function (PSF)関数のコンボリューション(convolution)で表されるという考えに基づいている。真の像を観察像とPSFから求めるが、PSFがわからない場合は、PSFを推定する必要がある。その推定法として用いられるのが、リチャードソン・ルーシー法である。(他にconvolutionと併用される方法として、最大エントロピー法がある。)リチャードソン・ルーシー法を用いたデコンボリューションでは、初めに真の像を仮定する。仮定した真像と観察像からPSFを求める。求めたPSFと観察像からデコンボリューション法によって2世代目の真像を求める。求めた真像と観察像から2世代目のPSFを求める。この操作を繰り返して真の像を求める。すなわち反復的に像の鮮明処理が行われる。適用例として、EELSスペクトラムの鮮明化に用いられている。

ローパスフィルタ

low-pass filter

様々な周波数成分の中から、低域のある周波数以下の成分のみを通すフィルタのこと。

ローレンツ関数

Lorentzian function

(1/π){b / [(x - a)2 + b2]} で与えられる関数。ここでa,bは定数。分光分析においてスペクトルの波形分離の際、孤立スペクトルの形状、バックグラウンドの形状を仮定するときに用いる関数。この関数をもちいてバックグラウンドの前処理やスペクトル強度のフィッティングを行う。実際のスペクトルは、ガウス関数よりローレンツ関数でよく近似できる。