透過電子顕微鏡 基本用語集

試料等

  1. 理論
  2. 照射系
  3. レンズ系
  4. 試料室
  5. 検出系
  6. 真空系
  7. 分光分析
  8. 結晶等
  9. 試料等
  10. 画像処理
用語説明
用語
(別表現)
英語表記
(英語略称)
説明
関連用語
イオンエッチング

ion etching

試料にイオンビームを照射して、格子欠陥のあるところの原子や特定の原子を選択的に取り除く方法。試料表面の組織観察に使われる。TEM用の試料作製のために、選択的でない一様な薄膜化に用いられている手法はイオンミリングである。イオンミリングとイオンエッチングは混同して用いられていることがある。

イオンクリーナ

ion cleaner

透過電子顕微鏡用の試料に付着している前処理時の残留物質や試料保存時に付着した汚染物質を除去するイオンクリーニング装置。試料を試料ホルダに装着したままイオンクリーニング装置に挿入し、残留気体でグロー放電を起こさせ、イオン化した気体を試料に照射し、化学反応を利用して試料上に付着した汚染物質(特に炭化水素の重合物)を除去する。

イオンスパッタリング

ion sputtering

イオン化して加速した原子や分子を固体表面に衝突させることにより、固体表面から原子が飛び出してくる現象のこと。成膜(固体表面上への薄膜の形成)や、試料のコーティング、イオンエッチングに用いられる。試料のコーティングの場合には、低真空中または真空にアルゴンガスを導入して放電させ、電界をかけて加速したイオンを陰極側の金や白金のターゲットに衝突させ、放出される原子を陽極側の試料に付着させ、コーティングする。

イオンミリング

ion milling

電解研磨法や化学研磨法などで試料作製が行えない場合に使われる試料作製法。特に異なる材料からなる積層構造の断面観察用の試料作製に用いられる。2~10kVで加速したアルゴンイオンビームで入射角10°以下のすれすれ入射で試料を照射し、表面原子を削り薄膜化する。イオンビームによる試料損傷がさけられないのが欠点。市販の装置では倍率数十倍の光学顕微鏡またはCCDカメラで試料の状態を観察できるようになっている。

イオンめっき(イオンプレーティング)

ion plating

金属をイオン化して基板の固体表面上に薄く付着した金属層を作る手法。基板を陰極、金属蒸発源を陽極として低真空中あるいはガス雰囲気中で放電を起こすことにより、金属蒸発原子はイオン化され電界によって加速され基板上に被膜を作る。

ウルトラミクロトーム法

ultramicrotomy

生物試料、高分子試料、複合材料などの薄膜試料作製に使われる方法。軟らかい金属の薄膜化にも使われることがある。ダイヤモンドナイフを用いて、試料を数10nm~100nmの厚さに連続的に切ることができる。

液体金属イオン源

liquid-metal ion source

常温で液体である金属を用いるイオン源で、集束イオンビーム加工装置に用いられる。液体ガリウムが使われる場合が多い。

エッチング

etching

試料の特定の表面原子を化学的、物理的反応を利用して選択的に取り除くこと。

エピタキシ

epitaxy

結晶基板上に、真空蒸着法や化学的気相成長法(CVD)などを用いて、基板に用いられる結晶と特定の方位関係にある結晶膜を堆積成長させる結晶膜成長法のこと。

加圧凍結法

high pressure freezing

急速凍結固定法の一種で、生体の組織や細胞、細菌などの試料を固定する方法である。試料を凍結する際に2,000気圧程度の圧力をかけることで、水の融点が下がり(2,000気圧で-20 ℃程度) 粘性が上がるため、組織の破壊の原因となる氷晶の形成が抑えられる。大気圧下での凍結に比べ、数十倍の深度(200 μm程度)で一様な非晶質氷の凍結を行うことができる。凍結後の試料を電顕観察する際には、(1)そのまま凍結切片を作製する場合や、(2)凍結置換法を行った後に試料を室温まで戻し、樹脂包埋後、超薄切片を作製する場合や、(3)凍結割断法によりレプリカを作製する場合がある。

化学研磨

chemical polishing

半導体や絶縁体の無機化合物の試料作製に使われる方法。強酸や強アルカリを基本にした研磨液に試料を浸して試料表面を平滑に保ちながら薄膜化する。機械的なひずみを与えずに試料作製ができるのが利点。通常、選択的な溶解(エッチング)が起きないような研磨液が使われる。半導体多層膜の特定の層を観察するときには、その層を残してほかの層を溶かすような溶液が使われる。

化学固定

chemical fixation

化学固定とは、分解酵素による自己分解や、試料作製の際の形態の変形を防ぐために薬品処理によって行う固定のこと。
生体組織は生命活動を停止すると、すぐさま自己の持つ分解酵素により自己分解が始まる。透過電子顕微鏡で生物試料を観察するためには、鏡筒内の真空中でも試料を保持できるように水分を除き、電子線を透過できるよう十分に薄く切る必要がある。そのために、脱水や樹脂包埋、薄片化が行われるが、これらの操作は微細構造の変形の原因となる。そこで、できるだけ生きていたときの形態や物性を保存するために固定という操作を行う。化学固定では、薬品処理によって生体物質であるタンパク質や脂質に架橋を行い、分解や変形を防いでいる。透過電子顕微鏡で用いられる化学固定は前固定と後固定の二段階によって行われる。

架橋

cross-linking

鎖状の巨大分子において、分子間または分子内で別の分子によって橋を架けたような結合を行うこと。

干渉色(超薄切片の干渉色)

interference color of ultrathin section

超薄切片に対し白色光を殆ど垂直に入射させた場合、切片表面からの反射光と裏面からの反射光が干渉して発する色のこと。この干渉色は切片の厚さに対応するため、この干渉色を確認することで切片のおおよその厚さを把握することができる。具体的には、厚さが約70 nmでシルバーゴールド、約100 nmでゴールド、約200 nmでブルーを発する。

ガラスナイフ

glass knife

厚板ガラスやガラス棒を割断し、鋭角となった稜線を刃として用いるミクロトーム用のナイフ。ダイヤモンドナイフによる超薄切片作製前の試料の面出し(観察対象を露出させて表面を平坦にする)や、トリミング等に用いられることが多い。

機械研磨

mechanical polishing

試料の物理的研磨。耐水ペーパを使った手作業での研磨(→~100ミクロン)、回転研磨器を使ったダイヤモンド粉やコランダムによる研磨(→~数10ミクロン)、ディンプルグラインダを使ったコランダム粉による研磨(→<10ミクロン)、トライポットポリッシャを使ったダイヤモンド粉による研磨(→<10ミクロン)などがある。

急速凍結固定法

rapid freeze fixation

生体組織や細胞、細菌、またはウイルスや精製タンパク質の懸濁試料を急速に凍結してそれらの形態を物理的に固定する方法。
通常の生物組織の電顕試料で行われる化学固定では、無機塩類等の流出や膜構造の変形等を生じる可能性がある。それに対して急速凍結固定法では、試料は固定前の構造を保ったまま固定できる。急速凍結固定法には加圧凍結法、金属圧着凍結法、氷包埋法等の手法がある。

金属圧着凍結法

metal mirror freezing (slam freezing)

急速凍結固定法の一種。液体窒素等の冷媒で冷却した金属ブロックに生体試料を圧着して急速凍結する方法。金属ブロックの材料には、熱伝導率の高い高純度の銅に金メッキを施したものを用いることが多い。試料の温度降下効率を高めるために、金属ブロック表面は鏡面仕上げが施されている。この方法では、比較的安価な装置で凍結が行えるが、加圧凍結法に比べて試料の浅い部分(20 μm程度)しか電子顕微鏡観察に適した凍結は行えない。主に組織等を固定する際に用いられる方法である。凍結後の試料を電顕観察する際には、(1)そのまま凍結切片を作製する場合や、(2)凍結置換法を行った後に試料を室温まで戻し、樹脂包埋後、超薄切片を作製する場合や、(3)凍結割断法によりレプリカを作製する場合がある。

グリッド

grid

透過電子顕微鏡用の試料の支持膜や試料自身を、対物レンズのポールピース中に挿入される試料ホルダ上で支えるために作られた厚さ20~30μmの金網のこと。材料は、銅、モリブデン、金などである。

研磨

polishing

エッチングやへき開と異なり、結晶方位を選択せず、固体表面を一様に平滑にするための機械的あるいは化学的な処理。

後固定

postfixation

二段階で行われる透過電子顕微鏡用生物試料の化学固定の二段階目の固定で、脂質の保存やコントラストの増強を目的とした固定。
透過電子顕微鏡用の生物試料の作製において、脱水や樹脂包埋が行われる。そのさい、グルタールアルデヒドやパラホルムアルデヒドなどのアルデヒドのみの固定では脂質が固定されておらず、エタノールや有機溶剤の脱水の際に、脂質で構成される膜構造が流出してしまう。またアルデヒドは有機物であり、試料に結合しても、コントラストの増感に関与しない。
これらの問題はアルデヒドによる前固定後に引き続いて行う四酸化オスミウムなどの重金属酸化剤による後固定で解決することができる。四酸化オスミウムは不飽和脂肪酸の二重結合領域に結合し、架橋構造を形成することによって脂質を固定し、脱水の際の脂質の流出、変形を防ぐ。またオスミウムは重金属であるため、結合した領域はコントラストが増強される。このように有用な四酸化オスミウムであるが、浸透が遅い、タンパク質を破壊すると言った欠点があるため、四酸化オスミウムで反応させる前にアルデヒドによるタンパク質の固定(前固定)をする必要がある。

氷包埋法

ice embedding

透過電子顕微鏡用の生物系試料作製法であり、急速凍結固定法の一種である。
精製したタンパク質やウイルスのような生体高分子懸濁試料を厚さ数十から数百nmの非晶質氷薄膜に包埋することで、溶液中の分子形態に近い状態の試料を無染色で観察することができる。
具体的には、数マイクロリットルの試料懸濁液を親水化したマイクログリッドに滴下し、ろ紙で余剰の液を吸い取った後、冷媒に素早く浸漬し急速凍結する。冷媒には、真空中で昇華しやすく、融点と沸点の温度差の大きい液体エタンや液体プロパン等が一般的に用いられる。

(a) 氷包埋法の概略 ⇒

(b) 氷包埋した試料の断面図。 ⇒
非晶質氷中に試料が包埋されている。

(c) 氷包埋したT4ファージのクライオTEM像。⇒
頭部、尾部等の形態が良好に保存されている。

コーティング

coating

目的の物質の表面に金属などの被膜をつくること。

極表面

top surface

固体表面の内、特にごく薄い表面(0.5~数nm 以内)を指す。試料の極表面を加工するとか、オージェ電子は極表面から放出されるという言い方をする。

支持膜(試料の)

supporting film

透過電子顕微鏡用の試料を試料ホルダ上で支えるために、グリッドの上に貼る厚さ数10nm以下の膜。材料は、カーボンやポルビニルフォルマール、コロジオンである。

シャドウイング

shadowing

タンパク質やDNA、ウイルスなどの試料の表面に散乱能の高い金属を、試料に対して低角度で真空蒸着すること。シャドウイングによって表面の凹凸がTEM像で強調される。
タンパク質やDNA、ウイルスなどの生体分子は、炭素、窒素、酸素、水素といった軽元素で構成されており、透過電子顕微鏡で観察を行うと殆どの電子が散乱されることなく透過してしまい、コントラストが殆どない像となる。そこで、これらの粒子に散乱能の高い白金などの金属を真空蒸着することによって、表面の微細構造の凹凸を強調して観察することができる。蒸着の角度が低いほど微細構造が強調されて観察でき、蒸着角度を高くすると、微細構造が蒸着した金属に埋もれてしまい観察しにくくなる。金属が蒸着された部分が、TEM像で影のように見えるため、シャドウイング法、またはシャドウキャスティング法と呼ばれる。

集束イオンビーム加工

focused ion-beam milling
(FIB)

半導体デバイスの不良部分など、特定の領域をサブミクロンの精度で楔状に切り出し、TEM用の試料を作製する方法。ガリウムイオンを数kV~40kVで加速し集束させて試料に照射し、二次イオン像(SEM像が見られる装置もある)で局所領域を観察しながら、試料を薄片化加工する。ガリウムイオンによる試料表面の損傷がさけられないので、低加速のイオンミリング(ジェントルミリング)で表面の損傷部分を削り取る後処理が行われることがある。

焼結

sintering

粉末試料を加熱し、溶融させることなく焼き固めること。

焼結助剤

filler

焼結を起こさせるための材料。イットリアなどがある。

照射損傷

radiation damage

電子線の照射による試料の構造劣化。一次的な損傷にはノックオン(knock-on)とイオン化(ionization)がある。ノックオンは、入射電子に衝突された原子がその格子点からはじき出されて格子間原子となり、元の格子点が原子空孔となる過程をいう。イオン化は、原子の外殻電子がはじき出されて原子がイオン化される過程。一次的な損傷の結果に引き続いて起こる緩和過程で特定の格子欠陥が生成されたり、非晶質化が起こる。この過程を二次過程という。

試料汚染

contamination

電子ビームの静電気力により、試料表面に付着している炭化水素(ハイドロカーボン)が照射領域に集まり、炭化水素系の重合物をつくられ堆積することを試料汚染という。CBEDやSTEMなど、絞った密度の高い電子ビームを微小な試料領域に照射する手法では特に顕著である。

試料汚染防止装置

anti-contamination device

液体窒素で冷却され試料ホルダーを取り囲み、試料の汚染を軽減する薄板(フィン)のこと。冷却されたフィンのガス凝結作用により、試料汚染の原因となる炭化水素が試料へ付着するのを抑える。フィンの上下には電子ビームが通過する小さな開口があり、試料ホルダの先端(試料部)は、フィンの側面の開口部からフィン内部に挿入される。

試料環境

specimen environment

試料を電顕観察するときの環境。高温環境、低温環境、常圧環境、張力、電場、磁場を与えるなどの環境がある。

試料作製

specimen preparation

透過電子顕微鏡による観察/分析において、試料からの情報が少しでも多く適切に得られるように目的に合った試料をつくること。

真空蒸着

vacuum evaporation (deposition)

高真空中で物質を加熱蒸発させ、固体表面(基板)上に、薄い物質層を作る手法。透過電子顕微鏡用には、均一な厚さを持つ金属、合金などの試料作製に利用される。

真空蒸着装置

vacuum evaporator

真空に排気したチャンバーの中に、物質(金属の場合が大半)を蒸発させるための発熱体と容器、物質層を付着させる固体(基板)を置き、容器に入れた物質を高温融解して蒸発させ薄膜を形成する装置。透過電子顕微鏡用の試料作製には、タングステン線やタンタル板などの発熱体を抵抗過熱して物質を蒸発させる。

ジェット研磨

jet polishing

電解研磨のひとつで、研磨液をジェットにして吹きつけながら試料の中央に穴をあける方法。研磨液を吹きつけることによって常に試料に新鮮な研磨液が供給されるので、研磨速度が速くなり平滑な研磨ができる。

ジェントルミリング

gentle milling

集束イオンビーム法や通常のイオンミリングによって作られた試料の表面は損傷を受けていることが多い。損傷層を取り除くために100V~2kVの低加速のアルゴンイオンで穏やかにイオンミリングすること。

スキルミオン

Skyrmion

電子スピンの磁気モーメントが作る渦状の磁気構造体のこと。スキルミオンという名称は、この量子構造を提唱した英国の理論物理学者Skyrmeに由来する。“磁気渦”や”スピン渦“とも呼ばれる。その大きさは数ナノメートルから100ナノメートル程度と材料や組成によって様々である。試料を低温にし、外部磁場を制御することによって、スキルミオンは2次元結晶的に配列する。
スキルミオンはローレンツ電子顕微鏡法により初めて実空間の像として観察された。それ以後、微分位相コントラスト法を用いたSTEM像によっても観察されている。

図提供: 東京大学 松元主任研究員、柴田准教授 ⇒ 

図(a) 薄膜中のスキルミオンの磁気構造の模式図。磁気モーメントの方向を矢印で示した。磁気モーメントの方向は、一つ一つのスキルミオンの中心では薄膜に垂直で、周辺部では薄膜面内で渦巻き状に回転する。
図(b) 微分位相コントラスト法で観察されたスキルミオンの実空間像(試料:鉄系合金)。色は、磁気ベクトルの2次元面内での方向と大きさを示している。

成膜

deposition

物理的なスパッタ法や化学的な気相成長法を用いて、固体表面上に薄膜を形成すること。

前固定

prefixation

二段階で行われる透過電子顕微鏡用生物試料の化学固定の一段階目の固定で、タンパク質の不活化、保存を目的とした固定。
透過電子顕微鏡用の生物試料の作製において、脱水や樹脂包埋が行われる。このような処理に対して、生体組織の微細構造が維持されるよう強固な固定が必要である。この強固な固定には、四酸化オスミウムや過マンガン酸カリウムのような強力な酸化剤を用いるのが有効である。しかし、これらの試薬は試料への浸透が遅いことやタンパク質を破壊するといった欠点がある。そこで、これらの試薬で処理する前に、速やかに試料に浸透し、タンパク質を架橋するパラホルムアルデヒドやグルタールアルデヒドによる前固定を行う。

帯電

charging

試料に導電性がない場合、入射電子が部分的に試料に蓄積し、入射電子の正常な透過や散乱が阻害される。帯電により、像のコントラストの異常、ゆがみが起きる。帯電防止のためには、導電性コーティングを行なう。

ダイヤモンドナイフ

diamond knife

ウルトラミクロトーム法で超薄切片を作製するのに用いられるダイヤモンド製のナイフ。当初、ダイヤモンドナイフは、ガラスナイフでは切れない硬い無機材料を切削するために開発された。しかし、樹脂試料を切削する際もガラスナイフでは、すぐに刃が欠けたり、刃が鈍くなったりするため、現在は樹脂試料にも利用され、均一な切片を得るために必要不可欠なものとなっている。

超音波洗浄

ultrasonic cleaning

試料や電子顕微鏡の部品の汚れを洗浄する方法。超音波振動子を用いて、洗浄液を振動させ被洗浄物体にぶつけて洗浄する。洗浄液が隙間に入り込むので、精密部品の洗浄に適している。洗浄液にはアセトンが使われることが多い。

超音波ナイフ

ultrasonic knife

超音波により刃先を振動させながら薄切を行うダイヤモンドナイフ。通常のダイヤモンドナイフによる薄切では、試料によっては切削方向に圧力が掛かり、コンプレッションと呼ばれる上下方向の圧縮による変形や、硬さの異なる脂肪滴等の顆粒の脱落が生じることがある。超音波ナイフでは、刃先を左右に振動させることによって、引き切りを行い、切削の際、生じる圧力を分散させることができるため、コンプレッションや硬さの異なる顆粒の脱落を防ぐことができる。

超薄切片

ultrathin section

電子線が透過できるほどに薄くスライスした切片。多くの場合、厚さが100 nm以下の切片のことを指す。

ディンプルグラインダ

dimple grinder

回転研磨機などであらかじめ100ミクロン以下に研磨した平行平板試料に、くぼみを作り最も薄いところは10ミクロン以下にする機械的研磨機。研磨剤としては粒子サイズの異なるコランダム粉など(数ミクロン~0.1ミクロン)を使う。最後はイオンミリングで薄くする。

電解研磨

electrolytic polishing

金属、合金の薄膜試料作製に使われる方法。適当な電解質溶液中に浸し、試料を陽極、白金板やステンレス鋼を陰極とし、直流電流を流すことにより試料表面から原子を溶出させ、試料表面を平滑に保ちながら薄膜化する。機械的なひずみを与えずに試料作製ができるのが利点。

電解めっき

electrolytic plating

適当な電解質溶液中で金属などの導電性固体を電解し、固体試料表面上に薄い金属層を作る方法。試料を陰極、白金板やステンレス鋼を陽極とし、直流電流を流すことにより溶出した白金やステンレス鋼が試料上に被膜を作る。

電子染色

electron staining

TEM像のコントラストの増感を行うために、電子線の散乱能が低い軽元素で構成されている生体試料や高分子材料に対し、散乱能の高い重金属を吸着させること。
生体試料を観察する場合、タンパク質などにウランや鉛を吸着させる。またポリプロピレンやポリエチレンのような結晶構造と非晶質が存在する高分子の場合、四酸化ルテニウムが非晶質にのみ侵入することを利用して、ルテニウムを非晶質部分に吸着させる。このようにして特定の部分に吸着させた重金属が電子線を散乱することにより、TEM像のコントラストを増感させる。

凍結エッチング法

freeze etching

凍結割断を施した生物試料において、割断面の氷を真空下で昇華させることにより、氷の下に存在している構造を露出させる方法。構造を露出させたのちにレプリカを作製し、それを電顕観察する。細胞骨格、細胞内小器官などの構造を観察する場合に用いる。

凍結割断法

freeze fracturing

細胞や組織等の試料内部を露出させるための手法。試料を液体窒素等で凍結後、真空下でナイフを用いて衝撃を与えて試料を割断する。その後、割断面のレプリカを作製して電顕観察する。その際には、そのまま割断面のレプリカを作製する凍結レプリカ法と、割断面の氷を昇華させ、露出した内部構造のレプリカを作製する凍結エッチング法がある。通常、レプリカは真空下で白金や白金パラジウムを試料に蒸着し、その上から炭素を蒸着して作製する。蒸着後、試料をアルカリ系試薬に浸漬して溶解、除去し、レプリカのみをメッシュに載せ観察を行う。

凍結切片法

freeze sectioning

生体のような柔らかい組織の切片試料を作製するときに、ある程度の硬さを持たせて切りやすくするために、試料を液体窒素温度に冷やして切削する方法。切削にはクライオミクロトームを用いる。試料観察にはクライオ電顕が必要である。

凍結置換法

freeze substitution

急速凍結固定法(加圧凍結法、金属圧着凍結法)により固定した生物試料内の非晶質氷をアセトン等の有機溶媒で置換し、脱水を行う方法。試料の微細構造の破壊を防ぐため、置換は数日かけて-80 ℃から4 ℃まで段階的に温度を上昇させて行う。その際、有機溶媒に四酸化オスミウムや酢酸ウラン等を加えることで、化学固定および電子染色を同時に行う場合が多い。置換後は試料を室温まで戻し、樹脂包埋後、超薄切片を作製し、電顕観察を行う。

凍結レプリカ法

freeze replication

凍結割断を施した生物試料の割断面において金属薄膜のレプリカを作製する方法。細胞膜系の脂質二重層を割断すると、二重層の間で割れる。割れた脂質二重層の細胞外側の半膜をE面(extracellular face)、内側の半膜をP面(protoplasmic face)という。そのため、この手法は膜タンパク等の形態を観察するときに用いる。

トライポットポリッシャ

tripot polisher

マイクロメータの付いた3本の足と試料支持用の足からなる試料の機械的研磨用の道具。バルク試料をセットしマイクロメータで削る角度を微調整し、回転研磨機に乗せて手で支えて試料を研磨する。バルク試料(~3mm×~3mm×~2mm厚)から直接厚さ~10ミクロンの試料が作れる。研磨剤としては30ミクロン~0.1ミクロンのダイヤモンドを塗布したラッピングフィルムで順次研磨し、最終段階でコロイダルシリカで鏡面仕上げをする。電顕観察が容易なように、研磨の途中から楔状に研磨する。最後はイオンミリングで薄くする。広い面積に亘る楔形の試料が作れるので、特に断面観察用の試料作製に適している。

導電性コーティング

conductive coating

透過電子顕微鏡において、帯電を防止して非導電性試料を観察するために導電性のあるカーボンをアーク放電によってコーティングする手法。

ネガティブ染色

negative staining

試料の隙間や周辺部の支持膜上に重金属を残留させること。ネガティブ染色によってTEM像のコントラストの増感を行うことができる。
試料となるウイルスや精製したタンパク質等の水溶液を支持膜の上に滴下し、ろ紙で余分な水分を吸い取る。その後、すぐさま酢酸ウランやリンタングステン酸といった重金属を含む染色液を滴下し、ろ紙で水分を吸い取り、乾燥させる。このような操作を行うと、試料の隙間や周辺部の支持膜上に重金属が残り、その部分は電子線を散乱して暗く見えるため、試料の形態が浮き彫りになる。電子染色の一種であるが、試料自身を染めるのではないため“負(ネガティブ)染色”と呼ばれる。

薄膜化加工

thinning

試料を(透過電子顕微鏡用に)薄膜に加工すること。

非晶質氷

amorphous ice

結晶構造をもたない氷のこと。通常、水を融点以下に冷却すると氷晶が形成され、再結晶化温度まで成長する。生物試料中に氷晶(結晶)が形成されると試料の微細構造が破壊されるので、凍結固定を行う際には非晶質氷の状態が求められる。そこで冷却の際の温度降下速度を速くする等して、再結晶化温度以下まで一気に冷却することにより氷晶の形成を抑えている。

粉砕法

crushing

酸化物、セラミックス材料などの薄膜試料作製に用いられる方法。メノウ乳鉢中で試料を粉砕し、有機溶媒(メタノール、アセトンなど)中で分散させる。このようにして得た懸濁液をマイクログリッドに滴下し、試料片を付着させて、TEM用試料にする。

ブロック染色

en bloc staining

生体試料において、組織片(ブロック)を、後固定の後、脱水の前に、酢酸ウラン溶液やアスパラギン酸鉛水溶液に浸漬して電子染色を行うこと。ブロック染色を行うと、細胞の膜構造や線維構造のコントラストが増強される。

分子線エピタキシ

molecular beam epitaxy
(MBE)

超高真空中で、目的の結晶を構成する元素あるいは元素を含む材料を加熱蒸発して、加熱された結晶基板上に結晶膜を堆積成長させる結晶膜成長法のこと。真空蒸着に近い手法であるが、蒸発する分子線の強度を精度よく制御し、原子レベルに制御した試料を作る方法。透過電子顕微鏡用の試料作製にも用いられる。

プラズマクリーニング

plasma cleaning

試料にプラズマイオンを照射し、試料の汚れである炭化水素の重合物を除去すること。実際には、試料を二つの電極間において、低真空状態で電極間に電圧をかけ残留気体をプラズマ状態にし、プラズマイオンが重合物と反応し取り除かれる。プラズマとは原子や分子が激しくぶつかってイオンやラジカルになっている状態で、エネルギーが高く他の分子との反応性が非常に高い。

プレエンベディング法

pre-embedding

免疫電顕法のための染色を行う際、組織片や細胞の固定後、標的となる抗原タンパク質にすぐに一次抗体を反応させる方法。この方法は免疫反応が樹脂包埋の前に行われるので、プレエンベディング法と呼ばれる。プレエンベディング法の長所は、免疫反応が脱水・包埋前に行われるので、抗原となるタンパク質の変性・流出が起こる前に、抗体を反応させることができることである。短所は、包埋前に組織片(ブロック)として染色を行うため、抗体の浸透が不均一になってしまうこと、および高価な抗体の使用量が多いことである。一般的にポストエンベディング法よりも簡便な方法である。

プレーティング

plating

へき開

cleaving

固体を裂き、特定の結晶断面を露出させる手法。透過電子顕微鏡用の薄膜試料作製に用いられる。

ポストエンベディング法

post-embedding

免疫電顕法のための染色を行う際、超薄切片作製後、標的となる抗原タンパク質に一次抗体を反応させる方法。この方法は免疫反応が(樹脂包埋後に)超薄切片を作製した後に行われるので、ポストエンベディング法と呼ばれる。ポストエンベディング法の長所は、切片上に露出したタンパク質に一次抗体が反応するため、標的タンパク質の存在部位(局在)が正確にわかること、包埋までの手順が少ないため組織や細胞小器官等の構造の保存がプレエンベディング法より良いことである。短所は、脱水による抗原の流出や、包埋によって抗原が変性することにより染色の効率が悪化することである。

マイクログリッド

microgrid

粉体などの微細な試料をグリッドの上で支持するときに用いられる孔径数ミクロン以下の穴が無数にあいている試料用支持膜。材料は、セルロース・アセトブチレートを使用している。

ミリング

milling

試料を削って加工すること。TEM用の試料作製にはイオンビームを使う。

めっき(プレーティング)

plating

固体表面上に、薄い付着した金属層を作る手法。

免疫電顕法

immunoelectron microscopy

抗体が抗原となるタンパク質に特異的に結合する抗原抗体反応を利用して、特定のタンパク質の存在部位(局在)を透過電子顕微鏡で可視化する方法。最初に標的タンパク質に対する抗体(一次抗体)を反応させる。続いて、金コロイドなどで標識された二次抗体を一次抗体に反応させて、透過電子顕微鏡で標的タンパク質を検出できるようにする。抗体を反応させるタイミングにより、プレエンベディング法(樹脂包埋前)とポストエンベディング法(樹脂包埋後)とがある。

焼きなまし

annealing

金属材料などの均質化のためや内部応力の除去などのために適当な温度に加熱後ゆっくり冷却する熱処理。

冷媒

coolant (refrigerant)

液体から気体に、あるいは気体から液体に相変化することによって、潜熱を放出あるいは吸収することを利用して冷却に使う物質のこと。

レプリカ

replica

物体の表面に薄いプラスチックまたは無機材料の被膜を形成し、その後表面から取り去ることによって、表面の凹凸を転写、複製したもの。回折格子の表面複製や試料表面の凹凸を観察するために利用される。