走査電子顕微鏡 基本用語集

試料作製

  1. 理論
  2. 装置
  3. 試料作製
  4. 観察手法
  5. 分析
  6. その他
用語説明
用語
(別表現)
英語表記
(英語略称)
説明
関連用語
DMSO凍結割断法

freeze fracturing method using DMSO

生物試料に対する凍結割断法の最も代表的な方法。脱水後の試料を50%ジメチルスルフオキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)に浸漬し、液体窒素で冷却した金属上で凍結割断する。凍結割断法としては、他に、アルコール凍結割断、樹脂凍結割断などの手法が用いられる。

ODO法
(オスミウム浸軟法)
ODO method,osmium-DMSO-osmium method,osmium maceration method

生物試料の断面観察に用いられる代表的な方法。オスミウム固定後、DMSO凍結割断を行った生物組織を、低濃度の四酸化オスミウム水溶液に浸漬し、細胞質を溶出して細胞内構造を剖出する。処理過程で使用される薬剤から付けられた名前である。

t-ブチルアルコール凍結乾燥

t-butyl-alcohol freeze drying

凍結乾燥法の一種。脱水した試料をt-ブチルアルコールで置換し、凍結した後、真空容器の中で排気すると、凍結乾燥を行うことができる。t-ブチルアルコールは凝固点が約300K(25℃)と高いので、冷蔵庫や冷凍庫で試料を凍結することが出来、手軽に扱えるのが利点である。

アクアダッグ

Aquadag

導電性ペーストの商品名。水をベースとしてコロイド状のグラファイトを分散したもの。

アルコール凍結割断法

freeze fracturing method using alcohol

凍結割断法の一種。脱水後の試料を100%エタノールに浸漬し、液体窒素で凍結した後、割断する。

イオンエッチング

ion etching

イオン衝撃によるスパッタ現象を利用して、試料表面のエッチングをする方法。表面の汚れを取ったり、スパッタ速度の違いを利用して凹凸のコントラストを付けるのに用いられる。

イオン研磨

ion polishing

イオンビームを使って試料を研磨すること。イオンビームを試料にごく浅い角度で照射したときのスパッタリング現象を利用して、平滑な平面を作製する技術。クロスセクションポリッシャーはこの技術を利用している。

イオンスパッタ装置
(イオンコーター,スパッタコーター)
ion sputtering device,ion coater,sputter coater

最も多く使われているコーティング装置。コーティングしたい金属を陰極(ターゲット)として、数Paの低真空中で放電させると、生成されたプラスイオンが陰極に入射して、ターゲット材料をスパッタする。この結果、ターゲット材料の金属で試料表面がコーティングされる。ターゲット金属としては、金、白金、金パラジウム、白金パラジウムなどが使われる。スパッタされた金属がターゲットと試料の周辺に残留する空気分子で散乱されるため、凹凸がある試料に対しても比較的一様なコーティング膜ができる。最近では、磁界中でのペニング放電を利用したマグネトロンスパッタ装置が多く使われている。アルゴンガスを導入するとコーティング速度を上げることができる。コーティングだけでなく、ターゲットを取り外して使うことで、イオンエッチング、あるいは親水化処理などが可能な装置もある。

イオンスパッタ装置

イオンビームスパッタ装置

ion-beam sputter coater

ペニング形イオン銃から放出されたブロードイオンビームをターゲットに照射し、スパッタされた金属を試料にコーティングする装置。ターゲットと試料は高真空中に置かれるため、均一なコーティング膜を作るには、試料の回転傾斜機構かジンバル機構が必要である。通常のスパッタ装置と違って、タングステン、クロムといった酸化しやすい金属のスパッタができるほか、スパッタ速度の制御も比較的容易である。

イオンビームスパッタ装置

イオンミリング

ion milling

イオンビームを使った試料作製方法の一種。本来イオンビームを使った加工を意味するが、電子顕微鏡の試料作製の場合、予備的に薄くした試料の表面すれすれにアルゴンイオンビームを入射させ、STEMあるいはTEM用の薄膜試料を作る方法を意味する。

鋳型法

injection replication method,casting method

血管のように、中空の構造を持った試料、あるいは空洞の内壁を観察する場合の試料作製法。試料に樹脂を流し込み、硬化させた後、元の試料を溶解する。出来上がった鋳型を観察するが、凹凸は反転するので注意が必要である。血管鋳型法、リンパ管鋳型法といった方法がある。

エッチング

etching

断面観察の時に、組成の違い、結晶方位の違いなどによる腐食速度の違いを利用して、試料の組織を浮き出させる化学処理。化学的な方法の他、イオンによるスパッタ速度の違いを利用する場合もある。

エメリー紙

emery paper

紙又は布の上に、アルミナ系の砥粒をバインダーに混ぜて塗り、固めた研磨紙。最近は、炭化ケイ素の砥粒を塗った研磨紙もエメリー紙と呼ばれることが多い。研磨砥粒の大きさによってクラス分けされており、番号が大きいほど砥粒が細かいことを意味する。

オスミウム固定

osmium fixation

生物試料に対する化学固定の一種。四酸化オスミウムの水溶液あるいは蒸気を使った化学固定法。生体膜成分のリン脂質を良く固定するが、過度の固定ではタンパク質の破壊や溶解を起こす。

オスミウムコーター
(プラズマCVD装置)
osmium coater,plasma CVD equipment

オスミウム雰囲気中でのグロー放電を利用して、四酸化オスミウム蒸気を分解し、金属オスミウムの薄い被膜を試料にコーティングする装置。凹凸が比較的激しい試料でも一様な膜厚のコーティングができる、膜の粒状性が極めて細かく高倍率観察に適する、などの特長を持つ。イオンスパッタ装置と似た構造を持つ装置であるが、四酸化オスミウムは毒性があるので、排出ガスの処理に注意する必要がある。

オスミウム染色

osmium staining

試料の特定部位にオスミウムを沈着させて、組織を見やすくする方法。高分子試料を、四酸化オスミウムの水溶液に浸漬したり、蒸気雰囲気中に置くことで、オスミウムを沈着させる。ゴムなど二重結合を持つ部分が染まる。観察には反射電子像を用いることが多い。

加圧凍結

high-pressure freezing

凍結試料作製法の一つで、高圧力下で試料を凍結する方法。生物組織などの含水試料を凍結する際、氷晶を作らないようにするには氷晶防止剤を使ったり、急速凍結を行うが、高圧力下では氷晶形成の速度が遅いため、これを利用して氷晶による損傷を少なくしようとするものである。実際には数百MPa程度の圧力下において、液体窒素温度で凍結を行う。

回転傾斜機構

rotation-tilt mechanism

真空蒸着装置あるいはイオンスパッタ装置に組み込んで使う、試料の回転・傾斜機構。高真空でコーティングする場合や、入り組んだ構造を持った試料にコーティングする場合、なるべく均一な厚さで連続した膜を作るために使われる。比較的回り込みが良いスパッタコーティングの場合でも、薄くて均一なコーティングをするには、回転傾斜機構を使うのが望ましい。

化学エッチング

chemical etching

化学薬品を使って試料表面を腐食すること。結晶方位の違い、組成の違いなどによるエッチング速度の違いを利用して、試料表面に凹凸を付けるために用いられる。試料の内部構造を見る場合は、断面を作り、機械研磨した後に、化学エッチングを行うことで、内部組織を観察することが多い。

化学研磨

chemical polishing

化学薬品を使って試料表面を鏡面状に仕上げる方法。機械研磨をした試料の表面の加工層を取り除いたり、表面の酸化膜を取り除くのに使われる。機械研磨とは裏腹であり、適用できる試料は限られる。

化学固定

chemical fixation

生物試料に対する固定法の一つ。細胞や組織中のタンパク質や脂質を、グルタ-ルアルデヒド、パラホルムアルデヒドあるいは四酸化オスミウムなどの固定剤を使って凝固させ、安定にする固定法。

化学消化法

chemical digestion method

化学固定した生物試料を酸やアルカリで処理することで、細胞間質や細胞質を除去し、目的の構造を剖出する方法。

化学的機械研磨

chemical-mechanical polishing
(CMP)

アルミナ、シリカ、ジルコニアなどの砥粒を反応性の溶媒に懸濁した研磨剤を使うことで、機械的な研磨と化学的な研磨を同時に行う方法。極めて平滑な研磨面が得られると同時に、研磨面表層の加工歪みも小さいので、ECC像を得るときやEBSDのための試料作製に使われる。

緩衝液

buffer solution

少量の酸あるいはアルカリが加えられてもpHが変化しない液。生物試料の処理過程において、組織や細胞が変形しないようにpHや浸透圧を生体に合わせて調整する必要があるため、固定剤を溶解するときや組織の洗浄などに用いられる。リン酸緩衝液、カコジル酸緩衝液などがある。

乾燥

drying

エタノールなどで脱水した生物試料を、SEMに入れられるように乾燥する処理過程。乾燥時の表面張力の影響を最小限に抑えるため、臨界点乾燥あるいは凍結乾燥といった方法が使われる。

灌流固定

perfusion fixation

生物試料に対する化学固定の一方法。仮死状態の動物に、血管系を介して固定液を注入して固定する。臓器や組織を短時間で均一に固定することができるのが特長である。

カーボンコーター

carbon coater

カーボン蒸着専用の真空蒸着装置。油回転ポンプのみの排気を行うのが普通であり、低真空下でのコーティングのため蒸着粒子が散乱され、凹凸が激しい試料でも比較的一様な被膜ができる。高真空でのカーボン蒸着に比べて膜質は若干劣る。

カーボン蒸着

carbon deposition

カーボンを真空中で高温に加熱することで蒸発させ、試料表面に被膜を作る方法。試料のコーティングに用いられるほか、微粒子を観察する際の試料支持薄膜作製用としても用いられる。コーティング用としては、カーボンは、二次電子放出率がやや小さいが、原子番号が小さく、回り込みが良いので、非導電性試料を反射電子で観察する場合あるいは元素分析を行う場合によく使われる。低真空下で蒸着する、いわゆるカーボンコーターに比べて、高真空の真空蒸着装置を使ったカーボン蒸着の方が膜質は良い。

カーボンテープ

carbon tape

カーボン粒子を粘着層にフィラーとして混ぜた両面粘着テープ。観察用試料を試料台に固定したり、非導電性試料の導通を取るのに用いる。導電性ペーストで固定する場合に比べて手軽に扱えるが、しっかり固定できないため高倍率では試料が動くことがある。また、ガス放出が若干多い。

カーボンペースト

carbon paste

樹脂にフィラーとしてカーボン粒子を加えた導電性ペースト。コロイド状のグラファイト粒子を使った水溶性のペーストもある。

カーボン棒

carbon rod

カーボン蒸着用の材料。一方を鋭く尖らせた2本のカーボン棒を接触させて通電し、その接触抵抗による発熱を利用してカーボンを蒸発させるときに用いられる。

カーボン膜

carbon supporting film,carbon film

カーボン蒸着を利用して作った薄膜。粉体試料を観察するような場合、STEMモードでは電子が透過する様な試料支持膜として、カーボン膜が用いられる。一方、微粒子の二次電子像を高加速電圧で観察する場合にも、カーボン膜を用いると背景が暗くなるので、微細構造がコントラスト良く観察できる。

ガラスナイフ

glass knife

超ミクロトームで使われるナイフの一種。厚板ガラスにガラス切りで傷を付けた後、力を加えて割り、鋭利な刃を作るが、専用の作製装置もある。半世紀以上使われてきたものであるが、最近ではダイヤモンドナイフなどが多く使われるようになっている。ガラスナイフは安価で使い捨てができることから、粗削りに使われることが多い。

機械研磨

mechanical polishing

試料の断面作製をするときに一般に使われる方法。準備研磨と仕上げ研磨(琢磨)に分けられる。準備研磨において、粗さの異なるエメリー紙、ラッピングシートを段階的に使って平滑な断面を得た後、仕上げ研磨(琢磨)では、アルミナやダイヤモンドペーストを用いて、微細な条痕を取り除いて鏡面状態に仕上げる。

急速凍結

rapid freezing

生物試料に対する固定法の一つ。生物組織を凍結する場合、凍結速度が遅いと、細胞内に氷晶ができ、微細構造を破壊する。これを防ぐための方法が急速凍結であり、液体プロパンやスラッシュ窒素に試料を投入する方法、液体窒素で冷却した金属ブロックに試料を圧着する方法などが用いられる。

銀ペースト

silver paste

銀粒子を樹脂中に混合した導電性のペースト。試料の取り付け、導電処理などに用いる。

クロスセクションポリシャ

Cross Section Polisher
(CP)

アルゴンイオンビームを使った試料断面作製装置の商品名。試料直上にスパッタリング速度の遅い遮蔽板を置き、その上からアルゴンのブロードイオンビームを照射してエッチングを行うことで、遮蔽板の端面に沿った研磨断面を作る。これにより、数百µm領域の、広く、しかも加工歪みの少ない断面が得られる。加工位置精度は10µm程度である。下図は、研磨開始時(左)および研磨終了時(中央)の試料断面の様子を示し、右は矢印方向から見た加工断面のSEM像である。

CP

懸濁法

suspension method

粉体試料の分散法の一つ。有機溶媒あるいは水などの分散媒に試料を懸濁し、必要に応じて超音波を照射して分散を行う。分散媒と試料が反応しないことが必要であり、また、試料に付着していた汚れが分散媒に溶け出して、観察時にコンタミネーションを引き起こすことがあるので注意が必要である。

固定

fixation

生物試料の処理過程で形態変化が起きないように、最初に細胞や組織を安定化する処理。タンパク質や脂質を、薬品で化学的に固定する方法と、水分を急速凍結で物理的に固定する方法がある。

固定剤

fixative

化学固定を行うときに用いられる処理剤。グルタ-ルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、四酸化オスミウムなどが代表的な固定剤であり、これらの水溶液を目的に応じて使い分ける。アルデヒド系の固定剤は、主としてタンパクを固定し、四酸化オスミウムは、主としてリン脂質を固定する。この他、四酸化ルテニウム、アクロレインなどが用いられる。

固定法

fixation method

生物組織や細胞を化学固定する時の実際の手法。最も一般的に用いられているのは、摘出した組織を直接固定液に浸漬する浸漬固定であるが、血管系を介して固定液を注入して固定する灌流固定、試料を固定液の蒸気に曝すことで処理する蒸気固定などがある。

コロイド金

colloidal gold

金をコロイド状にした粒子。免疫SEMの標識として、直径10nm~20nmのものが多く使われるが、試料表面構造と区別するため、観察モードとしては反射電子組成像がよく使われる。

コントラスト付け

contrast enhancement

断面試料を観察するための試料処理法。試料の内部構造を観察しようとして平滑な断面を作ると、内部形態に対応した原子番号・密度の違い、結晶方位の違い、などが無いと、SEM像のコントラストが生じない。したがって、エッチングで内部形態に対応した凹凸を作ったり、染色により特定の部位に重金属を付着させる、といった方法でコントラストを付けなければならない。これを、コントラスト付けと呼び、高分子試料でよく使われる。

コーティング
(金属コーティング)
coating,metal coating

非導電性試料を観察するとき、導電性を与えるためにイオンスパッタや真空蒸着などを用いて試料表面に金属の薄い膜を作る操作。電子線照射による熱損傷を低減する目的で使われることもある。

再付着
(リデポジション,リデポ)
redeposition

集束イオンビームその他イオンビームを使った試料断面作製の際に、イオンビームでスパッタされた試料が、断面あるいは隙間などに付着する現象。

載物

mounting

試料を試料台に載せて固定すること。

サファイアナイフ

sapphire knife

超ミクロトームで使われる、刃先がサファイアで出来たナイフ。硬度は、ダイヤモンドナイフより若干低く、ガラスナイフよりかなり高い。

集束イオンビーム

focused ion beam
(FIB)

数keV~30keVのエネルギーを持った細いガリウムイオンビーム。SEM用の断面試料作製あるいはTEM、STEM用の薄膜試料作製に多用される。なお、FIBと言った場合、集束イオンビーム装置そのものを意味する場合もある。

集束イオンビーム装置

FIB system,focused ion beam system

集束イオンビームを利用して試料を加工したり、観察する装置。ガリウムを使った液体金属イオン源から放出されたイオンビームをレンズ系で縮小し、集束イオンビームを作製する。基本的な構造はSEMと似ているが、イオン源はプラスの高電圧に保たれており、数keV~30keVのエネルギーを持ったイオンビームが試料に照射される。イオンは磁界の作用を受けにくいので、静電レンズが使われており、イオンビームの走査やブランキングも静電偏向板で行われる。二次電子検出器が備えられており、イオンで励起された二次電子を信号とした走査イオン像(SIM像)を得ることができる。イオンビーム径は最小10nm程度であるが、SIM像を観察しながら、100nm程度の位置精度で加工を行うことができる。化合物ガスの導入口を備え、イオンビームとの反応による選択的な成膜(デポ)を可能にしている。

FIB 装置

試料支持膜
(支持膜)
specimen supporting film,supporting film

粉体試料や超薄切片をSTEMやTEMで観察するときに試料を載せる、高分子あるいはカーボンの極めて薄い膜。微粒子の二次電子像を高加速電圧で観察する場合にも、試料支持膜に載せると背景が暗くなり、微細構造がコントラスト良く観察できるのでしばしば使われる。

真空蒸着

vacuum evaporation

真空中で金、金パラジウム、白金パラジウム、アルミニウム、カーボンなどの材料を蒸発あるいは昇華させて、試料表面に薄いコーティングをする技術。蒸着時の真空圧力は10-3~10-2Pa程度で、残留ガス分子による蒸着金属原子の散乱が少ないため、一様な膜厚のコーティングをするためには試料の回転・傾斜を行う必要がある。

真空蒸着装置

vacuum evaporator

真空蒸着を行うための装置。真空隔壁としては内部が見えるようにガラス製のベルジャーが使われ、内部には蒸着源を支えるための電極棒、試料表面をカバーするシャッタなどが置かれている。排気系としては油拡散ポンプが使われるのが普通であるが、ターボ分子ポンプが使われる場合もある。

親水化処理

hydrophilic treatment

スライドグラス、カーボン板、カーボン支持膜などの疎水性基板の表面を水に濡れやすくする処理。実際には、イオンスパッタ装置のターゲットを外した状態で放電させ、放電領域のそばに基板を置くことで親水性にすることができる。界面活性剤で親水化することも可能である。

浸漬固定

immersion fixation

生物試料に対する化学固定の一方法。切り出した生物組織を直接固定液に浸漬して固定するもので、最も一般的に用いられる。固定液の浸透を良くするために組織片は出来るだけ小さく切り出すが、表面と深部で固定状態が異なるので、固定を促進するためにマイクロウェーブを照射するような方法も使われている。

樹脂凍結割断法

freeze fracturing method using resin

凍結割断法の一種。脱水後の試料をエポキシ樹脂モノマーに浸漬し、液体窒素中で凍結し、割断する方法。

樹脂包埋

embedding in resin

試料作製時に試料を安定に保持するため樹脂に埋め込むこと。超ミクロトームで超薄切片を作ったり、断面を作るとき、樹脂凍結割断をするとき、あるいは金属・鉱物試料などの機械研磨をするときに行う。

蒸気固定

vapour fixation

試料を固定剤の蒸気に曝すことで処理する固定法。カビや乾燥した試料、エマルジョンなど浸漬固定が難しい試料に対して行われる。

蒸着源

evaporation source

真空蒸着を行うときの蒸着材料。材料そのものを意味したり、あるいは、その保持材を含めて言うことが多い。カーボンの場合は材料そのものを成形して用い、金、金パラジウム、白金パラジウム、アルミニウム等の場合は、タングステン線をV形あるいはバスケット形にして保持する。

ジンバル機構

gimbal mechanism

直交する二つの傾斜軸を組み合わせることで任意の方向に傾斜できる機構。例えば、このような機構の上に試料を載せてコーティングを行うことで、方向性のない均一な厚さのコーティング膜を作ることができる。

スパッタリング

sputtering

イオンが固体表面を衝撃したとき、固体を構成する原子をはじき飛ばす現象。これを利用して、試料の加工をしたり、試料のコーティングを行う。

スラッシュ窒素

slush nitrogen

液体窒素を断熱容器に入れて、真空チェンバー内で油回転ポンプで間欠的に減圧すると液体窒素中にザラメ状の固体窒素が分散した状態ができる。これをスラッシュ窒素と言い、窒素の融点付近の約63Kが得られる。試料を入れたときのバブリングがほとんど起きないため、急速凍結ができる。

染色

staining

コントラスト付けの方法の一つ。試料の特定の部位に重金属を付着させて反射電子組成像で観察すると、その部位が明るく見えることから染色と呼ぶ。高分子試料では、オスミウム染色やルテニウム染色が使われるが、オスミウムは二重結合を染め、ルテニウムは非晶質部分を染めると言われている。超薄切片をSTEMやTEMで観察する場合も、染色を行う。

選択エッチング

selective etching

スパッタ速度の違いを利用したエッチング。イオンビームを高い角度で試料に照射すると、結晶方位によるスパッタ速度の違いが顕著になるため、これを利用して断面試料に凹凸を付け、組織を観察することができる。

選択的定電位電解エッチング法
(SPEED法)
selective potentiostatic etching by electrolytic dissolution method,SPPED method

金属組織を観察するときに使われるエッチング法の一つ。非水溶媒電解液中で定電位の電解エッチングを行うものであるが、電気量を正確に制御することで、試料表面あるいは界面を再現性よくエッチングすることができる。ミクロ的な金属組織の観察や、組織と対応した析出物の観察ができるので、SEMの特長を生かした粒界や破面などの3次元的な解析に適する。

帯電防止剤

antistatic agent

界面活性剤の働きで帯電を防止するスプレー。衣類の静電気防止スプレーと同じ作用をするもので、低倍率では有効であるが、表面に薄い被膜ができるので高倍率では微細構造が隠れてしまう。

タンニン・オスミウム法

tannin-osmium conductive staining method

生物試料に対する導電染色の代表的方法。オスミウム固定を行うと、組織にオスミウムが沈着することから、ある程度導電性を増すが、さらに導電性を増すために、タンニン酸処理とオスミウム処理を追加する方法。この他に、チオカルボヒドラジド・オスミウム法、タンニン-フェロシアン化オスミウム法、ルテニウム法といった導電染色法が利用される。

ターゲット金属

target metal

イオンスパッタ装置あるいはイオンビームスパッタ装置を使って、試料表面に金属コーティングを行うときの金属材料。イオンスパッタ装置では白金、白金パラジウム、金パラジウム、金など、イオンビームスパッタ装置ではそれに加えてカーボン、クロムなどが使われる。

ダイオードスパッタ

diode sputtering

陽極とターゲット金属(陰極)の間に高電圧を掛けて行われる、2極形の最も単純なスパッタ機構。

ダイヤモンドナイフ

diamond knife

超ミクロトームで使われる、刃先がダイヤモンドで出来たナイフ。ガラスナイフに比べて硬度が高いので、硬い工業材料の切削にも使える。天然ダイヤモンドを使ったもの、人工ダイヤモンドを使ったものがある。

脱水

dehydration

試料作製過程の一つ。固定が終わった生物試料を乾燥する前に試料中の水分を有機溶媒と置換する操作を言う。実際には、変形を防ぐため、50%程度から100%までの濃度の異なるエタノール中に順次浸漬し、置換することで脱水を行う。

超薄切片

thin section

超ミクロトームで数十~数百nm厚に薄く切った試料片。観察時にはメッシュで支持する。

超ミクロトーム
(ウルトラミクロトーム)
ultramicrotome

STEMやTEM用の超薄切片を作ったり、SEM用の平滑な断面を作るための試料作製装置。ガラスナイフ、サファイアナイフ、ダイヤモンドナイフなどを使って、かんなで削るようにして試料を作る。生物試料や高分子試料といった柔らかい試料の切削を得意にしているが、金属試料の断面作製にも使うことができる。

デコレーション

decoration

試料表面に、ごく薄い金属コーティングをするとき、一様な厚さの膜ができず、ステップ状の構造、鋭い端部などに、コーティング粒子が選択的に付着する現象。この現象を利用すると、微細な表面構造が見やすくなることがある。

デポ

deposition

デポジションの略語。FIBで試料を加工する時に、イオンビームによるエッチングを防ぐために加工部周辺の表面に行う、金属あるいはカーボンの成膜を言う。実際にはガスを導入し、FIBとの反応を利用して成膜を行う。

電解研磨

electrolytic polishing

平滑な研磨を行うための試料作製法。電解液中に試料と電極を入れ、試料を陽極として通電すると、試料の凸部には電界が集中することで加工速度が上がり、表面が平滑になる。機械研磨と違って研磨面に加工歪みが入らないので、試料の結晶情報を得たい場合などに有効な手段である。試料は導電性であることが必要であり、また試料に適した電解液と研磨条件が要求される。

凍結割断

freeze fracturing

細胞や組織の内部を剖出するための方法。脱水後の試料を溶媒や樹脂に浸漬した状態にして液体窒素で凍結し、衝撃を与えて割断する。何に浸漬するかによって、アルコール凍結割断法、DMSO凍結割断法、樹脂凍結割断法などに分類される。高分子試料にも使うことができる。

凍結乾燥

freeze drying

含水試料を乾燥する方法の一つ。乾燥時の表面張力の影響を最小限に抑えるため、試料を凍結させた後、低温に保ったまま真空排気し、試料中の氷を昇華させる。凍結速度が遅いと試料内部に大きな氷晶ができ、構造が変形してしまうので、急速凍結が必要である。なお、一般的なSEM用の試料は体積があるため急速凍結が難しく、昇華にも時間が掛かるため、水をt-ブチルアルコールなどの有機溶媒に置換し、凍結乾燥する方法が用いられる。

凍結研磨

freeze polishing

細胞内構造を剖出するための方法。液体窒素中で凍結した試料を、液体窒素で冷却した研磨シート上で研磨することで、平滑な研磨面を出し、その後、低濃度の四酸化オスミウム水溶液に浸漬し、細胞質を溶出させる。

凍結置換

freeze substitution

凍結した生物試料を、冷却したメタノールやアセトン、その他の置換媒体中に浸して試料の脱水・置換を行う方法。同時に、媒体中に溶かしたオスミウムなどの化学固定剤で固定する。微細構造の変形、物質の移動、抽出が少ない。

トリミング

trimming

超ミクロトームで試料の断面を作るときの予備操作。ミクロトームで切削できる断面は小さいので、試料あるいは試料を包埋した樹脂のブロック先端を、予め台形に整形しておく必要がある。この操作をトリミングと言う。

導電処理

conductive treatment

非導電性試料を観察するための試料前処理。試料表面への金属コーティングが主な手法であるが、生物試料や高分子試料では導電染色といった方法がとられることがある。過多な導電処理は微細構造を変えてしまうので注意が必要である。

導電性テープ

conductive tape

試料を、試料台あるいは試料ホルダに固定するときに使われる、粘着層に導電性のフィラーを混ぜたテープ。手軽であるが、低加速電圧では若干の帯電を起こす場合があるほか、試料ドリフトが起きやすい、ガス放出が多いなど、注意すべき点もある。銅箔あるいはアルミ箔で片面をカバーしたテープもあるが、これは試料の端をカバーしたり、押さえつけるような使い方をする。

導電性ペースト
(導電性接着剤)
conductive paste

試料を試料台に固定したり、導電性を持たせるために周辺に塗布するときに使うペースト。樹脂中に銀粒子やカーボンブラックをフィラーとして分散したものや、水にコロイド状のグラファイトを分散したものがある。前者は接着力が強く、後者は弱いので目的に合わせて使い分けるのが望ましい。

導電染色

conductive staining

生物試料の乾燥前の過程で、オスミウムなどの金属を積極的に組織に沈着させ、導電性を帯びさせること。代表的な方法として、タンニン・オスミウム法がある。構造が複雑な場合、コーティングを厚くしても一様な金属膜ができず、帯電を引き起こすことがあるので、生物組織の観察にはコーティングと併用することが多い。

ドータイト

Dotite

導電性ペーストの商品名。アクリル系の樹脂をベースとして銀粒子やカーボンブラックを分散してある。

ナイフマーク

knife mark

超ミクロトームで試料を切削するとき、ナイフの刃先に欠けた部分があったり、付着物があると、切削方向に傷が入る。これをナイフマークと言う。

バフ研磨

buffing

ダイヤモンドあるいは酸化アルミニウムなどのペースト状研磨剤や懸濁液(スラリー)を研磨布にしみ込ませて行う研磨。一般に仕上げ研磨(琢磨)に使われる。

氷晶防止剤

cryoprotectant

含水試料を凍結するときに、組織内に大きな氷晶が出来ないように加える薬剤。SEMの試料作製で用いられる代表的なものはジメチルオキシド(DMSO)である。

振り掛け法

dusting method for dry powder

乾燥した粉末試料の分散固定法の一つ。脱脂綿を毛羽立たせて粉体試料を含ませて試料台の上で軽くたたいて落としたり、試料台に載せた少量の粉体を綿棒で軽くなでるようにして分散する方法。

物理固定

physical fixation

生物試料の固定法の一つ。薬品を使って行う化学固定に対して、細胞中の水分を急速凍結させて固定する方法を、物理固定と言う。

ブロードイオンビーム

broad ion beam
(BIB)

イオン銃から放出されたままの、レンズ系による集束作用を受けない直径数mmのイオンビーム。通常、ペニング形イオン銃を利用して作るが、イオンビームスパッタ装置、イオンミリング装置、クロスセクションポリシャなどの試料作製装置に使われている。集束イオンビーム(FIB)に対比する意味で使われる。

プラズマクリーニング

plasma cleaning

プラズマ中に試料を置き、プラズマの化学作用により、試料表面のカーボン系の汚れを分解・除去し、試料汚染を防止する方法。すでに付着した試料汚染の堆積物も除去することができる。高分子試料などカーボン系の試料の場合は、試料損傷を受ける可能性が高く、注意が必要である。

劈開

cleavage,cleaving

断面観察をするときの試料作製法の一つ。結晶性試料が特定の結晶面に沿って割れる劈開性を持っているときに利用される。結晶性基板の上に作ったデバイスの断面を作る場合にしばしば使われる方法である。

ペースト法

pasting method

粉体試料を分散させる方法の一つ。懸濁法では分散しにくい粉体を適当な分散媒と混合し、ペースト状にした後試料台に載せ、分散媒を溶媒で除去する。余分な粉体を除去し、分散媒を十分に洗浄しないと、粉体が積み重なって帯電したり、試料汚染を生じやすい。

包埋樹脂

embedding resin

試料を包埋するときに使う樹脂。超ミクロトームで切片を切ったり、断面を作るときはエポキシ系の樹脂が多く使われるが、金属試料を機械研磨するようなときは、ポリエステル系、フェノール系やアクリル系の樹脂も使われる。

ボックス加工

box milling

FIBで試料を加工するときの手法。観察用の断面を作るとき、十分な大きさを持った長方形の穴をFIBで掘るが、これをボックス加工と言う。目的は、観察用の電子プローブまたはイオンビームが断面に高角度で入射できるようにするためである。観察方向に沿った傾斜面を作るようにする場合、スロープ加工あるいはステップ加工という場合がある。

ボックス加工

ポリカチオン処理

polycation treatment

ポリ-L-リジンなどのポリカチオン剤を、スライドガラスに塗布して被膜を作る処理。その上に細胞浮遊液や細菌の懸濁液を滴下すると、静電力で試料がスライドガラスに付着する。微細な生物試料の接着に便利な処理である。

マイクロウェーブ固定

microwave fixation

マイクロウェーブ照射を併用した生物試料の化学固定法。化学固定を行う際にマイクロウェーブを照射することで、試料中への固定剤の浸透を早めると同時に、反応を促進させることができ、固定時間を短縮することができる。

マイクログリッド

micro-plastic grid,perforated supporting film

試料支持膜の一種。試料支持膜は出来るだけ薄い方がよいが、薄い試料支持膜を直接メッシュに貼ると、試料が動きやすく、破れることがある。これに対して、数~数十µmの大きさの孔が多数開いた厚い膜をメッシュに貼り、その上に薄い支持膜を貼ると、試料の安定な保持ができる。この中間に使う多数の孔が開いた膜をマイクログリッドと言うが、試料をこの上に直接載せると、孔の部分を利用して空間に試料を保持することもできる。

膜厚計

thickness monitor

真空蒸着やイオンスパッタで試料表面にコーティングをするときに、コーティング膜厚を測定する装置。コーティング装置内に置いた水晶振動子上にコーティング物質が堆積すると、質量が変化するため、水晶振動子の共振周波数がわずかに変化する。この周波数の変化を検出して、膜厚を測定するものである。あくまで質量を測定する装置なので、コーティング膜の密度が変わると膜厚は違ってしまうので注意が必要である。

マグネトロンスパッタ装置

magnetron-sputter coater

イオンスパッタ装置の一種。ターゲット付近に磁石を置くことでペニング放電を起こさせるもので、低い電圧でも高いスパッタ速度を得ることができる。現在市販されている多くのイオンスパッタ装置が、このマグネトロンスパッタ方式を採用している。

イオンスパッタ装置

回り込み

shadow-less deposition due to gas scattering

金属コーティングの際、蒸着粒子あるいはスパッタ粒子が残留ガスとの衝突によって散乱され、影になっているところにもある程度付着する現象。入り組んだ表面構造を持った試料の場合は、回り込みの善し悪しは重要であるが、コーティング膜の質は残留ガスが少ない方が良いので、兼ね合いが難しい。このような場合、回り込みが良いスパッタコーティングであっても、試料の回転傾斜機構やジンバル機構を併用することで、一様なコーティングと膜質を両立させる場合がある。

メッシュ
(グリッド)
supporting grid,specimen grid

STEMあるいはTEM用の試料支持台。直径3.2mm、厚さ20~100µmの銅、金、モリブデン、ニッケルなどの金属板に数百メッシュの格子を作ったもので、薄膜状の試料をこの上に載せて透過する部分を観察する。粉体状の試料の場合は、このメッシュの上に薄い高分子膜を張り、その上に試料を載せる。

ラッピングシート

lapping sheet

ポリエステルフィルム上に、研磨砥粒を接着剤に混ぜて塗り、硬化させたもの。砥粒としてはアルミナ、ダイヤモンドなどが用いられており、粒度は0.3µm~数十µmである。エメリー紙に比べて高価であるが、フィルムが硬いため、硬い部分と柔らかい部分が混在した試料の研磨には有効である。

臨界点乾燥

critical point drying

含水試料を乾燥する方法の一つ。脱水が終わった試料を液化炭酸ガスと共に圧力容器中に入れて加温する。液化炭酸ガスの臨界圧力、臨界温度を越えると、液化炭酸ガスが瞬間的にガス化するので、徐々に炭酸ガスを排出する。これにより、試料に表面張力を掛けることなく乾燥することができる。脱水後の試料は、一旦酢酸イソアミルで置換した後、液化炭酸ガスで置換するのが普通である。液化炭酸ガスの代わりにドライアイスを用いる方法もある。

ルテニウム染色

ruthenium staining

試料の特定部位にルテニウムを沈着させて、組織を見やすくする方法。高分子試料を四酸化ルテニウムの水溶液に浸漬したり、蒸気雰囲気中に置くことで、ルテニウムを沈着させる。非晶質部分が染まると言われ、観察には組成像を用いる。

レプリカ法

replica method

試料表面の凹凸をプラスチックなどに転写して観察するための試料作製法。何らかの理由で、試料がそのままSEMの試料室に持ち込めないときに使われる。凹凸が逆転するほか、転写するときの忠実度が問題となる。元々は、TEMで試料表面の凹凸を観察するために考えられた方法である。

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