GC-MS Application: PY/GCxGC/HRTOFMSによる樹脂成型品に含まれる添加剤の分析

  • 概要

MSTips No.214 奥田 晃史、小野寺 潤、草井 明彦
日本電子株式会社 

合成ゴムやプラスチック製品に代表される高分子材料では、その用途に応じて様々な物理的・化学的特性が求められる。それらの化学的・物理的特性は、高分子材料に含まれる添加剤の種類やそれらの量比により種々変化することになる。よって、適正な特性を有する高分子材料の品質管理にはこれらの添加剤の含有量の管理が必要となる。 このことは高分子材料そのものを製造している原材料メーカーにとっても重要なことであると同時に、それらの高分子原材料を元に各種成型品を製造しているメーカーにとっても、成型品の品質管理・保証という意味では重要と言える。
高分子材料の添加剤や基質高分子の分析を行う場合は、一般的に「熱分解(PY)-ガスクロマトグラフ(GC)-質量分析計(MS) が用いられることが一般的である。しかしながら、PY法を用いた場合、多くの添加剤成分と、基質高分子の熱分解生成物を同時に分析することとなり、一般的なGCでは、それらすべての化合物をクロマト分離することは困難であることが多い。また、検出器であるMSについても「四重極型MS(QMS)」が用いられることが多く、GCから溶出される各ピークの同定にはもっぱらマススペクトルのライブラリサーチ機能が用いられることになるが、上述のようにクロマト分離が不十分な状態ではピークの同定が思うようにできないケースも発生することがある。さらに、低質量分解能MSであるQMSでは、マススペクトルの各ピークのm/z値からそれぞれの元素組成を推定することが困難であるため、ピークの同定作業では、ある程度の制限を受けることになる。
本報告では、熱分解装置、包括的2次元ガスクロマトグラフ(GCxGC)、及び高分解能飛行時間型質量分析計(HRTOFMS)を用い、MSのイオン化法としては「電子イオン化(EI)法」及び「電界イオン化(FI)法」を使うことにより、高分子材料に含まれている添加剤をより詳細に、かつ確度の高い分析を行うことを目的とした。

測定方法

 測定に用いた装置、ならびに測定条件をTable 1に示した。テストサンプルはニトリルゴム(NBR)を基材とした市販の「X-リング」とした。Fig.1に示したように「X-リング」の断面は「X字」型となっており、各末端部分及び中心部分を「a~b」とし、その各部分をそれぞれ4分割した「a1~a4」「b1~b4」・・・「e1~e4」の合計20個のサンプルについて測定を行い、それぞれの部分に含まれている添加剤について分析を行った。

【Table1 測定条件】
X-リング
【Fig.1 X-リング】

結果

 サンプルa-2を EI イオン化法にて測定し、得られた「全イオン電流クロマトグラムの2Dマップ(2D TICC)」を Fig.2 に示した。Table 1に示したように、今回GCxGC測定はノーマルカラムセットにて行っているため、2D Map上の溶出順位は、横軸 左から右に向かって、低沸点化合物→高沸点化合物が溶出されることとなり、縦軸については下から上に向かって低極性→高極性化合物が溶出されることになる。
 多くのピークが2D Map上に検出されており、GCxGCの分離能力の高さが解る。特に横軸方向の15~30minの領域には多くの化合物が溶出しており、1次元の通常のGCでは分離が困難であろうことが伺える。
 今回数多く検出された2D TICC上のピークについて、そのスペクトルをライブラリサーチにより同定を試みたところ、Fig.2中に示した4種の添加剤が存在していることが見出された。それら4種類のマススペクトルをFig.3、4に示した。化学種の同定としては、単純なライブラリサーチと、ライブラリサーチの結果から推定された候補化合物を元にし、その元素組成の計算上の精密質量とマススペクトル中に観測された分子イオンの実測精密質量を比較することにより、そのライブラリサーチの結果が妥当であるかどうかを確認した。その結果、Table 2及び3に示したように、4種の添加剤いずれについても、ライブラリサーチの結果と分子イオンの精密質量数の間に矛盾した結果は見出されず、高い確度で添加剤種を同定することができた。

2Dmap(TICC)
【Fig.2 2D map(TICC)】
 
EIマススペクトル
【Fig.3 EIマススペクトル】
FIマススペクトル
【Fig.4 FIマススペクトル】
【Table 2 EIマススペクトルによる組成推定】EIマススペクトルによる組成推定 【Table 3 FIマススペクトルによる組成推定】FIマススペクトルによる組成推定
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