• 概要

検体前希釈がコスト低減にも貢献

  大阪赤十字病院(1000床)は、大阪環状線鶴橋駅近くに位置し、地域医療の要として市民の健康を守る。臨床検査科部は、検体到着後、1時間以内に検査結果を臨床側に報告、昼夜2交代制により24時間いつでも正確な検査データで臨床側を支援する。同病院では診療以外にも国内外の救援・救護活動を行っているほか、肢体不自由児や重症の心身障害児を対象に高度な医療を提供する大手前整肢学園を併設する。

病院概要

 大阪赤十字病院は、地域医療支援病院や救命救急センター、地域がん診療連携拠点病院、大阪府周産期母子医療センターなどの指定を受け、36の診療科を有する。1日の平均外来患者数は2173人、年間の救急患者数は2万1169人、手術件数1万976件で、職員は医師278人、看護師831人、臨床検査技師66人など。
 大阪赤十字病院は国内災害における救援救護のほか、国際医療救援部により、国外の紛争・災害救援、復興支援、難民キャンプの支援などさまざまな活動を行っている。最近では、同病院の医師や看護師がICRCシリア難民の救護、ウガンダ北部医療支援などの事業活動に派遣された。また、国際医療救援部には臨床検査技師1人が兼任、2008年5月に地震被災直後の中国に、10年11月にはコレラ救援事業としてハイチに、13年10月には東ティモールに派遣されている。

精度保証された検査データを提供

大阪赤十字病院 達城技師長
 臨床検査科部の方針について臨床検査科部の達城行準技師長は、「良質なデータを診療側に迅速に報告している」と述べる。臨床検査科部の技師数は50人。4課11係に分け、それぞれの部署で「検査データの精度保証ができるよう責任を持たせている」という。ほかに輸血部に5人、病理部に11人の技師が配属されている。
 07年9月から2交代制を実施、夜間や休日は、常に2人の技師が生化学部門と輸血関連部門に分かれ、互いに業務を補っている。中央採血は、全て臨床検査科部で対応している。臨床検査技師が採血することにより、採血困難時の血液量の調節や対応がスムーズになり、検体容器間違いも減少した。


 達城技師長

処理能力は1.5倍以上に

 生化学自動分析装置は4年前に更新した。BioMajesty JCA-BM8040を2台導入し、処理能力は、毎時9600テストと以前の装置に比べて1.5倍以上に増えた。朝は外来とICUなど至急検体を優先し、その後通常の入院検体を測定する。
 BM8040について第一検体検査課の小林一三課長は、処理能力が高く、検体集中時にも渋滞が起こらないことを挙げ、「BM8040導入以前は、毎時2000テストの装置3台をフル稼働させても、入院検体は昼過ぎまでかかっていた」と当時を振り返る。
 BM8040の導入により、入院検体は午前10時30分までに終了し、その差は歴然としている。至急の入院検体は外来が始まる8時45分までに報告され、主治医は、外来前に入院患者の検査データが把握できる。
 同課ではBM8040に生化学Ⅰ、同Ⅱ、さらに一部の免疫血清項目を含めて67項目の試薬を搭載している。2台とも同じ試薬・項目を載せ、検体が集中する午前中は2台でフル稼働させ、午後から夜間は1台ずつ交互に稼働させ、もう1台はメンテナンスなどを行っている。
 試薬コストについて同課の山本裕之氏は、「最少反応液量が50μLと生化学自動分析装置の中で最も少ない。試薬使用量はほとんどの生化学項目で2分の1に、脂質項目では3分の1程度に軽減された」と述べる。生化学Ⅱや一部の免疫血清項目は、ラテックス法や免疫比濁(TIA)法の開発により汎用自動分析装置でも測定できるようになった。これらの試薬は、通常の生化学項目に比べ高価だが、「BMシリーズは、試薬使用量が少ないためコスト低減に貢献している」という。

検体希釈機能をフル活用

 BMシリーズは、検体前希釈により反応液量を低減させている。小林課長は、「当初、希釈に対して不安感があり、サンプリングも2回行うため、誤差が出ないか気になった」という。しかし、実際検討したところ十分な再現性が得られ、不安は払拭された。
 山本氏は、「最初に恒温槽のキュベットに試薬が入り、そのあと患者検体が入るので微量のサンプル分注が可能である」と特徴を述べる。他社の多くは、患者検体が先で、プローブを底に接触させて分注するタイプもあり、プローブ先端が消耗しやすいといった点を問題点に挙げた。
 さらに山本氏は、「検体を希釈し、反応に必要な量を確保するが、 CVは良好に収束している。また、生理食塩水で希釈することからM蛋白や乳びの影響など検体由来のデータ誤差も抑えられる」と感想を述べた。
 免疫血清の専用機は、検体が異常高値になった場合、検体を希釈して再検を行うことから報告までに1時間半程度かかる。BMシリーズでは「自動再検機能」により、本体内で自動希釈されて再検されるので25分程度で再検結果を得られる。診療側からデータ面の不満もなく、専用機に比べると非特異反応が出る可能性があるものの、診療側はより早く報告できる方法を求めている。

独自のサブ項目測定機能を活用

 BMシリーズは、独自のパラメーターとしてサブ項目測定機能がある。1回のサンプリングに対して最大3通りの測定条件を設定できる。サブ項目条件は、「分析方式」「主副波長の測定波長」「測光ポイント」「検量物質」「検量線特性(2Point、スプライン等)」「プロゾーン設定」を個別に変更でき、同課ではこの機能を使用してM蛋白による濁りやランプ交換時期を知るために「ゆらぎ」を検知している。また、試薬の安定性を見るときにも、3通りの測定結果を表示している。山本氏は、「BMシリーズは非常に多機能な設定ができる装置。ボタンを押して測定結果だけに満足していては宝の持ち腐れになってしまう」と感想を述べた。
 また、生化学検査についても、「機器よりも試薬の管理が重要」と指摘する。試薬の中には劣化が早いものもあり、安定性の悪い試薬は大量に機器に載せるべきではない」と指摘する。日々の精度管理とともに、機器や試薬の特性を熟知して対応すべきとした。
 山本氏は、日常業務の中で「あれ?と思うような気付きが必要」と話す。生化学検査のデータで異常に気付いた時、患者の電子カルテを見たり、血液学検査の担当者に血液像に異常がないか確認している。生化学の情報を踏まえて血液像を見ると、より正確な判定につながる。職場内での連携が重要で、診療側も、このようなチームワークに期待している。

大阪赤十字病院 生化学担当の皆さん
生化学担当の皆さん

(THE MEDICAL & TEST JOURNAL 2016年3月21日 第1342号掲載)

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