EI/FI/FD共用イオン源を用いた酸化防止剤のGC/EI、GC/FI測定 [GC-TOFMS Application]
MSTips No.224 日本電子株式会社 MS事業ユニット
EI/FI/FD共用イオン源は、1つのイオン源で異なる3つのイオン化法での測定 (GC/EI、GC/FI、FD)を行うことが可能なオプションイオン源である。イオン化モードの変更は専用プローブ (EI用リペラープローブ、FI/FD用エミッタープローブ) を交換するだけでよく、イオン源の交換は不要である。専用プローブはイオン源を大気開放することなく交換できるため、イオン化モード変更における装置のダウンタイムは極めて少ない。このユニークなEI/FI/FD共用イオン源は、従来機種のAccuTOF GCvシリーズと最新機種JMS-T200GC AccuTOF GCxで使用可能となっている。
Fig.1にEI/FI/FD共用イオン源、Fig.2にEI用リペラープローブ及びFI/FD用エミッタープローブを示す。 EI/FI/FD共用イオン源にはEI用フィラメントとFI/FD用カソードが搭載されており、レンズ部分などは共通部品となっているため、イオン化モードに応じたプローブを交換装着することにより、イオン源を大気開放することなくイオン化モードを変更できる。この共用イオン源を用いることで、GC/EI測定、GC/FI測定、FD測定を順次行うことが可能である。
本MSTipsでは、 EI/FI/FD共用イオン源を用いた酸化防止剤のGC/EI測定及びGC/FI測定例について紹介する。
【Fig.1 EI/FI/FD combination ion source】 | 【Fig.2 EI repeller probe (upper) and FI/FD emitter probe (lower)】 |
測定方法
Table1に測定条件を示す。測定サンプルには市販のジフェニルアミン系酸化防止剤を適宜希釈したものを使用した。
結果
Fig.3にGC/EI TICクロマトグラムと、GC/FI TICクロマトグラムを示す。それぞれのTICクロマトグラム上で8本のピークが観測され、さらにそれらは4つの異性体グループに分類することが出来た。各グループにおける異性体数は、#1が1成分、#2が3成分、#3が2成分、 #4が2成分であった。各グループから1成分を選択し(TICクロマトグラム上に番号のあるもの)、それらのマススペクトルをFig.4及びFig.5に示した。EIでは分子イオンと脱メチルや脱ペンチルと考えられるフラグメントイオンが観測された。一方FIでは、フラグメントイオンは一切観測されず、分子イオンのみが観測された。EIのみならずFIデータを取得することにより、確実に分子イオンを決定することが出来た。
EI/FI/FD共用イオン源を用いることで、ハードイオン化法であるEIと、ソフトイオン化法であるFIのデータを、イオン源交換することなく、連続的に取得することが可能である。AccuTOF GCxでは、複数のイオン化法で得られた元素組成情報を組み合わせることで、信頼性の高い定性分析を行うことができる。
【Fig.4 EI mass spectra 】 | 【Fig.5 FI mass spectra 】 |
【Table2 Accurate mass measurement results for EI mass spectra】 | 【Table3 Accurate mass measurement results for FI mass spectra |
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