27Al MAS NMRによるアノード酸化非晶質アルミナの局所構造解析

  • 概要

NM170005

アルミナは工業上重要な多機能性材料として幅広く利用されています。例えばα-アルミナ結晶は、様々な電気機器用の単結晶基板として、γ-アルミナ結晶は、不均一触媒担体として用いられています。一方、非晶質アルミナもその化学的耐性や優れた機械特性から、触媒ナノ粒子の担体、保護フィルム、リチウムイオン電池電極材料の表面修飾材など、様々な分野で利用されてますが、非晶質であることから、結晶質アルミナに比べAl原子近傍の局所構造に関する知見はあまり得られていません。
27Al固体NMRは結晶や非晶などアルミナの構造を問わずに、AlO4、AlO5およびAlO6配位の存在比を求めることが出来るため、非晶質アルミナの構造解析において、非常に大きな役割を果たします。また、1H-27Al CPMAS測定により、水酸基近傍のAl原子を選択的に観測することができ、より詳細な局所構造解析が可能になります。
本アプリケーションノートでは、アノード酸化非晶質アルミナ皮膜の27Al固体NMR解析例をご紹介します。[1]

アノード酸化皮膜

アノード酸化皮膜は、電解液中で金属を陽極として電流を流した際、電極(陽極)上に形成される酸化皮膜です。今回用 いた試料は、金属アルミニウム上に作製した直径数10nmの微小な細孔を持つポーラス皮膜です(下図)。

CRAFT(Complete Reduction to Amplitude Frequency Table)
硫酸中で作製したアノード酸化皮膜表面のSEM写真
CRAFT(Complete Reduction to Amplitude Frequency Table)
硫酸中で作製したアノード酸化皮膜断面のTEM写真

非晶質アルミナと結晶質アルミナの27Al MASスペクトル


27Al Chemical shift /ppm

硫酸中で作製したアノード酸化皮膜と、それを熱処理した試料の27Al 固体NMRスペクトルを示します。熱処理前の皮膜では4、5、6配位由来のピークが観察されます。5配位のAl原子が多く存在することが非晶質アルミナの特徴です。800℃までの熱処理では非晶ですが、1000℃からは4配位と6配位が共存するƳ-アルミナ結晶、1300℃では6配位のみのα-アルミナ結晶となります。このように27Al NMRスペクトルからは各構造のAl原子の配位数やその存在比を知ることができます。

各種アノード酸化皮膜の27Al スペクトル(左)と1H-27Al CPMASスペクトル(右)

種々の電解質で作製したアノード酸化皮膜の27Al NMRスペクトルを示します。どの試料においても4、5、6配位由来のピークが観察されます。しかし電解液によって4、5、6配位の比率が異なることから、同じ非晶質でも作製時の電解液に依存してAlの結合状態が異なることがわかります。これらの皮膜を300℃で加熱処理すると、硫酸やシュウ酸で作製した6配位の量が多い試料では、6配位の信号が大きく減少していることがわかります。

1H-27Al CPMASスペクトルからはH原子近傍に存在するAl原子を選択的に観測することができます。加熱前は6配位の割合が大きいのに対し、加熱後は6配位が減少し、4、5配位が増加しました。このことから皮膜表面でAl原子の多くは6配位で水のO原子と結合しており、加熱による吸着水の減少に伴い、4または5配位へと変化していることがわかります。 また、加熱した後もCPMASスペクトルが観測されていることから、300℃で加熱しても試料内部には水酸基が残っていることが示唆されます。

参考文献

  • Hashimoto, H.; Yazawa, K.; Asoh, H.; and Ono, S.; J. Phys. Chem. C , 2017, 121 (22), 12300 - 12307
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