• 概要

ER180007

ESR による塗料の劣化評価

塗料は製品の装飾と保護を兼ね備え、製品価値を高める機能性を付与するなど、用途に応じて様々な種類があり、幅広く利用されています。例えば作業用の机には金属用の塗料、パソコンにはラッカー塗料などが塗られています。この塗料は多成分から構成されており、樹脂、硬化剤、顔料、添加剤、溶剤の混合物になります。
塗料は光や熱などの刺激を受けると塗料を構成する分子構造が変化し、劣化が進行します(図1)。その際、分子結合が切れてラジカルが発生します。この発生したラジカルをESRにて観測する事で劣化評価を行うことができます。屋外曝露試験は塗膜の寿命を決定するのに適した方法ですが、塗膜によってはあまりにも長い時間がかかったり、気候条件の変動などにより一定の曝露条件が得られません。そのため、劣化現象を短時間で再現し、ESRにより評価することができれば、塗料の開発にも貢献できる可能性があります。

劣化の原因

図1. 劣化の原因

可視光線による塗料のESR信号の変化

試料は、市販のHALS(Hindered Amine Light Stabilizers:ヒンダードアミン系光安定剤)配合の塗料(塗装用)を用いました。塗料は、その粘性により通常のESR試料管にそのまま充填するのは難しいため、径の細いキャピラリ管に塗り、乾燥させたものをESR試料管に充填して測定を行いました。試料を室温にて可視光線を照射しますと、g=2.006付近にニトロキシドラジカル(>NO) に由来するESR信号が観測され、光照射時間とともに信号は大きくなる傾向を示しました(図2)。HALSはラジカルを捕捉して劣化の進行を抑える機能を持つことが知られています。これは、可視光線による劣化で生じたラジカルをHALSが捕捉して安定なニトロキシドラジカルを生じたものと考えられます。HALSが生成するニトロキシドラジカルはポリマー中で安定に存在するために、室温でも観測できます。図3は、この信号の全体を積分して重量換算した値を縦軸に、光照射時間を横軸に示しました。図3より、時間とともにESR信号が大きくなっていることがわかります。この様な実験から、可視光線によって発生するラジカルの種類や構造、可視光線照射によるラジカルの生成速度などを把握することが可能です。

HALS由来のESR信号(可視光線照射)

図2. HALS由来のESR信号(可視光線照射)

Frequency: 9428.9 MHz, Sweep Time: 1 min
Time Constant: 0.03 s, Modulation: 0.1 mT
ESR信号の可視光線照射による変化

図3. ESR信号の可視光線照射による変化

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