• 概要

ER190001

弊社は空気を熱媒体として試料を50~400℃の任意の温度に加熱し、in-situ測定可能な温度可変装置;ES-13070VT400を、ESRのアタッチメントとしてご提供しています。今回、本アタッチメントを用いて高分子の添加材として汎用される酸化防止剤を単体で測定したところ、興味深い結果が得られましたので報告します。

試料と測定条件

試料として、下記のヒンダードフェノール系酸化防止剤2種(共にBASF社製)を、それぞれ5mg採取して測定に供しました。

Irganox1010 (IRG1010) m.p.110~125°C

Irganox1010 (IRG1010) m.p.110~125℃

Irganox1330 (IRG1330) m.p.240~245°C

Irganox1330 (IRG1330) m.p.240~245℃

いずれも、50°C~350°Cまで25°Cずつ昇温し、各温度到達後に5分間保持した後に掃引を開始しました。

結果

IRG1010は、150°C以上で明瞭に観測できるラジカルを生成し、200°C~300°Cの範囲で図1に示したスペクトルを与えました。一方、IRG1330は、200°C以上で明瞭に観測できるラジカルを生成し、250°C~275°Cの範囲で図2に示したスペクトルを与えました。各スペクトルの両端の一対の信号はMnマーカー信号です。本マーカーを利用して求めたg値は、いずれもg=2.004付近でした。この値から、両酸化防止剤から生成したラジカルはフェノキシラジカルと推測されました。
両スペクトルから求めた超微細結合定数(hfcc)AH1, AH2 をそれぞれ図中に示しました。ラジカル付近の構造が相互に良く類似しているにも関わらず、AH2に明確な差異が認められました。側鎖となる官能基により電子分布が変化することの顕れと考えられます。
更に昇温を継続したところ、両試薬共にフェノキシラジカルが消滅し、その後炭素中心ラジカルが観測されました。

図1  IRG1010ラジカルスペクトル(250℃)

図1 IRG1010ラジカルスペクトル(250°C)

図2  IRG1330ラジカルスペクトル(250℃)

図2 IRG1330ラジカルスペクトル(250°C)

まとめ

IRG1010を含むPBT樹脂から本法により得られたIRG1010ラジカル信号は、AH1=0.194mT, AH2=0.920mTであることを既に報告*しています。今回単独で評価したIRG1010ラジカルのA値はその値と近かったことから、樹脂中のIRG1010を本法により評価できる可能性が示されました。現在、他の酸化防止剤について同様の測定を実施していますが、それぞれに異なるスペ クトルが観測されています。樹脂中でも各酸化防止剤独自の信号を与えるならば、本法により樹脂中酸化防止剤が確認できると期待されます。
産業界で材料として供給される樹脂は、状況により添加剤が変更される(いわゆるサイレントチェンジ)場合があるようです。従来の樹脂中酸化防止剤の測定は、溶媒を用いたクリーンナップを必要とします。簡単に評価できる可能性のある本法の有用性を、今後提示したいと考えています。

* 電子スピンサイエンス 16 p74 (2018)

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