GC-TOFMS Application: msFineAnalysis Ver.2 グループ分析機能を用いた特定成分の抽出 - 酢酸ビニル樹脂の統合解析結果を用いて-

  • 概要

MSTips No.303

ガスクロマトグラフ質量分析法で使用される電子イオン化(Electron Ionization, EI)法は、フラグメントイオンを生成しやすいハードイオン化法の一つであり、取得したマススペクトルとライブラリー登録されたマススペクトルを比較することで化合物の同定を行うことできる。それに対し、電界イオン化(Field Ionization, FI)法などのソフトなイオン化法では、フラグメントイオンの生成が最小限に抑えられ、分子イオンの情報を得ることができる。またガスクロマトグラフ飛行時間質量分析計ではEI法で生じたフラグメントイオンと、ソフトイオン化法で生じた分子イオンの双方の精密質量情報が得られる。これら精密質量情報と従来のライブラリサーチの結果を統合することで、EI法のライブラリーサーチのみを用いた場合よりも同定確度を向上させることができる。
EI法とソフトイオン化法2つのデータを自動で統合する解析ソフトウェアmsFineAnalysisを2018年に上市したが、今回新たな機能を追加したmsFineAnalysis Ver.2の開発を行った。msFineAnalysis Ver.2では新たにデコンボリューション検出機能とグループ分析機能を搭載している。本MSTipsではこれら2つの機能を利用して、測定結果の中から特定の官能基を有する化合物を抽出する方法を紹介する。

グループ分析機能について:

msFineAnalysis Ver.2ではデコンボリューション検出機能が使用可能である。デコンボリューション検出機能では、観測したイオンの精密質量を用いた抽出イオンクロマトグラム(EIC)中で検出されたピーク情報(m/z値、面積値)を用いてマススペクトルを再構築する。そのため、TICC上で1本のピークとして検出されてしまうような保持時間が近い成分(共溶出成分)の分離検出に効果的な機能である。
グループ分析機能はデコンボリューション検出後に使用可能なターゲット分析機能である。この機能では、デコンボリューション検出時に得た観測イオンの精密質量情報をリスト化し、作成した精密質量リスト記載のフラグメントイオンや分子イオン、もしくはニュートラルロスを指定し、それらが観測されている成分の解析結果のみを全体から抽出する。Fig.1にグループ分析機能のGUI(グラフィックユーザーインターフェース)を示す。

Fig.1  Group analysis function

Fig.1 Group analysis function

Fig.1には酢酸ビニル樹脂を熱分解 GC-MS により測定して得られた結果にグループ分析を適応した解析例を示している。左のウィンドウ上段がGC/EIデータであり、黒の実線がTICC、下段がソフトイオン化法のデータであり、緑の実線がTICCである。また右のテーブルには本解析処理の中で見いだされたフラグメントイオンを一覧表の形で示している。芳香族化合物で特徴的に観測されるフラグメントイオンの1つであるC6H5に着目してみると、テーブルの中にも示されているようにこのC6H5を有する化合物数は26存在していることが解る。また、テーブルの中でこの行を選択すると、ソフトウエアがこのイオンを含む成分が検出されているピークを左のウィンドウに即座に表示する。Fig.1の左のクロマトグラムでは青いピークがC6H5を統合解析結果に含むデコンボリューション検出ピークである。さらににイオンを指定したまま、GUI右下の「OK」をクリックすると統合解析の主ウィンドウ内に「C6H5」タブが作成されC6H5を含む結果のみを全体から抽出することができる。

Fig.2  Group analysis result for C6H5 ion

Fig.2 Group analysis result for C6H5 ion

Fig.2に統合解析結果中にC6H5を含む結果の抽出例を示す。グループ分析機能では全解析結果を含む「全て」のタブと、Fig.1の精密質量リストで指定したイオンもしくはニュートラルロスのグループを最大で5つまでタブで表示することができる。各タブのIDや統合解析結果は共通している。Fig.2の「C6H5」タブに抽出された結果は芳香族化合物群であると考えられる。

グループ分析機能は、詳細解析を実施したい特定化合物を抽出するのに有効な機能である。この機能を用いれば、例えば窒素やリン、硫黄といった元素を含むフラグメントイオンを指定することで、含窒素化合物、含リン化合物、含硫黄化合物を即座に見つけることができる。

msFineAnalysisはライブラリデータベース検索に依存しない統合解析を自動で行うソフトウェアであり、ノンターゲット分析に威力を発揮する新しいコンセプトの自動定性ソフトウェアである。ノンターゲット分析で網羅的に多成分を解析することは勿論可能だが、グループ分析機能を使えばターゲット分析的に特定化合物を容易に抽出できるので、より短時間で特定化合物の詳細解析が可能になる。

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