ピクセル型STEM検出器「4DCanvas™」により取得された応用データ紹介

  • 概要

EM2020-08

はじめに

走査型透過電子顕微鏡(STEM)では、集束した電子線プローブを試料上でスキャンさせる。従来型のSTEM検出器では、回折パターン中の強度分布は検出器面上で積分されていたため、散乱角や散乱方向に依存した詳細情報を引き出すことができなかった。
ピクセル型STEM検出器では、CCDやCMOS等のイメージセンサーでニ次元STEMプローブ位置ごとの回折パターンをニ次元画像として記録し四次元データとして扱うことで、従来のSTEM検出器では失われていた情報を有効利用することが可能となる。
今回はピクセル型STEM検出器「4DCanvas™」を用いて取得したデータ例を紹介する。

高速ピクセル型STEM検出器「4DCanvas™」

試料上のSTEMプローブの移動とセンサーの読み出しタイミングを同期させることにより、通常のSTEM像取得と同様の操作で四次元データを容易に取得することができる。本検出器のイメージセンサーにはpnCCD(PNDetector GmbH社製)が採用されている。画素数は264×264pixelsであり、STEM検出器として用いるには十分多い。
pnCCDはシンチレーターを介さない直接電子検出型のCCDであり、入射電子1個あたりの信号が読み出しノイズに比べて高く、また量子効率がほぼ100%であるため、入射電子1個の信号を確実に記録することができる。読み出し速度は最速で7,500fpsで、高速な画像取り込みが可能となっている。
ピクセル型STEM検出器

ピクセル型STEM検出器

ピクセル型STEM検出器
4DCanvas™の外観

pnCCDの仕様

Detector type back-illuminated direct electron detection CCD
Pixel size 48×48um2
Number of pixels 264×264pixels
Frame rate*
(degree of binning)
(number of pixels)
2,000fps(full frame readout)(264x264)
4,000fps(2 fold binning)(264x132)
7,500fps(4 fold binning)(264x66)
SNR typ. 300:1
Quantum efficiency typ.>99% @20kV~300kV
Operation modes Single electron mode(best at very low intensities)
Imaging mode(standard mode for imaging)
Anti Blooming mode(reduces overflow at high intensities)
Radiation hardness >4×1017 electrons/cm2 @200kV

*高速化オプションを付けた場合

応用データ

その1:仮想絞りによる暗視野STEM像作成

回折パターン中に仮想的な絞りを配置することで、様々な種類の明暗視野STEM像を作成することができる。ここの例では、ω相の析出物を含むAl合金から四次元データを取得し、析出物が方向ごとに別々のSTEM像として可視化されている。

  • 試料:Al合金
  • 加速電圧:200kV(JEM-ARM200F)
  • STEM像のピクセル数:512×512
  • 4DCanvas™のピクセル数:264×264(no bin)
  • フレームレート:1,000fps(dwell time:1ms)
  • データ取得時間:262s
仮想絞りによる暗視野STEM像作成

その2:試料中の電場マップ作成

試料中に電磁場が存在していれば電子線は偏向作用を受けるが、STEM検出器面上ではこの偏向は回折パターンの位置シフトに相当する。各プローブ位置における回折パターンの重心を計算することによりこの位置シフトを検出することができ、試料中の電磁場ベクトルに変換することができる。

  • 試料:GaAs中のPNジャンクション
  • 加速電圧:200kV(JEM-ARM200F)
  • STEM像のピクセル数:512×512
  • 4DCanvas™のピクセル数:264×264(no bin)
  • フレームレート:1,000fps(dwell time:1ms)
  • データ取得時間:262s
試料中の電場マップ作成

その3:タイコグラフィーによる高S/N位相像再構成

タイコグラフィーとは試料の位相像を再構成する画像処理法であり、四次元データセットに対して空間周波数領域でフィルタリングを行うことにより、高S/N、高コントラストの位相像を再構成することができる。フィルタリングは全ての空間周波数に対して行われるため、結晶性の試料だけでなくアモルファス試料に対しても適用可能である。

  • 試料:2層グラフェン
  • 加速電圧:80kV(JEM-ARM200F)
  • STEM像のピクセル数:256×256
  • 4DCanvas™のピクセル数:264×66(4-fold bin)
  • フレームレート:4,000fps(dwell time:250us)
  • データ取得時間:16s
タイコグラフィーによる高S/N位相像再構成

まとめ

高速ピクセル型STEM検出器「4DCanvas™」により、以下に示すように従来のSTEM検出器では得ることのできなかった新しいタイプのSTEM像を得ることが可能になった。

  • 回折パターン中に仮想的な絞りを配置することにより、Al合金中ω相の析出物を方向ごとに別々のSTEM像として可視化することができた。
  • GaAs中のPNジャンクション由来の電場を可視化することができた。
  • タイコグラフィーにより2層グラフェン中の格子欠陥を明瞭に観察することができた。
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