• 概要

IB2020-01

全固体電池

全固体電池は正極と負極と電解質が固体で構成されており(Fig.1)、電解液を使用しないため液漏れや発火・爆発の危険性が改善できる。近年では、理論容量の大きいシリコンを負極材に用いることで大容量化が進められているが、充電によるシリコンの体積膨張や充電効率の低下などの課題も残っている。
90%充電した全固体電池の負極材シリコン粒子について構造・形態観察を目的に、大気非曝露環境下でのTEM試料作製を行った。

全固体電池の構造と放電/充電の概念図

Fig.1 全固体電池の構造と放電/充電の概念図

非曝露環境でのTEM試料作製プロセス

リチウムは大気成分と反応しやすいため、試料作製から観察の一連の作業を大気から遮断して行った(Fig.2)。 装置間の試料搬送ではトランスファーベッセルやスライドカバーホルダーを、FIBによるTEM試料作製プロセスでは試料室内マニピュレータのOxford Instruments社製OmniProbe350を使用した。
CP加工(面出し)した試料でFIBによるTEM試料作製を行った。CP加工面は粒子内部が露出しているため作製位置の決定が容易であり、また、平坦であるため薄膜加工が容易である。CPとFIBで共通の試料ホルダが使用でき、CP加工⇒SEM観察/分析⇒TEM試料作製のプロセスが簡便に行える。

全固体電池の構造と放電/充電の概念図

Fig.2 非曝露環境でのTEM試料作製プロセス

CP加工面からのTEM試料作製

Fig.2に示した非曝露環境でのTEM試料作製プロセスを用いて、充電された全固体電池のシリコン負極材のTEM試料を作製した。Fig.3にCPで面出しした負極材の反射電子組成像及びEDSマップを示す。
この結果から試料作製を実施するシリコン負極材の位置を決定し、FIB加工を行った(Fig.4)。

CP加工面のSEM反射電子組成像とEDSマップ

Fig.3 CP加工面のSEM反射電子組成像(左)とEDSマップ(右)

SEM反射電子組成像とEDSマップからシリコン粒子を特定し、TEM試料作製を行う位置を赤線で示す位置に決定した。

FIBによるTEM試料作製の様子

Fig.4 FIBによるTEM試料作製の様子。作製した試料ブロック(左)と薄膜試料(右)

シリコン粒子の位置で試料ブロック(左)を作製し、試料室内マニピュレータのOxford Instruments社製OmniProbe350により試料ブロックをFIBグリッドに固定した。その後、試料ブロックを薄膜に加工しTEM試料(右)を作製した。

TEM観察像と非曝露環境の確認

作製したTEM試料のBF-STEM像をFig.5に示す。赤点線で囲われた領域は一つのシリコン粒子であり、選択したシリコン粒子でTEM薄膜試料が作製できていることがわかった。
TEM観察後に試料を大気に曝露したところ、Fig.6に示すように試料は大気に触れ変質した。この結果は、試料作製からTEM観察までの一連のプロセスが非曝露環境で行われた効果を示している。

作製した試料のBF-STEM像

Fig.5 作製した試料のBF-STEM像

シリコン粒子内部は中心部から外側に向かって3つの構造が存在している。中心部はシリコン単結晶であり、外側に向かってリチウムの濃度が高くなっていると推測している。

大気曝露後のBF-STEM像

Fig.6 大気曝露後のBF-STEM像

観察後に大気に曝した結果、大気成分と反応していることがわかる。

試料提供元:豊橋技術科学大学 松田 厚範 教授

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