クライオトランスファーホルダーを利用したクライオTEM試料作製

  • 概要

IB2021-04

はじめに

クライオ電子顕微鏡法は分子生物学分野や生命科学分野において非常に注目されている。特にTEMを用いた観察はクライオ電子顕微鏡の代表的な手法であり、それに伴い試料作製方法としてクライオFIBが使用される機会も多くなっている。
クライオFIBによって作製した薄片試料は、凍結状態を保ったままTEMに搬送する必要がある。そこでクライオ機能を搭載したTEM試料ホルダー (クライオトランスファーホルダー) を使用し、FIBによる試料加工とTEMへの簡易的なトランスファーを行うことを試みた。
本測定ではサンプルとして酵母を使用し、クライオトランスファーの実例を示す。 (Fig. 1)

Fig.1 酵母の光学顕微鏡像

Fig. 1 酵母の光学顕微鏡像

Fig.2 シングルビーム加工観察装置 JIB-4000PLUS

Fig. 2 シングルビーム加工観察装置 JIB-4000PLUS

Cryo-FIBによるTEM試料作製

日本電子社製シングルビーム加工観察装置JIB-4000PLUS (Fig. 2) を使用して凍結試料のTEM試料作製を行った。
JIB-4000PLUSは通常のバルク試料用モーターステージに加え、サイドエントリーゴニオメーターステージ (SEG) を装着することができる。SEGはTEM用ホルダーを直接挿入できるため、クライオトランスファーホルダーを使用することで、冷却しながらFIB加工が可能になる。クライオトランスファーホルダーにはGatan社製のElsaホルダー (Fig. 3) を使用した。
本ホルダーはデュワーに入れた液体窒素によりホルダー先端の試料部を冷却する機構になっており、付属のワークステーションに挿入することで試料を大気に晒さずに搬送することができる。またFIB加工後の試料搬送時にホルダーからTEM試料メッシュを外す必要がないため、FIB加工とTEM観察を繰り返すことも可能である。
Fig.3 クライオトランスファーホルダー

Fig.3 クライオトランスファーホルダー

以下に試料作製方法を示す。 (Fig. 4)

  • 水中に分散した酵母をTEMグリッド上にマウントし、液体エタン中に浸漬させ急速凍結を行った。(Fig. 4-a)
  • TEMグリッドをクライオトランスファーホルダーに固定し、液体窒素雰囲気のワークステーションに挿入してFIBに搬送した。
  • FIBによって膜厚150 nm程度の薄片試料を作製した。(Fig. 4-b) 試料作製プロセスのSIM観察像をFig. 5に示す。
  • 加工後の試料をワークステーションにて搬送し、TEM観察を行った。(Fig. 4-c)
Fig.4 試料作製方法模式図

Fig. 4 試料作製方法模式図

Fig.5 薄片加工プロセスのSIM像

Fig. 5 薄片加工プロセスのSIM像

Cryo-TEMによる観察

作製した薄片試料をJEM-F200によって観察した。Fig. 6に結果を示す。核、液胞、ミトコンドリアといった細胞小器官に加え、液胞中のオートファジックボディや、ミトコンドリア内膜構造であるクリステを観察することができた。

Fig.6 酵母のTEM観察像

Fig. 6 酵母のTEM観察像

(a) 全体像、 (b) 液胞中のオートファジックボディ、 (c) ミトコンドリア内のクリステ

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