磁性ナノ粒子と超常磁性共鳴 (1) *** 物質の大きさと物性 ***

  • 概要

ER210005

金属や半導体などのバルク結晶 (> 100 nm) は、バンド構造と呼ばれる連続的なエネルギー準位に電子が格納され、電気伝導性を示す。これらの結晶は、その大きさがナノメートルの領域 (1 – 100 nm:メゾスコピック領域) まで小さくなると、エネルギー準位の離散化が生じ、バルク結晶とも原子や分子とも異なる新しい物性を示すことが知られている (図1:nanoparticle)。この効果を量子サイズ効果と呼ぶ[1]

電気伝導性のみならず、強磁性体としての性質をもつ四酸化三鉄 (Fe3O4) は、磁鉄鉱 (Magnetite) として知られる歴史的になじみの深い化合物であるが、この磁性粒子も量子サイズ効果により特徴的な物性を示すようになる。磁性粒子がメゾスコピック領域のサイズになると、粒子一粒が単磁区構造を持つようになり、ブラウン運動やNeel緩和の影響によって、強磁性体というよりむしろ常磁性体のような "超常磁性体" としてふるまうようになる。超常磁性体は、強磁性体とは異なりヒステリシス特性を持たず、磁気異方性も小さい。しかしながら、常磁性体とは異なり一粒一粒の磁気モーメントは強磁性体と同様の大きさを有する。超常磁性を有するMagnetiteのような磁性ナノ粒子は、近年その特性を利用して、Hyperthermia (温熱療法) [2][3]、Magnetic Particle Imaging[4]や、Magnetic Resonance Imagingの造影剤などへの応用[5]が広がっている。

図1 伝導性物質の大きさとエネルギー構造の模式図

磁性粒子の大きさと強磁性・超常磁性共鳴スペクトルの変化

Fe3O4粉末 (粒径50-100 nm) の強磁性共鳴 (FMR : Ferromagnetic resonance) スペクトルとFe3O4磁性ナノ粒子 (Magnetic nanoparticle) のトルエン分散溶液の超常磁性共鳴 (SPR : Superparamagnetic resonance) スペクトルを図2に示す。粒径の大きな粉末は、異方性が大きく、電気伝導性を有するため典型的なダイソン型の線型を示すスペクトルが観測される。それに対して磁性ナノ粒子は、粒径が小さくなるにつれて劇的に異方性は小さくなり、さらに全く新しいシャープで等方的な信号が出現することが確認できる。これらのスペクトルパターンは、大きな粒径の粉末のパターンとも、鉄イオンの常磁性共鳴の信号とも全く異なるもので、まさしく大きさに依存した独特な電子状態を反映していると考えられる。

図2 Magnetite (Fe3O4) の粒径と電子スピン共鳴スペクトルの違い。
(a) Fe3O4粉末 (粒径50 – 100 nm) の強磁性共鳴スペクトル、
(b) Fe3O4磁性ナノ粒子トルエン分散溶液 (0.625 mg / mL) の超常磁性共鳴スペクトル。

Reference:

  • [1] R. Kubo, J. Phys. Soc. Jpn., 17, 975 (1962).
  • [2] A. Rajan, N.K. Sahu, J Nanopart Res. 22, 319 (2020).
  • [3] T. Morino, T. Etani, T. Naiki, N. Kawai, T. Kikumori, Y. Nishida, N. Yamamoto, T. Yasui, Thermal Med, 35 (3), 23-32 (2019).
  • [4] B. Gleich, J. Weizenecker, Nature 435, 1214–1217 (2005).
  • [5] R. Qiao, C. Yang and M. Gao, J. Mater. Chem., 19, 6274–6293 (2009).
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