透過電子顕微鏡による粒径分布測定 ー試料調整からTEM像取得、画像解析までー

  • 概要

EM2022-02

はじめに

ナノ粒子はさまざまな分野で実用的に使用され、研究も盛んに行われている。製品が高性能・高機能化するほど、目的の構造を有する粒子の安定的な供給が求められている。透過電子顕微鏡 (TEM) 法は、ナノメートルスケールで粒子の粒径分布を求めることができ、さらに粒子の構造解析も可能であるので一般的に用いられている。本稿では異なる平均粒径を持つ三種類の市販されている酸化鉄ナノ粒子の粒径分布を導出したのでその一連の過程を報告する。

TEM試料調整

異なる粒径分布を持つ市販のFe3O4ナノ粒子溶液 (試料1, 試料2, 試料3) を準備した (Fig. 1)。
試料ごとに、カーボン支持膜付きマイクログリッドに室温で溶液を滴下し、溶媒を揮発、乾燥して観察用試料とした (Fig. 2)。

Fig. 1

Figure 1 Fe3O4ナノ粒子溶液

Fig. 2

Figure 2 TEM試料調整

TEM像の取得

TEM像は、加速電圧200 kVの透過電子顕微鏡JEM-2100Plusおよび日本電子製CMOSカメラ 瞬Flashを用いて取得した。
観察用試料1, 2, 3のTEM明視野像をFig. 3 (a)-(c) に示す。これらの像から試料ごとに異なる平均粒径を持つ球形の粒子を確認できる。高倍率 (x500k) で取得した像では粒子の格子が観察でき、それぞれの粒子が結晶性を有することが分かった。

JEM-2100Plus

  • 加速電圧: 200 kV
  • ポールピース: HR
  • 電子銃: 熱電子 (LaB6)
  • カメラ: 瞬Flashカメラ
Fig. 3 (a)
Fig. 3 (b)
Fig. 3 (c)

Figure 3 Fe3O4ナノ粒子のTEM明視野像

(a) 試料1 (b) 試料2 (c) 試料3

電子回折図形の取得 / 結晶構造の確認

結晶構造の同定を行うために、観察試料1, 2, 3の電子回折図形を取得した。それぞれの回折図形をFig. 4 (a)-(c) に示す。
回折図形より測定される面間隔 (d値) に対応する回折スポットの回折角がスピネル型Fe3O4に帰属するので、ナノ粒子はスピネル型Fe3O4構成されることが確認された。

Fig. 4 (a)
Fig. 4 (b)
Fig. 4 (c)

Figure 4 Fe3O4ナノ粒子の電子回折図形

(a) 試料1 (b) 試料2 (c) 試料3

粒子解析ソフト (SIF社製MultiImageTool)

粒子解析ソフトSystem In Frontier社製MultiImageToolは簡単かつ直感的な操作で、粒子像の面積、長径、短径などの粒子の形状パラメータを求めることができる。このMultiImageToolを用いた粒子解析手順をFig. 5の右パネルに示す。
この手順 (解析レシピ) は試行錯誤で設定した後、この一連の手順は処理結果と共にユーザーが確認しその後保存することができる。従って同様の処理を他の試料についても同じ手順で実行できるので、条件設定の時間が短縮されるばかりでなく、一貫性、定量性のあるデータを作成することができる。MultiImageToolを用いた粒子解析の例をFig. 5左に示す。

Fig. 6 (a)

粒子解析で設定した手順

  1. 輝度拡張
    画像の輝度を調整する。
  2. 二値化
    画像を二値化して白黒画像を作成する。
  3. ラベリング
    画素値0以外の部分をラベリング処理する。
  4. ラベル除去
    条件 (面積、長径、短径、等) が試料の条件に合わない対象ラベルを除去する。
  5. 粒子解析
    粒子のラベルから粒子形状の数値計測、統計処理を行う。

Figure 5 MultiImageToolのウィンドウ

粒径分布の測定結果

Fig. 6 (a) に画像解析に用いたTEM像、(b) にMultiImageToolを用いて二値化した結果、(c) に粒子解析後ラベリングした結果を示す。
解析され、ラベリングされた一つ一つの粒子はその画像的特徴から解析された計測情報を保有する。
注目した粒子についての計測情報例をFig. 6 (c) 右に示す。

Fig. 7

Figure 6 Fe3O4ナノ粒子における粒子解析の流れ

(a) TEM像 (b) 二値化したTEM像 (c) 粒子をラベリングした画像

計測情報から近似円相当径を粒子の直径とし、粒径分布を求めることができる。各試料について約600個の粒子を用いて、計測した結果のヒストグラムをFig. 7 (a)-(c) に示す。求められた粒径分布、平均粒径および標準偏差はFig. 7に添記した。
試料1の粒径が最も小さく、かつ粒径分布幅も小さい事が分かった。

Fig. 7 (a)
Fig. 7 (b)
Fig. 7 (c)

Figure 7 Fe3O4ナノ粒子における粒径分布

(a) 試料1 (b) 試料2 (c) 試料3

おわりに

今回示したように取得したナノ粒子のTEM像に対して画像解析ソフトを用いることで、自動的かつ簡便に精度よくナノメートルスケールで粒度分布を求めることが可能である。
本アプリケーションノートでは、TEMを使用した粒径分布の解析手順を紹介した。TEMを用いた解析では、粒径や形状の解析・観察だけでなく、電子回折図形を用いることで結晶構造の同定も可能であり、またEDS法を用いる事で試料の元素情報を得ることも可能である。

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