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窒素キャリアガスを使用した熱分析ソリューション② ~TG-MS法による天然ゴムとポリイソプレンゴムの比較分析~ [GC-QMS Application]

MSTips No. 378

はじめに

TG-MS法は、熱重量分析 (Thermogravimetry: TG) 装置と質量分析計 (MS) を接続する分析手法で、TGから放出される雰囲気ガスの一部をMSに導入することで、重量変化時に発生する有機物の定性分析が可能とする手法である。一般的に、TG-MS法において、不活性雰囲気で測定を行う場合は、ヘリウムが第1選択肢となるが、TGの雰囲気ガスは、数十あるいは数百mL / min程度の流量を必要とするため、昨今のヘリウムの確保が難しい状況においては、測定を行うことが難しい場面が予想される。ヘリウムの代替ガスとしては、水素あるいは窒素が利用されるが、マススペクトルの変化が忌避される定性分析においては、還元作用を持つ水素より、窒素の利用が望ましいとされる。但し、窒素は、MSにおける感度低下の影響が水素に比べて大きいとされ、解析結果への悪影響が懸念される。本報では、雰囲気ガスとして窒素を使用し、TG-MS法で天然ゴムとポリイソプレンゴムを測定し、熱分解挙動を比較することで、TG-MSにおける窒素の利用について検証したので報告する。

ガスクロマトグラフ四重極質量分析計 JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta

ガスクロマトグラフ四重極質量分析計
JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta

実験

測定試料は市販の天然ゴムとポリイソプレン製品を用いた。試料量は1 mgを測定に供した。TG-MSの測定条件をTable 1に示す。TGとMSの接続は、液相を持たないキャピラリーチューブを使用する。ヘリウム雰囲気の場合、キャピラリーチューブの長さは3~5 m程度、内径は0.25~0.32 mm程度とする。窒素雰囲気の場合、同一長さ&内径ではMS側への窒素ガスの導入量が多すぎるため、今回は、長さを3 m、内径を0.15 mmとした。

Table 1. Measurement condition for TG-MS

TG Furnace temp. 40°C → 20°C / min → 800°C
Interface temp. 350°C
Atmosphere gas N2
GC Capillary tube Length 3 m × 0.15 mm id (※)
Oven 350°C
MS Interface temp. 350°C
Ion source temp. 250°C
Ionization mode EI (70 eV)
Ionization current 50 μA
Acquisition mode Scan (m/z 33~1000)
※ … UADTM-2.5N (Frontier Laboratories Ltd.), 2.5 m × 0.15 mm +
Vent-Free GC/MS Adapter (Frontier Laboratories Ltd.), 0.5 m × 0.15 mm

測定結果

TICCの比較

天然ゴム、イソプレンゴムについて、TG側の測定結果であるTG, DTG曲線、MS側の測定結果からTICCをそれぞれFigure 1および2に示した。青色はTG曲線 (=重量変化)、赤色はDTG曲線 (=重量変化の一次微分)、黒色はTICCを表す。各サンプルにおいて、TICCとDTGのピークトップは一致しており、TGからの発生ガスがほぼリアルタイムにMSに送られ検出出来ていることがわかる。

天然ゴム、イソプレンゴムの熱分解挙動については、主成分の熱分解が300°Cくらいから開始している点は同じであるが、対応するDTGおよびTICCのピーク形状が大きく異なることがわかる。

Figure 1

Figure 1. TG & DTG curves and TICC of natural rubber

Figure 2

Figure 2. TG & DTG curves and TICC of polyisoprene rubber

EICの比較

MS側の測定結果より、 天然ゴムおよびイソプレンゴムのDimer (→ C10H16, m/z 136)、Trimer (→ C15H24, m/z 204)、Tetramer (→ C20H32, m/z 272)、Pentamer (→ C25H40, m/z 340)、Hexamer (→ C30H48, m/z 408)、Heptamer(→ C35H56, m/z 476)、Octamer (→ C40H64, m/z 544) に相当する質量でEICを作成した (→ Figure 3)。天然ゴムでは、Octamer (→ C40H64, m/z 544) まで確認出来ているのに対し、今回測定したポリイソプレンゴムでは、Heptamer (→ C35H56, m/z 476) までの検出に留まっている。一般的に、高質量のオリゴマーの検出は、GC-MSでは困難であり、TG-MSのような分析手法が適している。

Figure 3 Natural rubber
Figure 3 Polyisoprene rubber

Figure 3. EIC of each oligomer in natural rubber and polyisoprene rubber

まとめ

不活性化ガスとして窒素を利用したTG-MS法を用いて、天然ゴムとイソプレンゴムを測定した。測定の結果、それぞれの熱分解挙動の違いや観測されるオリゴマーの種類の違いを確認することができ、窒素を使用したTG-MSにおいても十分な測定が出来ることが確認できた。

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