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窒素キャリアガスを使用したP&T-GC/MS法による揮発性有機化合物の分析 [GC-QMS Application]

MSTips No. 384

はじめに

揮発性有機化合物 (VOC) のGC/MS分析では一般的にキャリアガスとしてヘリウムガスが使用される。近年のヘリウムの供給不足や価格の高騰により、ヘリウムガスの確保が問題となっており、その代替キャリアガスとして水素ガスや窒素ガスを用いた検討が進んでいる。
窒素ガスは安価・安全等のメリットがあるが、クロマトグラムの分離能力や感度が低下する傾向があるため、条件検討が必要不可欠である。
今回ヘリウム代替ガスとして窒素ガスを用い、P&T-GC/MS法 による分析を試みたのでその結果を報告する。対象成分は、水道法における水質基準項目、水質管理目標設定項目、要検討項目に含まれるVOC 25成分とし、検量線の直線性及び定量下限値の確認を行った。

分析条件

測定はパージ&トラップ装置Atomx XYZ (Teledyne Tekmar社製) と、ガスクロマトグラフ質量分析計JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zetaを使用した。内部標準液はAtomx XYZの自動添加機能にて10 µLを添加した。

Table 1. Instrument Conditions

GC : Agilent 8890
Column Rtx-VMS (0.25 mm, ID×30 m, df=1.4 μm)
Inlet temperature 250°C
Column oven temperature 40°C (2min) - 7°C/min - 70°C - 20°C/min - 240°C (1.2min)
Injection mode Split 40:1
Carrier gas Nitrogen, 0.6mL/min, Constant flow
MS : JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta
Ion source temperature 250°C
Interface temperature 250°C
Ionization energy 20eV
Acquisition mode Peak Dependent SIM
P&T:Atomx XYZ (Teledyne Tekmar社製)
Trap Tube #9
Purge Gas Nitrogen
Sample Volume 25mL
Purge Time 8 min
Sparge Vessel Temperature 40°C
Purge Flow 100mL/min

結果

窒素キャリアによる感度低下の要因として窒素イオン量の増加が挙げられる。イオン化エネルギーを下げることにより窒素イオン生成の抑制が期待されるため、イオン化エネルギーを通常の70eVと20eVで感度比較を行った。1,4-Dioxane (1µg/L) と内部標準である1,4-Dioxane-d(4µg/L) を例に感度の比較を行った結果をFig.1に示した。70eVと比較して20eVがS/N比が4~5倍高い結果となり、20eVがより感度良く測定できることが確認できた。

Figure 1 EIC of 1,4-dioxane and 1,4-dioxane-d8 acquired at 70 eV and 20 eV

Figure 1 EIC of 1,4-dioxane and 1,4-dioxane-d8 acquired at 70 eV and 20 eV

VOC 0.1, 0.2, 0.5, 1, 2, 5, 10 µg/L、 1,4-Dioxane 1, 2, 5, 10 µg/Lの検量線結果をFig.2に示した。 また検量線の決定係数 (r2) および下限値繰り返し再現性 (%RSD n=5) をTable2に示す。すべての化合物で検量線の決定係数 (r2) が0.999以上、繰り返し再現性が10%以下と良好な結果が得られた。

Figure 2 Calibration curve for VOC

Figure 2 Calibration curve for VOC

Table 2. %RSD and correlation coefficients (r2) for VOC

Compound Name % RSD r2
1,1-Dichloroethylene 2.6 0.9999
Dichloromethane 1.7 0.9999
trans-1,2-Dichloroethylene 4.2 0.9999
Methyl-t-ButylEther 1.5 0.9998
cis-1,2-Dichloroethylene 2.7 0.9999
Chloroform 1.7 0.9999
Carbontetrachloride 2.1 0.9999
1,1,1-Trichloroethane 2.1 0.9999
Benzene 1.2 0.9999
1,2-Dichloroethane 2.1 0.9999
Trichloroethylene 2.8 0.9999
1,2-Dichloropropane 1.3 0.9999
Compound Name % RSD r2
Bromodichloromethane 1.5 0.9999
1,4-Dioxane 3.5 0.9991
cis-1,3-Dichloropropene 1.9 0.9999
Toluene 1.4 0.9999
Tetrachloroethylene 5.8 0.9999
trans-1,3-Dichloropropene 2.7 0.9999
1,1,2-Trichloroethane 1.5 0.9999
Dibromochloromethane 0.8 0.9999
m,p-Xylene 2.5 0.9999
o-Xylene 1.8 0.9999
Bromoform 0.8 0.9999
1,4-Dichlorobenzene 4.5 0.9999

%RSD: VOC 0.1µg/L, 1,4-Dioxane 1µg/L (n=5)
r2: VOC 0.1~10µg/L, 1,4-Dioxane 1~10µg/L

VOC 0.1µg/L、1,4-Dioxane 1µg/LのEICをFig.3に示した。最も感度を得るのが難しいとされる1,4-Dioxaneにおいても十分な感度で検出できた。

Fig.3 EIC for VOC at the levels of the LOQ (VOC: 0.1µg/L, 1,4-Dioxane: 1µg/L)

Figure 3 EIC for VOC at the levels of the LOQ (VOC: 0.1µg/L, 1,4-Dioxane: 1µg/L)

まとめ

窒素キャリアガスを用いてP&T-GC/MSのVOC測定を試みた。窒素キャリアの場合ヘリウムに比べ1/5~1/10に感度低下することが知られているが、イオン化エネルギーを20eVで測定することでVOC、1,4-Dioxaneともに下限値まで十分検出できることが確認でき、検量線及び併行精度に関しても良好な結果が得られた。

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