東京農工大学は、シルク研究のメッカとして140年の歴史があります。 朝倉研究室は、そのような背景の下、工学部製糸学科でNMRとシルクをテーマとして研究をスタートし、今年で34年になります。

“NMRとシルク”で、新たな再生医療の分野を拓く

機器分析施設

機器分析施設

企画展のポスター

企画展のポスター

JNM-ECX400をはじめ、日本電子製 超伝導タイプNMR装置7台を使用いただいています

JNM-ECX400をはじめ、日本電子製 超伝導タイプNMR装置7台を使用いただいています

衣料から医療へ

シルクは繊維の女王としてあまりに有名ですが、一方、同じ太さの鋼鉄線に匹敵する高い強度を有し、生体によくなじみ、良好な操作性を有するため、昔から外科手術用の縫合糸の材料として用いられてきました。

朝倉研究室では、シルクをタンパク質として、あらためて認識し、NMRを用いて繊維化前と繊維化後の詳細な構造ならびに、その構造情報を背景とした繊維化の機構を徹底的に解明してきました。
それによって、シルクの水溶液から、ハイドロゲルやスポンジ、フィルム、再生繊維等を作製するプロセスの開発が進みました。

そして、そのような基礎的な知見の蓄積を背景に、シルクを用いた再生医療分野へ展開してきました。
シルクの生体材料としての多くの利点が解明されるとともに、トランスジェニックカイコによって新たに再生医療用に改変された高機能性のシルクを生産できるようになりました。

研究は、1997年の生研機構の大型プロジェクトに採用されて以来、各種の農水省の大型プロジェクトや科学研究費基盤研究S等の強力なサポートを受けながら進めてきました。

2014年2月1日~4月26日には、朝倉研究室の34年間にわたる“シルクの基礎と応用”についての研究の集大成として、農工大の科学博物館でNMRとシルクで創る人工血管を紹介する企画展「衣料から医療へ-シルクで創る人口血管-」が開催されました。
NMRを用いて行ってきた基礎研究が実際の開発研究に結び付けられています。

“超高速”固体 NMR MAS プローブを日本電子と共同開発

朝倉研究室では、2004年、(独)科学技術振興機構(JST)による先端計測分析技術・機器開発事業に採択され、山内先生、朝倉先生によって、プロトタイプの”超高速”固体NMR MASプローブ”(80 kHz)が開発されました。 シカゴ大の石井博士、東レリサーチにおられた三輪博士も共同研究に加わりました。

その後、本プロジェクトはJSTから再委託開発研究に採用され、日本電子(JEOL RESONANCE)が研究代表者となり、朝倉研グループとともに開発研究を加速、開発を開始してから7年目に、実用化に至りました。

現在、80 kHzを超える世界最速クラスの試料回転を実現する直径1mmの“超高速”固体 NMR MASプローブとして完成、極微量の固体試料の高感度・高分解能での測定が実現、固体の高分解能1H NMR も測定できるようになりました。
この1mm MASプローブは現在、日本電子で販売しています。

朝倉研究室は、今後も『NMR(核磁気共鳴)』と『Silk(絹)』をキーワードとし、NMRを用いた再生医療材料開発のための解析システムの開発や小口径のシルク人工血管の実用化に向けて挑戦し続けますと朝倉先生は語りました。

  • PROFILE

    朝倉 哲郎(あさくら てつお)

    東京農工大学 工学部 生命工学科 教授 工学博士

    1949年神奈川県出身。
    東京工業大学大学院博士課程修了・工博。
    80 年日本大学松戸歯学部助手。
    81 年東京農工大学工学部助教授。
    93 年同教授、現在に至る。
    90 年フロリダ州立大学化学科招聘教授。

    朝倉 哲郎(あさくら てつお)