固体NMRと1 mm プローブによる次世代材料の機能構造解明に期待!

1908年に印刷インキの製造と販売で創業したDIC株式会社(以下、DIC)。印刷インクで世界トップシェアを保ち市場をリードし続けると同時に、その基礎素材である有機顔料、合成樹脂の事業を拡大し、現在は、ファインケミカルやポリマーを取り扱う総合的な化学メーカーとして名を馳せています。

DIC株式会社 総合研究所 分析センター総研分室

世界を代表する高機能化学製品メーカー

明るく鮮やかな液晶ディスプレイ、熱に強く絶縁性に優れた自動車部品用の高性能プラスチック、手で破りやすい食品包装材や建物の劣化を防ぐ表面塗料など、DICは、さまざまな市場で高機能な化学製品を開発し、高い評価を得ています。こうした魅力的な製品の開発を推し進めているのが、千葉県佐倉市にあるDIC総合研究所です。

液晶ディスプレイの課題を顔料で解決

同研究所発の製品で世界を驚かせたものの一つに、液晶ディスプレイに使われるカラーフィルタ用のグリーン顔料が挙げられます。
液晶ディスプレイにはさまざまな “機能”が求められます。大型の液晶テレビやLCDディスプレイでは、臨場感のある映像や実物に忠実な色再現ができることが求められ、スマートフォンなどの小さな画面では、見やすくはっきり表示されることに加え、光量が少なくてもよく見える輝度の高いディスプレイであることも求められます。光量が少なくてすめば、バッテリーを長持ちさせることができます。輝度を高めるには、カラーフィルタを薄くして、透過性を高めればよいわけですが、それでは鮮やかな色や臨場感は得られません。どうすれば高輝度で色鮮やかなディスプレイを作れるか、さまざまなデバイスメーカーが知恵を絞るなか、DICは顔料で一つの答えを示しました。

カラーフィルタ用顔料(中央がグリーン)

カラーフィルタ用顔料(中央がグリーン)

従来、グリーン系では、銅を中心材料に製造された顔料を使うのが常識でしたが、同社は果敢に挑戦を続け、2001年、亜鉛を中心材料にしたグリーンの顔料の化学合成に成功。これをカラーフィルタに用いたときに従来製品から10%以上輝度を上昇させることに成功しました。その後度重なる改良の結果、弱点とされた色鮮やかさでも銅を上回り、2015年9月現在、世界シェアの80%を占めるに至っています。昨年発売された後継製品も好調で、この分野において、DICの地位は揺るぎないものとなっています。

期待集まる高機能プラスチック

また、PPS(ポリフェニレンサルファイド)という特殊なプラスチックでも、DICは世界トップクラスの技術と生産力を有しています。PPSは、融点が約280度という高い耐熱性に加え、優れた耐薬品性、難燃性、絶縁性を併せ持つ高機能なエンジニアリングプラスチックです。ガラス繊維などを充填して強度をさらに引き上げた製品は、自動車の電装系をはじめ、過酷な使用環境に耐えるプラスチックとして普及が広がっています。一方、リチウムイオン電池用ガスケットなどには、強化は必要ないものの、高分子量を要する製品の需要も高まっています。
同社ではPPS製品のラインナップを幅広く揃えているのに加え、顧客の要望にきめ細かく応える体制を整えており、開発の現場では日々、新しい挑戦が繰り広げられています。

研究開発は技術と分析の両輪で進む

その挑戦に、日本電子の固体NMRも一役買っています。PPSは、硬質な結晶性の樹脂で、液体に溶かすことができません。またその結晶性を見る上でも、非常に重要なツールとなっています。
「ものが特定の性質を持つ裏側には、必ず原因がある。それを解析するのが分析の仕事です」と語るのは、同社、分析センター総研分室の笠井晃分室長。プラスチックの分子構造には無限の組合せがあり、僅かな構造の違いで、発揮される性能は大きく変わります。研究所の技術研究員が新たな製造法を開発し、できあがったサンプルを分析センターの研究員がさまざまな試験にかけ、物性試験などのデータとNMRの解析データを突き合わせ、原因を突き止める。「技術」と「分析」の両輪の徹底した仕事が、魅力的な製品づくりにつながっています。

化学材料の新たな地平へ

PPSに対する市場の要望は日増しに高度化していると笠井分室長。「耐久性を高めてほしいが、あまり硬いともろくなるので適度に柔らかくしてほしいといったお客様の声も寄せられます。そうした複雑な要望に応えるためにも、分析チームはいっそう力をつけていかなければなりません」
2014年夏には、感度と分解能を飛躍的に向上、80 kHzを超える試料回転を実現する外径1 mmの極細試料管を搭載した固体プローブも導入。より高強度で多様な要望に応えるポリマーの材料開発を見据えています。
前述のカラーフィルタ用顔料でも、1 mm固体プローブ(1 mm HXMASプローブ)と固体NMRの組合せに対する期待が膨らんでいます。 「1 mm固体プローブの高感度、高分解能があれば、これまでは見えていなかった顔料の解析が進む可能性があります。これまでの性能を凌駕する色彩を持つ材料が開発できればうれしいですね」

総合研究所ではJNM-ECA600をはじめ、最新のNMR装置JNM-ECZ400S(左奥)を使用していただいています

総合研究所ではJNM-ECA600をはじめ、最新のNMR装置JNM-ECZ400S(左奥)を使用していただいています

分析センター総研分室 笠井 晃 分室長

分析センター総研分室 笠井 晃 分室長