原子分解能分析電子顕微鏡 JEM-ARM200F 設置室

原子分解能分析電子顕微鏡 JEM-ARM200F 設置室

同位体地球化学研究グループ 微小領域分析ラボの皆様にお話を聞きました

左から 伊藤先生、富岡先生、マリン・ワーク・ジャパン 兒玉様

左から 伊藤先生、富岡先生、マリン・ワーク・ジャパン 兒玉様

─────本日はお忙しいなか、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございます。はじめに、伊藤・富岡先生のチームが現在進められている研究についてご紹介いただけますでしょうか。

伊藤先生  同位体地球化学研究グループでは、掘削コア試料などに記録された化学的な情報を、cm からnm スケールに至る様々な空間分解能での元素・同位体の高精度・極微量分析・解析法と原子スケールに至るまでの微細構造観察法を組み合わせて読み解くことで、地球表層~内部の物質循環、地球環境変動や地球形成史を解明するための研究を行っています。

装置導入のきっかけ

─────現在こちらのラボでは弊社の原子分解能分析電子顕微鏡 JEM-ARM200Fをお使いいただいておりますが、この装置を導入されたきっかけは何だったでしょうか。

富岡先生  私は電子顕微鏡を使って掘削コアや隕石から得られた試料の微小領域観察・分析を行っていますが、ここで取り扱う試料は非常に希少なものが多く、一度の観察で多様な分析(STEM, EDS,EELS 等)ができる装置を希望しておりました。また、以前の装置と比べてユーザーインターフェイスが格段に強化され、スループットが飛躍的に向上したことも大きな選定理由です。

設置環境対策の効果について

─────JEM-ARM200Fの導入に併せ、設置環境対策として弊社の輻射パネル方式精密温度コントロールシステム、アクティブ除振装置、アクティブ磁場キャンセラーも導入いただいておりますが、それらの効果につきましてはいかがでしょうか。

兒玉様   JEM-ARM200Fに併設してFIB装置が2台稼働しているのですが、設置環境条件が安定することにより貴重な試料の加工も余計なストレスなく行うことができ、またFIBからTEMへ試料を移動する際にも設置室内環境条件の変動による試料の変質や破損の心配から解放され、大変助かっております。

伊藤先生  JEM-ARM200Fについては、ラボの中で最も空間分解能が高い装置であり、その性能をいつでも安定して発揮できる環境が何より重要と考え、JEOLで実績のある設置環境対策を導入しました。おかげで、高分解能観察だけではなく元素マッピングなど長時間を要する分析でも安定した環境条件のもとで信頼性のあるデータが取れ、非常に満足しています。

富岡先生  ここで主に取り扱っている天然試料は不均質なものが多く、少しの観察箇所のずれでも全く違ったデータとなってしまうことが珍しくありません。また、掘削コアから採取された微生物や「はやぶさ」の試料等、大変希少なものも扱いますので、観察に影響を及ぼす環境変動要因を最小化できることはデータの信頼性の観点から非常にメリットが大きいと実感しております。

今後の展開

地球深部探査船「ちきゅう」

地球深部探査船「ちきゅう」

─────最後に、皆さまの研究の今後の展開につきましてお聞かせいただけますでしょうか。

伊藤先生  現在、JAMSTECでは地球のマントルのコア試料を入手すべく地球深部探査船「ちきゅう」による大深度掘削のプロジェクトが進行中で、世界初のこの試料が得られた暁には地球科学分野におけるエポックとなることが期待されています。この時を見据え、原子分解能TEMをはじめNanoSIMS、1280型SIMSやFIBなどを導入し、研究者のあらゆるニーズに応え、向こう10 年は世界最高峰といえる強力なラボ基盤を構築しました。これらの希少な試料を大切に、幅広いスケールで、多種多様な分析を行える設備を最大限活用し、地震発生のメカニズムや海底下深部に生息する生命の代謝機能の解明など革新的な研究を行っています。また、地球史をより理解するため「はやぶさ2」などによる希少な地球外物質の分析も視野に入れています。私たちが進めている研究は、宇宙・地球の「過去の姿」を明らかにするだけではなく、「これからの姿」を予測することにも繋がり、人類の存続の可否に大きな影響を与えるであろう地球環境問題の解明等にも役立つことを期待します。

富岡先生  掘削コアや隕石の試料から、地球や宇宙の成り立ち、過去の環境変動の痕跡、生命進化の道筋など様々な情報が得られます。しかしこれらは、天然物であるがゆえにひとつとして同じものはなく、観察・分析においてはその目的と試料に最適なメソッドとともに不確定要因を極力排除するための安定した観察・分析環境の構築が必須です。写真でご紹介したガーネット結晶の観察・分析で用いられたメソッドは、試料から目的の微小領域をピンポイントで取り出し、ナノメートルスケールで結晶学的・化学的に分析を行うものです。この技術は、JAMSTECの大深度掘削コア試料や宇宙航空研究開発機構(JAXA)様と連携して準備を進めている「はやぶさ2」の小惑星表層試料の分析にも重要な役割を果たすこととなります。

兒玉様  私は、高知コア研究所での研究活動の傍らで「ちきゅう」へも乗船し、実際にコアを採取する活動も行ってきました。「ちきゅう」は一度出航すると月単位でのミッションとなり、船体は掘削箇所に半年程度留まることもあります。得られたコア試料等はミッション終了後に上陸しますが、その間に変質が進んでしまうものもあります。掘削したての新鮮な試料をオンサイトで迅速に高分解能観察・分析するために、船上に電子顕微鏡等の機器を設置し、陸上と同等の性能を発揮できる技術ができれば素晴らしいと思います。

─────皆様、大変貴重なお話をいただき誠にありがとうございました。JEOLでは世界トップレベルの装置や技術の開発を続け、ユーザーの皆様にご満足いただけるよう全社を挙げて努力いたしますので、今後ともご愛顧のほどよろ しくお願い申し上げます。

※ 過去の環境変動が記録された堆積物コア / 隕石衝突時の超高圧下で形成された特殊なガーネットの電子顕微鏡像の写真が、「最先端理科学機器のための設置環境技術」 カタログに掲載されています。

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  • PROFILE

    海洋研究開発機構(JAMSTEC) 高知コア研究所

    JAMSTEC 高知コア研究所は、海洋研究開発機構の国内5番目の拠点として、平成17年(2005年)に発足いたしました。以来、地球深部探査船「ちきゅう」をはじめとする掘削船により海底から採取されたコア試料の保管・管理、それらを用いた先端的研究までを一貫して行う世界でもユニークな研究所として、国際的に高い評価をいただいております。これらの活動は、高知大学海洋コア総合研究センターと共同で運営する施設「高知コアセンター」で行われており、名実ともに地球科学・生命科学・掘削科学研究の拠点として関連する技術開発の分野で世界をリードする研究成果を上げております。

    高知コア研究所