分析電子顕微鏡とは

当社は、世界で初めて分析電子顕微鏡を 1970年の第7回国際電子顕微鏡学会(フランス・グルノーブル)で、発表しました。以来、数千台以上の当社製分析電子顕微鏡が世界の主要な大学、研究所で使用されています。分析電子顕微鏡は、単に微小形態の観察装置としてでなく、試料に入射した電子と試料中の原子との相互作用の情報を捕らえる装置として登場し、そのため電子顕微鏡の応用はより広がりました。今日、透過電子顕微鏡で分析機能を付加出来ない装置は無く、科学研究、材料開発等の最先端分野で、有用な装置として利用されています。

JEM-ARM200F 原子分解能分析電子顕微鏡

小さいものを“見たい"から“知りたい"へ

小さい物をはっきり見たいという素朴な要求から出発した顕微鏡の考え方は、17 世紀の光学顕微鏡から電子顕微鏡へと発展しました。 電子顕微鏡の出現は僅か50数年前ですが、現在では、原子、分子の世界を直接観察出来るまでに進歩しています。 小さい物を見る要求は極限まで満足が得られる様になりつつ進んでいます。しかし、科学的要求は際限なく、見えた物の中身をより詳細に知りたくなってきます。 この要求は、見えた物のにおいを嗅いだり、音を聴いたり、触ってみたり、なめたりして、ものを確認する行為が発展し、科学が生まれてきたのと同じかも知れません。

あらゆる情報から分析

透過電子顕微鏡にEDS(エネルギー分散形X線分光器)、EELS(電子エネルギー損失分光器)などの分析機能を付加し、観察した微小領域での元素の定性、定量、元素分布観察や化学状態分析を行う顕微鏡を分析電子顕微鏡といいます。光学顕微鏡での光の代わりに、加速電子を用いて物質に照射するとさまざまな現象が生じます。図1に示される様に、試料の性質を反映したいろいろな信号が発生している事がわかります。二次電子・反射電子に着目すると、試料表面の構造や形態を観察する走査電子顕微鏡となります。そして、空間分解能(隣合って存在する二点間を見分けることができる、その最短距離)が、汎用の走査形電子顕微鏡単能機のそれに比べより優れた像が得られます。X線に着目すると、試料から出る特性X線のエネルギーを測定して、その試料の組成元素分析が行えます。通常、これをEDS法と呼び、特性X線の波長を分光素子により調べるEPMA法(電子プローブマイクロアナライザーで使われる波長分散形X線分光法)とは異なる検出方法です。


図1

このEDSには、シリコンにリチウムを拡散した半導体検出器を用います。試料から発生した特性X線の全エネルギーは、この検出器によって、瞬時にその大きさに対応した電圧パルスに変換され、そのパルスの大きさ毎にその数を数えることで元素分析が行われます。また、組成比率も計算することが可能です。透過電子に着目すると、高分解能電子顕微鏡像はもちろんのこと、試料の結晶構造を反映した電子線回折パターン、走査透過像を得ることができます。


図2

また、透過電子の中には、入射した電子と試料中の原子との相互作用を受けた電子と受けない電子とが混じり合っています。このことは、透過電子のエネルギーを測定することにより、元素分析や試料の化学結合状態、原子間距離を知ることにつながります。この方法は、EELS法と呼ばれ、EDS法と共に分析電子顕微鏡の重要な機能となっています。

微小領域内での分析が得意

分析電子顕微鏡の構造を図2に示します。 基本体である通常の透過電子顕微鏡に、走査形電子顕微鏡の機能を付加させて試料の表面観察を行ないます。さまざまな情報を取り出し、像とすることができます。EDS、EELSを装着し、元素分析、エネルギーロス像等の観察も同時に行う事ができます。