照射系

  • 陰極
    cathode

    陽極に対抗する負電位の電極のこと。熱電子放出型電子銃のフィラメントや電界放出型電子銃のエミッタ(電子放射源)をさす。

  • ウェーネルト電極
    Wehnelt electrode

    電子銃に取り付けられた1~2mmの口径の穴を持つ円筒状電極。バイアス抵抗で誘起されるバイアス電圧を印加し、電子銃から出る発散電子ビームを収束させる作用をする。

  • エネルギー幅
    energy spread

    電子線のエネルギー幅のことを指す。陰極から放出される電子の初速度のばらつきや試料での非弾性散乱によって決まる。

  • 仮想光源
    virtual source

    電界放出型電子銃の場合、静電レンズの作用は弱く、電子銃チップより前方にクロスオーバが作られない。電子の軌道を外挿して全ての軌道が仮想的に集まるチップの後方の点をいう。

  • 加速管
    acceleration tube (accelerating tube)

    加速管は、電子銃から出た電子線を必要な電圧にまで順次加速するための加速電極からなる。200kVの電子顕微鏡では加速電極を6段積み重ねて加速する。

  • 加速電圧
    accelerating voltage

    電子銃から放出され試料に照射する電子を加速するための電圧。陰極から最終加速電極までの電圧を指す。

  • 輝度
    brightness

    電子光源の明るさを単位立体角度あたりの電流密度で表わしたもの。陰極の先端が小さいほど輝度が高い。光学系に収差がなければ、光学系のどの位置でも輝度は一定に保たれる。

  • クロスオーバ
    crossover

    陰極から放出された電子線が、電子銃内の静電加速レンズによる収束作用を受けた結果、電子銃チップの前方に形成される電子線最小断面の部分をいう。従来のタングステンエミッタやLaB6を用いる電子銃の場合に形成される。電子銃の輝度はクロスオーバでの輝度を指す。

  • 高圧ケーブル
    high-tension cable

    電子ビーム加速用の高圧電源と電子顕微鏡の電子銃部とを結ぶ高耐電圧のケーブル。

  • 高圧タンク
    high-tension (voltage) tank

    電子銃から放出される電子を加速するための高電圧発生装置を納める容器。

  • 高圧電源
    high-voltage power supply

    電子銃から放出される電子を加速するために、負の高い電圧を発生させる電源。現在の電源の安定度は~1×10-6

  • 高圧発生装置
    high-voltage generator

  • 高加速電子
    highly accelerated electron

    高い電圧(>100kV)で加速され高いエネルギーを持つ電子のこと。加速電圧が高いほど電子の波長は短くなる。

  • コッククロフト・ウォルトン型高電圧回路
    Cockcroft-Walton high-voltage circuit (CWC)

    整流器とコンデンサを組み合わせた回路を多段に積み重ねた回路で、交流電圧から安定した直流高電圧を発生させることができる。高圧電源(高圧発生装置)の電圧変動を低減するための回路として使われている。

  • 仕事関数
    work function

    固体中から1個の電子を取り出すのに必要なエネルギーのこと。

  • 照射(線)量
    dose

    (電子線の)照射の度合いを示す量。試料の単位面積当たりに照射されるエネルギー量で定義される。

  • ショットキー型電子銃
    Schottky-type electron gun

    物質に強い電界をかけるとポテンシャル障壁が下がり、熱電子放出しやすくなる現象をショットキー効果と言い、それを利用した電子銃をショットキー型電子銃と呼ぶ。熱電子放出が有効に起こる温度より低い温度(~1800K)でエミッタを加熱しておき、強電界をかけることによって電子を放出させる。実際にはタングステンチップの表面を酸化ジルコニウムで覆いタングステンよりもっと仕事関数を下げて(~2.7eV)、電子を放出しやすくしている。輝度は加速電圧200kVで4×108A/cm2.sr。放出電子のエネルギー幅は~0.7eV、光源の大きさ(バーチャルソースサイズ)は>10nm程度である。エミッション電流の高い安定性から電子顕微鏡の光源として広く普及している。このタイプの電子銃を電界放出型に入れている場合が見受けられるが、電子の放出にはトンネル効果を利用していないので、電界放出型電子銃ではない。

  • ショットキー効果
    Schottky effect

    物質に強い電界をかけるとポテンシャル障壁が下がる現象。ショットキー型電子銃では、有効に熱電子放出させることができる温度より低い温度(~1800K)でエミッタを加熱しておき、強電界をかけることによってポテンシャル障壁を低くして電子を放出させている。実際にはタングステンチップの表面を酸化ジルコニウムで覆いタングステンよりポテンシャル障壁をさらに下げて、電子を放出しやすくしている。

  • 多段加速電極
    multi-stage acceleration electrode

    電子銃から出た電子線を必要な電圧に加速するために加速電極を何段も積み上げたもの。200kVの透過電子顕微鏡では6段加速を採用している。

  • 電界引き出し
    field extraction

    固体表面に107V/cm以上の電界をかけ、固体内の電子を加熱せずに外部に引き出すこと。

  • 電界放出
    field emission

    適切な仕事関数を持つ材料(通常タングステン)を尖らせて作った陰極(エミッタ)を、引き出し電極で作られる強い電界中に置き、陰極の先端から電子を放出させること。

  • 電界放出型電子銃
    field-emission electron gun (FEG)

    冷陰極タイプと熱電界タイプがある。超高真空下で細く尖らせた陰極(エミッタ)の先端に強い電界(高い電圧)をかけて電子を放出させる電子銃。熱電子放出型電子銃に比べ電流量は少ないが、輝度は107~108と高い。電子は陰極の微小部分から放出され、初速度のばらつきが小さいので、微小プローブを作ることができ、高いエネルギー分解能を得ることができる。電子線ホログラフィーには不可欠である。

  • 電子銃
    electron gun

    光学顕微鏡の光源に相当する電子線発生装置。陰極から放出された電子を陽極に向かって加速され電子ビームを作る。

  • 熱電界放出型電子銃
    thermal (thermally assisted) field-emission electron gun

    タングステンチップのエミッタを~1600Kに加熱して、さらに強い電界をかけてポテンシャル障壁(~4.5eV)をトンネルさせて電子を放出させる方式の電子銃。エミッタを常時加熱しているため、冷陰極電界放出型電子銃のようにチップの表面に残留ガスが吸着せず、長時間にわたって安定な放出電流が得られる。そのため、微小領域の分析に有利。放出電子のエネルギー幅は~0.7eVと冷陰極タイプよりやや広い。輝度は 加速電圧200kVで <8×108A/cm2.sr程度、光源の大きさ(バーチャルソースサイズ)は>10nm程度である。ただし、現在はこの型の市販品の電子銃はなく、ショットキー型電子銃にとって代わられている。

  • 熱電子
    thermoelectron

    物体を加熱することによって放出される電子。例えば、加熱タングステンフィラメントや六硼化ランタンチップから放出される電子。

  • 熱電子放出型電子銃
    thermionic-emission electron gun

    タングステンフィラメントや六硼化ランタンチップなどの陰極を加熱して熱電子を放出させる方式の電子銃。

  • ノイズキャンセラ
    noise canceller

    冷陰極FEGでは放出電流の短時間での変動(エミッションノイズ(チップノイズ)という)が大きいために、それをプローブとしたSEMあるいはSTEMにおける走査像上には明暗の線状のコントラストが現れる。エミッション電流の一部を検出し、その信号の変動を画像信号にフィードバックしてエミッション電流(入力信号)の変動の効果を取り除き、線状のコントラストをオンラインで低減させるための検出器および演算回路をノイズキャンセラと呼ぶ。エミッション電流の検出には、専用の電流検出絞りあるいは電流検出機構付きコンデンサ絞りを使用する。

  • 引き出し電極
    extraction electrode

    電界放出型電子銃において、エミッタから電子を引き出すためにプラス電位がかけられた電極のこと。陰極に対して2.5~3kVの電圧がかけられる。

  • ビームロッキング法
    beam-rocking technique

    入射電子線を試料の一点に固定し入射角をある角度範囲に亘って揺らす方法。すなわち、二段偏向系を用いて、一段目のコイルで電子ビームを偏向し、それに連動して二段目のコイルで偏向したビームを試料上の同じ点に振り戻す。これを、直交する二つの偏向方向(x,y)について、ある角度範囲にわたって行う。 ALCHEMI(アルケミ)信号のx,y方向の角度変化 や大角度収束電子回折図形を得るのに使われる。

  • フラッシング
    flashing

    冷陰極電界放出型電子銃(CFEG)では、ショットキー型電子銃の場合のようにエミッタに通電して加熱しながら使用することをしない。そのためエミッタ表面へのガス吸着やイオンスパッタなどにより表面状態が変化し、放出される電流量が減少するなど不安定になる場合がある。これらエミッタ表面の吸着ガスやイオンスパッタによる微細な突起を、エミッタ加熱によって除去する作業を“フラッシング”と呼ぶ。フラッシングを行った直後の清浄なエミッタ表面はすぐにガス吸着が始まり、仕事関数は大きくなり放出電流は急速に減少する。そのためフラッシングからしばらく時間をおき、エミッタ表面が吸着ガスに薄く覆われて放出電流が安定してから(多量のガスが吸着するまでの間)使用することが多い。
    近年ではエミッタ周辺の残留ガスを減らすことにより、フラッシング直後の清浄なエミッタ表面を維持し安定して使用できるCFEGが開発されている。このようなCFEGは、フラッシング後の待ち時間がないことや、エミッタ表面が清浄で仕事関数が低い状態で使用できるので、輝度が高く保たれ優れている。

  • プローブ径
    probe diameter

    試料に入射する電子ビームの直径のこと。最小プローブサイズは電界放出型電子銃で~0.2nm、LaB6熱電子放出型電子銃で~1nm。球面収差補正装置を用いるとビーム径は0.1nmを切る。

  • ヘアピン形フィラメント
    hairpin filament

    熱電子光源として使われるフィラメント。細いタングステン線をヘアピン状に曲げ、直接通電し約2800Kに加熱して用いる。輝度は加速電圧200kVで~5×105 A/cm2・sr。クロスオーバの大きさは~20μm。エネルギー幅~3eV。最近のTEMでは殆どLaB6カソードに置き換わっている。

  • ベルシュ効果
    Boersch effect

    電子銃から放出される電子の電流量が増すと、電子同士のクーロン相互作用によってエネルギー分布の幅が増大する現象。色収差を大きくする。

  • ポテンシャル障壁
    potential barrier

    粒子がある領域を通過するのを妨げる障壁をポテンシャルの次元で表したもの。

  • 陽極
    anode

    陰極である電子源に対向する正電位が与えられた電極。陰極から放出される電子流を受け取る役割をし、中央に孔があいており、下方に電流を導く。加速電圧が200kVで6段加速の場合は、陽極は陰極に対して~33kVかかっていることになる。

  • LaB6(ラブロク)単結晶チップ
    lanthanum hexaboride single-crystal tip

    熱電子光源として使われるチップ。六硼化ランタンの結晶を円錐状にとがらせて用いる。間接加熱で約1800Kに加熱して用いる。輝度は加速電圧200 kVで~5×106 A/cm2.sr。クロスオーバの大きさ~10μm。エネルギー幅~2eV。

  • 冷陰極電界放出型電子銃
    cold (cathode) field-emission electron gun

    タングステンチップのエミッタに、常温で強電界をかけトンネル効果により電子を放出させる電子銃。放出電子のエネルギー幅は熱電界タイプまたはショットキータイプより狭いので(~0.4eV)、EELSにおいて高いエネルギー分解能が得られる。バーチャルソースサイズは~10nmと小さいので干渉性が良く、電子線ホログラフィーに適する。ショットキータイプよりも微小なプローブが作れるが、全放出電流量はより少ない。したがって透過電子顕微鏡像観察において、高倍率には適しているが、中低倍率領域ではショットキータイプのほうが使いやすい。その輝度は加速電圧200kVで~8×108A/cm2.srである。エミッタの表面が残留ガスによって汚染されやすく、放出電流が変動しやすい。市販のものは8時間程度でエミッタの先端をフラッシングする必要がある。長い時間にわたって大きな電流量で一定した電流を必要とするような分析には不向であったが、最近は、真空度の向上によりプローブ電流の安定度が改善され、使い勝手は改善されている。

  • 六硼化ランタン
    lanthanum hexaboride

    タングステンに代わり、熱電子銃チップの材料として使用されている物質。タングステンフィラメントに比べて、より高真空が必要だがより高い輝度が得られる。