試料室

  • アクティブ磁場キャンセル装置
    active magnetic-field canceller

    電子顕微鏡への時々刻々の磁場を検出し、それと逆位相の磁場を発生させ、電子顕微鏡にかかっている外部磁場をキャンセルする装置。

  • 外部磁場
    external magnetic field

    電子顕微鏡にかかる外部からの磁場。装置の性能に悪影響を与えないような対策をする必要がある。電子顕微鏡の設置基準は1ミリガウス以下。

  • 外乱
    external disturbance (interference)

    電子顕微鏡の安定性、性能を損ねる外部からの電磁場ノイズや機械的な振動。

  • 空圧ダンパ
    pneumatic damper

    空気バネを用いる振動吸収マウント。電子顕微鏡本体の防振に用いられる。

  • クライオトランスファーホルダー
    cryo-transfer holder

    クライオ電顕において生物系試料を観察する際に用いる試料ホルダ。クライオワークステーションと併用することで、液体窒素温度下でマイクログリッドに載せた試料を装填することができる。液体窒素デューワーが備えられており、先端部は液体窒素温度に保たれる。ホルダを電子顕微鏡に挿入する際に、短時間ではあるが先端部が外気にさらされるため、試料への霜の付着を防ぐためのシャッターが装備されている。

  • ゴニオメータ・ステージ
    goniometer stage

    傾斜機能を持ったステージ(載物台)。結晶の方位を合わせたり、試料を入射電子線に対して傾斜して観察するために用いられる。

  • サイドエントリーステージ
    side-entry stage

    対物レンズのポールピースの横から試料を挿入する方式の試料ステージ。トップエントリーステージに比べると振動や熱に対して不安定であるという欠点があるが、構造上、試料ステージから上方の空間を有効に使えるので、分析機能の付加が容易であり、試料の傾斜角も大きくとれるので、材料科学やトモグラフィーに有用である。C-Oレンズが使えるので試料上でナノビームが容易に得られること、試料上方に設置するEDS検出器の取り出し角を大きくとれるなど、分析電子顕微鏡に適しているステージである。

  • 試料回転ホルダ
    specimen rotating holder

    入射電子線の方向を軸として試料を回転できる試料ホルダ。回転角±180°、傾斜角±25°程度。

  • 試料加熱1軸傾斜ホルダ
    single-tilt heating holder

    試料の加熱に用いられるホルダ。最高到達温度~800℃。試料の傾斜は1軸(X軸)についてのみで傾斜角は±20°程度。最高到達温度が1000℃のものもある。試料の方位設定を完全にはできないが、加熱2軸傾斜ホルダに比べて簡便に使えかつ廉価である。

  • 試料加熱2軸傾斜ホルダ
    double-tilt heating holder

    加熱しなおかつX軸およびY軸に関して試料を傾斜させることができるホルダ。最高到達温度~800℃。傾斜角は±20°程度。最高到達温度が1000℃のものもある。

  • 試料ドリフト
    specimen drift

    ゴニオメータ、試料ホルダなどの熱的、機械的安定度に起因する試料移動(量)。高分解能観察や微小領域の分析に重要な因子である。~1nm/minに抑えられている。

  • 試料2軸傾斜ホルダ
    double-tilt holder

    X軸およびY軸に関して試料を傾斜させることができるホルダ。試料傾斜角は対物レンズのポールピースに依存するが、±20°~±60°。

  • 試料冷却1軸傾斜ホルダ
    single-tilt cooling holder

    液体窒素または液体ヘリウムで試料を冷却するホルダ。試料の傾斜は1軸(X軸)についてだけ。液体ヘリウム冷却ホルダでは5Kまで冷えるものもある。試料の方位設定を完全にはできないが、冷却2軸傾斜ホルダに比べて簡便に使えかつ廉価である。

  • 試料冷却2軸傾斜ホルダ
    double-tilt cooling holder

    冷却しなおかつX軸およびY軸に関して試料を傾斜させることができるホルダ。液体窒素冷却ホルダの温度可変範囲は-175℃(~100K)~+50℃。最低温度保持時間 2~3時間。液体ヘリウム冷却ホルダの温度可変範囲は20K~100K。最低温度保持時間 約1時間。

  • 磁場漏れ
    magnetic-field leakage

    永久磁石や電磁石で構成される電子顕微鏡のパーツは必要な局所空間に磁場を発生させるが、それ以外の空間に磁場が漏れることをいう。

  • トップエントリーステージ
    top-entry stage

    対物レンズのポールピースの上方から試料を挿入する方式の試料ステージ。試料ホルダは光軸に対して回転対称で、対物レンズ内に落とし入れる構造になっているため、振動や熱に対して安定であり、超高圧電子顕微鏡をはじめとする高分解能観察に適している利点がある。しかし、この構造では大きな傾斜角がとれず、分析機能の付加が難しい欠点があるので、分析電子顕微鏡では、サイドエントリーステージが採用されている。

  • ドリフト補正システム
    drift correction (cancellation) system

    試料移動の際や試料温度を変えるときなどに起きる試料のドリフトによる像のずれを検出し補正するシステムのこと。

  • 浮遊磁場
    stray magnetic field

    装置の周辺にある不要な磁場。浮遊磁場には静磁場と交流磁場によるものがある。前者は車の移動などによる非周期的な場や地磁気を言う。後者は電源、蛍光灯、外部装置などが発生する周期的な場によるものをいう。

  • ベリリウム試料2軸傾斜ホルダ
    double-tilt beryllium holder

    試料をX軸およびY軸に関して傾斜させることができ、なおかつ高感度のEDS分析ができるホルダ。ベリリウムを素材としている。ベリリウムは、特性X線のバックグラウンドとなる硬X線を吸収するので、検出効率は高まるが、毒性が強いので素手での取り扱いは禁じられている。

  • 方位角
    azimuth (azimuthal angle)

    電子顕微鏡の場合、鉛直方向に走る光軸を含む面(鉛直面)がその基準となる基準鉛直面となす角。ひらたく言えば光軸まわりの回転角。

  • ミッシングウェッジ (ミッシングコーン)
    missing wedge (missing cone)

    トモグラフィーのための傾斜シリーズ画像を取得するとき、試料ホルダーの傾斜角が制限されているために、試料の画像が得られない角度領域のこと。
    ミッシングウェッジは、試料の三次元構造を再構成する際にアーティファクトの原因になる。精度の高い三次元構造の構築には、ミッシングウェッジを小さくすることが重要である。通常のホルダーの傾斜角は±30°程度に制限されているが、高傾斜用試料ホルダーでは、±70°程度まで試料を傾斜することができる。
    トモグラフィーで傾斜シリーズ画像を取得するには高傾斜用試料ホルダーが用いられる。

    ミッシンングウェッジの模式図
    図1 (a)傾斜シリーズ画像を取得する場合のミッシンングウェッジの模式図。傾斜角範囲±θmax、角度ステップΔθ
    (b)一軸傾斜および(c)二軸傾斜の場合のミッシングウェッジの形状。一軸傾斜ではゴニオメーターのx軸のみを傾斜軸とし、二軸傾斜ではx軸とy軸の両方を傾斜軸として傾斜シリーズ画像を取得する。二軸傾斜の方がミッシングウェッジがより小さい(得られる角度情報が多い)ため、アーティファクトの少ない三次元構造を得ることができる。
    柱状に加工した高分子試料の暗視野-STEM像
    図2 (a)柱状に加工した高分子試料の暗視野-STEM像。
    (b)(a)の試料のx軸回転の一軸傾斜画像シリーズから三次元再構成によって得られた構造の断面像に発生したミッシングウェッジによるアーティファクト。傾斜角度範囲が狭くなるほど、電子線の入射方向であるz方向の分解能が低下する(具体的には、赤い矢印で示すように内部の粒子が伸びて見える)。 このz方向の分解能の低下は、三次元測長(体積、表面積、アスペクト比)の精度を下げる原因となる。
    (c)ミッシングウェッジの模式図。ミッシングウェッジは図中に青色で示している。
    通常の一軸傾斜試料ホルダーと高傾斜用試料ホルダー
    図3 (a)通常の一軸傾斜試料ホルダーと(b)高傾斜用試料ホルダー

  • ユーセントリック・ゴニオメータ
    eucentric goniometer

    傾斜軸を物面(試料面)上におくように工夫されている試料ステージのこと。ステージを傾けて試料を傾斜させても像の中心が逃げない。