装置

  • CRT (ブラウン管)
    cathode ray tube,Braun tube

    陰極線管の略語。ブラウン管とも呼ばれ、SEM像の表示に使われてきたが、生産量の減少と共に液晶ディスプレーに置き換わりつつある。液晶ディスプレーに比べてダイナミックレンジが広く、階調も多いので、微妙なコントラストの表現には向いている。

  • ESD
    environmental secondary electron detector

    環境制御形SEMで使われている二次電子検出器。数百Vに保たれた捕集電極が検出器として用いられるが、試料から放出された二次電子が、捕集電極で加速されるときに周囲のガス分子に衝突して起きる、ガス増幅を利用している。

  • ET検出器
    ET detector,Everhart-Thornley detector

    Everhart と Thornley によって開発された二次電子検出器。高電圧が印加されたシンチレータに、二次電子を加速衝突させて光に変換し、光電子増倍管で再び電気信号に変える。シンチレータの前には補助電極(コレクタ)が置かれており、捕集効率が変えられるようになっている。現在のSEMで使われている二次電子検出器の基本形である。

    ET検出器

  • E×B検出器 (イークロスビー検出器)
    E×B detector,E cross B detector

    インレンズ形対物レンズあるいはシュノーケル形対物レンズと組み合わせて使われる二次電子検出器の一種。低加速電圧では、二次電子検出器の強い電界により電子プローブが偏向を受け、軸ずれを起こしやすいが、直交方向に磁界を掛けることでこの偏向を防ぐことができる。電界(E)と磁界(B)を直交させることからE×Bと呼ばれる。構造的には、エネルギーアナライザの一つであるWien フィルタと同じである。

  • FESEM
    field-emission SEM

    電界放出電子銃を搭載したSEMの略称。すなわち、汎用形FESEM、分析FESEM、超高分解能FESEMなどの総称。

  • LaB6陰極 (六ホウ化ランタン陰極)
    LaB6 cathode,lanthanum hexaboride cathode

    熱電子銃の陰極として六ホウ化ランタン(LaB6)を使用したもの。タングステンフィラメントに比べて高い輝度が得られるが、LaB6は活性が高いため、1桁程度高い真空が必要である。

  • Oリング
    O ring

    断面が円形をしたリング状のゴム製真空シール部品。部品同士の隙間を塞ぐ形で真空と大気の境界部に用いる。一方が可動部品の場合は、真空グリースを薄く塗布する。SEM用としては、フッ素ゴムのOリングが使われるが、それ自身からのガス放出があることやガスが透過するため、超高真空用としては使えない。

  • PC-SEM
    PC-controlled SEM

    パーソナルコンピュータで制御するSEM。1990年代後半に商品化されたが、現在は、市販されているSEMのほとんどがパーソナルコンピュータで制御されており、死語となりつつある。

  • SEMラマン装置
    SEM-Raman combined system

    ラマン分光装置をEDS付きのSEMに組み込むことで、SEMによる形態観察、EDSによる組成分析、ラマン分光による状態分析を可能にした複合システム。

  • TEM/SEM
    TEM with SEM function

    SEM機能を付加したTEMの略語。テムセムと読む。

  • TTL検出器
    TTL detector,through-the-lens detector

    インレンズ形対物レンズ、あるいはシュノーケル形対物レンズなどの、強励磁対物レンズと組み合わせて使う二次電子検出器。これらの強励磁対物レンズでは、従来の二次電子検出器のように、対物レンズ下方、試料側方に配置する方法では、試料から放出された二次電子は、対物レンズの漏洩磁界にトラップされてしまい、ほとんど検出されない。これを解決するために考えられた方法で、二次電子は対物レンズの磁界で拘束されたまま光軸に沿って上方に導かれ、検出器に入射する。検出のメカニズムから等方的な照明となり、立体感が少ない像となる。
    下図に示すのはシュノーケル形対物レンズと組み合わせた例である。

    TTL検出器

  • VP-SEM
    variable pressure SEM

    低真空SEMと同義語。試料環境の圧力が変えられることを前面に出した呼び方。

  • WEB-SEM

    インターネットSEMとほぼ同義語。webブラウザを介して操作できることから付けられた商品名。

  • XMA
    X-ray microanalyzer

    X線マイクロアナライザの略語。電子プローブマイクロアナライザと同義語であるが、最近では使われることが少なくなった用語である。

  • X線マイクロアナライザ
    X-ray microanalyzer,electron probe microanalyzer

    電子プローブマイクロアナライザと同義語。最近では使われることが少なくなった用語である。

  • YAG検出器
    YAG detector

    YAG結晶を使ったシンチレータ形の反射電子検出器。反射電子をYAG結晶で光に変換し、光電子増倍管で再び電気信号にする。半導体検出器に比べて応答が速く、速い走査速度で反射電子組成像が観察できる。

  • ZrO/Wエミッタ
    ZrO/W emitter

    ショットキー電子銃で使われるエミッタ。W<100>単結晶のエミッタ先端部を仕事関数の低いZrOで被覆してある。ZrO層は加熱によって蒸発するが、これを補うためにエミッタの根本の方にはジルコン溜めがあり、先端部にジルコンを供給する構造となっている。

    ZrO/Wエミッタ

  • アウトレンズ形対物レンズ (汎用形対物レンズ)
    out-lens objective lens,conventional objective lens

    汎用SEM、あるいはEPMA、SAMなどの分析装置で使われる対物レンズ。内側のヨーク部分にレンズギャップが設けられており、試料はポールピースの外側に置かれていることからこう呼ばれる。レンズと試料の間の距離が短くできないことから収差は小さくできないが、試料周辺の空間は大きく、試料傾斜などの自由度は大きい。

    アウトレンズ対物レンズ

  • アウトレンズ検出器
    out-lens detector

    アウトレンズ形対物レンズと組み合わされて使われる二次電子検出器。対物レンズと試料の間に配置されており、光軸に関して非対称な配置となるため、方向性を持った照明効果が得られる。通常はET検出器がそのまま使われており、作動距離が短くなると検出感度が低下する。

    アウトレンズ検出器

  • アクセスポート (ポート)
    access port

    種々の付属装置を取り付けるために、試料室に設けられた開口部。

  • アナログ走査
    analog scanning

    電子プローブの水平方向の走査を、一様な傾斜を持つアナログの走査信号波形で行う方式。従来のSEMで長い間使われてきたもので、電子プローブ位置の制御はやや不正確になるほか、走査速度を変えたときの位置ずれや歪みが起きやすい。取り込んだ画像を拡大したときは、単純なボケになるので、アーティファクトは少ない。垂直方向は、走査線が離散的になるため、実質的にデジタル走査となり、この方向にアーティファクトを生じる場合がある。なお、アナログ走査であっても、信号をデジタル的に取得することでデジタル画像にすることが可能である。

  • アニュラー半導体検出器
    annular semiconnductor detector

    アニュラー半導体検出器とは反射電子の検出を目的とした環状型の半導体検出器。
    応用例として、図に示すように、検出器の素子を内周から外周に向けてリング状に分割することによって、試料から放出した反射電子の検出角度を切り替えられるようにした構造の検出器も存在する。この場合、内周の素子を使うと組成情報が多く、外周の素子を使うと凹凸情報が多くなる。また、STEM検出器にも同様の構造のものがある。

    アニュラー半導体検出器

  • アニュラー半導体ペア検出器
    annular semiconductor pair detector

    アニュラー (環状の) 半導体検出器で、一般には対物レンズの下端に装着されて反射電子の検出に用いられる。
    入射電子は検出器中央の穴を通るように作られている。一般的に検出器は2分割もしくは4分割され、対向する素子の信号を加算・減算することで、組成像と凹凸像に分けることができる。
    図は、表面は平滑であるが組成の違いがある試料と、組成は均一であるが凹凸がある試料に対してアニュラー半導体ペア検出器を使って組成像と凹凸像を得る原理を示す。

    アニュラー半導体ペア検出器

  • 油回転ポンプ (回転ポンプ)
    oil rotary pump,rotary pump (RP)

    可動翼を付けた回転体を油の中で回し、気体をかき出すようにして圧縮排気するポンプ。可動翼とステータあるいは回転体とステータの隙間を油でシールしている。動作圧力範囲は10-1Pa~大気圧程度であり、大気からの粗引きや高真空用のポンプの補助用として用いる。

  • 油拡散ポンプ (拡散ポンプ)
    oil diffusion pump,diffusion pump (DP)

    金属円筒内に置かれたノズルから油蒸気を噴き出させ、そのエネルギーで気体分子を圧縮排気するポンプ。油を高温の蒸気にするためのヒーターと、金属円筒を冷却するための水が必要である。動作圧力範囲は10-5~10-1Pa程度であり、排気口側に油回転ポンプが繋がれている。

  • アライメントコイル
    alignment coil

    軸合わせを行うための偏向コイル。通常、直交する2組のコイルがセットになっており、2次元的な偏向によって軸合わせを行うことができる。

  • 粗引き
    rough pumping

    大気圧から高真空まで順次真空を上げていく排気システムにおいて、主排気ポンプによる高真空排気を行う前に、補助ポンプを使って大気圧から低真空の間を排気する操作。

  • イメージシフト (ファインシフト)
    image shift,fine shift

    微細な視野選択を行うための電磁的視野移動機構。通常は試料ステージを使って機械的に試料を移動し、観察視野を選択するが、機械的精度の関係で微細な視野移動は難しい。このようなときに、電子プローブを偏向して行うのがイメージシフトである。微細な調整は得意であるが、最大移動量は汎用形SEMでは数十µm、超高分解能SEMでは数µmである。

  • 陰極 (カソード)
    cathode

    電子銃の構成要素の一つ。陽極に対してマイナスの電圧が与えられていることからこう呼ばれる。電子の放出源であり、熱電子銃の場合は、その形状からフィラメントと呼ばれることが多く、電界放出電子銃あるいはショットキー電子銃の場合はエミッタと呼ばれることが多い。

  • 陰極レンズ
    cathode lens

    減速法の一つであるリターディング法では、試料ステージにマイナスの電圧を掛けるが、これにより試料と対物レンズの間に静電レンズが形成される。このレンズを陰極レンズと呼ぶ。元々は試料から放出される熱電子、光電子を結像するエミッション顕微鏡の初段レンズとして使われたもので、試料が陰極であったことから名前が付けられたものである。

  • インターネットSEM
    internet SEM

    PC-SEMのネットワーク機能を生かしてインターネットに接続し、遠隔操作を可能にしたSEM。画像を見ながらの操作になるので回線の速度が問題になる。

  • インターロック
    interlock

    連動して動作する安全機構。一般には、ある操作をしようとすると、安全のため、関連する部分の状態を確認して、その操作の実行を許可したり、禁止したりする機構を言う。例えば、鏡筒部が十分な高真空になっていないと、電子線が発生できない様な機構を言う。

  • インレンズFE電子銃
    in-lens FE electron gun

    集束レンズの磁場中にエミッタが位置するような電界放出電子銃。電界放出電子銃から放出される電子は大きな角度で分布するため、有効に利用するには、集束レンズを出来るだけ電子銃に近い位置に配置されるのが望ましい。実際には、シュノーケル形対物レンズを倒立させたような集束レンズを使うことで、レンズ磁場中にエミッタを置くような構造を取ることができる。

  • インレンズ形対物レンズ
    in-lens objective lens

    超高分解能SEMで使われる対物レンズの一種。TEMの対物レンズと同じような構造をしており、試料はポールピースの中に置かれていることから、このように呼ばれる。レンズ中に試料が置かれることで収差が小さくできるが、試料周辺の空間は小さく、取り扱える試料の大きさは数mm径である。試料は強磁界の中に置かれるので、バルク状の磁性材料の観察は難しい。二次電子の検出にはTTL検出器が用いられる。試料ステージもTEMとほぼ同様の構造を持っており、サイドエントリータイプのゴニオメータと試料ホルダの組み合わせとなっている。試料ステージが軽量であることから床振動の影響も比較的小さい。

    インレンズ対物レンズ

  • ウェーネルト電極 (ウェーネルト円筒)
    Wehnelt electrode,Wehnelt cylinder

    熱電子銃の構成要素の一つ。陰極と陽極の間に置かれた電極で、陰極に対してマイナスのバイアス電圧が与えられており、放出電子の量を制御するのに使われる。陰極、ウェーネルト電極、陽極の三つで作られるレンズ作用により、クロスオーバーを形成する役目もある。

    熱電子銃

  • ウォブラ (ワブラ)
    wobbler

    レンズの焦点距離を周期的に変動させる機能で、軸合わせを容易にするために使われる。目標物を視野の中心に置いてウォブラを動作させたとき、軸が合っていると、像がぼけるだけで、目標物は等方的な動きをする(下図 左)が、軸がずれていると、方向性を持った動きとなる(下図 右)。これを利用して正確な軸合わせをすることが可能である。

    ウォブラ1ウォブラ2

  • エアロック試料交換
    airlock specimen exchange

    試料交換を行うとき、エアロック機構を通して試料交換を行う方法。すなわち、一旦試料を試料交換室に入れて予備排気を行い、ある程度の真空にした後、仕切り弁を開けて試料室に導入する。試料室を大気にすることなく試料交換ができるので、短時間で交換作業ができるだけでなく、試料室に多量の空気を持ち込まずに済むため、良い環境で安定して試料を観察することができる。エアロック機構を用いるため導入できる試料寸法が制限されることがあるが、FESEMでは一般にこの方法が用いられる。

  • 液体金属イオン源
    liquid-metal ion source (LMIS)

    集束イオンビーム装置のイオン源。液体金属のガリウムをタングステンの針先にコーティングしたエミッタを陽極として、引出電極にマイナスの高電圧を掛け、ガリウムイオンビームを放出させる。寿命は1000時間程度である。

    LMIS

  • 液体窒素バッフル
    liquid-nitrogen baffle

    油拡散ポンプの真上に置いた、液体窒素で冷却された邪魔板。油拡散ポンプからの油分子の逆拡散を防止するのが目的であるが、通常使われている水冷バッフルより高い効果が得られる。

  • エネルギーフィルタ
    energy filter

    特定のエネルギーを持った二次電子あるいは反射電子のみを透過させたり、遮断するための、複数の電極で構成されたフィルタ。市販のSEMでは、TTL検出器と組み合わせることで二次電子のエネルギー選別を行い、帯電の影響を軽減したり、組成の情報を引き出す目的に使われることがある。

  • エミッション電流
    emission current

    電子銃から放出される電子電流。この電流のごく一部が対物レンズ絞りを通過してプローブ電流となる。

  • エミッションノイズ (チップノイズ)
    emission noise,chip noise

    電子銃から放出される電子電流量の変動によって、画像に生じる明るさの変動。ゆっくりした走査速度だと、スジ状あるいは帯状の明るさ変化として現れる。電界放出電子銃では、エミッタの電子放出領域が小さいこと、吸着ガス分子の影響を受けやすいことなどから、エミッションノイズが大きく、これを補償するノイズキャンセラと呼ばれるシステムが必要であるが、熱電子銃やショットキー電子銃では無視できる。

  • エミッタ
    emitter

    電子の放出源すなわち陰極。一般に、電界放出電子銃あるいはショットキー電子銃の陰極に対して使われることが多い。なお、集束イオンビーム装置の場合は、イオンの放出源がエミッタであり、陽極となる。

  • 遠隔操作SEM
    remote-controlled SEM

    LANあるいはインターネットなどのネットワークを介して、遠隔操作ができるようにしたSEM。ネットワークを介して転送された画像を観察しながら操作することになるため、通信速度が操作性の決め手になる。

  • 親指サイズSEM
    finger-sized SEM

    三好らが開発中の超小形SEM。鏡筒としては、セラミックスの円筒の中にショットキー電子銃と静電形対物レンズ、偏向器などの光学系部品を収め、長さ50mm、直径20mm程度の大きさにしている。加速電圧は1kV程度である。

  • オリフィス
    orifice

    差動排気を行うときに、圧力差を作るための絞り。圧力差を持った室を接続すると、差圧に応じたガス分子の流れが生じるが、間にオリフィスを置くと、流れに対する抵抗となって働くため、圧力差を保つことができる。例えば、低真空SEMでは、電子光学系と試料室間にオリフィスを置くことで、4~5桁程度の圧力差を作っている。

  • オートフォーカス (自動焦点合わせ)
    automatic focusing

    自動的に焦点を合わせる機能。カメラのオートフォーカスと同様に、画像信号の鮮鋭度を検出するコントラスト検出方式が使われている。

  • 界浸レンズ
    immersion lens

    静電レンズの内、レンズの両側の電位すなわち屈折率が異なるレンズ。光学レンズの油浸レンズに対応させて名付けられたものである。電子銃は一種の界浸レンズであるが、減速法で対物レンズ下部に減速電極を置いたものを界浸レンズと呼ぶことがある。

  • 仮想光源 (虚光源)
    virtual source

    電界放出電子銃のエミッタ先端の曲率半径は100~200nm程度であるが、この表面から放出された電子は、エミッタ内部の直径5~10nmの光源から放出されたような軌道をとる。この見かけ上の光源を仮想光源と言う。仮想光源は、事実上の電子源として考えることができるが、電界放出電子銃の輝度が高いのは、この電子源が極めて小さいことが大きな理由であり、明るい像が得られる理由でもある。ショットキー電子銃の場合、仮想光源は若干大きくなる。

    仮想光源

  • 加速電圧
    accelerating voltage,acceleration energy,high tension

    電子銃の陰極と陽極の間に掛けられた電圧。現在使われているSEMでは、この電圧は数百V~30kVであり、陰極から放出された電子は、この電圧で加速されて電子銃から放出される。したがって、試料に入射する電子が持つエネルギーの意味でも使用される。ただし、減速法の場合は加速電圧と試料に入射する電子のエネルギー(入射電圧)とは異なる値となる。

  • 加速電極
    accelerating electrode

    電子銃から放出される電子線に所定のエネルギーを与えるための電極。熱電子銃の場合は陽極が加速電極を意味するが、FE電子銃の場合は、電界放出をさせるための引出電極と加速電極の二つの陽極がある。

  • カソードルミネッセンス分光器
    cathodoluminescence spectrometer

    カソードルミネッセンスの波長を分光するための分光器。回折格子による光の回折現象を利用して分光する。

  • 可動絞り
    movable aperture,variable aperture

    真空外から孔径の切替、位置調整が可能な絞り。SEMの場合、このような機能が必要な絞りは、対物レンズ絞りだけであるから、可動絞りと言うと一般に対物レンズ絞りを意味する。

  • 加熱形FE電子銃
    thermal type field-emission electron gun,thermal type FE electron gun

    ショットキー電子銃の別名と考えてよいが、多少曖昧な表現である。

  • 可般形SEM
    portable SEM

    通常使われているSEMは寸法・重量が大きく、機械的に安定な設置が必要なことから、移動はできない。これに対して、ある程度性能や機能を限定して小形化し、キャスターを付けるといったことで、簡単に移動できるSEMを言う。

  • 下部磁極片
    lower pole piece

    対物レンズの外側ヨークにつながるポールピース。アウトレンズ形対物レンズの場合、試料室に露出しているのは下部磁極片であり、この頂角と外径は試料の傾斜範囲に大きな影響を与える。なお、先端部と試料の間の距離が作動距離となる。

    下部磁極片

  • 下方検出器
    lower detector

    シュノーケル形対物レンズで使われる検出器の一種。二次電子の検出に使われるTTL形検出器が上方検出器と呼ばれるのに対して、対物レンズ下方の空間に置かれていることから、下方検出器と呼ばれる。下方検出器は、主として、低角度で試料から放出された反射電子を検出するが、作動距離が長いときや、対物レンズがオフとなる低倍率モードでは、二次電子も検出する。低角度の反射電子が信号となることから、照明効果が強く、凹凸感が強く現れるのが特徴である。
    下図に、上方検出器および下方検出器の配置を示す。上方検出器はエネルギーの小さな二次電子(緑色)を検出し、下方検出器は反射電子(赤色)を検出する。

    下方検出器

  • カラー蛍光SEM
    color fluorescence SEM

    小池らによって開発されたもので、試料から放出されるカソードルミネッセンスを波長領域で分け、カラー画像として表示するSEM。実際には、検出したカソードルミネッセンスを、ダイクロイックミラー(三原色のフィルタ)を通してR、G、Bのカラー信号に分離し、画像上で再合成するシステムとなっている。

  • カラーSEM
    natural color SEM

    光学顕微鏡で撮影した画像と、同一視野、同一倍率のSEM像を重ねて表示するようにしたSEM。SEM像に欠如する色情報を光学顕微鏡によるカラー画像で補い、光学顕微鏡の解像力の不足をSEMの解像力である程度補うことが可能となっている。

  • 環境制御形SEM
    environmental scanning electron microscope (ESEM)

    低真空SEMの一種。一般の低真空SEMと違って、試料室の圧力が数千Paまで高められるようにしてある。蒸気圧の低い物質では室温で液滴が観察された例もある。圧力が高いので、二次電子の検出にはガス増幅を利用した検出器(ESD)が使われる。

  • 観察用CRT
    CRT for observation

    SEM像を観察するのに用いられるCRT。SEM像を写真フィルムに記録するタイプのSEMでは、観察用と撮影用の2種類のCRTを備えているのが普通である。観察用のCRTとしては残光性のものが使われており、焦点合わせなどの遅い走査速度で行う調整や観察にも都合の良い特性が備えられている。なお、SEM像をデジタル画像データとして扱う最近のSEMでは、画像メモリーに記憶されたデータを表示しているため、残光性の必要は無くなっており、観察用CRTという表現も無くなっている。

  • ガス増幅
    gas amplification

    ある圧力に保たれたガス雰囲気に電界が掛かると、電子が電界で加速されるときにガス分子と衝突して、ガス分子を電離させる。この現象が次々起きると電子雪崩によって増幅作用が生じ、これをガス増幅と言う。X線の検出に用いられるガスフロー計数管はこれを利用したものであるが、低真空SEMの検出器でもこの考え方を利用したものがある。

  • ガンマ補正
    gamma correction

    画像信号の増幅器では、入力信号と出力信号は直線関係にある。これを曲線にすることで画像の明るい部分を抑えながら暗い部分を増幅したり、暗い部分を抑えながら明るい部分を増幅することができる。これをガンマ補正と言う。従来は非線形な特性をもった増幅器を使っていたが、最近では画像処理でこのような処理を行うのが普通である。

  • 輝度変調
    brightness modulation

    SEM像の表示方法の一つ。通常の画像表示法として使われているもので、検出された信号量に応じて表示画像の明るさを変える方法を言う。

  • 鏡筒
    optical column,column

    電子プローブの形成と走査を行う部分。電子銃、レンズ系、走査コイルなどから構成されており、電子光学系と同じ意味であるが、鏡筒と言うと機械的な構造物を意味する場合が多い。

  • 強励磁
    strong excitation

    磁界レンズのコイルに流す電流を多くすることで光軸上の磁界を強くし、レンズ作用を強くすること。これによりレンズの焦点距離は短くなる。

  • 強励磁対物レンズ
    strongly excited objective lens

    インレンズ形対物レンズあるいはシュノーケル形対物レンズのように光軸上の磁界分布を急峻にし、且つ磁界強度も高くした対物レンズ。焦点距離が短く、収差が小さいのが特徴で、超高分解能SEMに使われている。

  • クライオステージ
    cryo stage

    含水試料を凍結観察するための試料ステージ。観察用の試料冷却ステージのほか、試料を凍結状態で割断し、エッチングするための試料ステージおよびコーティング機構を予備処理室に備えている。

  • クライオSEM
    cryo-SEM

    含水試料を凍結割断し、凍結観察を行うためのSEM。実際には専用装置はなく、クライオステージを取り付けたSEMを言う。

  • クロスオーバー
    crossover

    電子源から放出された電子線が、レンズを通って集束し実像を作ったとき、これをクロスオーバーと言う。電子の軌道が交差することから名付けられたものである。熱電子銃の三つの電極で作られるクロスオーバーは、15~20µmの直径で最小の断面を持ち、電子光学系の実質的な光源である。

    熱電子銃

  • クールステージ
    cool stage

    ペルチェ素子を使って250K程度まで冷却できるようにした試料ステージ。低真空SEMに組み込むことで、含水試料の水分の蒸発をある程度抑えて観察することができる。

  • 欠陥レビューSEM (ディフェクトレビューSEM,レビューSEM,ウェハー検査SEM)
    defect review SEM,review SEM,wafer inspection SEM

    半導体製造ラインなどで生じた各種欠陥のレビューや分類を行うSEM。光学式の欠陥検査装置とリンクすることで、ウエハ表面の欠陥を効率よく自動的に検出し、微小欠陥、異物の形状をより詳しく観察したり、成分を分析することができる。SEM像、欠陥の分類データ、元素分析データなどを自動的に出力する機能を持つ。

  • 減速法
    deceleration optics

    低加速電圧で高解像力を得る、あるいは、FESEMで数百V以下のSEM像を得る場合に使われる方法。比較的高加速電圧の電子線を対物レンズ付近で減速し、所定の入射電圧を得るものである。下図左のように対物レンズと試料の間に減速電極を置き減速電界を作る方法と、右のように試料ステージに減速電圧を掛け減速電界を作る方法がある。いずれの方法でも、加速電圧と減速電圧の差が電子の試料に対する入射電圧となる。

    減速法

  • 光軸
    optical axis

    レンズの中心となる軸。ポールピースや電極の材質、工作精度、使用中に起きた鏡筒内の汚れなどのため、機械的な軸と異なる。光軸に斜めに入射する電子線、光軸から離れて入射する電子線はなんらかの収差を受ける。

  • 光電子増倍管 (フォトマル)
    photo-multiplier tube (PMT)

    二次電子検出器の構成要素の一つ。シンチレータでの微弱な発光を検出し電気信号として出力する機能を持つ。光電子増倍管そのものは、光電面と電子増幅部から構成され、入射した光によって光電面から放出された光電子が、電子増幅部で二次電子増幅され、電気信号として出力される。

  • 固定絞り
    fixed aperture

    レンズ系の絞りの内、可動式ではなく固定されているものの名称。一般に孔径が大きく、分解能に関する限り重要度は若干低い。

  • コレクタ
    collector

    二次電子検出器の電極の一つ。シンチレータの前に置かれており、±数百Vの電圧を印加することで、二次電子の検出効率を変えることができる。SEM像の明るさが変わるだけでなく、検出される二次電子と反射電子の割合が変わり照明効果の度合いが変わるので、像の凹凸感も変わる。プローブ電流を非常に大きくしたときは、マイナスの電圧を掛けることで、シンチレータに入射する電子を減らし、シンチレータを保護する役目も持っている。

    コレクタ

  • 5軸ステージ
    5-axis stage

    水平移動(X、Y)、上下移動(Z)、傾斜(T)、回転(R)の五つの動作を行うことができる試料ステージ。ほとんどのSEMの試料ステージはこの構造を採用している。

  • ゴニオメータ
    goniometer

    試料を傾斜する機構。傾斜機構を備えた試料ステージそのものを言うこともある。

  • 撮影用CRT
    CRT for photographing

    SEM像を記録するのに用いるCRT。SEM像を写真フィルムに記録するタイプのSEMでは、観察用と撮影用の2種類のCRTを備えているのが普通である。撮影用のCRTとしては非残光性で解像力の高いものが使われる。

  • 作動距離 (ワーキングディスタンス)
    working distance (WD)

    対物レンズ下面と試料の距離。作動距離が短くなるとレンズの収差が小さくなって解像力が高くなるが、焦点深度は浅くなる。また、空間が小さくなるので試料の傾斜といった操作が難しくなる。

    作動距離

  • 差動排気
    differential pumping

    低真空SEMのように、電子光学系と試料室に大きな圧力差があるときには、間にオリフィスを入れて別々な排気系で排気することで、圧力差を保って使用することができる。これを差動排気と言う。

  • サプレッサ
    suppressor

    ショットキー電子銃のエミッタと引出電極の間に置かれた電極。エミッタに対してマイナスの電位が与えられており、エミッタから放出される熱電子が電子線に混入しないように抑制する作用を持つ。

  • 三次元計測SEM
    three dimensional SEM (3D-SEM)

    SEMは凹凸のある試料を観察することが多いが、焦点深度が深いため一枚のSEM像から高さを知ることは、不可能といって良い。これに対して、複数の検出器を置き、その出力を演算することで高さを測定できるSEMがある。これを3次元計測SEMと言い、試料表面の3次元的な表示をしたり、表面の粗さを統計的に求める機能を備えている。

  • 仕切り弁 (エアロック弁,ゲート弁)
    airlock valve,gate valve,isolation valve

    二つの部屋の真空隔壁として用いられる真空弁。電子光学系と試料室、電子銃室とレンズ系、試料室と試料交換室のように、一方を真空に保ったままもう一方を大気圧にする必要がある場合に、用いられる。手動で開閉するものと真空動作に伴って自動的に開閉するものがある。

  • 絞り
    aperture

    レンズの収差を小さくする目的で、近軸電子線のみが通過できるように、金属の薄板に円形の開口部を設けたもの。収差を小さくするために孔径を小さくするとプローブ電流は減少する。真空外から動かすことができる可動絞りと、動かすことのできない固定絞りがある。

  • 集光ミラー
    focusing mirror

    カソードルミネッセンスを検出するとき、集光効率を上げるために使う鏡。電子プローブが通過する開口を持った、放物面鏡あるいは楕円面鏡を試料上に置き、焦点に電子プローブの照射点が来るように配置する。

    集光ミラー

  • 収差補正
    aberration correction

    レンズの組み合わせにより、収差を補正し、理想的なレンズに近づけること。回転対称な磁界レンズでは凸レンズしか出来ないため単純なレンズの組み合わせでは収差補正を行うことができず、四極子レンズあるいは八極子レンズといった非回転対称な特殊レンズの組み合わせで行う。商品化されているものは数少ないが、球面収差および色収差の補正が行われている。

  • 集束レンズ (コンデンサレンズ)
    condenser lens (CL)

    電子銃と対物レンズの間に置かれたレンズ。電子プローブ径とプローブ電流の制御に用いられる。下図に示したように、励磁を変えると、電子源の像の大きさが変わると同時に対物絞りでカットされる電子の量も変わる。この結果、電子プローブ径とプローブ電流を変化させることができる。熱電子銃およびショットキー電子銃の場合は、広範囲のプローブ電流の制御を行うため、一般に2段集束レンズ系が使われる。熱電子銃の場合はクロスオーバーを1/1000程度に縮小する必要があるため、縮小率が大きいが、ショットキー電子銃の場合は電子源が元々小さいため縮小率は小さい。一方、FE電子銃の場合は主としてプローブ電流の制御に用いられるが、プローブ電流の可変範囲が小さいため一般に1段の集束レンズが使われる。

    集束レンズ

  • シュノーケル形対物レンズ
    snorkel objective lens

    超高分解能SEM用の対物レンズの一種。ヨークの開口部を、光軸に沿った部分ではなく試料側に作ると、対物レンズ下部の空間にレンズ磁界を作ることができる。その中に試料を置くようにすると、対物レンズの収差を小さくすることができるが、インレンズ形対物レンズと違って、大きな試料を扱うことができる。作動距離を短くすれば高解像力が得られ、作動距離を長くすれば、試料の大角度傾斜が可能である。セミインレンズ形対物レンズとも呼ばれるが、二次電子の検出にはTTL検出器が用いられる。なお語源は、最初に作られたレンズが、平面状の外側ヨークに対して、内側ヨークがダイビングで使われるシュノーケルのように突き出していたことによる。内側ヨークの上部空間に試料を置くというのが、元々のアイディアであり、現在のものは上下が逆転している。

    シュノーケル形対物レンズ

  • 照射電流
    illumination current,incident beam current,probe current

    試料に照射されるプローブ電流。

  • 焦点合わせ
    focusing

    電子プローブを試料表面に集束すること。通常対物レンズの励磁を変えることで行うが、ラフな焦点合わせであれば、試料ステージを使って、試料を上下することで行うことも可能である。

  • ショットキー電子銃 (SE電子銃)
    Schottky-emission electron gun,SE electron gun

    ショットキー放出を利用した電子銃。陰極としてはZrO/Wエミッタが使われる。熱電子銃と比べて輝度が高く、電子源も小さい。電界放出電子銃と比較すると、陰極が1800Kという高温度に加熱されているため、電流安定度が高いこと、大きなプローブ電流が得られること、動作圧力が若干高くても良いこと、などの優位性を持つ。これらのことから、高分解能観察と分析機能を両立させたいときに用いられる。低加速電圧観察では、電界放出電子銃がやや優れているが、これは、放出電子のエネルギー幅が関係している。加熱形FE電子銃と呼ばれることもある。
    下図にショットキー電子銃の構造を示す。引出電極に印加された引出電圧によって所定の電流の電子を放出させ、加速電極に印加された加速電圧によって所定のエネルギーの電子線を得るものである。サプレッサはエミッタから放出される熱電子を抑制するための電極である。

    SE電子銃

  • 試料汚染防止装置 (液体窒素トラップ,コールドトラップ,冷却トラップ)
    anti-contamination device,liquid-nitrogen trap,cold trap

    観察や分析時の試料汚染を減少させるための装置。試料近傍に置かれた金属板を液体窒素で冷却すると、周囲にある炭化水素系ガス分子を吸着し、試料汚染を減少させることができる。金属板は、なるべく試料を包み込むような構造が望ましいが、SEMの場合、比較的大きな試料を自由に扱うことを優先させるため、平板状の構造となってしまい、効果が若干低下する。デュワーの液体窒素が蒸発し、金属板の温度が上がると試料汚染が急激に増加するので、一定の時間間隔で液体窒素を補給することが重要である。

  • 試料加熱ステージ
    specimen heating stage,heating stage,hot stage

    試料を高温に加熱したときの形態変化を観察するための試料ステージ。試料温度を上げると熱電子が放出され像コントラストを落とすが、熱電子は二次電子よりエネルギーが小さいため、試料上方にグリッドを置いてマイナスの電圧を掛け、熱電子を追い返すような構造となっている。さらに高温度にした場合は、光に対する対策も必要となる。実際に使用する際は、加熱時の試料のドリフトに注意する必要がある。

    試料加熱装置

  • 試料交換室
    specimen-exchange chamber,airlock chamber

    試料交換をするとき、試料室を大気圧にすることなく試料を出し入れするために設けられて空間。試料室側、大気圧側に仕切り弁があり、試料交換室は予備排気できるようになっている。

  • 試料交換棒
    specimen exchanging rod

    試料交換の時、試料を出し入れするときに使う棒。試料ホルダが先端に取り付けられるようになっている。

  • 試料室
    specimen chamber

    観察対象の試料を置くための空間。鏡筒、試料ステージ、試料交換室、検出器などが取り付けられている他、EDSなどの付属装置を取り付けるための予備ポートが設けられている。試料移動のために広い空間が必要であり、鏡筒を安定に支えるためにも、肉厚の壁で強固に作られている。

  • 試料ステージ
    specimen stage

    試料の安定な支持と、試料の水平移動、上下移動、回転、傾斜などの動作がスムーズに行えるようにしたユニット。傾斜機構を持っていることからゴニオメータあるいはゴニオメータステージと呼ばれることもある。試料の支持機構と移動機能のみを持っているので、試料に外力を加えたり、温度変化を与える場合、通常は試料ステージ全体を交換する。

    試料ステージ

  • 試料台
    specimen stub,specimen mount

    試料を安定に保持するために用いられる金属あるいはカーボンの台。比較的小さな試料や粉体状の試料は試料ホルダに直接取り付けるのが難しいため、試料を一旦試料台に固定した後、試料ホルダに取り付ける。

  • 試料ドリフト
    specimen drift

    温度変化などによって、観察中の試料がゆっくり動くこと。試料の取り付け方が悪い場合には、かなり大きな試料ドリフトを起こすので載物には注意が必要である。なお、非導電性試料を観察した場合は、試料の帯電によって像のドリフトを起こすことがある。

  • 試料引張ステージ
    specimen tensile stage

    引っ張り応力を加えたときの、試料の変形を観察するための試料ステージ。

  • 試料ホルダ
    specimen holder

    試料台を機械的に保持して、試料ステージに装着するための部品。試料の形状、大きさによっては試料を直接保持する機構を持っているものもある。

  • 試料冷却ステージ
    specimen cooling stage,cooling stage,cold stage

    低温下での試料の表面形態を観察するための試料ステージ。試料損傷を抑制したり、カソードルミネッセンス分析でエネルギー分解能を上げるといったことにも使われる。液体窒素で冷却するもの、液体ヘリウムで冷却するもの、ペルチェ素子を使って冷却するものなどがある。試料ステージの温度は、液体窒素では80K程度、液体ヘリウムを使った場合は5~15Kまで冷却することができるが、ペルチェ冷却では250K程度が限界である。試料を冷却すると、試料表面に霜が付いたり、試料汚染が起こる可能性があるので、試料汚染防止装置を併用するのが望ましい。

  • 真空グリース
    vacuum grease

    真空中あるいは真空と大気の間にある部品の摺動部の潤滑に用いるグリース。Oリングと他の部品の摺動部に塗布するが、Oリングが単純に部品同士の隙間を塞ぐように使われているところには使わない。目的に応じて多くの種類があるが、装置に付属したあるいは指定されたグリースを使う必要がある。

  • 真空計
    vacuum gauge

    真空圧力を測定するための計器。自動排気のシーケンスを制御する場合にはピラニ真空計やペニング真空計が用いられるが、スパッタイオンポンプは超高真空用の真空計としても使えるので、電子銃部の真空モニターあるいは高電圧印加のインターロック用として用いられる。

  • 真空排気系
    evacuation system

    鏡筒、試料室などを真空排気するための真空ポンプシステム。低真空用ポンプ、高真空用ポンプ、真空計、制御回路などで構成され、起動後、粗引き、本引きまで自動的に動作する。また、真空弁の誤作動などに対応したインターロック機構が設けられている。なお、FESEMでは、電子銃室用として独立したスパッタイオンポンプが用いられており、連続運転されている。

  • 真空ポンプ
    vacuum pump

    電子光学系、試料室などを真空排気するためのポンプ。低真空用としては油回転ポンプ、高真空用としては油拡散ポンプやターボ分子ポンプ、超高真空用としてはスパッタイオンポンプなどが用いられる。

  • シンチレータ
    scintillator

    二次電子あるいは反射電子を検出するために検出器先端に取り付けられた発光体で、電子を光に変換する機能を持つ。YAG結晶のようにそれ自身が発光するものやガラス基板に発光物質を塗布したものがある二次電子を検出する場合は、二次電子の収集と発光エネルギーを二次電子に与えるために、10kV程度の高電圧が印加されているが、表面には帯電を防ぐために薄い金属コーティングが施されている。

  • ジェントルビームモード
    Gentle Beam mode

    減速法に対して名付けられた名前で、略称はGBモード。数百V以下の極低加速電圧で観察ができるので、試料にやさしいという意味で付けられたもの。

  • 磁界レンズ
    magnetic lens

    回転対称な磁界の電子線に対する集束作用を利用したレンズ。コイルに直流の電流を流して作られた磁力線を、透磁率の高い材料で出来た枠(磁路、ヨーク)に閉じこめ、枠の一部に切り欠きを作ることで、磁力線を空間に漏洩させ、回転対称な磁界を作る。切り欠き部分はポールピースと呼ばれる。SEMで使われているレンズのほとんどがこのタイプである。磁界中で電子はらせん運動をするので、レンズの励磁を変えると像は回転するが、この現象は対物レンズで焦点合わせをするようなときに観察されることがある。

    磁界レンズ

  • 軸合わせ (光軸合わせ,アライメント)
    optical-axis alignment,axis alignment,alignment

    レンズの光軸に一致するように電子線を入射させる操作。SEMでは一般に、電子銃から放出された電子線を集束レンズの光軸に一致させる操作と、集束レンズから出射された電子線を対物レンズの光軸に一致させる操作を行う。前者は明るい像を得るためであり、後者は高い解像力を得るためである。

  • 自動コントラスト輝度調整 (オートコントラストブライトネス)
    automatic contrast-brightness control

    SEM像の明るさ、コントラストを適正なレベルに自動的に調整する機能。

  • 自動軸調整
    automatic axis alignment

    電子光学系の光学軸を自動的に調整する機能。現在市販の装置で実用化されているのは、電子銃の軸合わせを自動的に行って、最大輝度が得られるようにする機能である。

  • 自動非点補正 (オートスティグマ)
    automatic astigmatism correction

    非点補正を自動的に行う機能。実際には、直交する2方向に電子プローブを走査したときの画像信号の鮮鋭度を検出し、コントラストが最大になるように非点補正装置を動作させる。

  • 弱励磁
    weak excitation

    磁界レンズのコイルに流す電流を減らすことでレンズ磁界を弱くし、レンズ作用を弱くすること。これによりレンズの焦点距離は長くなる。

  • 蒸着金粒子
    evaporated gold particle

    解像力など、装置の状態を確認するために使われる、カーボン基板の上に金を厚く蒸着した試料。一般には、鏡面研磨したカーボン基板を高温に加熱しながら金を蒸着して作る。安定なこと、コントラストが良いことなどの理由で都合がよい。磁気テープの上に金を蒸着する場合もある。下図は、蒸着金粒子の二次電子像であるが、二次電子放出量の違いのためにカーボン基板は暗く、金粒子は明るく観察される。

    蒸着金粒子

  • 上方検出器
    upper detector

    シュノーケル形対物レンズで使われるTTL検出器の別名。この対物レンズでは、レンズ下方空間にも検出器が置かれていることが多く、これが下方検出器と呼ばれることに対して、TTL検出器は対物レンズの上方に置かれていることから、命名されたものである。

    上方検出器

  • スキャンローテーション (ラスターローテーション)
    scan rotation,raster rotation

    電子プローブの走査方向を変えることで、SEM像を画面上で回転させる機能。試料ステージの回転とは異なり、画面の中心に対して回転をするので視野ズレは起きない。また、試料の回転を行った場合と違って、試料に対する観察方向、検出器の照明方向は変わらない。

  • スケールマーカー (ミクロンマーカー)
    scale marker,micron marker

    SEM像の中に表示される長さの基準スケール。目的物の大きさを測定するため、あるいはSEM像の倍率を計算するために用いられる。

  • ストロボSEM
    stroboscopic SEM

    試料上で起きる周期現象を観察するため、その周期に合わせてパルス状の電子プローブを間欠的に照射したり、信号の取り込みを間欠的に行う機能を持つSEM。電位コントラストと組み合わせてデバイスの動作を観察するのに多く用いられる。

  • スパッタイオンポンプ (イオンポンプ)
    sputter ion pump,ion pump (SIP)

    チタンのゲッター作用を利用した真空ポンプ。チタン板を陰極として放電を起こすと、イオンスパッタにより常に新しい活性面が露出されると同時に、周囲にもチタンがスパッタされる。これらによる吸着作用を利用して排気する。また、不活性ガスもイオン化されて陰極に捕集されるので、排気できるのが特長である。動作圧力は10-9~10-3Pa程度であるが、放電電流から圧力を知ることができる。安定な放電を持続するため電極は強い磁界中に置かれている。

  • スピン偏極SEM (スピンSEM)
    spin-polarized SEM,spin SEM

    磁性体試料の場合、二次電子はスピン磁気モーメントの情報を持って放出される。これを検出することで磁化情報をSEM像とするのがスピン偏極SEMである。情報深さは1nm程度と極めて浅いため、試料表面は清浄にする必要があり、超高真空の試料室が使われる。検出効率が極めて低いため画像を作るには長時間が必要であるが、ほかの磁区観察法に比べて高い解像力が得られる。

  • スポットサイズ
    spot size

    試料上に照射された電子プローブの直径。

  • ズームコンデンサレンズ
    zoom-condenser lens system

    集束レンズの励磁を変えると、試料に照射される電流(プローブ電流)を変えることができるが、同時に焦点がずれる。集束レンズを2段構成にして、第1集束レンズによる焦点ズレを第2集束レンズで補正すれば、焦点ズレを最小限に抑えることができる。これをズームコンデンサレンズと呼ぶ。

  • 静電界磁界複合レンズ
    magnetic/electrostatic compound objective lens

    磁界レンズと静電レンズが同じ空間に作られたレンズ。減速法では対物レンズの磁界と減速電界が重畳された複合レンズとなっており、収差が小さく抑えられている。

  • 静電レンズ
    electrostatic lens

    回転対称な静電界の電子線に対する集束作用を利用したレンズ。高エネルギーの電子に対して焦点距離の短いレンズを作るのは難しいが、磁界レンズと違ってヒステリシスが無いため焦点距離の制御が正確にできる特長を持っている。各種電子銃の電極は静電レンズを形成しており、電極間に印加される電圧によって、クロスオーバーの形成、仮想光源の移動といった現象が起きる。また、減速法では対物レンズ付近に静電レンズができる。なお、集束イオンビーム装置の光学系ではイオンに対するレンズ作用が強い静電レンズが使われている。

    静電レンズ

  • セミインレンズ形対物レンズ
    semi-in-lens objective lens

    シュノーケル形対物レンズの別名。アウトレンズ形対物レンズとインレンズ形対物レンズの中間的な存在という意味から付けられた名称である。

  • 走査オージェ顕微鏡
    scanning Auger microscope (SAM)

    電子プローブを使って微小領域のオージェ電子分光を行う装置。SEMの機能とオージェ分光装置の機能を備えている。ショットキー電子銃を搭載した装置では、横方向10nm程度、深さ方向数nmと極めて小さい分析領域が得られる。

  • 走査形LEEM
    scanning low-energy electron microscope,scanning LEEM (SLEEM)

    数百eV以下の低エネルギーの電子プローブで結晶性試料を走査し、表面で弾性散乱した電子を検出して、像を作るSEM。形像に寄与するコントラストは回折コントラストである。減速法による陰極レンズが使われる一方、表面現象を扱うため試料は超高真空中に置かれる。

  • 操作系
    operation system

    観察条件の設定、倍率変化、焦点合わせ、明るさ、コントラストなどの画像調整、画像の記録などの操作を行う部分。関連した電源も含めて言う。

  • 走査コイル
    scanning coil

    電子プローブの走査を行うための一種の偏向コイル。通常の偏向コイルに比べて周波数応答が速くなければならないので、構造が工夫されている。

  • 走査線
    scanning line

    電子プローブの走査によって描かれた一本の線。

  • 走査線数
    number of scanning line

    ある領域内に描かれた走査線の数。通常のSEM像の場合は一画面は1000本程度の走査線で作られる。ある時間内に描かれた走査線の数を言う場合もある。

  • 走査電子顕微鏡
    scanning electron microscope (SEM)

    細い電子プローブで試料表面を走査したとき、電子プローブの照射点から放出される種々の電子、電磁波を検出して画像化する装置。電子プローブを作り走査する電子光学系、信号を検出する検出器、試料を保持する試料ステージ、画像を表示・記録するためのモニター・記録系、種々の操作をするための操作系、鏡筒や試料室を真空にするための真空排気系などから構成される。

    走査電子顕微鏡

  • 走査透過電子顕微鏡
    scanning transmission electron microscope (STEM)

    薄膜試料を透過した電子を検出して、走査像を得る装置。散乱吸収コントラスト、回折コントラスト、位相コントラストなどTEMで得られるコントラストは全て得られるが、位相コントラストを得るのは検出角の関係で難しい。

  • 走査反射電子顕微鏡 (走査電子回折顕微鏡)
    scanning reflection electron microscope,scanning electron diffraction microscope (SREM)

    試料表面での結晶成長を観察するためのSEM。結晶性試料の表面に浅い角度で電子プローブを入射させたときに起きる電子回折の特定の反射の強度を、像信号として利用する。電子回折パターンを観察するための蛍光スクリーンと特定の回折スポットを選択するための絞り(あるいは検出器)などが必要である。また、結晶成長をさせるための蒸着源が備えられている。像は回折コントラストで形成されるが、表面現象を扱うため超高真空の試料室が必要である。EBSDでは結晶方位分布が得られるのに対して、SREMでは局部的な回折条件の変化や単原子ステップなど単原子レベルの表面の微細構造を観察することができる。

    走査反射電子顕微鏡

  • 測長SEM
    critical dimension SEM (CD-SEM)

    SEMの持つ、観察、分析、測長などの機能の内、測長機能に特化して作り上げられた装置。とくに半導体の製造ラインでプロセスの寸法管理に用いられ、数百nm幅のパターン幅の自動測定を行う。非導電性試料を扱うことになるので1kV以下の低加速電圧が使われるが、これにより試料の損傷も防いでいる。パターンのエッジを自動的に検出して測定を行うが、測定精度を上げるために、標準マイクロスケールといった倍率標準試料を用いて較正を行う。

  • 対物レンズ
    objective lens (OL)

    試料の直前に置かれた最終段の電子プローブ形成レンズ。このレンズの収差が電子プローブ径すなわち解像力を決めるので、非常に重要なレンズである。操作上では焦点合わせに使われる。目的に合わせてアウトレンズ形、シュノーケル形、インレンズ形の三種類のレンズが用いられる。下図に示すのは最も多く使われているアウトレンズ形対物レンズである。

    アウトレンズ対物

  • 対物レンズ絞り
    objective-lens aperture,OL aperture

    対物レンズに入射する電子線の内、光軸近傍の電子線だけを通して、それ以外を遮蔽する目的で使用される絞り。孔径が小さい絞りを使うと球面収差や色収差が小さくなり、電子プローブ径は小さくなると同時に焦点深度も深くなるが、プローブ電流は少なくなる。ただし、孔径が小さすぎると回折収差が大きくなり、電子プローブ径は大きくなるので、最適な孔径がある。孔径が大きい絞りを使うとプローブ電流は多くなるが、収差のため電子プローブ径は大きくなり、焦点深度も浅くなる。絞り孔径の切替だけではなく、軸合わせのための位置調整ができるようになっている。

  • タングステンフィラメント (Wフィラメント,フィラメント)
    W filament,tungsten filament,filament

    熱電子銃の陰極として使われるタングステン線。直径約0.1mmのタングステン線をV形にして支柱に取り付けてあり、通電加熱することによって2800K程度の高温にして、熱電子を放出させる。SEMだけでなく電子光学機器の電子源として最も多く使われている陰極である。

  • ターボ分子ポンプ (ターボモレキュラーポンプ)
    turbo molecular pump (TMP)

    円筒の周囲に多数の金属翼を斜めに取り付け、その円筒を高速回転させることで気体を圧縮し、排気するポンプ。動作圧力は10-7~1Pa程度であるが、油分子に対する圧縮率が高いので、オイルフリーな環境が作りやすい。油拡散ポンプと違って、冷却水が要らない、予備加熱の時間が要らない、などの利点がある。

  • ダイナミックフォーカス
    dynamic focus

    電子プローブの走査と同期して、フォーカスを少しずつ変えることで、フォーカス面を傾ける機能。平面状の試料を大きく傾斜すると、傾斜方向に焦点深度以上のフォーカスずれが起きるので、これに対する補正手段として使われる。
    下図にダイナミックフォーカスの動作原理図を示す。左はダイナミックフォーカスが行われていない状態で、フォーカス面と試料表面が一致していないため焦点ずれが起きている。右は電子プローブの走査に同期してダイナミックフォーカスコイルの強さを変えることでフォーカス面と試料表面を一致させており、常に焦点が合った状態に保たれていることを示している。

    DFC

  • 超高真空SEM
    ultra-high vacuum SEM (UHVSEM)

    試料の極表面を観察する目的で試料室を10-7Pa程度の超高真空に保ったSEM。走査反射電子顕微鏡、走査オージェ顕微鏡などは、このカテゴリーに属す装置である。

  • 超高分解能FESEM (超高分解能SEM)
    ultra-high resolution FESEM,ultra-high resolution SEM

    FE電子銃とインレンズ形対物レンズあるいはシュノーケル形対物レンズのような低収差の対物レンズを組み合わせたSEM。1nm以上の分解能が得られる。

  • ティルト補正
    tilt compensation,tilt correction

    平坦な試料を傾斜して観察すると、画面上の長さが傾斜方向では短く見える。これを補正して、試料面を垂直な方向から見たようにする機能。この補正を行うために、傾斜方向の電子プローブの走査幅を圧縮するので、SEM像は実際には歪んでいる。凹凸のある試料に対してこの機能を適用すると、逆に像が歪んでしまうので使ってはいけない。

  • 低真空SEM
    low-vacuum SEM,Natural SEM,Wet SEM (LVSEM)

    試料室の圧力を数十~数百Paまで上げられるようにしたSEM。残留ガス分子と電子の衝突によって出来るプラスイオンを利用して帯電を中和し、非導電性試料を無コーティング観察することができる。このほか、ガス放出が非常に多い試料の観察、含水試料の簡易凍結観察などにも用いられる。電子光学系と試料室の間にはオリフィスを置いて、差動排気を行うほか、通常の二次電子検出器だと放電を起こす可能性があるので、反射電子検出器やガス増幅を用いた特殊な二次電子検出器(ESD)を用いる。Natural SEM、Wet SEMといった商品名で呼ばれることもある。

    低真空SEM

  • デコンタミネーション
    decontamination

    試料表面に付着した試料汚染堆積物が、電子線照射によって除去される現象。試料周辺に残留する酸素ガスと汚染堆積物との反応によるものと考えられ、試料室に若干の真空漏れがある状況で高い電子流密度の電子線照射を行ったときに起きやすい。この現象を利用して試料表面にガスを吹き付けて試料汚染を防ぐ方法がある。

  • デジタルSEM
    digital SEM

    電子光学系、信号系などをデジタル制御するSEM。現在市販されているSEMは、全てデジタルSEMに属する。

  • デジタル走査
    digital scanning

    電子プローブの水平方向の走査を、デジタル制御されたステップ状の走査信号波形で行う方式。走査速度を変えても画像の位置ずれや歪みが起きにくい、EDSや電子線描画のように電子プローブ位置を外部制御しようとした時、照射位置や走査方向を自由に制御できる、といったメリットがある。一方、画像の解像力に比べて、ステップ数が粗いとサンプリング数が少なくなり、アーティファクトが生じることがあるので、取り込んだ画像を拡大するような場合は注意が必要である。

  • デュアルビームFIB
    dual-beam FIB

    SEMの電子光学系とFIBのイオン光学系を一つの試料室に配し、FIB加工した断面をそのままSEMで観察できるようにしたシステム。通常SEMとFIBの光学系はお互いに60゜傾いている。

  • デュアルマグニフィケーション (異種倍率同時表示)
    dual-magnification display

    SEM像を得るとき、奇数番目の走査線と偶数番目の走査線で走査幅を変え、それぞれに対応する2枚の画像として並べて表示することで、異なる倍率の画像を得ることができる。これをデュアルマグニフィケーションと言う。それぞれの画像は走査線の数が半分になるため、粗い感じになる。なお、最近のSEMでは、カメラのデジタルズームと同様に、一方に画像処理で拡大した像を表示するものもある。

  • 電界放出電子銃 (FE電子銃)
    field-emission electron gun,FE electron gun (FEG)

    電界放出現象を利用した電子銃。エミッタとしては通常、W<310>単結晶が用いられるが、強電界を作るためにその先端は100nm程度の曲率半径に仕上げられている。電子源の大きさは5~10nmと小さいため輝度が極めて高いのが特長であり、高分解能SEM用の電子銃として多く用いられる。放出電子のエネルギー幅が小さいことから、低加速電圧でも高分解能が得やすい。欠点としては、室温で動作するためガス吸着によって放出電流が不安定になりやすく、超高真空が必要であること、放出電子によってイオン化された残留ガス分子の衝撃で陰極表面が荒れて最終的には陰極が破壊される可能性があること、などがある。これを防ぐために時々フラッシングという陰極の瞬間的な加熱を行う。陰極からの電子の放出角は、熱電子銃、ショットキー電子銃に比べて大きいため、集束レンズの収差の影響を受けやすく、プローブ電流はあまり大きくできない。
    下図に電界放出電子銃の構造を示す。引出電極に印加された引出電圧によって所定の電流の電子を放出させ、加速電極に印加された加速電圧によって所定のエネルギーの電子線を得る。

    電界放出電子銃

  • 電子源
    electron source

    光学顕微鏡の光源に相当する電子の放出源。電子は電子銃の陰極から放出されるが、近傍にあるウェーネルト円筒、引出電極などの影響を受けて、軌道が変わるので、あたかも別な位置にある電子源から放出されるように見える。すなわち、電子光学的な電子源は、熱電子銃の場合はクロスオーバーであり、電界放出電子銃の場合は仮想光源である。

  • 電子光学系
    electron optical system

    電子プローブを作り、走査する機能を持つ部分。電子銃、集束レンズ、対物レンズ、非点補正装置、偏向系などから構成される。鏡筒と同義語であるが、鏡筒が構造物そのものを意味するのに対して、電子光学系は機能的な意味を持つことが多い。

  • 電子銃
    electron gun

    電子の放出源。所定の電流量の電子を所定のエネルギーを持った電子線として放出する役目を持つ。電子放出のメカニズムから、熱電子銃、電界放出電子銃、ショットキー電子銃の三種がある。性能を表す量として輝度が使われる。

  • 電子線
    electron beam

    電子銃から放出されるエネルギーを持った電子の流れ。

  • 電子ビームテスタ (EBテスタ)
    electron-beam tester,EB tester

    LSIの電気特性を試験するためのLSIテスタと、ストロボSEMを組み合わせた装置。SEMの電子プローブを電位測定用プローブとして利用し、試料から放出された二次電子のエネルギー分析を行うことで回路の電圧を測定できる。ストロボ像モード、ストロボ波形モードと組み合わせて、LSIの故障診断や動作テストをより実用的に行えるようにしてある。

  • 電子プローブ
    electron probe

    電子銃から放出され、集束レンズと対物レンズによって縮小されて、試料に照射される細い電子線。電子の探針を意味する。

  • 電子プローブ径
    electron-probe diameter,probe diameter

    電子プローブの直径。電子源の直径、光学系の縮小率、対物レンズの収差などによって決まる。実際の電子プローブ径を測定するには、ナイフエッジ状の試料の上を、電子プローブが横切ったときの、二次電子、透過電子などの信号強度から測定する。しかし、電子プローブが細くなるとこの方法による測定は困難であり、TEMのような拡大・結像系を持つ装置が必要となる。なお、SEMの解像力は電子プローブ径より良い値になる。

  • 電子プローブマイクロアナライザ (電子線マイクロアナライザ)
    electron probe microanalyzer (EPMA)

    電子を照射したとき試料から放出される特性X線の波長を分光して、照射領域に存在する元素の同定および濃度の分析を行う装置。分析領域は横方向、深さ方向とも数百nm~数µmである。分析機能を重視することから、数基のWDSと、分光条件に合わせるための光学顕微鏡を備えている。電子プローブの走査機能を持っているのでSEM像の取得のほか元素マッピングなどを行うことができるが、SEMと違って試料ステージには傾斜機構、回転機構が無いのが普通である。なお、EDSを取り付けたSEMをEPMAと呼ぶ場合がある。

  • 電子レンズ
    electron lens

    回転対称な磁界あるいは静電界を利用して、電子に対するレンズ作用を持たせたもの。一般のSEMでは磁界レンズが多く用いられているが、低加速電圧専用のSEMでは静電レンズが用いられる場合がある。また、減速法では、磁界レンズと静電レンズを重畳させた電磁界重畳レンズと呼ばれる対物レンズが使われている。

  • 電磁界重畳レンズ
    magnetic/electrostatic compound lens

    極低加速電圧を得るための減速法では、減速を行うための電極(あるいは試料ステージ)によって形成される静電界が、対物レンズの磁界に重畳された形となるため、電磁界重畳レンズとも呼ばれる。この方法では、収差が改善されるので解像力が上がる。

  • 電離真空計
    ionization gauge

    高電圧を掛けたときの気体の電離を利用して、生成されたイオンの数から圧力を測定する真空計。放電を利用したペニング真空計、熱電子による電離を利用した熱陰極電離真空計があるが、単に電離真空計といった場合、後者を指すことが多い。

  • 電流安定度
    stability of electron-beam current,beam stabilty

    電子線あるいは電子プローブ内を流れる電流の安定度。FE電子銃では、その放出機構が原因で電流安定度が悪く、SEM像や分析データに影響が出る。SEM像に関しては、ノイズキャンセラによる画像演算で見かけ上の変動を取り除けるが、分析の場合はそのような手段が無いため影響が大きい。特に電子線描画を行う際には長時間の安定度が求められるので、熱電子銃やショットキー電子銃が使われる。

  • 透過電子顕微鏡
    transmission electron microscope (TEM)

    薄膜状の試料に電子線を照射し、試料を透過した電子線を結像レンズ系で拡大する電子顕微鏡。可視像にするためには、結像レンズ系の下に置いた蛍光スクリーンで光に変換する。試料を電子が透過する必要があるので、100kV~1000kVに加速された電子線を使う。薄膜試料内部の形態、結晶構造、組成、電子状態などの情報が得られ、分解能は0.1nm~0.2nmである。

  • ドローアウト試料ステージ
    draw-out stage

    引き出し式の試料ステージ。普及形SEMでは、価格の点から試料交換室を持たず、試料室を大気圧にして試料ステージを引き出し、試料交換を行うものが多い。試料交換に時間が掛かるが、大きな試料を扱えるという利点もある。

  • ナビゲーション
    navigation

    観察済みあるいは分析済みの視野の座標データや倍率を画像と共に記憶しておき、再度その視野に戻りたいときに、画像を選択するだけで自動的に試料移動と倍率設定を行う機能。

  • 軟X線分光器
    soft X-ray emission spectrometer (SXES)

    試料から発生した軟X線 (0.1~2keVの極めて低エネルギーのX線) 領域の特性X線を、回折格子によって (光をプリズムで分光するように) 分光し、X線検出用に特化されたCCDカメラを使ってスペクトルを得る高エネルギー分解能X線分光器。下図は本分光器の原理を示す。本分光器の特長としては、エネルギー分散型X線分光器と同様に多元素の同時検出が可能、軽元素リチウム (Li) から分析が可能、エネルギー分解能が波長分散型X線分光器に比べて1桁以上高い、検出感度が波長分散型X線分光器より約1桁高い、装置に可動部がなくEDSなみにコンパクト、などが挙げられる。

    SXES

  • 二次電子検出器
    secondary electron detector,SE detector (SED)

    試料から放出された二次電子を検出するための検出器。最も多く使われているのは、ET検出器を基本としたもので、シンチレータと光電子増倍管で構成されている。対物レンズの形式によって、アウトレンズ検出器とTTL検出器の2種類があるが、二次電子検出器は照明装置に相当するので、SEM像のコントラストはその取り付け位置に大きく依存する。なお最近では、二次電子検出器の前に複数の電極を置き、その電圧を制御することで検出する電子のエネルギーを選択できるものが出てきている。ET検出器のほかマイクロチャンネルプレートを用いたものもあり、それぞれ特徴がある。

    二次電子検出器

  • 入射電圧 (入射エネルギー,照射電圧)
    landing voltage,landing energy,incident energy,incident voltage

    試料に入射する電子の電圧すなわちエネルギー。通常のSEMでは加速電圧と同じであるが、減速法の場合、加速電圧と試料ステージに印加された電圧の差、あるいは加速電圧と対物レンズ下方にある減速電極に印加された電圧の差が入射電圧となる。

  • ネットワークSEM
    network SEM

    ネットワークに接続して、ネットワーク上の他のパーソナルコンピュータとの間でSEM画像をやりとりしたり、他のパーソナルコンピュータからの操作を可能にしたSEM。

  • 熱電界放出電子銃 (TFE電子銃,TF電子銃)
    thermal field-emission electron gun,TFE electron gun,TF electron gun

    陰極を高温に保ったまま、強電界を印加すると起きる熱電界放出現象を利用した電子銃。電界放出電子銃とショットキー電子銃の中間的な電子銃で、陰極の加熱温度は700K程度と、ショットキー電子銃に比べて低い。現在市販のSEMには使われていない。

  • 熱電子銃
    thermionic-emission gun

    熱電子放出を利用した電子銃。陰極としては、タングステンフィラメントが多く用いられるほか、LaB6陰極が用いられる。輝度、エネルギー幅など、電界放出電子銃、ショットキー電子銃などに比べて、性能が劣るところがあるが、プローブ電流量、電流安定度、価格などの点で優れており、汎用形SEM、EPMA、オージェ分析装置などに多く使われている。
    下図に熱電子銃の基本的な構造を示す。陰極から放出された電子は、陽極に印加された高電圧によって所定のエネルギーに加速されるが、その電流量はウェーネルト電極に印加されたバイアス電圧によって制御される。また、陰極、ウェーネルト電極、陽極の3つの電極のレンズ作用によってクロスオーバーが形成される。

    熱電子銃

  • ノイズキャンセラ
    noise canceller

    FE電子銃では、放出される電子線の電流の変動が大きく、SEM像の明るさが変わったり、像に明暗のすじが入る。この影響を少なくするためには、放出電流の変動を検出して、画像の演算による明るさ変動の除去を行う必要がある。このための検出器および演算回路をノイズキャンセラと言う。

  • 薄膜レンズ
    thin-film lens

    円孔電極と絶縁物を隔てて薄膜を置き、電極と薄膜の間に電圧を加えられるようにした静電レンズ。薄膜にマイナスの電圧を加えると、凹レンズができ、回転対称な磁界レンズの球面収差を補正することができる。薄膜での電子の吸収やエネルギー損失が問題にならないような高加速電圧のSTEMで有効である。

  • 反射電子検出器
    backscattered electron detector,BE detector,BSE detector

    反射電子を検出するための検出器。半導体検出器、シンチレータ、マイクロチャンネルプレートなどが使われるが、検出したい電子のエネルギーが高いため、高電圧を検出器に掛けることはしない。半導体検出器には検出器を分割し、出力を演算することで組成情報と凹凸情報が分離できるようにしたものがある。シンチレータ形の検出器としてはロビンソン検出器と呼ばれるものや、YAG単結晶を使ったものがあり、半導体検出器に比べて応答が速い。

  • 汎用形FESEM
    general purpose FESEM,conventional FESEM

    FE電子銃とアウトレンズ形対物レンズを組み合わせたSEM。FESEMとしては最も歴史が長く、多く用いられている。解像力は数nm、実用的な倍率としては5~10万倍が得られる。

  • 汎用形SEM
    general purpose SEM,conventional SEM

    熱電子銃とアウトレンズ形対物レンズを組み合わせたSEM。SEMとしての歴史は最も長く、最も多く用いられている。解像力は5nm程度、実用的な倍率としては数万倍が得られる。

  • バイアス電圧
    bias voltage

    熱電子銃のウェーネルト電極に掛けるマイナスの電圧。電圧を大きくする(バイアスを深くする)と電子線の放出量は減る代わりにクロスオーバーの径は小さくなり、電圧を小さくする(バイアスを浅くする)と電子線の放出量は増える代わりにクロスオーバーの径は大きくなる。

  • 倍率標準試料
    magnification-standard specimen,magnification-calibration specimen

    一定の大きさあるいはピッチを持った、倍率の基準となる試料。SEMは加速電圧範囲が広く、作動距離も目的に応じて変える必要がある。このため、倍率誤差が大きくなりがちである。倍率精度を上げるためには大きさの基準となる試料を使って一定条件で計測する必要がある。メッシュ、ラテックス球、などがあるが、最近ではリソグラフィー技術を応用した数百nmピッチのパターンが使われるようになり、ISOのトレーサビリティーを満足するものもある。

  • 引出電圧
    extracting voltage

    電界放出電子銃あるいはショットキー電子銃において、電子を放出させるのに十分な電界をエミッタ表面に作るための電圧。エミッタ先端が鋭いと引出電圧が低くても電子が放出され、先端の曲率半径が100nm程度とすると、引出電圧は3~5kVとなる。フラッシングを繰り返すとエミッタ先端は太くなり、引出電圧は徐々に上昇する。

  • 引出電極
    extracting electrode

    電界放出電子銃およびショットキー電子銃の構成要素の一つ。エミッタに対向して置かれる電極で、エミッタ表面に強電界を作るためのプラスの高電圧(引出電圧)が印加される。下図は電界放出電子銃の基本構造である。

    FE電子銃

  • 非点補正 (非点収差補正)
    astigmatism correction

    非点収差を補正する操作。通常は対物レンズの非点補正を意味する。非点収差を補正するための装置を非点補正装置と言い、レンズの非点収差と直角方向に同じ強さの非点収差を作ることで補正を行う。
    下図は、四極子レンズによる非点補正の原理を説明するもので、緑の矢印は磁力線、青の矢印はローレンツ力を示し、赤の楕円はそれによって変形した電子ビーム断面を意味する。

    非点補正

  • 非点補正装置 (スティグマトール,スティグマ,非点収差補正装置)
    stigmator

    非点収差を補正する装置または操作パネル上のつまみの名前。実際の非点補正装置は、2組の四極子レンズを組み合わせた八極子レンズである。
    下図は非点補正装置の基本構造で、2組の四極子レンズを45゜回転させて配置してあり、電流 I1、I2の大きさと比を変えることで補正量と補正方向を変えることができる。

    非点補正装置

  • 表示装置 (モニター)
    display,monitor

    SEM像を表示するために用いられる装置。長い間CRTが使われてきたが、最近では17形~21形の液晶ディスプレーが多く用いられている。CRTの場合、残光性のものが使われたが、SEM像をデジタル画像として扱う最近のSEMでは、画像メモリーに記憶されたデータを表示するため、残光性は必要なくなった。

  • 標準試料
    reference specimen,standard specimen

    SEMの倍率や性能を確認するための試料。保存時や観察時に安定であること、コントラストの高いSEM像が得られることなどが要求される。

  • 標準マイクロスケール
    Standard Microscale

    倍率基準として作られた標準試料の商品名。シリコン上に作った格子状のパターンで240nm±1nmのピッチを持つ。

  • 標準メゾスケール

    倍率基準として作られた標準試料の商品名。シリコン基板上に作った格子状のパターンで20µm、6µm、2µmの三種類のピッチを持つ。

  • ビーム電流
    beam current

    電子線内を流れる電流。時によってエミッション電流を意味する場合もあり、プローブ電流を意味する場合もある。

  • ビームブランキング (ブランキング)
    beam blanking,blanking

    試料に電子線を照射したくないとき、一時的に電子線を遮断すること。実際には、電子銃からは電子線を放出したまま、途中に置いた偏向器で電子線を曲げることで、電子線を遮断する。高速で電子線を遮断するときは静電偏向器を使い、比較的遅い速度で遮断するときは偏向コイルを用いる。

  • ビームロッキング (角度走査,ロッキング)
    beam rocking,rocking,angle scanning

    通常のSEM像を得るには、電子プローブの照射位置を変える、いわゆる位置走査を行うが、それに対して、電子プローブの照射点を試料上の一点に止めたまま、入射角度を変える角度走査のことをビームロッキングと言う。電子チャンネリングパターンを得るときに行う走査方法である。

    ビームロッキング

  • ピラニ真空計 (ピラニゲージ)
    Pirani gauge

    真空中で通電加熱された金属線からの放熱量が圧力によって変わり、電気抵抗が変わる現象を利用した真空計。測定可能圧力範囲は大気圧~10-1Paで、SEMで真空排気系の制御に使われる。

  • ファラデーカップ
    Faraday cup,Faraday cage

    プローブ電流を測定するための装置。開口部を孔の開いた板で塞いだ、カップ状の構造にすることで、二次電子がまわりに逃げないようにして、測定精度を上げている。

    ファラデーカップ

  • フラッシング
    flashing

    電界放出電子銃のエミッタを瞬間的に高温にして、エミッタ表面の吸着ガスを放出すると同時に、表面をスムーズにする操作。

  • 分析FESEM
    analytical FESEM

    単なるSEM像の観察だけでなく、EDS、WDS、EBSDなどの分析機能を備えたFESEM。分析機能を重視することから、ショットキー電子銃を搭載したFESEMをベースにするのが普通である。汎用形の分析SEMに比べて、高い解像力が得られ、高い空間分解能の分析ができる。

  • 分析SEM
    analytical SEM

    単なるSEM像の観察だけでなく、EDS、WDS、EBSDなどの分析機能を備えたSEM。汎用形SEMをベースにした場合は、分析FESEMに比べて、解像力は低く、分析時の空間分解能も低いが、システムは低価格で、手軽に使える。

  • ブースター法
    boosting method

    解像力を上げるための手段の一つ。電子銃から放出された電子を、一旦より高い電圧に加速してレンズ系を通過させ、最終段の対物レンズ付近で減速する。高いエネルギーで対物レンズを通過するため色収差が小さくなる。基本的には減速法と同じ意味を持つ。

  • プリセンタードフィラメント
    precentered filament

    製造段階で予め芯出しされたフィラメント。熱電子銃では、フィラメントはウェーネルトに対してセンタリングされていないと、十分明るい電子線を得ることができないが、プリセンタードフィラメントを使うと、ユーザーはフィラメント交換時のセンタリングが不要となる。

  • プローブ電流
    probe current

    試料に照射される電子プローブ内を流れる電流量。照射電流と同じ意味を持つ。観察モードや分析モードによって適した電流量は異なるが、通常の二次電子像観察では10pA程度のプローブ電流が使われる。

  • ヘアピン形フィラメント
    hairpin filament

    タングステンフィラメントの一般的形状。先端がヘアピンの形をしていることからこう呼ばれるが、単純なV形をしたものもある。

  • 偏向コイル
    deflection coil,deflector

    電子線を曲げる(偏向する)ためのコイル。同一方向に磁界を発生させる二つのコイルを1組にして、光軸に関して対称に配置してある。さらに、直交する方向にもう1組のコイルを置くことで、2次元的な偏向を行うことができるので、軸合わせやイメージシフトを行うために用いられる。走査コイルも一種の偏向コイルであるが、応答速度が重視されるため、コイルの形状に工夫がされている。

  • ベクター走査
    vector scanning

    電子線描画を行うときに、電子プローブを任意の位置に移動して描画をする方法。ラスター走査と違って、フィールド全体を走査しないので、描画に要する時間が少なくてすむ。

  • ベークアウト
    bake out

    電界放出電子銃の電子銃室、超高真空SEMの試料室などの真空を上げるために、壁面や構造物を高温加熱して脱ガスする操作。

  • ペニング真空計 (ペニングゲージ)
    Penning gauge

    真空中での放電現象を利用した電離真空計。永久磁石による強磁界中での放電現象(ペニング放電)を利用しているため、ある程度の高真空でも使うことが可能である。測定可能圧力範囲は10-3~1Paである。

  • 本引き (主排気)
    fine pumping,main pumping

    大気圧から高真空まで、順次真空を上げていく排気システムにおいて、主排気ポンプを使って行う高真空用での排気操作。主排気とも言う。

  • ポリスチレンラテックス球
    polystyrene latex sphere

    倍率基準として使われる均一な大きさのポリスチレン粒子。100nm~1µm程度の直径の粒子が倍率の基準として使われる。ラテックスを希釈した懸濁液になっているため、乾燥時に若干変形する可能性があり、また観察時の電子線照射により変形する可能性があるので、倍率基準として使う場合には、注意を要する。また、大きさによって標準偏差の大きいものがあるので、ある程度の個数を測定する必要がある。

  • ポールピース (磁極片)
    pole piece

    磁界レンズの構成要素の一つ。磁界レンズでは、コイルで作られた磁力線を鉄などの透磁率の高い材料で出来た枠(ヨークと言う)に閉じこめ、ヨークの一部に切り欠きを作ることで、高密度に分布した磁力線を空間に漏洩させている。切り欠きの部分をポールピースと呼ぶが、ヨークに比べて高品質の材料を使い、高い精度で加工されている。

    レンズ

  • マイクロチャンネルプレート
    micro-channel plate (MCP)

    電子増幅作用を持つ細孔を2次元的に配列した板状の検出器。二次電子あるいは反射電子の検出に使われるが、二次電子を検出する場合は入射面に高電圧を印加する。光軸に関して対称な位置に置くことができるので、等方的な照明効果が得られる。

  • マイクロマニピュレータ
    micromanipulator

    SEM像を観察しながら試料を操作するための装置。試料を取り除いたり、移動して並べることができる。微細な動きを再現良く行うためには、ピエゾ素子を使ったアクチュエータが用いられる。プローブとししては、金属、ガラスなどのほか、カーボンナノチューブを使ったものが開発されている。

  • モーター駆動ステージ
    motorized stage

    モーターを使って駆動することで操作性を上げた試料ステージ。さらに、パーソナルコンピュータによる制御を行うことで、指定した座標への移動、画面を中心とした(ユーセントリックな)試料回転、移動量の制限、などを行うことができる。

  • ユーセントリック
    eucentric

    試料を傾斜したときに視野が移動しない、傾斜した状態で試料を移動したときにフォーカスが変わらない、試料を回転したときに視野が移動しないといった機能。

  • ユーセントリック試料ステージ
    eucentric specimen stage

    ユーセントリックな機能を持った試料ステージ。試料ステージそのものが位置ずれを生じない構造を持っているものと、パーソナルコンピュータ制御で位置ずれを補正するものがある。

  • 陽極 (アノード)
    anode

    電子銃の電極の一つ。陰極に対してプラスの高電圧が印加されていることからこのように呼ばれるが、実際には安全のためアース電位となっている。一般には、電子を加速する電極を意味することが多い。

    熱電子銃

  • 予備排気
    pre-evacuation

    試料交換を行うときに、交換室を粗引きポンプで所定の圧力まで排気すること。予備排気終了後仕切り弁を開けて試料交換を行う。これにより、必要以上に試料室の真空を低下させることなく試料交換を行うことができる。

  • 予備ポート
    service port,access port

    種々の付属装置が取り付けられるように、試料室に設けてある孔。

  • 四極子レンズ
    quadrupole lens

    直交する軸の上に、隣り合った磁極の極性が交互になるように四つの磁極を配置したレンズ。ある軸方向に発散作用、直交する軸方向に集束作用を持たせることができるので、非点補正装置として用いることができる。

    四極子レンズ

  • ヨーク
    yoke

    磁界レンズの構成要素の一つ。磁界レンズでは、コイルで作られた磁力線を、鉄などの透磁率の高い材料で出来た枠(磁路)に閉じこめ、枠の一部に切り欠きを作ることで、高密度に分布した磁力線を空間に漏洩させる。この枠をヨークと言う。

    レンズ

  • ライトガイド (ライトパイプ)
    light guide,light pipe

    二次電子検出器の構成要素の一つ。シンチレータで発光した光を光電子増倍管に導くためのガラスまたはアクリル樹脂で出来たパイプ。

    二次電子検出器

  • ライナーチューブ
    liner tube

    磁界レンズの電子線通路に設けた筒。ライナーチューブを真空隔壁とすることで、レンズコイル、走査コイル、偏向コイル、非点補正装置などガス放出の多い部品を真空外に置くことができるため、鏡筒内の汚れを少なくすることができる。また、ライナーチューブ内に固定絞りを収めることで鏡筒からの取り外しを簡単にし、メンテナンスを楽にしている装置もある。

  • ラスター
    raster

    複数の走査線を並べて作ったパターン。一般的には長方形をしている。走査線そのものを意味する場合もある。

  • ラスター走査
    raster scanning

    電子線描画を行うときに、フィールド全体を電子プローブでラスター状に走査して描画をする方法。ベクター走査と違って時間が掛かるが、描画したパターンの相対的な位置関係が高精度で得られる。

  • リカーシブフィルタ (再帰形フィルタ,巡回形フィルタ)
    recursive filter

    SEM像のざらつきを低減するために使われるデジタルフィルタ。高速走査のSEM像を加算して表示するが、過去の画像に対して現在の画像の比重を大きくすることで、ざらつきの少なくなったSEM像を見ながら、視野選択、非点補正、焦点合わせなどの操作を行うことができる。積算回数が多くなるとノイズは少なくなるが、応答速度が遅くなる。

  • リターディング法
    retarding method

    減速法の手法の一つ。試料ステージにマイナスの電圧を掛けることで試料に入射する電子を減速する方法。下図右がリターディング法である。入射電子に対しての減速電界は試料から放出される二次電子に対する加速電界となるため、帯電の影響が少なくなる。

    減速法

  • リトラクタブル検出器
    retractable detector

    使用するときは試料室中に挿入し、使用しないときは引き込める検出器。代表的なものに、反射電子検出器、EDS検出器などがある。

  • 冷陰極電界放出電子銃 (CFE電子銃)
    cold field-emission electron gun,CFE electron gun

    電界放出電子銃の別名。ショットキー電子銃あるいは熱電界放出電子銃のエミッタが加熱されているのに対して、通常の電界放出電子銃のエミッタは室温で動作することから、こう呼ばれることがある。

  • レンズギャップ
    lens gap

    磁界レンズの磁路に設けられた切り欠き。ヨークとポールピースを流れた磁力線は、この切り欠きから光軸上に漏洩し、レンズ磁場を形成する。

  • 漏洩磁界
    leakage magnetic field

    磁界レンズの磁気回路を構成するヨーク、ポールピースなど継ぎ目やレンズギャップから漏洩する磁界。レンズ磁界そのものを作る重要な働きをするが、非対称な漏洩磁界は光軸を曲げるような有害な作用をする。

  • ロビンソン検出器
    Robinson detector

    反射電子検出器の一種。先端に開口部を持つテーパー状のシンチレータで出来ており、試料から放出された反射電子がシンチレータを発光させ、ライトガイドを通って光電子倍増管に導かれる構造となっている。半導体検出器を使ったものより応答が速いので、速い走査速度で像の観察ができる。

    ロビンソン検出器

  • ロードカレント
    load current

    加速電圧電源を流れる電流。エミッション電流と加速電圧を発生させるために電源内部を流れる電流を加算したものである。

  • ローロスSEM
    low-loss SEM

    試料表面すれすれの浅い角度で電子プローブを入射させ、前方に散乱した電子の内、エネルギーをあまり失っていないlow-loss電子のみを検出すると、高加速電圧であっても試料表面を高解像力で観察することができる。この観察手法をローロスSEMと言う。O.C.Wellsが開発した方法である。

    ローロスSEM