試料作製

  • DMSO凍結割断法
    freeze fracturing method using DMSO

    生物試料に対する凍結割断法の最も代表的な方法。脱水後の試料を50%ジメチルスルフオキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)に浸漬し、液体窒素で冷却した金属上で凍結割断する。凍結割断法としては、他に、アルコール凍結割断、樹脂凍結割断などの手法が用いられる。

  • ODO法 (オスミウム浸軟法)
    ODO method,osmium-DMSO-osmium method,osmium maceration method

    生物試料の断面観察に用いられる代表的な方法。オスミウム固定後、DMSO凍結割断を行った生物組織を、低濃度の四酸化オスミウム水溶液に浸漬し、細胞質を溶出して細胞内構造を剖出する。処理過程で使用される薬剤から付けられた名前である。

  • t-ブチルアルコール凍結乾燥
    t-butyl-alcohol freeze drying

    凍結乾燥法の一種。脱水した試料をt-ブチルアルコールで置換し、凍結した後、真空容器の中で排気すると、凍結乾燥を行うことができる。t-ブチルアルコールは凝固点が約300K(25℃)と高いので、冷蔵庫や冷凍庫で試料を凍結することが出来、手軽に扱えるのが利点である。

  • アクアカバー法
    Aqua Cover method

    水を液体のまま走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)で観察する手法。水を含んだ紙(アクアカバー)で試料を覆い、試料の水分を保護することからアクアカバー(Aqua cover)法と名付けられた。試料の温度、試料室の圧力、水蒸気の分圧を制御(調整)することで、試料をSEM内に挿入してから観察にいたるまで、水や水溶液、試料に含まれる水分を液体状態に保ち続けられる。
    この方法を用いることにより、水分やその蒸発過程や水を含んだままの状態での試料の観察を、光学的手法よりも高解像度で観察することができる。
    通常、SEM観察は真空下(<10-2 Pa; 大気圧1013 hPa)で行われるため、水は蒸発して観察することができない。しかし、低真空機能(~650 Paまで制御できるタイプ)とペルチェ冷却ステージを組み合わせることにより、水の状態図 (図1) の緑色部に示す状態を試料室内に作り出すことができ、液相(液体)を保つ条件ができる。実際には試料温度を0°C程度、試料室圧力を650 Pa程度にする。
    大気圧から真空排気して試料室の圧力が650 Paに到達する間に、水蒸気分圧の低下による水の蒸発が起こる。そこで紙片に水を含ませたアクアカバーで試料を覆い、真空排気中においてもカバーの内側を飽和水蒸気圧に保ち、水の蒸発を防ぐ。
    試料のセッティングから観察までの手順を図2に示す[1]。SEMの試料ステージにペルチェ冷却ステージを載せ、その上に試料を置いて冷却し0°Cに保ちながらアクアカバーで試料を覆う(a)。真空排気した後、予備排気室に格納していた試料交換棒を用いてカバーを掴み、冷却ステージを下げる(b)。カバーを予備排気室に退避させる(c)。ステージを上げてSEM観察する(d)。アクアカバーを外した後は、水分は次第に蒸発していくので、早めに観察する。
    この方法を用いて葉脈から染み出した液滴の観察例を図3に示す。また、繊維上にある水滴が蒸発している様子を動画に示す。
    この手法を用いることで、撥水のためのマイクロメートルオーダーの構造を持つ表面に付着した水滴の撥水の際の微細な動きの観察[2]や、生物や植物など水分を多く含んだ試料の詳細な観察、濡れた繊維の乾燥過程において膨潤・乾燥による太さや繊維間隙の変化の観察[3]などに成功している。
    アクアカバーを用いずに液体状態で観察する方法として、試料を試料室に挿入する前に凍結し、真空排気後に融解して観察する手法がある。しかし、凍結する場合、氷晶成長や体積膨張などにより試料に損傷が起こり得る。アクアカバー法では、試料を凍結させずに観察できるという利点がある。
    試料に含まれる水分を保ちながらSEM観察を可能にしたこの方法は、日本電子が初めて開発した手法である。学術論文等では、含水カバー法(Wet Cover法)とも呼ばれている。

    Schematic of the state diagram of water.

    図1. 水の状態図
    水を0°C程度に冷却し気圧を650 Pa 程度にすると液体状態を保つことができる。

    Observation procedures using the Aqua Cover method.

    図2. アクアカバー法による観察手順
    (a) 大気圧下でSEMの試料ステージにペルチェ冷却ステージを載せ、そこに置いた試料を約0°Cに保ち、アクアカバーを被せ、設定圧力の650 Pa まで真空排気を行う。
    (b) 圧力が650 Pa に安定した後、予備排気室に格納しておいた試料交換棒でアクアカバーを掴み、ステージを下げる。
    (c) アクアカバーを予備排気室に退避させる。
    (d) ステージを上げてSEM観察を開始する。

    Liquid droplets leaked from leaf veins at the back of leaves of Pachira aquatica.

    図3. Pachira aquaticaの葉の裏にある葉脈から染み出た液滴
    (a) 光学像
    (b) 反射電子像(液滴を青、葉を緑に色を付けている)
    加速電圧 25 kV、試料室圧力 650 Pa

    水滴蒸発動画(10倍速)

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    参考文献

    [1] N. Inoue, Y. Takashima, M. Suga, T. Suzuki, Y. Nemoto, O. Takai, Observation of wet specimens sensitive to evaporation using scanning electron microscopy, Microscopy, 67 (2018) 356.
    [2] N. Inoue, T. Suzuki, Y. Takashima, S. Asahina, H. Onodera, O. Takai, 走査電子顕微鏡による新規な撥水処理評価法の検討, Surf. Finish. Soc. Jpn., 70 (2019) 157.
    [3] N. Inoue, T. Suzuki, Y. Takashima, M. Suga, O. Takai, 大気圧から保持した液体の走査電子顕微鏡を用いた含水カバー法による動的観察, Surf. Finish. Soc. Jpn., 70 (2019) 45.

  • アクアダッグ
    Aquadag

    導電性ペーストの商品名。水をベースとしてコロイド状のグラファイトを分散したもの。

  • アルコール凍結割断法
    freeze fracturing method using alcohol

    凍結割断法の一種。脱水後の試料を100%エタノールに浸漬し、液体窒素で凍結した後、割断する。

  • イオンエッチング
    ion etching

    イオン衝撃によるスパッタ現象を利用して、試料表面のエッチングをする方法。表面の汚れを取ったり、スパッタ速度の違いを利用して凹凸のコントラストを付けるのに用いられる。

  • イオン研磨
    ion polishing

    イオンビームを使って試料を研磨すること。イオンビームを試料にごく浅い角度で照射したときのスパッタリング現象を利用して、平滑な平面を作製する技術。クロスセクションポリッシャーはこの技術を利用している。

  • イオンスパッタ装置 (イオンコーター,スパッタコーター)
    ion sputtering device,ion coater,sputter coater

    最も多く使われているコーティング装置。コーティングしたい金属を陰極(ターゲット)として、数Paの低真空中で放電させると、生成されたプラスイオンが陰極に入射して、ターゲット材料をスパッタする。この結果、ターゲット材料の金属で試料表面がコーティングされる。ターゲット金属としては、金、白金、金パラジウム、白金パラジウムなどが使われる。スパッタされた金属がターゲットと試料の周辺に残留する空気分子で散乱されるため、凹凸がある試料に対しても比較的一様なコーティング膜ができる。最近では、磁界中でのペニング放電を利用したマグネトロンスパッタ装置が多く使われている。アルゴンガスを導入するとコーティング速度を上げることができる。コーティングだけでなく、ターゲットを取り外して使うことで、イオンエッチング、あるいは親水化処理などが可能な装置もある。

    イオンスパッタ装置

  • イオンビームスパッタ装置
    ion-beam sputter coater

    ペニング形イオン銃から放出されたブロードイオンビームをターゲットに照射し、スパッタされた金属を試料にコーティングする装置。ターゲットと試料は高真空中に置かれるため、均一なコーティング膜を作るには、試料の回転傾斜機構かジンバル機構が必要である。通常のスパッタ装置と違って、タングステン、クロムといった酸化しやすい金属のスパッタができるほか、スパッタ速度の制御も比較的容易である。

    イオンビームスパッタ装置

  • イオンミリング
    ion milling

    イオンビームを使った試料作製方法の一種。本来イオンビームを使った加工を意味するが、電子顕微鏡の試料作製の場合、予備的に薄くした試料の表面すれすれにアルゴンイオンビームを入射させ、STEMあるいはTEM用の薄膜試料を作る方法を意味する。

  • 鋳型法
    injection replication method,casting method

    血管のように、中空の構造を持った試料、あるいは空洞の内壁を観察する場合の試料作製法。試料に樹脂を流し込み、硬化させた後、元の試料を溶解する。出来上がった鋳型を観察するが、凹凸は反転するので注意が必要である。血管鋳型法、リンパ管鋳型法といった方法がある。

  • ウルトラミクロトーム
    ultramicrotome

    SEMやTEM用の薄膜試料を作製する装置。刃には、ガラスナイフ、ダイヤモンドナイフなどが使われる。かんなで削るようにして厚さ数10 nm~数100nmの薄膜試料が作られる。樹脂包埋した生物試料や高分子試料などの柔らかい試料の切削が得意である。金属のような硬い試料の薄膜作製に使われることもある。SEMの場合には、切り出した切片だけでなく、切削して露出した試料面(数100μm角~数mm角程度の広さ)も観察の対象となる。

  • エッチング
    etching

    断面観察の時に、組成の違い、結晶方位の違いなどによる腐食速度の違いを利用して、試料の組織を浮き出させる化学処理。化学的な方法の他、イオンによるスパッタ速度の違いを利用する場合もある。

  • エメリー紙
    emery paper

    紙又は布の上に、アルミナ系の砥粒をバインダーに混ぜて塗り、固めた研磨紙。最近は、炭化ケイ素の砥粒を塗った研磨紙もエメリー紙と呼ばれることが多い。研磨砥粒の大きさによってクラス分けされており、番号が大きいほど砥粒が細かいことを意味する。

  • オスミウム固定
    osmium fixation

    SEMで生物試料を観察するために行う化学固定法の一種。
    生体膜を構成するリン脂質を固定するために、細胞や生体から摘出した組織を四酸化オスミウム水溶液(濃度1 %程度)に1時間程度浸漬する。
    高濃度の溶液や長時間の浸漬は、タンパク質の破壊や溶解を起こすので、濃度や時間の管理は適切に行う必要がある。カビやキノコの菌糸や胞子は四酸化オスミウム(水溶液濃度2~4%程度)の蒸気中に数時間から一晩程度曝すことでリン脂質を固定する(蒸気固定)。アルデヒドを用いた浸漬固定の後に行われるので後固定とも呼ばれる。

  • オスミウムコーター (プラズマCVD装置)
    osmium coater,plasma CVD equipment

    オスミウム雰囲気中でのグロー放電を利用して、四酸化オスミウム蒸気を分解し、金属オスミウムの薄い被膜を試料にコーティングする装置。凹凸が比較的激しい試料でも一様な膜厚のコーティングができる、膜の粒状性が極めて細かく高倍率観察に適する、などの特長を持つ。イオンスパッタ装置と似た構造を持つ装置であるが、四酸化オスミウムは毒性があるので、排出ガスの処理に注意する必要がある。

  • オスミウム染色
    osmium staining

    SEMを用いて高分子や生物試料を反射電子像で観察する場合、その成分や組織を構成する元素の原子番号が近いため明瞭なコントラストがつきにくい。このような場合に、重金属であるオスミウムで、特定の成分や組織を染色して高いコントラストを付ける手法。
    染色は、試料を四酸化オスミウムの水溶液に浸漬、もしくはその水溶液の蒸気雰囲気下に置く方法でおこなわれる。染色によってオスミウムが、高分子材料のブタジエンや生物試料のリン脂質などに含まれる炭素の二重結合を切断し、その部位に結合する。その結果、原子番号が大きいオスミウムによって染色された部位の反射電子が増加し、特定の成分や組織が明瞭に観察されるようになる。
    オスミウムは毒性が強く、蒸気を吸い込んだり溶液が皮膚に触れたりすると危険なため、使用する場合は、試薬メーカーから出されている安全データシート (Safety Data Sheet, SDS) に基づいて、ドラフト内で手袋を着用して取り扱う必要がある。

  • 加圧凍結 (高圧凍結)
    high-pressure freezing

    SEMで生物、食品、塗料等の含水試料を観察するために、試料を高圧化で凍結して本来の状態に近い形態に保持する方法。
    試料を専用カートリッジに装填後、専用装置を用いて液体窒素のジェット流によりカートリッジに210 MPa程度の圧力をかけて凍結させることで、大気圧下での凍結(通常の急速凍結法による凍結)に比べ、数十倍の深さ(200 µm程度)まで一様で氷晶の影響がない凍結を行うことができる。高圧をかけることで、水の融点が下がり粘性が上がるため、試料形状の破壊の原因となる氷晶の形成が抑えられる。凍結した試料は、クライオSEM法を用いて観察するか、凍結置換及び凍結乾燥を行った後に常温のSEMで観察する。

  • 回転傾斜機構
    rotation-tilt mechanism

    真空蒸着装置あるいはイオンスパッタ装置に組み込んで使う、試料の回転・傾斜機構。高真空でコーティングする場合や、入り組んだ構造を持った試料にコーティングする場合、なるべく均一な厚さで連続した膜を作るために使われる。比較的回り込みが良いスパッタコーティングの場合でも、薄くて均一なコーティングをするには、回転傾斜機構を使うのが望ましい。

  • 化学エッチング
    chemical etching

    化学薬品を使って試料表面を腐食すること。結晶方位の違い、組成の違いなどによるエッチング速度の違いを利用して、試料表面に凹凸を付けるために用いられる。試料の内部構造を見る場合は、断面を作り、機械研磨した後に、化学エッチングを行うことで、内部組織を観察することが多い。

  • 化学研磨
    chemical polishing

    化学薬品を使って試料表面を鏡面状に仕上げる方法。機械研磨をした試料の表面の加工層を取り除いたり、表面の酸化膜を取り除くのに使われる。機械研磨とは裏腹であり、適用できる試料は限られる。

  • 化学固定
    chemical fixation

    SEMで生物試料を観察するために、細胞や生体から摘出した組織などを、薬品を用いて生きた状態に近い形態に保持する手法。
    細胞や組織内のタンパク質や脂質などを薬品で化学的に固定する。細胞や組織を直接固定液に浸漬する浸漬固定が広く用いられている。それ以外に、血管系を介して固定液を注入して固定する灌流固定、試料を固定液の蒸気に曝すことで処理する蒸気固定などが用いられている。
    固定する溶液としては、タンパク質をよく固定できるグルタールアルデヒドやパラホルムアルデヒド、リン脂質をよく固定できる四酸化オスミウムなどが広く用いられている。
    固定後は、エタノールで脱水し、エタノールをt-ブチルアルコールに置換後に凍結乾燥、もしくはエタノールで脱水し、酢酸イソアミルに置換後に臨界点乾燥を行い、SEMで観察する。

  • 化学消化法
    chemical digestion method

    化学固定した生物試料を酸やアルカリで処理することで、細胞間質や細胞質を除去し、目的の構造を剖出する方法。

  • 化学的機械研磨
    chemical-mechanical polishing (CMP)

    アルミナ、シリカ、ジルコニアなどの砥粒を反応性の溶媒に懸濁した研磨剤を使うことで、機械的な研磨と化学的な研磨を同時に行う方法。極めて平滑な研磨面が得られると同時に、研磨面表層の加工歪みも小さいので、ECC像を得るときやEBSDのための試料作製に使われる。

  • 緩衝液
    buffer solution

    少量の酸あるいはアルカリが加えられてもpHが変化しない液。生物試料の処理過程において、組織や細胞が変形しないようにpHや浸透圧を生体に合わせて調整する必要があるため、固定剤を溶解するときや組織の洗浄などに用いられる。リン酸緩衝液、カコジル酸緩衝液などがある。

  • 乾燥
    drying

    エタノールなどで脱水した生物試料を、SEMに入れられるように乾燥する処理過程。乾燥時の表面張力の影響を最小限に抑えるため、臨界点乾燥あるいは凍結乾燥といった方法が使われる。

  • 灌流固定
    perfusion fixation

    SEMで動物の組織を観察するために行う化学固定法の一種。
    麻酔がかかっている状態の動物に心臓から固定液を注入し、血管を介して全身の組織を固定する。
    固定する溶液としては、パラホルムアルデヒド水溶液(濃度4.0 %程度)やグルタールアルデヒド水溶液(濃度1.0~2.5 %程度)を用いる。血管を介するため、組織を短時間で均一に固定することができる。さらに、動物が生きている状態から化学固定を開始するので、死後の自己融解を最小限に抑え生きた状態に近い形態を保持することができる生きた状態に近い形態を保持することができる。灌流固定後は、さらに十分な固定を行うために、速やかに目的組織を切り出して浸漬固定を行う。灌流固定は動物が死後硬直するまで行い、例えばマウスの場合には固定開始から数分程度である。

  • カーボンコーター
    carbon coater

    カーボン蒸着専用の真空蒸着装置。油回転ポンプのみの排気を行うのが普通であり、低真空下でのコーティングのため蒸着粒子が散乱され、凹凸が激しい試料でも比較的一様な被膜ができる。高真空でのカーボン蒸着に比べて膜質は若干劣る。

  • カーボン蒸着
    carbon deposition

    カーボンを真空中で高温に加熱することで蒸発させ、試料表面に被膜を作る方法。試料のコーティングに用いられるほか、微粒子を観察する際の試料支持薄膜作製用としても用いられる。コーティング用としては、カーボンは、二次電子放出率がやや小さいが、原子番号が小さく、回り込みが良いので、非導電性試料を反射電子で観察する場合あるいは元素分析を行う場合によく使われる。低真空下で蒸着する、いわゆるカーボンコーターに比べて、高真空の真空蒸着装置を使ったカーボン蒸着の方が膜質は良い。

  • カーボンテープ
    carbon tape

    カーボン粒子を粘着層にフィラーとして混ぜた両面粘着テープ。観察用試料を試料台に固定したり、非導電性試料の導通を取るのに用いる。導電性ペーストで固定する場合に比べて手軽に扱えるが、しっかり固定できないため高倍率では試料が動くことがある。また、ガス放出が若干多い。

  • カーボンペースト
    carbon paste

    樹脂にフィラーとしてカーボン粒子を加えた導電性ペースト。コロイド状のグラファイト粒子を使った水溶性のペーストもある。

  • カーボン棒
    carbon rod

    カーボン蒸着用の材料。一方を鋭く尖らせた2本のカーボン棒を接触させて通電し、その接触抵抗による発熱を利用してカーボンを蒸発させるときに用いられる。

  • カーボン膜
    carbon supporting film,carbon film

    カーボン蒸着を利用して作った薄膜。粉体試料を観察するような場合、STEMモードでは電子が透過する様な試料支持膜として、カーボン膜が用いられる。一方、微粒子の二次電子像を高加速電圧で観察する場合にも、カーボン膜を用いると背景が暗くなるので、微細構造がコントラスト良く観察できる。

  • ガラスナイフ
    glass knife

    ウルトラミクロトームで使われるナイフの一種。厚板ガラスにガラス切りで傷を付けた後、力を加えて割り、鋭利な刃を作るが、専用の作製装置もある。半世紀以上使われてきたものであるが、最近ではダイヤモンドナイフなどが多く使われるようになっている。ガラスナイフは安価で使い捨てができることから、粗削りに使われることが多い。

  • 機械研磨
    mechanical polishing

    試料の断面作製をするときに一般に使われる方法。準備研磨と仕上げ研磨(琢磨)に分けられる。準備研磨において、粗さの異なるエメリー紙、ラッピングシートを段階的に使って平滑な断面を得た後、仕上げ研磨(琢磨)では、アルミナやダイヤモンドペーストを用いて、微細な条痕を取り除いて鏡面状態に仕上げる。

  • 急速凍結
    rapid freezing

    SEMで生物、食品、塗料等の含水試料を観察するために、試料を急速に凍結して本来の状態に近い形態に保持する方法。
    冷凍庫やドライアイスで緩慢に凍結させると水分の流動や体積膨張、氷晶形成により試料が変形する恐れがある。急速に凍結すると、それらを小さく抑えることができ試料が持っている本来の微細形態が保持される。凍結の速度は、大気圧下では104°C/sec以上が必要であり、この条件を満たす浸漬法と金属圧着法が広く用いられている。
    浸漬法とは沸騰が起きにくい冷媒に試料を投入する方法である。冷媒としては融点と沸点の差が大きい液体エタンや液体プロパンがよく用いられるが、液体窒素中に固体窒素が分散したスラッシュ窒素も用いられる。試料本来の微細形態が保持される深度は表面から5~10 µmほどと言われている。普通の液体窒素に試料を投入すると、試料周囲に窒素ガス層が形成され、液体窒素が試料に接触し難いため冷却効率が落ち試料が変形する場合がある。しかし、含水率が低く変形しづらい試料や試料変形の度合いと解像度とのバランスで低倍率での観察には、液体窒素が用いられることがある。
    金属圧着法は液体窒素や液体ヘリウムで冷却された金属に試料を圧着する方法である。試料本来の微細形態が保持される深度は表面から20 µmほどと言われている。金属は熱伝導率の良い純銅がよく用いられる。浸漬法や高圧凍結法と比較し、広い面の凍結を行うことができる。
    凍結した試料は、クライオSEM法を用いて観察するか、凍結置換および凍結乾燥を行った後に常温のSEMで観察する。

  • 銀ペースト
    silver paste

    銀粒子を樹脂中に混合した導電性のペースト。試料の取り付け、導電処理などに用いる。

  • クライオミクロトーム
    cryo microtome

    凍結した試料から、薄膜や断面の作製を行うためのミクロトーム。

  • クロスセクションポリシャ
    Cross Section Polisher (CP)

    アルゴンイオンビームを使った試料断面作製装置の商品名。試料直上にスパッタリング速度の遅い遮蔽板を置き、その上からアルゴンのブロードイオンビームを照射してエッチングを行うことで、遮蔽板の端面に沿った研磨断面を作る。これにより、数百µm領域の、広く、しかも加工歪みの少ない断面が得られる。加工位置精度は10µm程度である。下図は、研磨開始時(左)および研磨終了時(中央)の試料断面の様子を示し、右は矢印方向から見た加工断面のSEM像である。

    CP

  • 懸濁法
    suspension method

    粉体試料の分散法の一つ。有機溶媒あるいは水などの分散媒に試料を懸濁し、必要に応じて超音波を照射して分散を行う。分散媒と試料が反応しないことが必要であり、また、試料に付着していた汚れが分散媒に溶け出して、観察時にコンタミネーションを引き起こすことがあるので注意が必要である。

  • 固定
    fixation

    SEMで生物試料を観察するために、細胞や生体から摘出した組織などを生きた状態に近い形態に保持すること。
    生物は死後の自己融解、さらには生物試料作製過程における脱水や乾燥により変性するため、薬品処理や凍結処理によって、試料を生きた状態に近い形態に保持し、かつSEM観察に耐えられる強度を持たせること。

  • 固定剤
    fixative

    化学固定を行うときに用いられる処理剤。グルタ-ルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、四酸化オスミウムなどが代表的な固定剤であり、これらの水溶液を目的に応じて使い分ける。アルデヒド系の固定剤は、主としてタンパクを固定し、四酸化オスミウムは、主としてリン脂質を固定する。この他、四酸化ルテニウム、アクロレインなどが用いられる。

  • 固定法
    fixation methods

    SEMで生物試料を観察するために、細胞や生体から摘出した組織などを生きた状態に近い形態に保持する手法。生物試料の固定法は、タンパク質や脂質等を薬品で化学的に固定する方法と、組織や細胞内の水分を凍結して物理的に固定する方法の2つに大別される。
    化学固定に広く用いられているのは、細胞や組織を直接固定液に浸漬する浸漬固定である。その他に、動物の場合には血管系を介して固定液を注入して固定する灌流固定、カビの場合には試料を固定液の蒸気に曝すことで固定する蒸気固定などがある。
    物理固定に広く用いられるのは、組織を液体窒素、液体エタンなどに直接浸漬して凍結する浸漬法である。その他に、液体窒素、液体ヘリウムなどで冷却した金属に組織を圧着し凍結する金属圧着法、凍結時に高圧をかけて液体窒素で凍結する高圧凍結法がある。

  • コロイド金
    colloidal gold

    金をコロイド状にした粒子。免疫SEMの標識として、直径10nm~20nmのものが多く使われるが、試料表面構造と区別するため、観察モードとしては反射電子組成像がよく使われる。

  • コントラスト付け
    contrast enhancement

    断面試料を観察するための試料処理法。試料の内部構造を観察しようとして平滑な断面を作ると、内部形態に対応した原子番号・密度の違い、結晶方位の違い、などが無いと、SEM像のコントラストが生じない。したがって、エッチングで内部形態に対応した凹凸を作ったり、染色により特定の部位に重金属を付着させる、といった方法でコントラストを付けなければならない。これを、コントラスト付けと呼び、高分子試料でよく使われる。

  • コーティング (金属コーティング)
    coating,metal coating

    非導電性試料を観察するとき、導電性を与えるためにイオンスパッタや真空蒸着などを用いて試料表面に金属の薄い膜を作る操作。電子線照射による熱損傷を低減する目的で使われることもある。

  • 再付着 (リデポジション,リデポ)
    redeposition

    集束イオンビームその他イオンビームを使った試料断面作製の際に、イオンビームでスパッタされた試料が、断面あるいは隙間などに付着する現象。

  • 載物
    mounting

    試料を試料台に載せて固定すること。

  • 集束イオンビーム
    focused ion beam (FIB)

    数keV~30keVのエネルギーを持った細いガリウムイオンビーム。SEM用の断面試料作製あるいはTEM、STEM用の薄膜試料作製に多用される。なお、FIBと言った場合、集束イオンビーム装置そのものを意味する場合もある。

  • 集束イオンビーム装置
    FIB system, focused ion beam system

    集束イオンビーム装置 (FIB装置) とは、イオンビームを利用し、試料を観察して加工を行う装置である。試料表面を観察し、試料上の特定の位置に対して局所的な加工や成膜 (デポジション) を行う。走査電子顕微鏡 (SEM)、透過電子顕微鏡 (TEM) 用の試料作製や、半導体デバイスの回路修正、金属、ソフトマテリアル、固定化させた生物試料などの微細形状加工に用いられる。

    FIB装置の基本機能は (1) 観察、(2) 加工、(3) デポジションの3つである。

    (1) 観察 : イオンビームを試料に照射し、放出された二次電子を検出することでSIM像 (Scanning Ion Microscope像) が得られる。SIM像は走査電子顕微鏡像 (SEM像) に比べて、組成や結晶方位に敏感である。

    (2) 加工 : 試料に照射されたイオンビームは試料内に進入し、試料を構成する原子をはじき出す (スパッタリング)。試料に対してイオンビームを走査することで、特定範囲の加工を行うことができる。

    (3) デポジション : ガスインジェクション装置から有機ガスを試料表面に吹き付けながらイオンビームを照射することで、二次電子と有機ガスが反応し局所的に膜の形成を行う機能である。ガス源には、おもにカーボン化合物 (C14H10)、タングステン化合物 (W(CO)6)、プラチナ化合物 ((CH3C5H4)(CH3)3Pt) を用いる。ガス源に含まれるカーボン (C) はおもに試料表面の保護、タングステン (W) は半導体デバイスの配線作製、プラチナ (Pt) はその両方に使用される。

    FIB装置の基本構成を図1に示す。イオン源、イオン光学系、二次電子検出器、ガスインジェクション装置、試料ステージ、真空排気系、制御系から構成される。イオン源には液体金属イオン源 (Liquid Metal Ion Source: LMIS)、ガスイオン源 (Gas Field Ion Source: GFIS)、プラズマイオン源などが使用される。最も一般的に用いられるのはLMISである。LMISのイオン材料としてはガリウム (Ga) が主流である。Gaは融点が常温に近く (29.7°C)、蒸気圧が低い (10⁻Pa以下) ため真空内でも蒸発によるGaの消耗が起こらない。また、針材料であるタングステン (W) と反応せず、かつ濡れ性が良い特徴がある。

    図1

    図1. FIB装置の基本構成

    図2は、LMISの構造図である。イオンビームの材料である金属 (通常Ga) をフィラメントで一時的に加熱することで、貯蔵部内の金属 (Ga) が溶解してW針の先端が濡れる。針先端の液体金属は表面張力によって丸くなるが、引出電極にマイナス数 kVの電圧を印加することで針先端に強電界が形成され、液体金属が引っ張られて円錐形状になる (Taylor cone)。円錐先端にはさらに電界が集中し、イオン化した金属が放出される。

    図2

    図2. 液体金属イオン源 (LMIS) の構造

    図3にイオン光学系の構造を示す。イオン源から放出されたイオンビームは、2段の静電レンズにより試料上に集束される。すなわち、イオンビームはイオン源の直下に位置するコンデンサーレンズと絞りによって電流量が数十 nA~数 pA以下の範囲で制御され、さらに絞りを通過して対物レンズの作用を受けて試料上に集束される。集束されたイオンビームは、偏向電極により試料上を走査し、試料の観察、加工、およびデポジションを行う。数十nAの大電流のイオンビームは数百 µmの大領域を加工する際に使用され、数 pAの微小な電流のビームは数 nmオーダーの微細加工に使用される。

    図3

    図3. FIB光学系の構造

  • 試料支持膜 (支持膜)
    specimen supporting film,supporting film

    粉体試料や超薄切片をSTEMやTEMで観察するときに試料を載せる、高分子あるいはカーボンの極めて薄い膜。微粒子の二次電子像を高加速電圧で観察する場合にも、試料支持膜に載せると背景が暗くなり、微細構造がコントラスト良く観察できるのでしばしば使われる。

  • 真空蒸着
    vacuum evaporation

    真空中で金、金パラジウム、白金パラジウム、アルミニウム、カーボンなどの材料を蒸発あるいは昇華させて、試料表面に薄いコーティングをする技術。蒸着時の真空圧力は10-3~10-2Pa程度で、残留ガス分子による蒸着金属原子の散乱が少ないため、一様な膜厚のコーティングをするためには試料の回転・傾斜を行う必要がある。

  • 真空蒸着装置
    vacuum evaporator

    真空蒸着を行うための装置。真空隔壁としては内部が見えるようにガラス製のベルジャーが使われ、内部には蒸着源を支えるための電極棒、試料表面をカバーするシャッタなどが置かれている。排気系としては油拡散ポンプが使われるのが普通であるが、ターボ分子ポンプが使われる場合もある。

  • 親水化処理
    hydrophilic treatment

    スライドグラス、カーボン板、カーボン支持膜などの疎水性基板の表面を水に濡れやすくする処理。実際には、イオンスパッタ装置のターゲットを外した状態で放電させ、放電領域のそばに基板を置くことで親水性にすることができる。界面活性剤で親水化することも可能である。

  • 浸漬固定
    immersion fixation

    SEMで生物試料を観察するために行う化学固定法の一種で、最も一般的に用いられている。
    細胞や生体から摘出した組織などを直接固定液に浸漬することで、タンパク質やリン脂質を固定する。まず、タンパク質を固定するために、パラホルムアルデヒド水溶液(濃度4.0 %程度)やグルタールアルデヒド水溶液(濃度1.0~2.5 %程度)に1時間以上浸漬する(前固定)。パラホルムアルデヒドは試料への浸透速度が速く、グルタールアルデヒドは固定力が強いので、両者の混合液を使用することが多い。生体から摘出した組織の場合、固定液の浸透を良くするために小さく切り出し(5mm角以下)、緩衝液で洗浄した後、速やかに固定液に浸漬する。次に、生体膜を構成するリン脂質を固定するために、四酸化オスミウム水溶液(濃度1 %程度)に1時間程度浸漬する(後固定)。
    四酸化オスミウムは、試料への浸透速度が遅く、またタンパク質を破壊してしまうため、浸透速度が速くタンパク質を固定するアルデヒド固定を先に行う。

  • 樹脂凍結割断法
    freeze fracturing method using resin

    凍結割断法の一種。脱水後の試料をエポキシ樹脂モノマーに浸漬し、液体窒素中で凍結し、割断する方法。

  • 樹脂包埋
    embedding in resin

    試料作製時に試料を安定に保持するため樹脂に埋め込むこと。超ミクロトームで超薄切片を作ったり、断面を作るとき、樹脂凍結割断をするとき、あるいは金属・鉱物試料などの機械研磨をするときに行う。

  • 蒸気固定
    vapour fixation

    SEMでカビやキノコの菌糸や胞子を観察するために行う化学固定法の一種。
    固定液に浸漬すると、菌糸の変形や胞子の流失が起こるため、固定液の蒸気に曝すことで、菌糸や胞子の生体膜を構成するリン脂質を固定する。固定液には四酸化オスミウム水溶液(濃度2~4%程度)を用い、密閉した容器内に充満した四酸化オスミウムの蒸気で固定を行うため、固定時間は数時間から一晩程度を要する。

  • 蒸着源
    evaporation source

    真空蒸着を行うときの蒸着材料。材料そのものを意味したり、あるいは、その保持材を含めて言うことが多い。カーボンの場合は材料そのものを成形して用い、金、金パラジウム、白金パラジウム、アルミニウム等の場合は、タングステン線をV形あるいはバスケット形にして保持する。

  • ジンバル機構
    gimbal mechanism

    直交する二つの傾斜軸を組み合わせることで任意の方向に傾斜できる機構。例えば、このような機構の上に試料を載せてコーティングを行うことで、方向性のない均一な厚さのコーティング膜を作ることができる。

  • スパッタリング
    sputtering

    イオンが固体表面を衝撃したとき、固体を構成する原子をはじき飛ばす現象。これを利用して、試料の加工をしたり、試料のコーティングを行う。

  • スラッシュ窒素
    slush nitrogen

    液体窒素を断熱容器に入れて、真空チェンバー内で油回転ポンプで間欠的に減圧すると液体窒素中にザラメ状の固体窒素が分散した状態ができる。これをスラッシュ窒素と言い、窒素の融点付近の約63Kが得られる。試料を入れたときのバブリングがほとんど起きないため、急速凍結ができる。

  • 染色
    staining

    コントラスト付けの方法の一つ。試料の特定の部位に重金属を付着させて反射電子組成像で観察すると、その部位が明るく見えることから染色と呼ぶ。高分子試料では、オスミウム染色やルテニウム染色が使われるが、オスミウムは二重結合を染め、ルテニウムは非晶質部分を染めると言われている。超薄切片をSTEMやTEMで観察する場合も、染色を行う。

  • 選択エッチング
    selective etching

    スパッタ速度の違いを利用したエッチング。イオンビームを高い角度で試料に照射すると、結晶方位によるスパッタ速度の違いが顕著になるため、これを利用して断面試料に凹凸を付け、組織を観察することができる。

  • 選択的定電位電解エッチング法 (SPEED法)
    selective potentiostatic etching by electrolytic dissolution method,SPPED method

    金属組織を観察するときに使われるエッチング法の一つ。非水溶媒電解液中で定電位の電解エッチングを行うものであるが、電気量を正確に制御することで、試料表面あるいは界面を再現性よくエッチングすることができる。ミクロ的な金属組織の観察や、組織と対応した析出物の観察ができるので、SEMの特長を生かした粒界や破面などの3次元的な解析に適する。

  • 帯電防止剤
    antistatic agent

    界面活性剤の働きで帯電を防止するスプレー。衣類の静電気防止スプレーと同じ作用をするもので、低倍率では有効であるが、表面に薄い被膜ができるので高倍率では微細構造が隠れてしまう。

  • タンニン・オスミウム法
    tannin-osmium conductive staining method

    生物試料に対する導電染色の代表的方法。オスミウム固定を行うと、組織にオスミウムが沈着することから、ある程度導電性を増すが、さらに導電性を増すために、タンニン酸処理とオスミウム処理を追加する方法。この他に、チオカルボヒドラジド・オスミウム法、タンニン-フェロシアン化オスミウム法、ルテニウム法といった導電染色法が利用される。

  • ターゲット金属
    target metal

    イオンスパッタ装置あるいはイオンビームスパッタ装置を使って、試料表面に金属コーティングを行うときの金属材料。イオンスパッタ装置では白金、白金パラジウム、金パラジウム、金など、イオンビームスパッタ装置ではそれに加えてカーボン、クロムなどが使われる。

  • ダイオードスパッタ
    diode sputtering

    陽極とターゲット金属(陰極)の間に高電圧を掛けて行われる、2極形の最も単純なスパッタ機構。

  • ダイヤモンドナイフ
    diamond knife

    ウルトラミクロトームで使われる刃先がダイヤモンドのナイフ。生物試料や高分子材料の切削に使用される。ガラスナイフに比べて硬度が高いので、硬い工業材料の切削にも使える。天然ダイヤモンドを使ったもの、人工ダイヤモンドを使ったものがある。

  • 脱水
    dehydration

    試料作製過程の一つ。固定が終わった生物試料を乾燥する前に試料中の水分を有機溶媒と置換する操作を言う。実際には、変形を防ぐため、50%程度から100%までの濃度の異なるエタノール中に順次浸漬し、置換することで脱水を行う。

  • 超薄切片
    thin section

    ウルトラミクロトームなどで薄くスライスした試料の切片。多くの場合、厚さは100 nm以下である。SEMでは、透過電子像(STEM像)もしくは反射電子像で観察する。透過電子像で観察する場合、試料はTEM用グリッドに載せる。反射電子像で観察する場合、試料はシリコン基板やガラス基板に載せる。反射電子像のコントラストを反転させることで、透過電子像と同様のコントラストを得ることができる。

  • デコレーション
    decoration

    試料表面に、ごく薄い金属コーティングをするとき、一様な厚さの膜ができず、ステップ状の構造、鋭い端部などに、コーティング粒子が選択的に付着する現象。この現象を利用すると、微細な表面構造が見やすくなることがある。

  • デポ
    deposition

    デポジションの略語。FIBで試料を加工する時に、イオンビームによるエッチングを防ぐために加工部周辺の表面に行う、金属あるいはカーボンの成膜を言う。実際にはガスを導入し、FIBとの反応を利用して成膜を行う。

  • 電解研磨
    electrolytic polishing

    平滑な研磨を行うための試料作製法。電解液中に試料と電極を入れ、試料を陽極として通電すると、試料の凸部には電界が集中することで加工速度が上がり、表面が平滑になる。機械研磨と違って研磨面に加工歪みが入らないので、試料の結晶情報を得たい場合などに有効な手段である。試料は導電性であることが必要であり、また試料に適した電解液と研磨条件が要求される。

  • 凍結割断
    freeze fracturing

    細胞や組織の内部を剖出するための方法。脱水後の試料を溶媒や樹脂に浸漬した状態にして液体窒素で凍結し、衝撃を与えて割断する。何に浸漬するかによって、アルコール凍結割断法、DMSO凍結割断法、樹脂凍結割断法などに分類される。高分子試料にも使うことができる。

  • 凍結乾燥
    freeze drying

    含水試料を乾燥する方法の一つ。乾燥時の表面張力の影響を最小限に抑えるため、試料を凍結させた後、低温に保ったまま真空排気し、試料中の氷を昇華させる。凍結速度が遅いと試料内部に大きな氷晶ができ、構造が変形してしまうので、急速凍結が必要である。なお、一般的なSEM用の試料は体積があるため急速凍結が難しく、昇華にも時間が掛かるため、水をt-ブチルアルコールなどの有機溶媒に置換し、凍結乾燥する方法が用いられる。

  • 凍結研磨
    freeze polishing

    細胞内構造を剖出するための方法。液体窒素中で凍結した試料を、液体窒素で冷却した研磨シート上で研磨することで、平滑な研磨面を出し、その後、低濃度の四酸化オスミウム水溶液に浸漬し、細胞質を溶出させる。

  • 凍結切片法
    freeze sectioning

    高分子材料や生物試料など、室温では加工が困難な柔らかい試料から薄膜試料を作製する方法。試料を液体窒素で冷却し、適当な硬さを持たせた後に切削し薄膜試料を得る。切削にはクライオミクロトームを用いる。厚さ数十 nm~数 μmで切り出しが可能である。SEMにおいては、切削後に露出した試料面を観察することもある。

  • 凍結置換
    freeze substitution

    凍結した生物試料を、冷却したメタノールやアセトン、その他の置換媒体中に浸して試料の脱水・置換を行う方法。同時に、媒体中に溶かしたオスミウムなどの化学固定剤で固定する。微細構造の変形、物質の移動、抽出が少ない。

  • トリミング
    trimming

    超ミクロトームで試料の断面を作るときの予備操作。ミクロトームで切削できる断面は小さいので、試料あるいは試料を包埋した樹脂のブロック先端を、予め台形に整形しておく必要がある。この操作をトリミングと言う。

  • 導電処理
    conductive treatment

    非導電性試料を観察するための試料前処理。試料表面への金属コーティングが主な手法であるが、生物試料や高分子試料では導電染色といった方法がとられることがある。過多な導電処理は微細構造を変えてしまうので注意が必要である。

  • 導電性テープ
    conductive tape

    試料を、試料台あるいは試料ホルダに固定するときに使われる、粘着層に導電性のフィラーを混ぜたテープ。手軽であるが、低加速電圧では若干の帯電を起こす場合があるほか、試料ドリフトが起きやすい、ガス放出が多いなど、注意すべき点もある。銅箔あるいはアルミ箔で片面をカバーしたテープもあるが、これは試料の端をカバーしたり、押さえつけるような使い方をする。

  • 導電性ペースト (導電性接着剤)
    conductive paste

    試料を試料台に固定したり、導電性を持たせるために周辺に塗布するときに使うペースト。樹脂中に銀粒子やカーボンブラックをフィラーとして分散したものや、水にコロイド状のグラファイトを分散したものがある。前者は接着力が強く、後者は弱いので目的に合わせて使い分けるのが望ましい。

  • 導電染色
    conductive staining

    生物試料の乾燥前の過程で、オスミウムなどの金属を積極的に組織に沈着させ、導電性を帯びさせること。代表的な方法として、タンニン・オスミウム法がある。構造が複雑な場合、コーティングを厚くしても一様な金属膜ができず、帯電を引き起こすことがあるので、生物組織の観察にはコーティングと併用することが多い。

  • ドータイト
    Dotite

    導電性ペーストの商品名。アクリル系の樹脂をベースとして銀粒子やカーボンブラックを分散してある。

  • ナイフマーク
    knife mark

    超ミクロトームで試料を切削するとき、ナイフの刃先に欠けた部分があったり、付着物があると、切削方向に傷が入る。これをナイフマークと言う。

  • バフ研磨
    buffing

    ダイヤモンドあるいは酸化アルミニウムなどのペースト状研磨剤や懸濁液(スラリー)を研磨布にしみ込ませて行う研磨。一般に仕上げ研磨(琢磨)に使われる。

  • 氷晶防止剤
    cryoprotectant

    含水試料を凍結するときに、組織内に大きな氷晶が出来ないように加える薬剤。SEMの試料作製で用いられる代表的なものはジメチルオキシド(DMSO)である。

  • 振り掛け法
    dusting method for dry powder

    乾燥した粉末試料の分散固定法の一つ。脱脂綿を毛羽立たせて粉体試料を含ませて試料台の上で軽くたたいて落としたり、試料台に載せた少量の粉体を綿棒で軽くなでるようにして分散する方法。

  • 物理固定
    physical fixation

    SEMで生物試料を観察するために、細胞や生体から摘出した組織などを凍結して生きた状態に近い形態に保持する手法。
    細胞や組織内の水分を凍結して物理的に固定する。凍結速度が遅いと細胞内に氷晶ができて細胞内構造を破壊するため、急速凍結や高圧凍結を用いる。急速凍結では、試料を液体窒素、液体エタンなどに直接浸漬して凍結する浸漬法や、液体窒素や液体ヘリウムなどで冷却した金属に試料を圧着する金属圧着法が用いられる。高圧凍結では、数百MPaの圧力下において、液体窒素温度で凍結を行う。
    凍結した試料は、そのままクライオSEM法を用いて観察する場合と、凍結置換および凍結乾燥を行った後に常温で観察する場合がある。

  • ブロードイオンビーム
    broad ion beam (BIB)

    イオン銃から放出されたままの、レンズ系による集束作用を受けない直径数mmのイオンビーム。通常、ペニング形イオン銃を利用して作るが、イオンビームスパッタ装置、イオンミリング装置、クロスセクションポリシャなどの試料作製装置に使われている。集束イオンビーム(FIB)に対比する意味で使われる。

  • プラズマクリーニング
    plasma cleaning

    プラズマ中に試料を置き、プラズマの化学作用により、試料表面のカーボン系の汚れを分解・除去し、試料汚染を防止する方法。すでに付着した試料汚染の堆積物も除去することができる。高分子試料などカーボン系の試料の場合は、試料損傷を受ける可能性が高く、注意が必要である。

  • 劈開
    cleavage,cleaving

    断面観察をするときの試料作製法の一つ。結晶性試料が特定の結晶面に沿って割れる劈開性を持っているときに利用される。結晶性基板の上に作ったデバイスの断面を作る場合にしばしば使われる方法である。

  • ペースト法
    pasting method

    粉体試料を分散させる方法の一つ。懸濁法では分散しにくい粉体を適当な分散媒と混合し、ペースト状にした後試料台に載せ、分散媒を溶媒で除去する。余分な粉体を除去し、分散媒を十分に洗浄しないと、粉体が積み重なって帯電したり、試料汚染を生じやすい。

  • 包埋樹脂
    embedding resin

    試料を包埋するときに使う樹脂。ウルトラミクロトームで切片を切ったり、断面を作るときはエポキシ系の樹脂が多く使われるが、金属試料を機械研磨するようなときは、ポリエステル系、フェノール系やアクリル系の樹脂も使われる。

  • ボックス加工
    box milling

    FIBで試料を加工するときの手法。観察用の断面を作るとき、十分な大きさを持った長方形の穴をFIBで掘るが、これをボックス加工と言う。目的は、観察用の電子プローブまたはイオンビームが断面に高角度で入射できるようにするためである。観察方向に沿った傾斜面を作るようにする場合、スロープ加工あるいはステップ加工という場合がある。

    ボックス加工

  • ポリカチオン処理
    polycation treatment

    ポリ-L-リジンなどのポリカチオン剤を、スライドガラスに塗布して被膜を作る処理。その上に細胞浮遊液や細菌の懸濁液を滴下すると、静電力で試料がスライドガラスに付着する。微細な生物試料の接着に便利な処理である。

  • マイクロウェーブ固定
    microwave fixation

    マイクロウェーブ照射を併用した生物試料の化学固定法。化学固定を行う際にマイクロウェーブを照射することで、試料中への固定剤の浸透を早めると同時に、反応を促進させることができ、固定時間を短縮することができる。

  • マイクログリッド
    micro-plastic grid,perforated supporting film

    試料支持膜の一種。試料支持膜は出来るだけ薄い方がよいが、薄い試料支持膜を直接メッシュに貼ると、試料が動きやすく、破れることがある。これに対して、数~数十µmの大きさの孔が多数開いた厚い膜をメッシュに貼り、その上に薄い支持膜を貼ると、試料の安定な保持ができる。この中間に使う多数の孔が開いた膜をマイクログリッドと言うが、試料をこの上に直接載せると、孔の部分を利用して空間に試料を保持することもできる。

  • 膜厚計
    thickness monitor

    真空蒸着やイオンスパッタで試料表面にコーティングをするときに、コーティング膜厚を測定する装置。コーティング装置内に置いた水晶振動子上にコーティング物質が堆積すると、質量が変化するため、水晶振動子の共振周波数がわずかに変化する。この周波数の変化を検出して、膜厚を測定するものである。あくまで質量を測定する装置なので、コーティング膜の密度が変わると膜厚は違ってしまうので注意が必要である。

  • マグネトロンスパッタ装置
    magnetron-sputter coater

    イオンスパッタ装置の一種。ターゲット付近に磁石を置くことでペニング放電を起こさせるもので、低い電圧でも高いスパッタ速度を得ることができる。現在市販されている多くのイオンスパッタ装置が、このマグネトロンスパッタ方式を採用している。

    イオンスパッタ装置

  • 回り込み
    shadow-less deposition due to gas scattering

    金属コーティングの際、蒸着粒子あるいはスパッタ粒子が残留ガスとの衝突によって散乱され、影になっているところにもある程度付着する現象。入り組んだ表面構造を持った試料の場合は、回り込みの善し悪しは重要であるが、コーティング膜の質は残留ガスが少ない方が良いので、兼ね合いが難しい。このような場合、回り込みが良いスパッタコーティングであっても、試料の回転傾斜機構やジンバル機構を併用することで、一様なコーティングと膜質を両立させる場合がある。

  • メッシュ (グリッド)
    supporting grid,specimen grid

    STEMあるいはTEM用の試料支持台。直径3.2mm、厚さ20~100µmの銅、金、モリブデン、ニッケルなどの金属板に数百メッシュの格子を作ったもので、薄膜状の試料をこの上に載せて透過する部分を観察する。粉体状の試料の場合は、このメッシュの上に薄い高分子膜を張り、その上に試料を載せる。

  • ラッピングシート
    lapping sheet

    ポリエステルフィルム上に、研磨砥粒を接着剤に混ぜて塗り、硬化させたもの。砥粒としてはアルミナ、ダイヤモンドなどが用いられており、粒度は0.3µm~数十µmである。エメリー紙に比べて高価であるが、フィルムが硬いため、硬い部分と柔らかい部分が混在した試料の研磨には有効である。

  • 臨界点乾燥
    critical point drying

    含水試料を乾燥する方法の一つ。脱水が終わった試料を液化炭酸ガスと共に圧力容器中に入れて加温する。液化炭酸ガスの臨界圧力、臨界温度を越えると、液化炭酸ガスが瞬間的にガス化するので、徐々に炭酸ガスを排出する。これにより、試料に表面張力を掛けることなく乾燥することができる。脱水後の試料は、一旦酢酸イソアミルで置換した後、液化炭酸ガスで置換するのが普通である。液化炭酸ガスの代わりにドライアイスを用いる方法もある。

  • ルテニウム染色
    ruthenium staining

    SEMを用いて高分子を反射電子像で観察する場合、その成分を構成する元素の原子番号が近いため明瞭なコントラストがつきにくい。このような場合に、重金属であるルテニウムで、特定の成分を染色して高いコントラストを付ける手法。
    染色は、試料を四酸化ルテニウムの水溶液に浸漬、もしくはその水溶液の蒸気雰囲気下に置く方法でおこなわれる。ルテニウムは酸化能が高く、高分子中のポリオレフィンなどに代表される飽和炭化水素と反応し、特に飽和炭化水素の非晶質部を染色する。原子番号が大きいルテニウムによって染色された部位の反射電子が増加し、その部位が明瞭に観察されるようになる。
    四酸化ルテニウムは揮発性が高く、蒸気を吸い込んだり溶液が皮膚に触れたりすると危険なため、使用する場合は試薬メーカーから出されている安全データシート (Safety Data Sheet, SDS) に基づいて、ドラフト内で手袋を着用して取り扱う必要がある。

  • レプリカ法
    replica method

    試料表面の凹凸をプラスチックなどに転写して観察するための試料作製法。何らかの理由で、試料がそのままSEMの試料室に持ち込めないときに使われる。凹凸が逆転するほか、転写するときの忠実度が問題となる。元々は、TEMで試料表面の凹凸を観察するために考えられた方法である。