観察手法

  • Y軸変調
    Y modulation

    SEM像の表示方法の一つ。画像の明るさは一定のまま、検出された信号量の多少に応じて、画像の表示位置を画面の垂直方向にずらす方法。輝度変調に比べると、信号量の変化をより定量的に表示することができる。

  • アナグリフステレオ
    anaglyph stereo

    ステレオ画像の観察方法の一つ。SEMで撮影されたステレオペア画像の1枚を緑色に色付けし、もう1枚を赤色に色付けする。この2枚の画像を一個所に重ねて表示し、緑と赤のフィルタを左右の眼の前に置いて観察すると、左右の画像を分離でき、ステレオ視が可能である。フィルタは緑と赤でなくても補色関係にあるものであればよい。SEM画像は本来単色であり、パーソナルコンピュータの画像処理ソフトでも簡単に色つけができるので、この方法は手軽で最適なステレオ観察法である。

    アナグリフステレオ

  • アレイトモグラフィー
    Array tomography

    後方散乱電子(反射電子)像を用いて、重金属染色して樹脂包埋した生物試料の内部構造(細胞内の膜構造など)を三次元再構築する手法の一つ。連続切片SEM法とも呼ばれる。
    ウルトラミクロトームで超薄切片を連続的に作製し、シリコンウエハーなどの基板上に並べる。各切片の同一視野を観察して得られた二次元後方散乱電子(反射電子)像を積み重ねることで三次元像を再構築する。
    シリアルブロックフェイスSEMやデュアルビームFIBとは異なり、観察後にも超薄切片が保存されるので、再観察が可能である。さらに、このように並べられた試料は、三次元像観察だけではなく、EDSによる三次元元素マッピングにも用いることができる。

  • 画像処理
    image processing

    オリジナルのSEM像から何らかの情報を得るために施す処理。コントラストの調整、スムージング、二値化、といった処理がよく使われる。

  • 画像積算
    image integration

    高速走査のSEM像を複数加算することで、ノイズを減らして表示したり記録する方法。視野探し、焦点合わせといった動きを伴った調整や、動的な観察を行う場合は、リカーシブフィルタを使うが、静止状態を表示したり、記録する場合は、個々のSEM像の重みが一定な単純積算を行う。積算回数を多くするとノイズは少なくなるが、データ取得中に像が動くと、画像は一方向にぼけてしまう。

  • クライオSEM法
    cryo-SEM, Cryo Scanning Electron Microscopy

    生物、食品、化粧品など、水や油を含む試料を凍結した状態でSEM観察する方法。
    通常のSEM観察では、真空環境下での観察のさい試料内の水や油が気化するため、試料の形状が変化する。クライオSEM法では、試料が凍結されているので、形状変化を防いで本来の形状を観察することができる。観察前に、前処理室にて試料表面の霜取り、割断、エッチング、導電性コーティングを行うこともある。
    また、ポリマーのように電子線照射による熱損傷を受けやすい試料を低温に保つことによって、試料の損傷を防ぐ使い方もある。

  • X-SEM
    cross-sectional scanning electron microscopy

    試料の断面形状を正確に把握し、内部構造や基板表面に積層された薄膜の成膜状況を知る目的で、断面試料を作製し、SEM観察すること。TEMを用いたこのような観察手法はX-TEMと呼ばれている。

  • 高加速電圧観察
    high-voltage observation

    試料の内部構造を見る目的で、比較的高い加速電圧、例えば十数kV以上で試料を観察すること。また、導電性基板表面に非導電性被膜がある試料では、被膜を透過するような高加速電圧を使うことで、帯電無しで観察することが可能である。さらに積極的に200kV程度の高加速電圧を使う観察が行われることもあり、専用装置が半導体試料の無コーティング観察などの目的で開発されている。

  • コロイドSEM法
    colloid-SEM method

    磁区観察法の一つ。磁性試料の表面に磁性粒子を分散させたコロイド溶液を滴下すると、磁性粒子は磁壁付近に付着するので、この分布をSEMで観察する方法である。光学顕微鏡で使われてきた方法であるが、SEMを使うことで高い解像力が得られる。最近では気相成長させた超微粒子を用いる方法も開発されており、数十nmの解像力が得られる。

  • シリアルブロックフェイス走査電子顕微鏡法
    Serial Block Face Scanning Electron Microscopy

    SEMを用いて試料内部の構造を三次元再構築する手法の一つ。主に、樹脂包埋した生物試料や高分子材料といったソフトマテリアルに対して用いられる。SEMの試料室内に組み込んだウルトラミクロトームによってブロック試料の表面を数十から200 nm程度の厚さで切削し、現れた面のSEM観察を行う。切削と観察を繰り返し行い、深さ方向に二次元像を数十枚から数千枚取得する。それらの像を積み重ねることで三次元像を再構築する。

  • 磁区観察
    magnetic domain observation

    通常のSEMで観察される磁区コントラスト、あるいはスピン偏極SEMで観察される磁区コントラストを利用して行う観察法。試料に磁界を印加しながら観察することも可能である。

  • ステレオ観察
    stereoscopic observation

    試料の傾斜角度を変えて撮影した2枚のSEM像を両目で見ることで、立体視をする方法。傾斜角度が大きくなると凹凸感が強調されるが、通常は、5~10゜程度がよく使われる。画像を観察する場合は、2枚のSEM像を左右に並べて見たり、それぞれの像に色づけして重ねて表示し、色フィルタを通して見る方法がある。色づけには、赤とシアン(青)、赤と緑などが使われる。

    ステレオ観察

  • ステレオ計測 (立体計測)
    stereoscopic analysis

    ステレオ観察用に撮影された、2枚のSEM像内の視差を利用して、高さを測定する方法。画面全体のデータを取り込んで各点の高さを求め、3次元表示を行うパーソナルコンピュータ用のソフトウェアもできているほか、測定精度を上げるため、3枚以上のSEM像を使う方法も発表されている。

    ステレオ計測

  • ストロボ像モード
    stroboscopic imaging mode

    ストロボSEMの観察モードの一つ。周期現象の特定の位相で、電子プローブを照射したり、信号を取り込みながらSEM像を作るもので、その位相での現象を静止像として得ることができる。

  • ストロボ波形モード
    stroboscopic waveform mode

    ストロボSEMの観察モードの一つ。試料上の選択した個所に電子プローブを止めたまま、照射する位相を1周期毎に少しずつずらしていくと、オシロスコープの時間軸を拡大するような感じで、周期現象の動作波形を観測することができる。電子プローブを連続的に照射したまま、信号の取り込みを1周期毎にずらしても同様のことができる。
    下図は、周期Tを持つ動作波形を観察するのにT+ΔTの周期で電子プローブを照射した場合を示したもので、T/ΔTの周期を持つ波形として観測される。

    波形モード

  • 走査速度
    scanning speed

    電子プローブを走査する速度。1秒当たりのフレーム数や1フレームを走査するのに掛かる時間で表す。走査速度が速ければ応答が速いので種々の操作に便利であるが、S/Nの悪いざらついた画像となるので、像の記録には通常50~100秒程度の遅い走査速度や高速走査速度の積算が用いられる。

  • 走査電子顕微鏡法
    scanning electron microscopy (SEM)

    走査電子顕微鏡を使った観察法。

  • 走査透過電子顕微鏡法
    scanning transmission electron microscopy (STEM)

    走査透過電子顕微鏡を使った観察法。

  • 組織化学SEM法
    histochemical scanning electron microscopy

    細胞や組織内の特定の物質の局在を調べる方法。SEMでは検出したい部位に重金属を付着させて、反射電子組成像で観察する方法が多く使われる。

  • 断面観察
    cross-sectional observation

    試料断面を観察することで、試料の内部構造や基板表面に積層された薄膜の成膜状況を観察すること。断面を作製するには、割断、機械研磨、ウルトラミクロトームによる切削のほかイオンビーム加工が用いられる。試料によっては断面を作製した後、適当な方法でコントラスト付けを行う必要がある。

  • 超低加速電圧観察
    ultra-low voltage observation

    試料の極表面を観察したり、試料の電子線損傷を減らす目的で行われる観察法。通常の低加速電圧観察と明確な区分けはないが、一般には、500V程度より低い加速電圧を使った観察を言う。

  • 低加速STEM
    low-voltage STEM

    SEMの付属機能としてSTEM観察ができるようにしたもので、最高加速電圧30kV程度のSTEM。なお、STEMと言うと、通常は専用機あるいはTEMの付属機能としてのSTEMを意味するが、これらは100~200kVの加速電圧を使っている。

  • 低加速電圧観察
    low-voltage observation,low-voltage scanning electron microscopy (LV-SEM)

    数kVより低い加速電圧を使った観察。熱電子銃SEMでは5kV程度まで低加速電圧として扱うが、FE-SEMでは1~2kV以下を意味することが多い。目的は、表面観察、非導電性試料の観察、試料損傷の低減などである。

  • 透過電子顕微鏡法
    transmission electron microscopy (TEM)

    透過電子顕微鏡を使った観察法。

  • 透視SEM
    see-through SEM

    多くの場合SEMは表面形態を観察する目的に使われているが、高加速電圧で内部形態を積極的に見ようとする使い方がある。これを透視SEMと呼ぶことがあり、永瀬らによって提唱された。

  • 光・電子相関顕微鏡法
    Correlative Light & Electron Microscopy (CLEM)

    タンパク質や組織の機能を蛍光顕微鏡によって同定し、その形態をSEMで観察する方法。
    特定の機能を持つタンパク質や組織の部位を蛍光標識し、光学顕微鏡の一種である蛍光顕微鏡を用いて同定し、SEMを用いてその部位の形態を高い空間分解能で微細観察する。バイオサイエンスで広く用いられる。

  • ビームシャワー
    beam shower

    高倍率で観察しようとする視野を、予め加速電圧を上げたりプローブ電流を増やして低倍率で走査すること。試料汚染防止法の一つ。試料自身が汚染物質を持ち込んだような場合に有効で、その部分を高倍率で観察しても試料汚染を起こさずにデータを得ることができる。試料表面の汚染物質を取り除くという考え方と、表面に薄く付着させることで特定の部分に集まらなくするという考え方がある。

  • 方位マッピング
    orientation mapping

    EBSDの応用技術の一つ。EBSDでは、方位解析を行いながら電子プローブで試料表面を走査するので、各点の方位情報が順次得られる。これを利用して結晶の方位マップを得る方法である。
    下図はICのボンディングワイヤーのECC像と逆極点図に従って色づけした方位マップである。ECC像では結晶粒に方位の違いがあることがわかるが、方位マップではそれに加えて各結晶粒の具体的な方位を知ることができる。

    方位マップ逆極点図

  • 無コーティング観察 (無蒸着観察)
    uncoated observation

    非導電性試料をコーティングせずに観察すること。非導電性試料を観察するときは、試料表面に金属を薄くコーティングするのが普通であるが、高倍率ではコーティング粒子が見えてしまったり、表面形態が変わったりすることがあるので、コーティングせずに観察することがある。ただし、帯電が起きないように観察条件を適切に選ぶ必要がある。

  • 免疫SEM法
    immuno-scanning electron microscopy

    SEMを使った免疫電子顕微鏡法。コロイド金で標識した抗体を使うことで、抗原の局在を知る方法が一般的である。超薄切片を使った免疫TEM法と違って、細胞表面に分布する抗原の局在を知ることができるのが特長である。観察には反射電子組成像を用いるのが普通である。コロイド金の他フェリチン粒子やラテックス球などを使う場合もある。

  • モンタージュ
    montage

    複数のSEM像をつなぎ、広い領域からの情報を得る手段。SEM像の最低倍率で得られる視野より広い領域全体を、一度に観察するのに有効な手段である。パーソナルコンピュータ制御のモーター駆動ステージを利用して、自動的にモンタージュを行うことも可能で、SEM像の観察だけでなく、広い領域の元素マッピングも可能である。

  • 立体像
    stereoscopic image

    ステレオ観察の結果として、脳で合成されて得られた像。あるいは、ステレオ計測で得られた試料各点の位置情報を使って、パーソナルコンピュータのモニター上に3次元表示された像を言う。

  • 粒子解析
    particle analysis

    SEM像や元素マップから粒子を分離・抽出し、画像解析を行うこと。面積、周囲長、直径などを測定したり、円形度、アスペクト比などを解析し、統計的に処理する。SEM像の場合、明るさを二値化するので、反射電子組成像がよく使われ、EDSの元素マッピング像が使われることもある。試料ステージを併用することで、広範囲の自動測定が可能である。