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富士フイルム和光純薬株式会社 東京工場

世界初※1、ISO24583(qNMR手法)を採用した認証標準物質(CRM)の生産を開始

qNMR(定量NMR)法は、日本産業規格(JIS)、そして国際規格(ISO)になっています。qNMR法のISOは、富士フイルム和光純薬株式会社、日本電子株式会社を含む5機関との共同研究により制定されました。富士フイルム和光純薬株式会社はこの分析法で必要となる標準物質や認証標準物質(CRM)を提供するとともに、自らの品質管理業務にqNMRを取り入れています。

※1 2023年10月30日現在

最新のJNM-ECZL400S

最新のJNM-ECZL400S

qNMRは100年ぶりのすごい分析法

「純度測定にNMRは使えないだろう」。富士フイルム和光純薬株式会社の山田裕子部長(試薬化成品事業部 生産統括本部 東京工場 品質管理部)は当初、そう思っていたそうです。

富士フイルム和光純薬株式会社 山田裕子部長

山田 裕子(やまだ ゆうこ) 様

富士フイルム和光純薬株式会社
試薬化成品事業部 生産統括本部 東京工場 品質管理部
品質保証本部 品質保証統括部 部長

NMRで濃度や純度が推測できることは知っていましたが、問題は精度。山田氏が籍を置く品質管理部は、出荷する試薬や化成品を分析・評価して成分を保証する立場です。保証レベルにもよりますが、純度については概ね1%の精度が出せないと手法として使えませんが、山田氏の認識ではNMRの精度はせいぜい5%で、分析の現場で広く利用されているのはクロマトグラフィ(以下、クロマト)でした。


ただし、クロマトでは測定対象物と同一の(純度が分かっている)標準物質が必要になります。このため新薬のように標準物質が作られていない対象物には使えません。山田氏はかつて医薬品・治験薬の分析を担当していたときに、クロマト以外の方法で純度を求めた経験があり、それは実に煩雑な工程を踏む方法だったそうです。あまりの煩雑さに思わず「NMRでシンプルに分析できたらなあ」「できたとしたらそれはクロマト以来100年ぶりのすごい分析法だ」と思ったといいます。


実は医薬品だけでなく、食品衛生分野やその他多くの分野でクロマト用の標準物質がない、あるいは入手しにくい状況は徐々に増えていました。日々、新たな有機化合物が生み出され、分析の対象とするべき物質が増えていたため、すべての物質に対して個別に標準物質を供給することが時間的にも経済的にも難しくなっていたのです。

共同研究でNMRの精度は上がっていった

こうした状況に対応できる新たな分析法はないか――
2008年、NMRによる定量分析法の実用化を目指して5機関※2 による共同研究が始まった背景にはそうした状況がありました。


※2 国立医薬品食品衛生研究所、独立行政法人産業技術総合研究所(現:国立研究開発法人産業技術総合研究所)、花王株式会社(2009年から参加)、和光純薬工業株式会社(現:富士フイルム和光純薬株式会社)、日本電子株式会社の5機関


共同研究は順調に成果を上げていきました。測定条件や解析条件を最適化し、それに合わせてソフトウェアをチューニングするといった作業を進めていくに従い、精度は徐々に改善していったのです。その経過を見て山田氏は「これはいけるぞ」と確信したといいます。熱望する100年ぶりの新たな分析法が見えてきたのです。

富士フィルム和光純薬 インタビュー

そしてqNMRは規格になっていきます。2018年に日本工業規格(現:日本産業規格、JIS)となり※3 、2022年には国際規格(ISO)として発行されるまでになりました※4


※3 JIS K 0138:2018 定量核磁気共鳴分光法通則(qNMR通則)

※4 ISO 24583「定量核磁気共鳴分光法 -食品に利用される有機化合物の純度評価- 1H NMR内標準法のための一般的要求事項」

分析現場のメリットも多い

富士フイルム和光純薬株式会社はqNMR向けの標準物質や認証標準物質を提供しています。標準物質といってもクロマトで用いるような、測定対象物と同一の物質ではありません。測定対象物と一緒に混ぜて測定することで分量計測の参考にするためのものです。一つの標準物質/認証標準物質でいくつもの測定対象物に対応できます。ただ、測定対象物とNMRスペクトルが重ならないことが重要ですし、溶媒が問題になることもあるのでいくつかの選択肢があると便利です。今後、数百の標準物質/認証標準物質試料を用意する予定だそうです。


認証標準物質は国際単位系(SI)にトレーサブルな標準物質なので、得られた分析値の信頼性を向上させたり、国際整合性を与えたりすることができます。富士フイルム和光純薬株式会社は、認定を受けた手法によって値付け(絶対純度評価)できる物質については、個別の認定を取得せずに、自社で認証標準物質を生産できるようになりました。


qNMRの普及に向けて旗を振る側にいる富士フイルム和光純薬株式会社ですが、一方で同社はNMRのユーザーでもあります。品質管理部では3台のNMR装置を分析用に使っていますが、2023年10月にはそのうち1台をqNMRの自動化に対応する最新のJNM-ECZL400Sに置き換えました。同社はqNMRによる評価作業を増やしていく予定なので、多くの測定対象物に対して迅速に効率よく対応するためだといいます。

すでにいくつもの品目で評価方法をqNMRに置き換えています。例えば同社が扱う農薬関連は約1000品目ありますが、そのうちの約700品目をqNMRによる分析に置き換えたそうです。値の信頼性が高く、クロマトに比べると測定時に調整する手間がほとんどなく、測定時間も短く済んでいるといいます。分析現場のメリットも多い分析法だと実感しているようです。

富士フイルム和光純薬株式会社は、十分な数の標準物質/認証標準物質を提供するにとどまらず、新たな要望に対しても迅速に提供できるという、まさに万全の供給体制を敷いてユーザーの多岐にわたる要望に臨んでいます。

富士フィルム和光純薬 インタビュー

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