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世界一使いやすい走査電子顕微鏡を作ろう

JEOL JSM-7900F 開発秘話

もし現代のカメラにオートフォーカスや自動露光機能が搭載されていなかったら、いったいどれくらいの人がSNSに写真をアップしているだろうか。
だれにでも撮れるものにする。それは市場を一気に拡大させる可能性を秘めている。

旗を揚げよ

どんな試料でもボタン操作ひとつで自動的に像を結ぶ、まったく新しい電子光学システムの開発。新澤はそのシステムに「Neo Engine(New Electron Optical Engine)」という名前をつけた。その名前に、チームのメンバーは色めき立った。
「自分たちがやっていた開発が、実はすごい革新につながりそうだということをメンバー全員が自覚しました。もちろん、それぞれの要素技術をひとつのシステムとして連動させられるようになるまでには、まださまざまな開発が必要なのですが、一刻も早く進めたいという熱意を、もう止めることはできませんでした」
ついに新澤は先行開発プロジェクトの存在を公にした。完全自動化というゴールは、全社から大きな驚きをもって迎えられ、製品化に向けたプロジェクトチームが編成された。開発が一歩進むたびに、新澤たちオリジナルチームが感じた驚きは、プロジェクトメンバーの間に少しずつ広がっていった。そしてわずか1年でプロトタイプが完成するところまでこぎつけたのだ。

最後の関門

新澤 雄彦(しんざわ たけひこ)

2015年9月、新澤はこのプロトタイプについて関係者と議論していた。
この中に居たアプリケーションを担当する者は、新しいコンセプトのFE-SEMに驚きを覚えつつも、欠けているものを敏感に感じていた。
問題とされたのは、試料に高電圧を印加して観察を行うGENTLEBEAM™ Super High Resolution(GBSH)モードを使用する際、扱える試料サイズが制限されること、特殊な試料ホルダーを使わなければならないことだ。試料サイズや試料ホルダーが限定されることはユーザーから長く改善要望が寄せられていた点で、使いやすさを標榜するなら、ここも改善するべきだというのがアプリケーション担当者の主張だった。
制御論、ハードウェア、自動調整機能の新しい3要素を取り込み「Neo Engine」を開発した。しかし、アプリケーション担当者からの指摘は、より良い操作体験を実現するために必要不可欠な機能であり、これを取り込んで初めてハイエンドFE-SEMの標準となるモデルと言える。新澤は設計担当者をまきこみ、この機能の完成に邁進した。

FANTASTIC!

それから半年、新澤は海外法人の関係者を前に開発内容を報告する機会があった。新澤の発表が終わり、実機を前にしてその性能の高さを証明すると、拍手が巻き起こった。海外プロダクトマネージャーからは「Fantastic !」という賛辞が送られた。
これを聞いた新澤は「これで行ける」と確信を得た。

初期ロット製造に当たり、社内の各部署でテストが行われた。製造部門から送られてきた金のナノパーティクルのサンプルの測定データは、低加速電圧での分解能が想定よりも高くなっていた。1.3nmのはずが、1.0nmに。Neo Engineが完成した瞬間である。
「像を見た瞬間もう釘付けで、間違いじゃないかと思ったくらい。昼の休憩時間中だったのですが、『とんでもないことが起きてます!』と上司に報告に走っていました」
2017年5月30日、満を持して超高空間分解能と高い操作性を兼ね備えたFE-SEM、JSM-7900Fが第73回日本顕微鏡学会で発表された。驚いたことに、その日のうちに早くも一台、販売先が決まった。その後も世界から反響が届いている。

JEOL JSM-7900F

「成功できた要因を考えてみると、加わる全エンジニアが同じ方向を向くことができたということが大きいです。もともとこの会社には熱意にあふれたエンジニアが多い。『完全自動化』というわかりやすく、しかも夢のような旗を掲げられたことで、そのエンジニアたちの力を結集することができました」と新澤は胸を張る。
「新しくもそれは紛れも無く日本電子の遺伝子が注入されたSEMでした。ハイエンドFE-SEMの新たな指標となり、今後日本電子のフラッグシップモデルとして君臨するモデルになると確信している」と話す新澤。白紙からのリスクをとった開発が効を奏したのだ。使いやすさへの挑戦は、まだ端緒に立ったばかりなのかもしれない、新澤は続ける。
電子顕微鏡が今のカメラのように、子どもでも使える道具になる時代、そんな時代を創り上げたい。

新澤 雄彦(しんざわ たけひこ)

新澤 雄彦(しんざわ たけひこ)

SM事業ユニット SM技術開発部
第1グループ グループ長

2001年1月 日本電子入社。
特技:ヴァイオリン演奏。好きな作曲家はフランク・ブラームス

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