HSQC-NOESYを利用したNOEの観測
NM200005
NOEは原子核の距離情報を得るのに有用な相関信号です。ただし2D NOESYでは一般的に対角信号に対して非常に小さな相関信号となります。そのため
化学シフトの近い1H同士の相関では、対角信号の裾に観測されるべき相関信号が埋もれてしまい、いくら積算しても観測されない場合があります。
こういった場合、感度は悪いですが対角信号の出ないHSQC-NOESYを利用することで相関信号を得ることができる可能性があります。
図1は45mg Diphenyl (2,4,6-trimethybenzol) phosphine oxide/CDCl3のNOESYスペクトルの拡大図です。明確な芳香族1H間の相関はH3/H1のみが観測されています。次に図2がHSQC-NOESYのパルスシーケンスです。1H軸および13C軸の二次元スペクトルが得られます。観測時に13Cデカップリングしていないため、HSQC相関は1JCHで分裂したダブレットとしてすべて同位相で観測されます。一方NOE相関は正のNOEの場合はHSQCと逆位相で観測されます。
実際のHSQC-NOESYスペクトルが図3です。NOESYでは対角信号と重なって観測できなかったH4/H1の相関に加え、化学シフトの等しいH3/H3の相関も観測できています(図4)。本試料で13Cデカップリングを行うとH4/H1およびH3/H3のNOE相関は相対的に大きなHSQC相関と重なってしまうため、13Cデカップリングは行いません。
図1: 1H-1H NOESYの拡大図
Scans=4, Y points=256, mixing time=3 s, exp. time=ca. 2.75h
図2: HSQC-NOESYのパルスシーケンス
図3: HSQC-NOESYの拡大図
図4: 図3のNOE相関一覧
使用装置
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