試料調整 ③
ER230006
気体試料のサンプリング
気体は誘電損失が小さいため ESR 測定に必要十分な濃度があれば、試料管の形状は自由に選択できます。しかし高濃度になると ESR 信号の線幅が増加するため、微細な分裂が消失することがあります。活性酸素種は短寿命のため、気相で ESR 測定することが難しく、液相でスピントラップ法を用いて間接的に測定されることが一般的です。スピントラップ法についてはアプリケーションノート ER070002、ER160010をご参照ください。
気体の ESR 測定例 - 酸素
ESR 装置の検出部(キャビティー)は空洞になっており、常に酸素が存在しています。酸素はラジカルですので、このまま ESR 測定すると青線のように酸素の ESR 信号が観測されます(図 1)。有機ラジカルなどの ESR 測定では、通常、赤枠の範囲を観測しますので、酸素の ESR 信号は測定にあまり影響を与えません。一方、金属イオンのように広い磁場領域に ESR 信号が観測される場合には、酸素の信号を除去したいことがあります。そのような場合、窒素ガスノズルより窒素ガスをキャビティー内に充填することで黒線のように酸素の ESR 信号を排除して測定を行うことができます。
図 1. 酸素の ESR 信号