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窒素キャリアガスを使用したHS-GC-MS法による水中の1,4-ジオキサン、VOCの一斉分析 [GC-QMS Application]

MSTips No.416

はじめに

GCのキャリアガスとして広く使われているヘリウム (He) は、様々な事情により、一時的な価格の上昇やその供給状態の不安定化等の問題を抱えることがある。He供給の遅滞等が発生した場合には代替ガスとして別種のキャリアガスの使用検討が必要になる。代替ガスとして主に水素と窒素が検討されており、水素は最適な分離を行える線速度域が広く、GCのキャリアガスとして適しているが、可燃・爆発の恐れから扱いに注意を要する。このため安全性を重視した場合、窒素ガスの方がGC-MSへの導入が比較的容易である。今回、ヘリウムの代替として窒素をキャリアガスに使用し、水質基準に関する省令により定められている水道水質基準および水質汚濁に係る環境基準において基準値が定められている揮発性有機化合物 (VOC) について、ヘッドスペース (HS)-GC-MS法による測定を試みた。その結果、良好な再現性と検出感度を示すデータを得ることができたので報告する。

JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta
w/ MS-62071STRAP

実験

測定はトラップ型ヘッドスペース装置MS-62071STRAPと、ガスクロマトグラフ質量分析計JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zetaを使用した。測定対象とする揮発性有機化合物は、Table 1に示した25成分で、該当成分のうち1,4-ジオキサンは1、5、10、50、100 μg/L、それ以外の成分は0.1、0.5、1、5、10 μg/Lとなるように水溶液を調製し、測定試料とした。尚、各測定試料には、内部標準物質として、フルオロベンゼンおよびp-ブロモフルオロベンゼンを2 μg/L、1,4-ジオキサン-d8を10 μg/Lの濃度で添加した。

Table 1 Target VOC list

Benzene Dibromochloromethane trans-1,2-Dichloroethylene 1,4-Dioxane 1,1,1-Trichloroethane
Bromodichloromethane p-Dichlorobenzene Dichloromethane MTBE 1,1,2-Trichloroethane
Bromoform 1,2-Dichloroethane 1,2-Dichloropropane Tetrachloroethylene m-Xylene
Carbon tetrachloride 1,1-Dichloroethylene cis-1,3-Dichloropropene Toluene o-Xylene
Chloroform cis-1,2-Dichloroethylene trans-1,3-Dichloropropene Trichlorethylene p-Xylene

各測定試料は、10 mL当たり3 gの塩化ナトリウムを添加した後、Table 2に示した測定条件下で測定し、検量線を作成した。また、各種法規制において必要とされる定量下限として1,4-ジオキサンは5 μg/L、それ以外のVOCは0.2 μg/Lという濃度が設定されている。今回測定した測定試料のうち定量下限に近しい濃度として、1,4-ジオキサンは1 μg/L、それ以外のVOCは0.1 μg/Lの測定試料を試行回数n=5で連続測定し、定量値の変動係数 (C.V.) を算出した。

Table 2 Measurement Condition

Parameter Value
HS Sample temp. 70°C
Sampling mode Trap (Number of samplings = 3)
Heating time 15 min
Trap tube AQUATRAP1 (GL Sciences Inc.)
GC Column InertCap AQUATIC (GL Sciences Inc.),
length 60 m, inner diameter 0.32 mm, film thickness 1.4 μm
Oven temp. 40°C (3 min) → 10°C/min → 200°C (5 min)
Injection port temp. 200°C
Injection mode Pulsed split (1/5), Pulsed time = 3 min
Carrier gas Nitrogen, 13.79 kPa, Constant pressure
MS Interface temp. 200°C
Ion source temp. 250°C
Ionization EI (20 eV, 50 μA)
Acquisition mode SIM

測定結果

各濃度の試料 (1,4-ジオキサン: 1、5、10、50、100 μg/L、他VOC: 0.1、0.5、1、5、10 μg/L) を測定し、作成した検量線をFigure 1に示した。また、各種法規制の定量下限に近しい測定試料 (1,4-ジオキサンは1 μg/L、それ以外のVOCは0.1 μg/L) を5回連続測定した際の変動係数および検量線の相関係数をTable 3に示した。

 

Figure 1

Figure 1 Calibration curve of each VOC

Table 3 C.V. and Correlation coefficient (R) of each VOC at 0.1 μg/L concentration and 1,4-Dioxane at 1 μg/L concentration

Compound name C.V. R
1,1-Dichloroethylene 0.7% 0.99991
Dichloromethane 0.8% 0.99999
MTBE 1.3% 1.00000
trans-1,2-Dichloroethylene 0.6% 1.00000
cis-1,2-Dichloroethylene 0.8% 0.99999
Chloroform 0.7% 0.99997
1,1,1-Trichloroethane 0.3% 0.99996
Carbon tetrachloride 0.4% 0.99999
1,2-Dichloroethane 2.1% 1.00000
Benzene 0.2% 0.99999
Trichlorethylene 0.5% 0.99996
1,2-Dichloropropane 1.2% 0.99995
Compound name C.V. R
Bromodichloromethane 1.1% 0.99983
1,4-Dioxane 6.0% 1.00000
cis-1,3-Dichloropropene 1.8% 0.99981
Toluene 0.2% 0.99995
trans-1,3-Dichloropropene 2.2% 0.99983
1,1,2-Trichloroethane 0.7% 0.99999
Tetrachloroethylene 1.6% 0.99992
Dibromochloromethane 0.6% 0.99963
m, p-Xylene 0.6% 0.99994
o-Xylene 0.4% 0.99997
Bromoform 1.5% 0.99928
p-Dichlorobenzene 0.4% 0.99999

検量線の相関係数については、全てのVOCで0.999以上であり、良好な直線性が得られている。また、定量下限付近の濃度における変動係数も1,4-ジオキサンで6%、それ以外のVOCで5%以下となり、各種法規制が必要とする20%以下の値を十分に満たす結果が得られている。

下限値付近の測定試料 (1,4-ジオキサンは1 μg/L、それ以外のVOCは0.1 μg/L) を5回連続測定した際の1回目における各VOCのSIMクロマトグラムをFigure 2に示した。最も感度を得るのが難しい成分の1,4-ジオキサンにおいても十分な強度でピークが検出されていることがわかる。

 

Figure 2

Figure 2 SIM chromatogram of each VOC at 0.1 μg/L concentration and 1,4-Dioxane at 1 μg/L concentration

結論

窒素をキャリアガスに使用して、HS-GC-MS法によりVOCの測定を試みた。各種法規制に基づく水中VOCの測定に関して、通常必要とされる定量下限濃度は、1,4-ジオキサンは5 μg/L、それ以外の成分は0.2 μg/Lとされているが、今回それらを十分に満たす結果が得られた。

 

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