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マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計 (MALDI-TOFMS)

MALDI法とは?

マトリックス支援レーザー脱離イオン化 (MALDI: Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization) は、質量分析法のイオン化法の中で代表的なソフトイオン化の1つです。文字通り「マトリックス」と呼ばれるイオン化支援剤とサンプルを混合し、その上から紫外光レーザー (波長350 nm前後) を照射し、脱離イオン化する手法です。

マトリックス支援レーザー脱離イオン化

マトリックス溶液と試料溶液を混合し、ステンレス製プレートの上に0.5~1 uL程度滴下して乾燥し共結晶を作成します。その上からパルス紫外レーザーを照射し、紫外光はマトリックスに吸収され熱に変換され試料分子を脱離イオン化します。試料に応じて適切にマトリックスを選択することで、分子量数百から数10万の高分子をおもに1 価イオンで検出することが可能です。

JMS-S3000 SpiralTOF™-plus 2.0

JMS-S3000 SpiralTOF™-plus 2.0

MALDI-TOFMSについて

MALDI法は飛行時間質量分析計 (TOFMS) と相性がよいことが知られています。イオンを真空中で一定距離飛行させる場合、飛行時間 (t) とイオンの質量の平方根 (√m) が比例関係にあり、質量の小さいイオンは質量の大きいイオンよりも早く検出器に到達します。これを利用して質量分離を行うのが飛行時間質量分析計の基本原理です。飛行距離が長いほど質量分離が良い、すなわち質量分解能が高いということになります。

MALDI-TOFMSについて

JMS-S3000 "SpiralTOF™"シリーズは高質量分解能を誇るSpiralTOFを基本とし、LinearTOFオプション、TOF-TOFオプションを装着することで用途に応じて測定モードを切り替えることができます。

  • SpiralTOFモード:
    らせん軌道型のイオン光学系はコンパクトな空間に長い飛行距離 (17 m) を有し、イオンを収束させながら飛行させるため、高い質量分解能・質量精度と同時に高感度も実現しています。高分解能TOFMSとして一般的なリフレクトロン型よりも幅広い質量範囲で高質量分解能・高質量精度を可能にします。主に分子量1万以下の精密質量測定に利用ができ、幅広い分析に対応可能です。

  • LinearTOFモード:
    直線型のイオン光学系です。もっともシンプルなイオン光学系であり、高分子量のサンプルを測定可能です。主にタンパク質や高分子量ポリマーの分析に使用します。

  • TOF-TOFモード:
    第1TOFMSにSpiralTOF、第2TOFMSにリフレクトロン型TOFMSを配置したタンデム飛行時間質量分析計です。高エネルギー衝突誘起解離による情報量豊富な開裂パターンから構造解析が可能です。

MALDI-TOFMSの応用範囲

MALDI-TOFMSの応用範囲

試料に応じて適切にマトリックスを選択することで、広範な有機化合物の分析が可能です。

ポリマー・材料・化学

ポリマー・材料・化学

ライフサイエンス

ライフサイエンス

マスイメージング

MALDI-TOFMSは、集光されたレーザーを用いてイオン化を行います。そのため、レーザー照射位置を走査しながら順次マススペクトルを取得し、任意の有機化合物のイオン強度の空間的な分布を可視化できます。この技術は、マスイメージングと呼ばれています。マスイメージングは、組織切片中のタンパク質・ペプチド・脂質・薬物動態の分布解析など生体試料を対象とした分析で技術革新が進みました。近年では、このマスイメージング技術は高分子材料分析への応用も広がっています。

マスイメージング

ケンドリックマスディフェクト解析

MALDI-TOFMSは、合成高分子分析と非常に相性の良い装置です。モノマー、末端基、分子量分布などのポリマー情報や添加剤情報を引き出すことが可能です。
しかしながら、大量のピークから必要な情報を手動で抽出することは容易ではありません。この作業を劇的に効率化するのがケンドリックマスディフェクト解析です。
ケンドリックマスディフェクト (KMD) 解析は、Edward Kendrick により1963年に提案された手法で、石油化学分野において今日でも使用されています。高分解能質量分析計から得られる精密質量情報を利用してマススペクトルを二次元のプロット(KMDプロット)に展開することで、原油のような、炭化水素を主成分とする極めて複雑な混合物のマススペクトルピークを、炭化水素の不飽和度や、ヘテロ元素の有無によって分類することが可能です。
近年、このケンドリックマスディフェクト法の原理が合成高分子の高質量分解能マススペクトルの解析に応用されています。KMDプロットを作成すると、複雑なマススペクトルに含まれるポリマーの種類・数を、個々のマススペクトルピークをアサインすることなく可視化できます。

ケンドリックマスディフェクト解析

◆上のボックス内の再生ボタンをクリックするとムービーが始まります (約4分) ◆

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