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窒素キャリアガスを使用したホルムアルデヒド、フェノール類、ハロ酢酸類の同一カラム分析 [GC-QMS Application]

MSTips No. 386

はじめに

GCのキャリアガスとして広く使われているヘリウムは、様々な事情により、一時的な価格の上昇やその供給状態の不安定化等の問題を抱えることがあり、供給の遅滞等が発生した場合には一時的に代替ガスとして別種キャリアガスの使用の検討を迫られる場合がある。ヘリウムの代替ガスとしては主に水素と窒素が検討されており、特に水素は、最適な分離を行える線速度域が広く、GCのキャリアガスとしては適している。しかし、一方で水素は、可燃・爆発の恐れから扱いに注意を要するため、安全性を重視した場合、窒素ガスの方が既存のGC-MSへの導入が比較的容易である。
今回ヘリウムの代替として窒素をキャリアガスに使用して、水質基準に関する省令により定められているホルムアルデヒド、フェノール類、ハロ酢酸類の測定を試みた。その結果、水質検査において必要とされる感度・再現性が得られたので報告する。

測定条件

各項目を測定する際の測定条件をTable 1に示した。使用するカラムは同一で、GCオーブンの昇温条件のみ変更することで各項目の測定に対応した。尚、MSのSIM取り込みにおける各分析対象成分のモニターイオンは、「水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法 ( → 以後、告示法)」及び「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について ( → 以後、通知法)」記載の値を使用した。

Table 1 Measurement conditions of each item

Haloacetic acids Formaldehyde Phenols
GC Column ZB-1 (Phenomenex Inc.), 60 m x 0.25 mm id, 1 μm film thickness
Oven 50°C (2 min) → 5°C / min → 100°C (0 min) → 10°C / min→ 280°C (0 min) 50°C (2 min) → 5°C / min → 100°C (0 min) → 10°C / min→ 280°C (0 min) 50°C (2 min) → 5°C / min → 100°C (0 min) → 10°C / min→ 280°C (0 min)
Carrier gas 0.6 mL / min (Constant Flow)
Inlet temp. 250°C
Injection mode Pulsed Splitless
Injection volume 3 μL
MS Interface temp. 250°C
Ion source temp. 250°C
Acquisition mode SIM
Monitor ion Chloroacetic acid (m/z 77,108)
Dichloroacetic acid (m/z 83, 85)
Trichloroacetic acid (m/z 117, 119)
Formaldehyde (m/z 161, 181, 195) Phenol (m/z 151, 166)
2-Chlorophenol (m/z 185, 200)
4-Chlorophenol (m/z 185, 200)
2, 4-Dichlorophenol (m/z 219, 234)
2, 6-Dichlorophenol (m/z 219, 234)
2, 4, 6-Trichlorophenol (m/z 253, 268)

ハロ酢酸類

試料調製

誘導体化処理後の化合物であるクロロ酢酸メチル、ジクロロ酢酸メチル、トリクロロ酢酸メチルについて、処理前の検水中のハロ酢酸の濃度として0.002, 0.004, 0.008, 0.02, 0.04 mg / Lとなるよう、MTBEで段階的に希釈して調整した。内部標準物質は、各測定試料に1, 2, 3-トリクロロプロパンを0.1 mg / Lの濃度となるように添加した。

測定結果

ハロ酢酸類の基準値は、クロロ酢酸が0.02 mg / L、ジクロロ酢酸とトリクロロ酢酸は0.03 mg / Lである。ハロ酢酸類の検量線をFigure 1、検量線の下限濃度 ( →0.002 mg / L)におけるSIMクロマトグラムをFigure 2、下限濃度の試料をn=6で連続測定した際の定量値およびその変動係数 (C.V.) をTable2に示した。検量線は全ての成分で相関係数が0.999以上であり、良好な直線性が得られており、下限濃度における定量値のC.V.も5%以下と良好な結果が得られた。

Figure 1 Chroloacetic acid
Figure 1 Dichroloacetic acid
Figure 1 Trichroloacetic acid

Figure 1 Calibration curvew of each haloacetic acids

Figure 2 Chroloacetic acid
Figure 2 Dichroloacetic acid
Figure 2 Trichroloacetic acid

Figure 2 SIM chromatograms of each haloacetic acids at 0.002 mg / L

Table 2 Coefficient of variation (C.V.) of each haloacetic acids

Compound name Quantitation value [mg / L] C.V.
#1 #2 #3 #4 #5 #6
Chroloacetic acid 0.0018 0.0019 0.0018 0.0019 0.0019 0.0019 2.3%
Dichroloacetic acid 0.0018 0.0018 0.0019 0.0018 0.0018 0.0018 1.6%
Trichroloacetic acid 0.0018 0.0018 0.0018 0.0019 0.0017 0.0017 4.8%

フェノール類

試料調整

フェノール、2-クロロフェノール、4-クロロフェノール、2, 4-ジクロロフェノール、2, 6-ジクロロフェノール、2, 4, 6-トリクロロフェノールを、処理前の検水中の濃度として0.00005, 0.0001, 0.0002, 0.0005, 0.001, 0.002 mg / Lとなるよう、酢酸エチルで段階的に希釈した後、分取した溶液1 mLにN,O-ビス (トリメチルシリル) トリフルオロアセトアミドを50 μL添加し、1時間静置したものを検液とした。内部標準物質は、アセナフテン-d10を0.2 mg / Lの濃度となるように添加した。

測定結果

フェノール類は、2-クロロフェノール、4-クロロフェノール、2, 6-ジクロロフェノール、2, 4-ジクロロフェノール、2, 4, 6-トリクロロフェノールの6種類が対象となり、各成分をフェノールの量に換算した合算値として0.005 mg / Lが基準値となる。フェノール類は合算値としての処理になるため、個々の成分については基準値の1/10である0.0005 mg / Lを下回る濃度での検出能力が望まれる。フェノール類の検量線をFigure 3、検量線の下限濃度 ( → 0.05 μg / L) におけるSIMクロマトグラムをFigure 4、下限濃度の試料をn=6で連続測定した際の定量値およびその変動係数 (C.V.)をTable3に示した。検量線は全ての成分で相関係数が0.999以上であり、良好な直線性が得られており、下限濃度における定量値のC.V.も5%以下と良好な結果が得られた。

Figure 3 Phenol
Figure 3 2-Chlorophenol acid
Figure 3 4-Chlorophenol acid
Figure 3 2,6-Dichlorophenol
Figure 3 2,4-Dichlorophenol acid
Figure 3 2,4,6-Trichlorophenol acid

Figure 3 Calibration curves of each phenols

Figure 4 Phenol
Figure 4 2-Chlorophenol acid
Figure 4 4-Chlorophenol acid
Figure 4 2,6-Dichlorophenol
Figure 4 2,4-Dichlorophenol acid
Figure 4 2,4,6-Trichlorophenol acid

Figure 4 SIM chromatograms of each phenols at 0.05 μg / L

Table 3 Coefficient of variation (C.V.) of each phenols

Compound name Quantitation value [μg / L] C.V.
#1 #2 #3 #4 #5 #6
Phenol 0.060 0.061 0.062 0.062 0.064 0.063 2.1%
2-Chlorophenol 0.050 0.049 0.050 0.049 0.049 0.048 1.2%
4-Chlorophenol 0.048 0.049 0.049 0.048 0.048 0.049 0.6%
2, 4-Dichlorophenol 0.048 0.047 0.050 0.046 0.052 0.047 4.5%
2, 6-Dichlorophenol 0.047 0.048 0.049 0.046 0.051 0.047 3.7%
2, 4, 6-Trichlorophenol 0.048 0.056 0.055 0.052 0.055 0.057 5.9%

ホルムアルデヒド

試料調整

誘導体化処理後の化合物であるPFBOA-ホルムアルデヒドについて、処理前の検水中のホルムアルデヒドの濃度として0.006, 0.012, 0.024, 0.06, 0.12, 0.24 mg / Lとなるよう、n-ヘキサンで段階的に希釈して調整した。内部標準物質は、各測定試料に1-クロロデカンを0.1 mg / Lの濃度となるように添加した。

測定結果

ハロ酢酸類の基準値は、0.08 mg / Lである。ホルムアルデヒドの検量線をFigure 5、検量線の下限濃度 (→0.006 mg / L) におけるSIMクロマトグラムをFigure 6、下限濃度の試料をn=6で連続測定した際の定量値およびその変動係数 (C.V.) をTable4に示した。検量線は全ての成分で相関係数が0.999以上であり、良好な直線性が得られており、下限濃度における定量値のC.V.も5%以下と良好な結果が得られた。

Figure 5

Figure 5 Calibration curve of formaldehyde

Figure 6

Figure 6 SIM chromatogram of formaldehyde at 0.005 mg / L

Table 4 Coefficient of variation (C.V.) of formaldehyde

Compound name Quantitation value [μg / L] C.V.
#1 #2 #3 #4 #5 #6
Formaldehyde 0.0054 0.0054 0.0054 0.0054 0.0053 0.0053 1.1%

まとめ

窒素キャリアガスに使用して、水質基準に関する省令により定められているハロ酢酸類、フェノール類,ホルムアルデヒドの測定を試みた結果、検量線の直線性と基準値の1/10以下の濃度における再現性について検証した結果は良好であった。以上の結果より、ハロ酢酸類、フェノール類,ホルムアルデヒドについて窒素キャリアガスを利用した分析は十分に可能であることが確認できた。

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