植物から抽出した化合物の抗酸化活性の評価方法～古代色素シコニンは活性酸素と反応する～
ER040002
Shikoninの化学的構造
活性酸素との反応性を検討する場合、ヒポキサンチン(HPX)とキサンチンオキシダーゼ(XOD)の反応によってリン酸緩衝液中に存在する酸素を一電子還元反応させます。これで酸素からスーパオキシドアニオンラジカル（O2. –）を作り、試験管のなかで、SKとトラッピング試薬のDMPO （5,5-Dimethyl-1pyrrolin- N-Oxide）と反応させます。このとき、DMPOの濃度を一定として、目的のSkの濃度を変化させると、協奏（競争）反応を成立さることができます。Skは化学構造から脂溶性の高い化合物で、酵素反応を利用した水溶液中では、アセトンに溶解させ、緩衝液に添加しました。
一方、DMPOは、ハイドロキシラジカル(・OH)やO2. –などの活性酸素種を選択的に捕捉し、比較的安定なラジカル化合物としてESRで観測することが可能です。O2. –や・OHを捕捉したDMPOはそれぞれ異なったシグナルを呈します。これにより活性酸素種の生成反応に応用した場合、活性酸素種をESRスペクトルから特定することができます。今回のSKとDMPOの協奏（競争）反応が成立した場合を下記に示します。これらのスペクトルからSkの濃度依存的にDMPO-adductのESRスペクトルが変化していることが確認できました。また、高濃度のSkが存在すると、DMPO-OOHの信号強度が減少し、相補的にSkのラジカルが確認されました。これは、O2. –がSKと反応して還元され、Skは水素を引き抜かれてラジカル化したことを示しています。なお、DMPOは金属や酸化力あるいは還元力の強い化学物質と反応しますので注意が必要です。
THE MERCK INDEX TENTH EDITION より引用
“紫色”は奈良・平安時代の貴族たちは高貴な色とされ、その染料の原料である“紫草”に恋心を絡ませて短歌を作りました。また、“紫草”で染め上げた布をあたまからかぶると肺病を遠ざけるとも信じられてきました。さらに、江戸時代中期になると、“紫草”の根（紫根）は漢方薬の成分としても利用され、華岡青洲はこの生薬を火傷などの皮膚疾患治療薬の“紫雲膏”に使用し、現在では医薬品の原料として利用されています。この紫根から抽出されたキノン化合物が、Shikonin（Sk）、その光学異性体のAlkannin (Ak)です。その構造を上に示します。現在、この紫根の主要成分であるシコニンは、 抗炎症、肉芽腫形成促進、抗腫瘍活性などの薬理効果が報告されています。
活性酸素との反応性を検討する場合、ヒポキサンチン(HPX)とキサンチンオキシダーゼ(XOD)の反応によってリン酸緩衝液中に存在する酸素を一電子還元反応させます。これで酸素からスーパオキシドアニオンラジカル（O2. –）を作り、試験管のなかで、SKとトラッピング試薬のDMPO （5,5-Dimethyl-1pyrrolin- N-Oxide）と反応させます。このとき、DMPOの濃度を一定として、目的のSkの濃度を変化させると、協奏（競争）反応を成立さることができます。Skは化学構造から脂溶性の高い化合物で、酵素反応を利用した水溶液中では、アセトンに溶解させ、緩衝液に添加しました。
一方、DMPOは、ハイドロキシラジカル(・OH)やO2. –などの活性酸素種を選択的に捕捉し、比較的安定なラジカル化合物としてESRで観測することが可能です。O2. –や・OHを捕捉したDMPOはそれぞれ異なったシグナルを呈します。これにより活性酸素種の生成反応に応用した場合、活性酸素種をESRスペクトルから特定することができます。今回のSKとDMPOの協奏（競争）反応が成立した場合を下記に示します。これらのスペクトルからSkの濃度依存的にDMPO-adductのESRスペクトルが変化していることが確認できました。また、高濃度のSkが存在すると、DMPO-OOHの信号強度が減少し、相補的にSkのラジカルが確認されました。これは、O2. –がSKと反応して還元され、Skは水素を引き抜かれてラジカル化したことを示しています。なお、DMPOは金属や酸化力あるいは還元力の強い化学物質と反応しますので注意が必要です。
ESRスペクトルのSk濃度依存的変化：右のシグナルはSk高濃度の場合のシグナルをそのシグナルに合わせて条件を最適化したSkのセミキノンラジカルのスペクトル。
参考文献
- Tsujita T, Okamoto S, Tajima K, Azuma N, Kohno M, Makino K, Ishizu K: Superoxide anion radical scavenging activity of ancient dye “shikonin” as studied by electrochemical and ESR analysis. Kamada H., Ohya H. eds, “The proceedings of the 2nd international Conference on Bioradicals”, 8-9, Yamagata Technopolis foundation, Yamagata, 1997.
- Sekine T, Masumizu T, Maitani Y, Nagai T: Evaluation of superoxide anion radical scavenging activity of shikonin by electron spin resonance, Int. J. pharm., 174; 133, 1998
