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水素キャリアガスを使用したGC-MS法によるフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ジクロロアセトニトリルおよび抱水クロラールの分析 [GC-QMS Application]

MSTips No.397

MSTips No.397

1. はじめに

JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta

GCのキャリアガスとして広く使われているヘリウム (He) は、様々な事情により、一時的な価格の上昇やその供給状態の不安定化等の問題を抱えることがあり、供給の遅滞等が発生した場合には代替ガスとして別種のキャリアガスの使用検討が必要になる。代替ガスとして主に水素と窒素が検討されており、特に水素は最適な分離を行える線速度域が広く、GCのキャリアガスとして適している。今回、水道水質検査における水質管理目標設定項目のフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ジクロロアセトニトリル、抱水クロラールを水素キャリアガスでMSTips No.325と同様に同一カラムで測定した。結果、検量線の直線性と定量下限における再現性について全ての化合物で良好な結果が得られたので本報において紹介する。

1.1 測定条件

測定はガスクロマトグラフ四重極質量分析計「JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta」を用いた。測定条件をTable 1に示す。前述の通り、使用するカラムは同一で、GC条件を変更することで各化合物の測定に対応した。尚、MSのSIM取り込みにおける各分析対象成分のモニターイオンは、「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について (→以後、通知法) 」記載の値を使用した。

 

Table 1. Measurement Condition of Each Compound

Parameter value
Di(2-ethylhexyl)phthalate Dichloroacetonitrile & Chloralhydrate
GC Oven temp. 50°C(2min)→20°C/min→180°C(0min)→5°C/min
→260°C(10.5min)→10°C/min→280°C(5min), Total 42min
35°C(3.5min)→15°C/min→100°C(0min)
→20°C/min→250°C(3min), Total 18.3min
Column flow (Hydrogen) 1.3mL/min 1.5mL/min
Injection mode Splitless, Purge time 1min PulsedSplitless, Purge time 0.4min
Injection volume 1uL 2uL
Column GL Sciences Inc. InertCap 1MS, 30m x 0.25mm id, 1μm film thickness
Inlet temp. 250°C
MS Interface temp. 250°C
Ion source temp. 250°C
Ionization EI(70eV, 50μA)
Acquisition mode SIM

2. フタル酸ジ-2-エチルヘキシル

2.1. 測定方法

処理前の検水中フタル酸ジ-2-エチルヘキシルの濃度として5, 10, 15, 20μg/Lとなるよう、n-ヘキサンで段階的に希釈して調製した。内部標準物質としてフェナントレン-D10を測定試料に250μg/Lの濃度となるように添加した。

2.2. 測定結果

フタル酸ジ-2-エチルヘキシルの検量線をFigure 1に示した。相対検量線の直線性については、相関係数が0.999以上であった。5μg/Lの試料をn=5で連続測定した際のSIMクロマトグラムと定量値の変動係数の値をFigure 2とTable 2にそれぞれ示した。目標値80μg/Lの1/10以下である5μg/Lにおける定量値の変動係数は5%以内と良好な結果が得られた。

Figure 1. Calibration curve of Di (2-ethylhexyl) phthalate

Figure 2. SIM chromatogram of Di (2-ethylhexyl) phthalate at 5μg/L

Table 2. Coefficient variation (C.V.) of Di (2–ethylhexyl) phthalate at 5μg/L

Compound Quantitation value(μg/L) C.V. %
#1 #2 #3 #4 #5
5.24 5.04 5.33 5.24 5.10 2.2

3. ジクロロアセトニトリルおよび抱水クロラール

3.1. 測定方法

処理前の検水中ジクロロアセトニトリルおよび抱水クロラールの濃度として1, 3, 5, 15μg/Lとなるよう、MTBEで段階的に希釈して調製した。内部標準物質として1,2,3-トリクロロプロパンを測定試料に125μg/Lの濃度となるように添加した。

3.2. 測定結果

ジクロロアセトニトリルおよび抱水クロラールの検量線をFigure 3に示した。相対検量線の直線性については、相関係数が0.999以上であった。1μg/Lの試料をn=5で連続測定した際のSIMクロマトグラムと定量値の変動係数の値をFigure 4とTable 3にそれぞれ示した。目標値 (ジクロロアセトニトリル:10μg/L、抱水クロラール:20μg/L) の1/10以下である1μg/Lにおける定量値の変動係数は5%以内と良好な結果が得られた。

Dichloroacetonitrile R=0.9999981
Chloralhydrate R=0.9999958

Figure 3. Calibration curve of dichloroacetonitrile & chloralhydrate

Dichloroacetonitrile
Chloralhydrate

Figure 4. SIM chromatograms of dichloroacetonitrile & chloralhydrate at 1μg/L

Table 3. Coefficient variation of dichloroacetonitrile & chloralhydrate at 1μg/L

Compound name Quantitation value (μg/L) C.V.%
#1 #2 #3 #4 #5
Dichloroacetonitrile 1.01 1.00 1.03 1.01 1.01 0.7
Chloralhydrate 1.04 1.05 1.08 1.01 1.04 2.4

4. まとめ

フタル酸ジ (2-エチルへキシル)、ジクロロアセトニトリルおよび抱水クロラールについて、水素キャリアガスにおける同一カラムでの測定を検討した。検量線の直線性と目標値の1/10以下の濃度における再現性の結果は良好であり、水素キャリアガスにおける同一カラムによる測定は十分に可能であることを確認した。

 

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