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熱分解GC/MS/MSを用いたマイクロプラスチック分析-2 [GC-TQMS Application]

MSTips No.431

はじめに

マイクロプラスチック(MPs)は、海の生態系への影響及び人体への影響が懸念されていることから国際的に研究が行われている。一般的にMPsとは、5 mm以下の粒子径のプラスチックを指す。MPsの分析は、これまで顕微鏡やFT-IRを用いてポリマーの種類と数について分析が行われていた。一方、近年ではポリマーの種類とその量について分析が行われている。ポリマーの種類と量の確認には、熱分解装置と組み合わせたGC/MSによる測定が適している。環境試料中に多量に含まれるポリマー成分はSCAN測定により確認し、微量に含まれるポリマー成分はSIM測定により確認を行うことが考えられる。しかし、SIM測定では、多量に含まれるポリマー成分や添加剤成分などからの夾雑成分の影響を受けやすくなるため、微量ポリマー成分の定性・定量解析には課題がある。これに対し、GC/MS/MSのSRM測定であれば、選択したプリカーサーイオンとプロダクトイオンの組み合わせによる測定となるため、夾雑成分からの影響を抑えることができる。さらに、SIM測定では、分子イオンもしくはフラグメントイオンの1種類のイオンを用いた測定であるのに対し、SRM測定では、プリカーサーイオンとそのプリカーサーイオンから生成されるプロダクトイオンの2種類のイオンを用いた測定となるため、微量成分の定性解析能力も向上する。既にMSTips 405において、PPに微量に含まれるPSの分析結果を報告した。今回は、PPに含まれるポリマーの種類を増やし本手法が適用可能か検証したので報告する。

測定条件

測定は熱分解装置 (PY-3030D、フロンティア・ラボ製) と、ガスクロマトグラフ三連四重極質量分析計JMS-TQ4000GC UltraQuad™ TQを使用した。今回の測定対象ポリマーとしては、生産量の多いPP、PVC、PSに加えて、コップや衣服などに用いられているPMMAやNylonを対象としてモデル試料を調製した。測定条件をTable 1に示し、SRMのトランジションをTable 2に示す。

Table 1 Measurement condition

Table 2 SRM transition

結果

  • 多量に含まれるポリマー成分の確認

Fig. 1(a)にTICCとFig. 1(b)にTICCから得られた合算マススペクトルとFig. 1(c)にF-Search(フロンティア・ラボ製)によるデータベース検索結果を示す。主にポリマーの熱分解成分と推測される多数のピークがTICC上に観測された。マススペクトルを確認したところ、PPを熱分解した際に観測される14 u間隔のフラグメントピークが確認できた。さらに、データベース検索結果からもPPを示す結果が得られた。以上のように、多量に含まれるポリマー成分は、SCAN測定とデータベース検索により確認することができる。

Fig. 1 TICC (a), mass spectrum (b) and database search result (c)

  • 微量に含まれるPMMA、PVC、Nylon6とPS成分の確認

Fig. 2にSRM測定によって得られたMethyl methacrylate(PMMA)、Naphthalene (PVC)、Biphenyl (PVC)、Caprolactam (Nylon6)、Styrene dimer (PS)とStyrene trimer (PS)のクロマトグラムピークを示す。複数のモニターイオン且つプリカーサーイオンとプロダクトイオンの関係から観測されたピークが目的成分由来である事が確認できる。

Fig. 2 SRM chromatogram peaks of each target compound

  • 微量に含まれるPMMA、PVC、Nylon6とPS成分の定量結果

観測された各目的成分のピーク面積値を用いて、各標準試料から作成した1点検量線より定量値を算出した。Fig. 3に各目的成分のクロマトグラムピーク示し、Table 3に定量値とその定量値から算出した回収率を示す。回収率は92~122%であり、変動係数の値は1.7~6.1%と再現性の高い結果であった。

Fig. 3 SRM chromatogram peaks of each quantitative compound

Table 3 Quantitative value, recovery percentage and CV of each quantitative compound

まとめ

MPsの分析には、熱分解GC/MS/MSのSCAN/SRM測定が有効な測定方法となる。多量に含まれるポリマー成分はSCAN測定とデータベース検索により確認し、微量に含まれるポリマー成分はSRM測定で確認を行うことができる。SRM測定は、夾雑成分からの影響を抑える事ができると共に、 SIM測定よりも多くのイオンを用いた測定となるため、微量成分の定性解析能力が向上する。それによって、より正確な測定を行うことができる。

分野別ソリューション

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