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窒素をキャリアガスに使用したHS-GC-MS法によるカビ臭物質の分析 [GC-QMS Application]

MSTips No.408

はじめに

ヘッドスペースオートサンプラ (HS)

JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta
w / MS-62071STRAP

GCのキャリアガスとして広く使われているヘリウム (He) は、様々な事情により、一時的な価格の上昇やその供給状態の不安定化等の問題を抱えることがあり、供給の遅滞等が発生した場合には代替ガスとして別種のキャリアガスの使用検討が必要になる。代替ガスとして主に水素と窒素が検討されており、水素は最適な分離を行える線速度域が広く、GCのキャリアガスとして適しているが、可燃・爆発の恐れから扱いに注意を要する。このため安全性を重視した場合、窒素ガスの方がGC-MSへの導入が比較的容易である。今回、窒素をキャリアガスに使用して水道法第4条に基づく「水質基準に関する省令」で規定されるカビ臭物質 (以後、カビ臭と省略) である2-メチルイソボルネオール (以後、2-MIBと省略) とジェオスミンを測定したので報告する。

実験

測定はトラップ型ヘッドスペース装置MS-62071STRAPと、ガスクロマトグラフ質量分析計JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zetaを使用した。サンプルは、4.5 gの塩化ナトリウムと精製水10 mLを量り入れたヘッドスペース用バイアルに、2-MIBとジェオスミンを1, 2, 5, 10 ng / Lとなるよう添加し調製した。内部標準物質は、2,4,6-トリクロロアニソール-d3を20 ng / Lの濃度になるよう添加した。サンプルの測定条件をTable1に示す。

 

Table 1 Measurement Condition

Parameter Value
HS Sample Block temperature 80°C
Sampling mode Trap (Number of samplings = 3)
Heating and shaking time 30 min
Pressurized gas Nitrogen
Trap tube AQUATRAP1 (GL Sciences Inc.)
GC Column DB-5ms (Agilent Technologies, Inc), 60 m x 0.25 mm id, 0.25 μm film thickness
Column oven temperature 40°C (3 min) → 5°C / min → 180°C (0 min) → 20°C / min → 250°C (5 min)
Injection mode Direct connect column to the transfer line
Carrier gas Nitrogen, Ramped Pressure, 147.41 kPa (3 min) → -1.63 kPa / min → 101.77 kPa (15 min)
MS Ion source temperature 250°C
Interface temperature 250°C
Ionization EI (20 eV, 50 μA)
Acquisition mode SIM
Monitor ion 2-MIB (m/z 95, 107, 135), Geosmin (m/z 112, 125, 149),
2,4,6-Trichloroanisole (m/z 195, 197, 213, 215)

測定結果

2-MIB、ジェオスミンの検量線をFigure 1に示す。検量線の相関係数は2-MIB、ジェオスミンともに0.999以上で良好な直線性が得られた。次に、基準値の1/10の濃度である1 ng / Lのサンプルを試行回数n=5で連続測定した際の定量値における変動係数  (Coefficient of Variation, C.V.と省略) と、その1回目のSIMクロマトグラムをTable 2、Figure 2にそれぞれ示した。 C.V.の値は2-MIB、ジェオスミンともに10%以下であり、水質検査において要求される20%以下を満たす結果が得られた。また、2-MIB、ジェオスミンの各クロマトグラムにおいても十分な強度でピークを検出することができた。

 

Figure 1 Calibration curve of 2-MIB and Geosmin

 

Table 2 Quantitative value and C.V. in 1 ng / L (n=5)

2-MIB Geosmin
#1 #2 #3 #4 #5 #1 #2 #3 #4 #5
Quantitative value (ng / L) 1.08 0.98 0.98 1.07 1.05 0.99 0.96 0.93 0.92 1.05
C.V. (%) 4.8 % 5.2 %
 

Figure 2 SIM chromatogram of 2-MIB and Geosmin at 1 ng / L concentration

まとめ

トラップ型ヘッドスペース装置MS-62071STRAPと、ガスクロマトグラフ質量分析計JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zetaを使用し窒素キャリアガスでカビ臭を測定した結果、基準値の1/10である1 ng / L濃度において水質検査で必要とされる十分な感度を得ることができた。

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