ガスクロマトグラフ三連四重極質量分析計のシングルモードを利用した揮発性有機化合物(VOC)の分析 [GC-TQMS Application]
MSTips No.443
はじめに
JMS-TQ4000GC UltraQuad™ TQ
w/ MS-62071STRAP
JMS-TQ4000GC UltraQuad™ TQ (→以後、JMS-TQ4000GCと記載)は、独自のイオン蓄積/排出機構を備えたコリジョンセルを搭載することで、高速且つ高感度な選択反応モニタリング(Selected Reaction Monitoring, SRM)測定を可能とするガスクロマトグラフ三連四重極質量分析計であるが、シングルモードを使用することで通常の四重極質量分析計としての運用も可能な装置となっている。
今回、トラップ型ヘッドスペースMS-62071STRAPを接続したJMS-TQ4000GCを使用し、水質汚濁防止法において規制されているVOCを含む25成分について測定した。測定はシングルモードの選択イオン取り込み(Selected Ion Monitoring, SIM) を利用し、測定結果から検量線の直線性および下限濃度における再現性について確認したので報告する。
実験
測定対象は、水質汚濁防止法において規制されているVOCを含む25成分で、該当成分のうち1,4-ジオキサンは1, 5, 10, 50, 100 µg/L、それ以外の成分は0.1, 0.5, 1, 5, 10 µg/Lとなるように水溶液を調製し、測定試料とした。尚、各測定試料には、内部標準物質として、フルオロベンゼンおよびp-ブロモフルオロベンゼンを2.5 ppb、1,4-ジオキサン-d8を10 ppbの濃度で添加した。
各測定試料は、10mL当たり3gの塩化ナトリウムを添加した後、Table 1に示した測定条件下で測定し、検量線を作成した。また、下限濃度を試行回数n=5で連続測定し、定量値の変動係数(C.V.)を算出した。
Table 1. Measurement condition
結果
各試料を測定し、作成した検量線をFigure 1に、下限濃度のSIMクロマトグラムをFigure 2に示した。また、検量線の相関係数及び下限濃度を5回連続測定した際の変動係数(coefficient of variation, C.V.)をTable 2に示した。検量線の相関係数は、全ての成分で0.999以上であり、良好な直線性が得られている。また、下限濃度におけるC.V.も全ての成分で10%以下であり、水質検査において必要とされる20%を下回る結果が得られた。
結論
水質汚濁防止法において規制されているVOCを含む25成分について、トラップ型ヘッドスペースMS-62071STRAPを接続したJMS-TQ4000GCをシングルモードに設定しSIM測定した結果、検量線作成において良好な直線性が得られ、下限濃度についても水質検査が要求する感度・再現性を得る事が可能であった。
Figure 1. Calibration curves of each compound
Figure 2. SIM chromatograms of each compound
Table 2. correlation coefficient(→R) & C.V. of each compound