Close Btn

Select Your Regional site

Close

GC-MS/MSを用いた食品中残留農薬分析における高感度化に関する検討 (2) [GC-TQMS Application]

MSTips No. 414

概要

食品中残留農薬分析は様々なマトリクス中に存在する微量な対象農薬を分離・検出する必要があるため、使用する分析機器にも高い性能が求められる。このような多成分一斉分析を目的とした分野においてはGC-MS/MS法の適用が有効であり、現在では一般的な分析法として多くの分析機関で採用されている。当然ながら使用する分析機器によって検出感度は異なるが、従来の分析法を高感度化するための様々な手法が存在する。

日本電子製QMSおよびTQMS専用に開発した高性能EIイオン源 EPIS (Enhanced Performance Ion Source) は新設計のソースマグネットおよびチャンバーブロックを採用し、イオン源チャンバー内で生成するイオン量そのものを増加することにより高感度化を実現したオプションイオン源である。なお、本イオン源を適用した場合のSRM測定時における装置検出限界(IDL)は0.4fg以下 (OFN 1fg, n=8) と、極微量成分の分析において威力を発揮する。

本報告ではイオン源にEPISを適用し、MSTips No. 413(コールドスプリットレス導入法の適用)と同等の分析を行った際の検出感度の向上効果について比較・検討を行った結果を紹介する。

実験

EPIS

JMS-TQ4000GC

1. 試料条件

使用試薬:富士フイルム和光純薬社製、農薬混合標準液 PL-1,2,3,4,5,6,9,10,11,12,13
試料調製:各1ppm農薬混合標準液を調製(計292成分を測定対象とした)
試料濃度:0.1, 0.5, 1, 2, 5, 10, 20ppb の農薬混合標準液を調製し、7点検量線を作成
試料導入量:2μL (+疑似マトリクス:林純薬工業社製SFA10mixを0.2μL共注入)

2. GC条件

ガスクロマトグラフ:8890GC (Agilent製)
注入口モード:スプリットレスモード
注入口温度:250℃
カラム:VF-5MS (長さ30m, 内径0.25mm, 膜厚0.25μm)
オーブン昇温条件:50℃(1min)-125℃(25℃/min, 0min)-300℃(10℃/min, 10min)
カラム流量:1.0mL/min (コンスタント流量)

3. MS条件

質量分析計:JMS-TQ4000GC (JEOL製)
使用イオン源:標準EIイオン源 および EPIS
測定モード:SRM
SRMモード:高感度モード
イオン源温度:280℃
インターフェイス温度:300℃
イオン化電圧:70V

結果

測定対象に設定した全292成分中、標準EIイオン源において0.1ppbの検出が可能だった成分数は計283成分であった(検出可能だった全283成分の化合物名および保持時間の一覧に関してはMSTips No. 413を参照のこと)。従来の手法では0.1ppbの検出が困難であると判断した成分の内訳は、プロシミドン、アセタミプリド、ハルフェンプロックス、イミベンコナゾール、ビフェノックス、フルミクロラックペンチル、アゾキシストロビン、プロパキザホップ、チアクロプリドの計9成分であった。

一方で、イオン源にEPISを適用した場合、測定対象に設定した全成分が0.1ppbにおいて検出可能であった。

標準EIイオン源では検出が困難であった9成分の中から一例として、イミベンコナゾール、ビフェノックス、アゾキシストロビンの3成分に関して0.1ppbのEIC比較を Fig.1 に示す。

また、EPISの適用による感度向上効果を確認するために、両モードで0.1ppbの検出が可能であった283成分に関してピーク面積比(EPIS / 標準EI)を算出し、化合物順(保持時間順)に並べた散布図を Fig.2 に示す。同時に、MSTips No.413(コールドスプリットレス導入法の適用)の測定結果を重ねて示す。

Fig.1 Comparison of EICs at 0.1ppb (EI / EPIS)

 

Fig.2 Scatter diagram of each compound and area ratio (EPIS / EI)

EPIS の適用により、測定全域において5~10倍程度のピーク面積比増加が確認された。中には30~50倍程度ピーク面積比が増加している成分も確認されたが、これは測定試料が0.1ppbと極低濃度であり、標準EIイオン源では検出下限値付近だった成分(非常に小さな面積値を示した成分)が EPIS の適用により安定して検出可能になった結果であると推定される。MSTips No.413で検討したコールドスプリットレス導入法適用時のデータと比較しても、EPIS適用時は全体的により大きな感度向上効果が得られることが確認された。

なお、EPIS の適用により感度が低下する成分(面積比<1)は、本検討においては1成分も存在しなかった。

まとめ

GC-MS/MSを用いた食品中残留農薬分析における高感度化に関する検討として、標準EIイオン源と高性能EIイオン源 EPIS の感度比較を行ったところ、EPIS 適用時は全般的に感度が1桁程度向上する結果が得られた。また、コールドスプリットレス導入法適用時のデータよりも全般的に高い面積比を示しており、より大きな感度向上効果が確認された。 

検出感度向上を目的とした様々な手法が存在する中で、EPIS の適用は効果的であると考えられる。

 

分野別ソリューション

関連製品

JMS-TQ4000GC UltraQuad™ TQ ガスクロマトグラフ三連四重極質量分析計

閉じるボタン
注意アイコン

あなたは、医療関係者ですか?

いいえ(前の画面に戻る)

これ以降の製品情報ページは、医療関係者を対象としています。
一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承ください。

やさしい科学

主なJEOL製品の仕組みや応用について、
わかりやすく解説しています。

お問い合わせ

日本電子では、お客様に安心して製品をお使い頂くために、
様々なサポート体制でお客様をバックアップしております。お気軽にお問い合わせください。