そもそもアスベストとは何でしょうか?アスベストは6種類の「天然の鉱物」です。
拡大してみると、「繊維状」をしています。
アスベストは安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性など優れた特長を持っていることから、建物、電気製品、自動車等、多くのものに使用されてきました。
そんな便利なアスベストですが、なぜ「健康被害を引き起こす」と言われるのでしょうか。
実は、アスベストが「そこにあること」自体は問題にはなりません。しかし、アスベストを含むものが壊れた時、繊維状で軽い性質を持ったアスベストは空気中に粉となって飛び散ります。その飛び散ったアスベストを吸い込むことが問題となります。
アスベストを吸い込むと、肺の中に長い時間留まり、以下の病気の原因になることがあります。
これらは潜伏期間が15年~50年と長く、悪化するまで気づきにくい病気です。
そのような人体への悪影響から、日本では2006年にアスベストを含有するすべての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が法律で禁止され、これによりアスベストが含まれる新しい製品や建物は、殆どなくなりました。
しかし、それ以前に作られた製品や建物には、まだ大量のアスベストが存在します。
特にアスベストを多く含む建物は、2030年頃が建て替えのピークになると言われていて、その時に、またアスベスト健康被害者が増えるのではないかと心配されています。
法律を守るため、また法律が守られているか確認するためには、様々な方法でアスベストを分析します。
アスベストの分析法は、ISO(国際標準化機構)や、JIS(日本工業規格)で定められています。
実際に、どのように分析されているか見てみましょう。
偏光顕微鏡写真
しかし、繊維が細いなど、偏光顕微鏡で判断しにくい時は、走査電子顕微鏡(SEM)を使用し確認を行います。
SEMで観察すると、白黒で細かい繊維の形が観察できます。また、元素分析をして、元素の比(スペクトルの波形)からアスベストか判定することができます。
走査電子顕微鏡(SEM)写真
元素分析結果
位相差顕微鏡(PCM)写真
走査電子顕微鏡(SEM)写真
大気中に舞っているごみでないか判断するため、標準試料(アスベストと分かっているもの)のデータと比較してアスベストかどうか判定します。
国によっては、透過電子顕微鏡(TEM)で確認することもあります。しかし、観察できる範囲が小さいことから、日本ではあまり使われていません。
TEMは、形の観察、電子回折図形による結晶状態の確認、元素分析を行うことができるため、より確実な判定を行うことができます。
クリソタイル Mg3Si2O5(OH)4 |
アモサイト (Fe2+, Mg)7Si8O22(OH)2 |
クロシドライト Na2(Fe2+, Mg)3Fe3+2Si8O22(OH)2 |
|
形態 観察 |
![]() |
![]() |
![]() |
電子 回折 図形 |
![]() |
![]() |
![]() |
元素 分析 |
![]() |
![]() |
![]() |
(C、Cu は、それぞれ試料を支えるための支持膜とメッシュの元素です。)
解体現場でアスベストが飛び散っていないか、迅速に確認する必要があります。
日本電子は、卓上型のSEMを開発し、位相差顕微鏡と一緒に車に積んで現場で測定できるシステムを作りました。
このように、アスベストは健康被害につながるため、法律で規制されている物質です。しかし、まだまだ身近にアスベストは残っています。
例えば、経年劣化により建物に生じた亀裂や地震で倒壊した建物にアスベストが含まれていると、健康被害につながることがあります。
アスベストから身を守るには、粉にしないこと、吸い込まないことが大切です。
Goodな行動
地震で避難する時は、濡れたハンカチなどで鼻口を防御する。(火事の煙も防げる)
アスベストらしいものを見かけたら建物の管理者に知らせる。
NG行動
綿や、繊維のようなものが落ちていたら近づかない!
拾ったり、触ったりして粉を撒き散らさない!
アスベストはコンクリートに含まれることもあるので
ボールを壁に当てたりしない!
なにか分からない建材には触らない!
壊れた建材を切ったり砕いたりして、粉を出さない。
壁の中でジッとしているアスベストは、建物を守ってくれる心強い存在です。しかし壊れて「粉」になった時、危険が生じるのです。
アスベストの知識を正しく持って、自分自身の健康を守りましょう。
アーカイブ