PROFESSIONALINTERVIEW
08
SE技術本部 技術開発部 第2グループ 第2チーム
副主査 工学博士
F. T.

IMS社との一大プロジェクトを
オーストリアで一手に担う
日本電子として初めて提携を含めた本格的なコンポーネント販売を行った相手が、オーストリアに本社を置くIMS社(インテル子会社)だった。お互いの技術で開発したマルチビーム描画装置は世界最先端を行く。オーストリア生まれのF. T.は、2018年から日本電子を代表する責任者としてIMS社に派遣され、製品の開発からサポートまで一手に担っている。

日本電子初のコンポーネント販売
通常の電子ビーム描画装置が1本のビームを使うのに対して、マルチビーム描画装置は、なんとナノレベルのビーム26万本で一気に描画するので、時間を大幅に短縮できる画期的な装置だ。このマルチビーム開発で高い技術を持っているのがオーストリアに本社を置くIMS社だ。2016年にインテルの子会社になった。
だが、同社はマルチビームにより描画される材料(マスク)が載るステージを数十ナノ単位で精密にコントロールする技術がなかった。そこで2012年、日本電子にステージを含めたコンポーネントを開発してほしいと依頼し、両社が提携、マルチビーム描画装置の実用化に成功した。
従来、日本電子はコンポーネントを購入することはあっても販売することはなかった。オープンイノベーション時代に向けて、他社との提携・共同開発を通じて販売する初のケースとなった。
「マルチビーム描画装置を商業ベースで販売しているのは、現在IMS社だけです。ただ、世界初の斬新な装置なので、まだ不安定な部分もある。そこで、私が日本電子を代表する責任者としてIMS社に派遣され、連携しながら装置の開発サポートからサービスまで行っています」と、SE技術本部技術開発部のF. T.は言う。

オーストリア人技術者が橋渡し役
F. T.はオーストリア生まれ。工科大学で物理学を専攻したが、その間に日本に興味を持ち、1年間留学して日本語を学んだ。母国に戻って卒業後、再び来日し、熊本大学で電気系の専攻に進み、博士課程を修了した。
2008年に卒業後、日本電子テクニクスに入社し、走査電子顕微鏡(SEM)の開発に携わった。電子検出器関連の様々な開発、真空排気系の開発及び画像を三次元化する3D-SEMの開発などに主担当として携わったという。
入社から10年目の2018年、電子ビーム描画装置を扱う事業部から声がかかり、IMS社とのプロジェクトを推進するためにオーストリアに駐在してほしいと要請された。
「私がオーストリア人だから声がかかったのだろうと思いますが、当初は日本に家族がいるので離れたくなかったのです。しかし、日本とオーストリアをつなぐいい機会だし、自分の子供が母国で生活してドイツ語を覚えるきっかけになる。また、私の親も孫と会いたいだろうと思い、決心しました」
現在、日本電子からの常駐はF. T.1人だけ。必要に応じて社員が出張してくるが、日本語とドイツ語ができ、技術にも精通するF. T.が橋渡し役として、また提携の要として重要な存在となっている。

IMS社と一緒に問題解決
マルチビーム描画装置は、主にアジアやアメリカの顧客に販売されているが、最先端で複雑な装置なので時折トラブルも起きる。問題が発生したらIMS社のスタッフと一緒に原因を突き止め、F. T.が担当するIMS本社で設置してある装置であれば、F. T.自身が直したり、日本電子本社にフィードバックしてアドバイスを受ける。
「気をつけているのはスピーディーな対応です。基本的に納入先のお客様は待ってくれません。すぐに原因を追及しないといけませんが、IMS社も日本電子にとってはお客様なので、彼らとうまくコミュニケーションしながら対応しなければならないので苦労します。
先日もちょっとしたトラブルがあって、誰も経験のない問題だったので、時間的な制約の中で苦労して解決策を探りました。IMS社でも複数の部署が対応に動き出し、誰かがそれをコントロールしていればいいのですが、時にはバラバラになる。日本電子が担当する部分にまで手を出されると問題が拡大することもあるので、IMS社に相応の気を遣いながら調整するのが大変です。とは言え、お互いにリスペクトしているし、私をIMS社の社員として迎えてくれているので、居心地はいいです」
オーストリア人の国民性についてF. T.は笑いながらこう語る。
「基本的に優しいのですが、時にせっかちな面もあります。日本で自動車を運転しているときにはクラクションを鳴らされることなどなかったのに、ここではしょっちゅう鳴らされていますよ(笑)。私の運転が穏やかすぎるようですね」
他社とのコラボレーションが重要
仕事のやり甲斐についてF. T.は「マルチビームは本当に特別で画期的なものです。こうした最先端の技術の開発に参加させてもらったことはありがたいと思っています」と語る。
「もう1つ、個人的に満足感を得ているのは、日本電子とIMS社の両社に社員として働いている経験です。やはり、雰囲気も仕事のやり方も違うので、会社のあり方についてこの駐在を通して勉強させてもらっています」
こうしたユニークな経験と、SEMやマルチビーム描画装置など多様な開発キャリアを通じて、F. T.は「さらなる新しい開発に寄与できれば」と考えている。
「IMS社とのプロジェクトは、日本電子にとって新しい開発の試みでした。いま、装置の一部と言っても大きなコンポーネントですが、ツールベース(ステージ)を作って、IMS社のコンポーネントとドッキングして納入している。このコンポーネント供給という新ビジネスは大きく成功しましたが、今後、他の分野にも拡大してほしいと思います。例えばSEMの関連ソフトだけでも日本電子はいろいろ持っているので、他社とコラボレーションしながらコンポーネント販売できるのではないかと思っています」
IMS社とのコラボレーションを体現しているF. T.だからこそ、コンポーネント販売の可能性を確信しているようだ。
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