PROFESSIONALINTERVIEW

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1点ものを作る喜びが、大きなやりがいにつながる

SI生産部
組立課
副主任

T. I.

1点ものを作る喜びが、
大きなやりがいにつながる

日本電子山形は日本電子グループの生産専門会社として2002年に設立された。現在、日本電子製品の約★60%★ (製品本体ベース) の生産を担う主力工場である。日本電子山形に勤務するT. I.は、SI生産部組立課において透過型電子顕微鏡 (TEM) の部品および本体の組立業務をメインに担当している。中堅社員となったT. I.は普段どのような意識で業務にあたっているのだろうか。

風通しよく
コミュニケーションはスムーズ

地元山形の高校を卒業後、同じ山形の短大で機械加工の分野を学んだ。
「短大では、2年間、機械加工に関する専門的な研究を行いました。卒業後、2010年に日本電子へ入社しました。実は就職活動の時に、行きたかった会社がありましたが、かつてインターンシップに参加した日本電子を受けることになりました。当時、日本電子は求人をしていなかったのですが、ダメもとで連絡し、卒業校に求人を出してもらうようお願いしました。結果、受験させてもらうことができたのです。今となっては、あの1本の連絡が、自分の人生を左右することになりました。入社をしたのが、つい先日のように思っていたら、いつの間にか12年目になりました。配属先はずっと組立課です」
組立課では、まず数百点にわたる細かい部品を、分担してブロック単位に組み立てていき、それをさらに積木のように組み上げ、最終的に装置を作っていく。
「現在、JEM-ARM200という機種をメインで作っていますが、作るのに1台当たり7~10日ほどかかります。年間では30台ほど生産しています」

後輩の面倒を見る役回りをこなす中堅社員となったT. I.だが、社内の雰囲気をどう捉えているのだろうか。
「組立課には12名が在籍しています。毎年優秀な新人が入り、私の下には現在、8人ほどの後輩がいます。社歴では4番目ぐらい長くなりました。若い人は飲み込みも早いし器用ですね。私も中堅社員として安閑としてはいられません笑」
「働いてて感じるのですが、組織の風通しがよいですね。従業員間のコミュニケーションがスムーズな印象です。コロナ禍前までは、頻繁にイベントやレクリエーションがあり、時にはボーリング大会を開催したりしていました。泊まりがけで仙台に社員旅行をしていたこともあります。若い20代の社員が比較的多く、辞める人はほとんどいないですね」

「おや?」と思う感覚、違和感が大事

組立課では、装置を組み立てるところまでが業務となるため、実際に装置が稼働しているところを見ることができない。
「最終工程の調整担当が、装置のスイッチを入れて実際にサンプルを入れたときに、精密にサンプルがモニターに映し出されるかが、最も気になります。組立の作業は、品質に大きな影響を与えます。使用時の品質責任を持つのが我々組立課です。なので、例えば従来にない部品を始めて使うときや、今までになかった新たな機能を搭載するときなどは、さらに緊張します。装置性能が上がると部品が増えたり、構造が変わったりしますので、今後もこの緊張から逃れることはできません。気が抜けない作業が続きます」
「従来にくらべて、さらに精密な動きが求められる改良をする際、バージョンアップした最初の機種組立が大変なんです。例えば、設計時の想定とは少し異なる、手で進める実作業が発生する場合があります。要は、こんな複雑な構造が本当に組めるのか?と設計図を見て悩むことがあるんですよね。工具が触って部品がちょっと傷ついただけでも不良を起こしますし。そして実際に何か問題が起きると、設計上のミスなのか、部品単品の精度の問題なのかを見極めていかなくてはなりません。この時、生産技術部や品質管理グループなど他部署と連携し、やりとりしながら確認作業を進めていきます。新しい部品が悪さをしているせいなのかと思いきや、新しい部品を採用したことが影響して、従来の部品が誤作動するケースも少なくありません」

こういった困難を普段どのように解決しているのだろうか。
「社内の風通しがよいので、他部署と一緒に解決できるところが大きいですが、やはりこういうときは、経験がものをいうのかもしれません。過去に類似機種を組み立てた経験がないと問題の当たりを付けることもできません。なにしろ、部品の組立不良といっても何ミクロンの誤差という、目で分かるレベルではないときもあります。ある意味、勘が働かないと通用しないんです」
「なので、最近では、おや?と思う感覚、違和感を大事にしています。時には勘違いということもありますが、問題の本質がそこに隠れていることも少なくない。若かった時には、違和感を見過ごしたことで、トラブルが発生したこともありました。自分の作業でもそうですし、後輩の仕事を確認する際も、違和感を見逃さないように気をつけています。若い人たちには段階を踏んで、少しずつ経験をしてもらい、スキルを高めてもらっています。後輩には長い期間をかけて教えるようにしています。また、チームワークが大切なので、各チームの負担感などを見て、個々人の業務負荷の調整をしています」

自分たちが作った「1点もの」がどこかで使われているという喜び

日々、緊張を伴う業務にあたっているが、どんなところに喜びを感じるのだろうか。
「この仕事では、自分の組み立てた装置が、どこの国のどこに納入されたかまで分かるようになっています。他にはない1点ものの装置が山形から運ばれて、納品され、使われている。そんなことを想像すると、何か幸せというか喜びを感じます」
「組み立ては、実は単調な作業ではありません。次から次へと新しい機能が追加され、今までにない装置が作られる。そのたびに、作り方が変わるので、そういった対処がうまくできると嬉しいし、やりがいに感じます。実力ある人は自らの提案で、装置の構造の設計を変えようとすることもあります。組立という文字以上のライブ感とクリエイティブ感がここにはあります。手の器用さは決して必須ではないですね。私もそんなに器用ではありません。プラモデルを組み立てるのが好きな人などは向いているかもしれませんね。プラモデルよりも何百倍も巨大なものを作りますが」

組立課にも、日本電子の持ち味である「高品質、高技術」を支える人たちと技術があることが分かった。

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