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直接導入プローブを用いた迅速定性分析 [GC-QMS Application]

MSTips No.278

JMS-Q1500GCのアタッチメントの一つに専用の直接導入プローブがある。合成化合物の分子量確認や、高沸点化合物などGC導入が難しい試料の測定に直接導入プローブを使用すると、前処理も必要なく、分析時間も短い。
JMS-Q1500GCの直接導入プローブとしては、フィラメントタイプF: DEP (Direct Exposure Probe)と、キャピラリータイプC: DIP (Direct insertion Probe)があり、測定対象物質の性質および測定目的に応じて選択する。

直接導入プローブ

直接導入プローブは、直接導入用チャンバーとフランジをJMS-Q1500GCに装着し、フランジからMSのイオン源内部にプローブを導入することで簡単に使用できる。

Fig.1 JMS-Q1500GC with the direct insertion probe Fig.1 JMS-Q1500GC with the direct insertion probe
Fig.2 Direct Insertion Probe/F(Direct Exposure Probe: DEP)
Fig.2 Direct Insertion Probe/F(Direct Exposure Probe: DEP)
Fig.3 Direct Insertion Probe/C(Direct Insertion Probe: DIP)
Fig.3 Direct Insertion Probe/C(Direct Insertion Probe: DIP)

フィラメントタイプF: DEP

DEPは先端に白金のフィラメントがあり、フィラメントに塗布したサンプルをイオン源内で電流を流すことで気化させる。
予めサンプル溶液を用意し、シリンジなどで白金フィラメントの先端に塗布する。フィラメントには、瞬間的に1000mAまで電流を流すことが可能で、高沸点化合物や熱不安定化合物に使用できる。

フィラメントタイプF: DEP
0~1000mAまで
最大2560mA/minでの昇電流が可能

キャピラリータイプC: DIP

DIPは直径1.6mmの使い捨てのキャピラリー管にサンプルを入れるだけで測定可能であり、サンプル形状を問わないため、固体や液体でも測定を行うことができる。測定温度は、室温から500°Cまで、最速2分で昇温可能である。

キャピラリータイプC: DIP
室温~500°Cまで
最大256°C/minでの昇温が可能

測定条件と結果

金属不活性化剤のIrganox MD 1024(BASF社製) に関して、DEPとDIPの両方の手法で測定を行った。測定条件を以下に、また、Fig.4に測定結果を示す。
沸点652.6°Cの物質であるが、DEPでもDIPでも測定可能で、得られたEIスペクトルを用いてNISTライブラリー検索で構造を類推できた。

  • 測定条件:
    ・測定モード: Scan (m/z 45~600)
    ・実サイクルタイム: 566.514 ms
  • 測定レート
    ・DEP: 10mA → 640mA/min → 1000mA
    ・DIP: 50°C → 128°C/min → 500°C (1min)
Fig.4 Mass spectra of Irganox MD 1024 (DEP, DIP)
Fig.4 Mass spectra of Irganox MD 1024 (DEP, DIP)

まとめ

  • 直接導入プローブを利用することで、GC導入が難しい化合物についても短時間で簡単にマススペクトルを得ることができ、データベース検索による定性分析を行うこともできる。
  • 直接導入プローブには、DEPとDIPの2種類があり、それぞれ以下のような特長を備えており、測定対象化合物の性質や測定目的に応じて選択する。
DEP DIP
  • 分析時間が短い(1分以内)
  • 熱不安定化合物を測定できる
  • 高沸点化合物を測定できる
  • 使い捨てのキャピラリーを使用
  • 溶媒に試料を溶かす必要なく、難溶性試料の測定も可能
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