ナノからマイクロ領域の化学結合状態分析をハイスループットで実現する静電半球型アナライザー、EPMAにも採用されている安定した大電流を供給するフィールドエミッション電子銃を備えたハイスペックなオージェ電子分光装置です。不可能とされていた絶縁物分析を可能とした高精度ユーセントリック試料ステージとフローティング型イオン銃を備えることにより、金属試料から絶縁物試料まで、組成情報から化学情報まで、サンプルを選ばない汎用性を実現しました。
特長
スペクトルイメージング

各ピクセルにスペクトルを格納

スペクトルイメージから抽出した元素マップ
各ピクセルにスペクトルを格納したスペクトルイメージの取得が可能になりました。EDSのマッピングのように、データ取得後にスペクトルの抽出や元素濃度マップの抽出が可能です。従来のマッピング方法では、測定する元素をあらかじめ指定する必要がありますが、スペクトルイメージングでは、広いエネルギー領域のデータを取得することで元素の取りこぼしを防ぐことができます。また、任意のエネルギー領域、エネルギー分解能で測定することが可能なので、元素分析のみでなく、反射EELS分析などにも応用することが可能です。
標準スペクトルデータベースと波形分離ソフトウェア

金属Sn, SnO, SnO2の標準スペクトル

ハンダ表面における、化学状態別の深さ方向プロファイル
140種500本以上の豊富な標準スペクトルデータベースを搭載しています。解析者を悩ませるオーバーラップしたオージェピークの分離や複雑な化学結合状態解析も、波形分離ソフトウェアを用いることで、ワンクリックで実行可能です。
仕様・オプション
電子照射系 | |
---|---|
二次電子分解能 | 3nm(25kV、10pA) |
オージェ分析時の最小プローブ径 | 8nm(25kV、1nA) |
電子銃 | ショットキー電界放出形 |
加速電圧 | 0.5~30kV |
プローブ電流 | 10-11~2×10-7A |
倍率 | 25~500,000倍 |
オージェ電子分光器 | |
アナライザー | 静電半球形アナライザー(HSA) |
エネルギー分解能(ΔE/E) | 0.05%~0.6% |
感度 | 840,000cps(7チャンネル検出器)
Cu-LMM、10kV、10nA |
外観・仕様は改良のため予告なく変更することがあります。
拡張性
以下の機能を追加するためのポートが用意されていますので、多様な分析に対応することができます。
試料パーキング装置
試料冷却破断装置
反射電子検出器
エネルギー分散形X線分析装置(EDS)
トランスファーベッセル
カタログダウンロード
アプリケーション
半導体デバイス断面
FIBでボックス加工した半導体デバイス断面における、元素分布およびSiの化学状態別のマッピング。
スペクトルイメージングにより取得。
AES分析は、SEM-EDSやEPMAなどのX線分析法に比べ、分析時の空間分解能が非常に高いため、高倍率視野での元素分布を調べることができます。さらに化学結合状態の違いによってピーク形状が異なることを利用して、化学状態別のマッピングを行うことも可能です。
リチウムイオン電池 (LIB) 材料

Li KVV 標準スペクトル (微分形)

スペクトルイメージング法により取得した、
LIB負極のCP断面の元素分布
AESはLiの検出感度が高く、リチウムイオン電池の分析にも用いられます。AESでは隣接原子に存在する電子も遷移に関与するため、酸化リチウムや炭酸リチウムのピークを感度良く検出することができます。また、スペクトルイメージングによりリチウム分布の測定も容易に行うことができます。
REELS分析

カーボン材料の損失スペクトル

銅板上に形成したグラフェン試料における、AES分析で得られたカーボン分布(左)とREELS分析で得られたグラファイトの分布(右)
オージェ電子分光装置を用いると、反射電子のエネルギー損失分光 (REELS) を行うことができます。REELSを利用するとグラファイトとダイヤモンドを区別できたり、絶縁体/半導体のバンドギャップの大きさを評価することが可能です。