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GLOBAL & NICHE
グローバル&ニッチ

JEOLは2014年に経済産業省が国際市場の開拓に取り組んでいる企業のうち、ニッチ分野において高いシェアを確保し、良好な経営を実践している企業を選定・顕彰する「グローバルニッチトップ(GNT)企業100選」に選ばれました。 2020年当時は子会社でありその後合併したJEOL RESONANCEも、2020年版「グローバルニッチトップ(GNT)企業100選」に選ばれました。
JEOLは"創造と開発"の理念のもと、電子顕微鏡の開発を起源に世界初・世界最高技術への挑戦を通じて、科学技術の発展に貢献してきました。世界の科学技術を支えるグローバルニッチトップ企業を目指して、挑戦を続けています。

世界科学技術支える
「ニッチトップ企業」として

代表取締役社長兼CEO 大井 泉

当社は目指す方向性として「世界の科学技術を支えるニッチトップ企業」を掲げています。理科学・計測機器産業は大きな市場ではなく、まさにニッチな分野ですが、アカデミアや様々な産業界の研究開発を支えています。計測分析機器に関連する分野が多くのノーベル賞受賞者を輩出していることからも、計測分析機器による発明・発見が科学の世界と社会に大きなインパクトをもたらしていることがわかります。人類の成長に資する社会貢献の視点からも、理科学・計測機器市場はニッチであるからこそ、きわめて重要だと考えています。
その考えのもと、2022年度から3年間の中期経営計画「Evolving Growth Plan」、さらに創立70年を機に発表した成長ビジョン「70年目の転進」の実現に取り組むことで、経営理念に掲げた科学の進歩と社会の発展に貢献できる企業でありたいとの思いがあります。そのためにも世界の科学技術を支えるニッチな分野でトップを取り、しっかりと利益を出して、成長を続けていくことが必要です。

これを実現する取り組みとして、「YOKOGUSHI」という考え方を打ち出しました。社内の事業部門間はもちろん、オープンイノベーションの形で社外の企業・研究機関とも連携し、新たな付加価値を生み出していこうという取り組みです。理科学・計測機器市場で日本企業は強いポジションにあり、各社がそれぞれ得意とする機器を持っています。お互いの強い部分に横串を差して連携し、共創によるイノベーションを推進することで、より高い付加価値の創出を目指します。
具体的な例として、社内の事業部門間では市場で高評価をいただいている次世代電池向けのソリューション、社外では本社が同じ昭島市 (東京都) にある分析機器メーカーのリガクと共同開発した電子回折統合プラットフォーム「Synergy-ED」。第1号機は北里大学大村智研究所に納入され、コロナ禍で注目されたイベルメクチンの構造解析に成功したことで話題を呼びました。そして東京大学をはじめとする大学や研究所との共同研究があります。
当社は欧米においても、電子顕微鏡などではグローバルニッチトップ企業というイメージをしっかり持っていただいています。海外比率は65% (2022年現在) で、その比率は増えていますが、海外で伸ばせる余地はまだまだ多く、今後も力を入れていきます。

最先端の科学研究に深く関与し、社会の課題解決や発展に貢献してきたJEOLは
事業活動を通してSDGsのゴールに直結するという特徴をもっています。

01

原子レベルで
SDGsを支援

透過電子顕微鏡(TEM)

02

新薬や二次電池の
開発を支えるツール

核磁気共鳴装置 (NMR)

03

心配のタネ「未知物質」を解明する

ガスクロマトグラフ
質量分析計 (GC-MS)

04

自社技術にこだわらずニッチ市場トップに

マルチビームマスク
描画装置

05

健康リスク管理を低いコストで

生化学自動分析装置

01.原子レベルでSDGsを支援 透過電子顕微鏡 (TEM)

  • SDGs 7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • SDGs 12. つくる責任 つかう責任

最新の透過電子顕微鏡 (TEM) ではどれくらい小さな物が見えるのでしょうか。答えは原子レベルです。これまでは原子量の小さい軽元素は観察しにくいとされていましたが、それも克服されました。ちなみに最も小さい原子である水素原子の直径※1は106pm。pm (ピコメートル) は10-12メートルです。そして最新の透過電子顕微鏡は40-50pmの分解能を備えています。

原子の配置や移動を目に見えるかたちで確認できると、さまざまな分野で研究が加速します。特に材料分野は結晶構造や局所的な欠陥構造などが観察できますから、受ける恩恵は大きいです。加えて組成分析や電子状態の分析ができる装置と組み合わせることで、さらに詳しく物質の様子が見えてきます。

例えば、リチウムイオン電池では充電/放電を繰り返す際にリチウムが移動しますが、そのときに周囲にある他の原子の状態を観察し電気特性などとの関係を分析すれば、より特性に優れた電池の開発に役立てられます。また、壊れたLEDを観察して、どこからどのように壊れたのか原子レベルで解明することで、LEDの寿命をさらに延ばすヒントが得られます。

こうした分析は、SDGsの7番目の目標「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」や、同12番目の目標「つくる責任 つかう責任」を支援する製品へとつながっていきます。

高性能なTEMを作っているのは、世界で3~4社といわれています。製造の難しさからニッチな業界となっていますが、JEOLは材料研究向けに利用されるTEMに関してはおよそ45%のシェアを獲得していて、もう1社との間で首位の座を争っています。

※1 ボーアの原子モデルにおけるボーア半径の2倍

02.新薬や二次電池の開発を支えるツール 核磁気共鳴装置 (NMR)

  • SDGs 3. すべての人に健康と福祉を
  • SDGs 7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに

「核磁気共鳴装置 (NMR) がないと仕事にならない」と多くの有機化学の研究者が言います。同装置は、強い磁場のなかに試料を置き、そこから分子構造を特定する情報だけでなく、どのような反応が進んでいるかを示す情報も読み取ります。分子レベルの多くの情報が得られるにもかかわらず、測定にかかる手間が少ないため、有機化学にとどまらず、生命科学や材料科学など幅広い分野で利用される、現代科学に欠かせない計測ツールです。

「NMRが欠かせない」という分野の代表例に創薬があります。創薬は多くの場合、植物や微生物などから薬効のある化合物を見つけ出すところがスタート地点。そして見つけた化合物の分子構造を特定し、その構造を核にさまざまな化合物を合成して、より薬効や安全性の高い化合物を探す段階へと進みます。こうした開発プロセスの多くの場面でNMRが利用されます。新たな薬はSDGsの3番目の目標「すべての人に健康と福祉を」を支える大事な要素になっています。

一方、SDGsの7番目の目標「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に関連してリチウムイオン電池が注目されていますが、材料科学の分野でもNMRは活用されています。イオンの動きをNMRで解明し分析することで、より効率のよい電池が設計できるのです。

現代科学にとってこれだけ重要なツールにもかかわらず、NMRを作っている企業は世界で2社だけ。そのうちの1社、JEOLは日本国内で7割のシェアを誇り、世界でも3割のシェアを獲得し、グローバルでの存在感を示しています。

03.心配のタネ「未知物質」を解明する ガスクロマトグラフ質量分析計 (GC-MS)

  • SDGs 11. 住み続けられるまちづくりを
  • SDGs 14. 海の豊かさを守ろう

「サイレントチェンジ」という言葉を耳にしたことはありますか。発注元に知らせることなく、納入業者が部品や材料の仕様を変更して納めることです。ささいな仕様変更でも問題が起きる可能性はあります。例えば化学メーカーがポリマー材を業者から仕入れている場合、主成分は同じでも添加剤を替えられたことで最終製品の硬さや伸びなどに影響が出るケースがあります。どのような添加剤を使っているかは開示されません。化学メーカーは自ら材料を分析するなど防衛策を講じなくてはならないのです。

有機化合物、特に混合試料を分析するときはガスクロマトグラフ質量分析計 (GC-MS) が使われます。試料がどのような成分から成り、その量はどれくらいなのか調べる装置です。有機化合物は世の中に1~2億種類あるといわれていて、かつては計測データから成分を特定するのに専門家でも1日がかりだったようです。JEOLはAIを使い2~3分で成分をほぼ特定するソフトウェアを提供しています。この利便性は、分析に時間を割きたくない企業や、自己防衛などの理由で導入した分析に慣れていない企業から高く評価されています。国内の飛行時間型GC-MS市場は材料分析向けを中心に当社は7割のシェアを獲得しています。

GC-MSは環境分析にも使われます。新たな化学物質を作ったときや入手したときに、定められた環境汚染物質をチェックし規制の範囲か確認するといった使い方ですが、最近は心配な成分はすべて網羅的に見ておこうという考えが提唱されています。10年先のことを考えると、無害とされていた化学物質に新たな毒性が見つかったり、廃棄処理過程で意図せず有害物質が出たりする可能性もあるからです。

環境にとってマイクロプラスチックはSDGsでもよく話題になる大きな懸念材料です※2。今のところ人体への影響は低いとされていますが、海洋だけでなく大気中にも存在していて、都市部に多いことが分かっています※3。食塩や肉、乳製品から検出されたという報告もあり、これだけ身近に広がった物質となると、その影響が明るみになったときのことを考え、やはり心配になります。

GC-MSは今後、人々が心配するこうした物質の監視・分析のためにも使われていくことでしょう。

※2 SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」
※3 SDGs目標11「住み続けられるまちづくり」

04.自社技術にこだわらずニッチ市場トップに マルチビームマスク描画装置

  • SDGs 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう

JEOLは、半導体の回路パターンを描くマルチビームマスク描画装置の市場をほぼ独占してきました。他社が追随できなかったのです。競合がこの市場に製品を投入したのは2021年になってからです。その間、少なくとも4年以上は独走態勢が続きました。

JEOLにはこだわりの技術があり、それが市場シェアトップクラスの製品群を支えている例がいくつもありますが、マルチビームマスク描画装置に関しては当てはまりません。コア技術である電子ビームにあえてこだわらないことで、グローバルニッチ市場のトップを走り続けている"珍しい"ケースです。

2010年代に入り、半導体の集積度を高めるうえで浮かび上がった課題の一つに、フォトマスクの描画時間がありました。回路パターンを1本の電子ビームで描くマスク描画装置では30時間以上かかるケースがでてきました。これに対して解決策を提示したのがオーストリアのIMS ナノファブリケーション社でした。1本ではなく約26万本の電子ビームで82μm×82μmのエリアを描画する技術を開発しましたが、同社には描画エリアを移動させるプラットフォームの技術がなかったので日本電子と提携。そして2017年に両社協業による量産向け製品の生産を発表しました。コア技術にこだわらない判断が、オンリーワンの製品に結実しました。

SDGsには「産業と技術革新の基盤をつくろう」という目標があります (目標9)。半導体は産業と技術革新の基盤であり、その進歩は多くの人の望むところです。オープンイノベーションを意識し、先進的な装置を早い時期に作り上げることで、その時計の針を進めることができたと思います。

05.健康リスク管理を低いコストで 生化学自動分析装置

  • SDGs 3. すべての人に健康と福祉を

JEOLが生化学自動分析装置を最初に完成させたのは1972年のこと。かなり早い時期から取り組んでいて、2022年には50周年を迎えました。現在の国内シェアは高く、特に処理能力の高い大型機ではJEOLが5割以上のシェアを得ています。

現行機は海外でも高く評価され、出荷台数の比率は国内3割、海外7割と、グローバルで活躍しています (多くはOEMでの出荷)。低いランニングコストに加え、開発途上国では「頑健さ」も評価されています。

現行機BioMajesty™シリーズは、検体を正確に希釈してから分析する手法を採用しているのが特徴です。希釈するので試薬は少量で済みコストが抑えられ、加えて清掃コストも抑えられて、ランニングコストがトータルで低減します。診断対象者にもメリットがあります。血液を少量しか採れない年配者や乳幼児でも、負担を増やすことなく微量の検体で検査できます。

「すべての人に健康と福祉を」はSDGsの3番目の目標です。血液検査や尿検査は病気や健康リスクを見つけ出す有効な方法として普及し、今日では検査すべき検体 (血液や尿) が健康診断を行う学校や職場、そして病院で日々大量に発生しています。これをスピーディーに検査する装置が「生化学自動分析装置」です。

SDGs目標3には「国内および世界の健康リスクに対して、早期に警告を発したり、リスクを軽減/管理したりする能力を、すべての国々、特に開発途上国において強化する」というターゲットがあります。JEOLの生化学自動分析装置は、まさにこのターゲットをクリアする推進力になっているといえるでしょう。