EPMAにおけるカソードルミネセンスの応用

CL 法の応用範囲

CL 法は、従来から鉱物試料の研究等に広く使われていましたが近年の青色発光ダイオード/レーザーダイオードの商品化に始まる光デバイスの分析手法で再び注目されるようになっています。

CL 法のいろいろな測定例

1.光デバイスのCL 観察事例

1-1 赤色LED
市販の高輝度赤色LED の断面分析例を示します。面分析結果が示すように，Ga,In,P,Al,As を含む化合物半導体の多層構造を形成しているのが分ります。この中で，多層膜中のAlGaInP 層が，642.5nm の赤色CL 発光を示す様子がわかります。

1-2 白色LED
市販の白色LED の断面分析例を示します。市販白色LED は、GaN 青色LED の上にYAG 等の黄緑色発光を示す蛍光体層を塗布し、GaN の青色発光でYAG を励起し、青色と黄緑色の合成で白色を形成しています。CL 面分析結果より、560nm はYAG による黄緑色の発光、457.5nm はGaN 上層活性層の青色発光、370nmは n 形にドープされたGaN 層の発光であると考えられます。

白色LED 各元素のカラーマップ

白色LED 断面の反射電子組成像とGaN 部CL スペクトル

白色LED 断面の各波長のCL像

2 鉱物試料のCL 観察事例

火山岩中の斜長石(Plagioclase)の二次電子像、反射電子像、487.5nmCL 像およびSi,Ca,Al Ｘ 線マップを示します。斜長石の形成時に供給されるマグマの組成が異なる為に組成の異なる層が形成され、この様な累帯構造を形成していると考えられます。CL コントラストの明るい部分は、おおよそCa,Al リッチである領域と対応しています。


斜長石のCLD 像と各元素のカラーマップ

同一岩石中の石英(Quartz)を分析した結果を示します。石英の任意の点のCLスペクトルより、430nm および642.5nm にピークを持っているので、両者のピーク位置でCL 分析、および元素分析を試みました。その結果、両者ピーク位置でのCL 像は、そのコントラスト縞が異なっており、相補的では無いのが分りました。430nm CL 像のコントラストを参考にして、明るさの異なる数点の定性分析を試みましたが、Si,O 以外に不純物は確認できません。

3 セラミックス試料のCL 観察事例

絶縁性放熱板として各方面に広く応用されている市販のAlN 焼結体表面の反射電子像、360nm のピーク位置におけるCL 像、Al,N,Y,O-X 線像を示します。CL 像の分析深さは、およそX 線と同じ程度と考えられるので、反射電子像に似たようなチャネリングコントラストや、粒界のコントラストは現れにくいはずですが、実際の試料では、結晶粒界を反映したようなコントラストを示しています。また、Al,N,Y,O の各元素分布とは対応しないような、粒界、粒内の暗点、揮点が現れています。


AlN 焼結体基板のCL 像とカラーマップ

4 蛍光材料のCL 観察事例

蛍光材料は、従来から材料解析にCL 法が用いられています。市販蛍光灯管壁の蛍光体を導電性テープ上にサンプリングし、R,G,B 各色を示す粒子の分散の様子を示します。蛍光粒子のCL スペクトル中で、612.5nm のピークは赤色を示す蛍光粒子の主ピーク、545nm は緑色、457.5nm のブロードなピークは青色の粒子です。それぞれのピークでCL マップを取得し、複合マップを用いてR,G,B カラーレベルに表しました。各色粒子の分散の様子、分析視野における各粒子の面積比などが視覚的にわかりやすく、また容易に計算できます。製品検査等への応用が可能です。