ビタミンD意識してますか?改善のためのアドバイス

ビタミンDは、骨を丈夫にする・免疫力を高める・筋肉の働きを助けるなど、健康に重要な役割を持っています。
自分のビタミンDレベルとVMRを知ることは「健康のバロメーター」
となります。
ビタミンDレベルとVMRとは?
ビタミンDレベルとVMRとは、「25 (OH) D濃度」と「VMR (ビタミンD代謝比率)」を組み合わせた独自の指標です。
「25 (OH) D濃度=体内のビタミンD貯蔵量」、「VMR=ビタミンDが体内でどのくらい活用されているか」をそれぞれ示しています。
25(OH)D濃度とは?
体内のビタミンD貯蔵量を示す指標で不足や過剰のリスクを把握します。
私たちの体は、太陽の光を浴びたり、食べ物からビタミンDを摂取したりすると、「25 (OH) D (25-ヒドロキシビタミンD)」という形に変えて体内に蓄えます。25 (OH) Dの濃度 (血液中の量)
を測ることで、体にビタミンDがどれくらい足りているかを知ることができます。

なぜ25 (OH) D濃度が重要なの?
ビタミンDは、骨を丈夫にする・免疫力を高める・筋肉の働きを助けるなど、健康にとってとても大切な役割を持っています。
しかし、25 (OH) Dの濃度が低すぎると、骨がもろくなったり、風邪をひきやすくなったり、体調不良が起こる可能性があります。
そのため、25 (OH) D濃度を測ることは、自分のビタミンDが十分足りているかを知るための「健康の目安」 となります。
VMR (ビタミンD代謝比率) とは?
体内でビタミンDが「どのくらい活用されているか」を示す指標です。ビタミンDが実際にちゃんと働いているか詳しく知るための指標として近年注目が集まっています。健康リスクとの関連性があると言われています。
なぜVMRが重要なの?
25 (OH) D濃度が正常でも、ビタミンDが実際にちゃんと働いているかどうかは、遺伝や疾患などの諸要因によって個人差がでてしまいます。
たとえば、25 (OH) D濃度が低くても健康上に問題がない人もいれば、25 (OH)
D濃度が十分であっても体内でビタミンDがちゃんと働いていない人もいます。VMRが低いと、ビタミンDがちゃんと働いていない可能性があり、骨や免疫、ホルモンバランスなど健康に影響が出るリスクがあると言われています。

ビタミンDのはたらき
骨の健康
ビタミンDの基本的なはたらき
腸管からのカルシウムとリンの吸収を促進し、骨の形成や成長およびカルシウムの代謝を調節します。
ビタミンD不足は骨折や骨の病気につながる!
ビタミンDが不足レベル (血中25 (OH) D濃度が20 ng/mL未満) にあることで、骨粗鬆症や骨折のリスクが高くなることが報告されています。
ビタミンD欠乏が引き起こす骨の病気
ビタミンDが著しく欠乏すると、小児ではくる病、成人では骨軟化症といった重篤な骨の病気リスクが高まります。
J Bone Miner Metab. Jul 2022;40(4):541-553.

筋肉・筋力
転倒予防にもビタミンDが有効?
高齢期の転倒には筋力が関係します。高齢者では血中25 (OH) D濃度と転倒リスクの関連性が示されています。特に血中25 (OH) D濃度が低い高齢者においてビタミンDサプリメントとカルシウムを併用することで転倒予防に有効性が高いことが示されています。
ビタミンDは筋肉のつよい味方!
ビタミンDが筋肉細胞の成長と分化を促進し、筋肉の再生を促進すること、筋肉の炎症を抑え、筋肉の収縮に役立つことが分かっています。また、ビタミンDサプリメントは、健康な成人やアスリートにおいて腕と脚の筋力を増加させることが報告されています。近年アスリートに対するビタミンDサプリメントの有効性について研究が増えています。
Nutrients. 2023 Oct 16;15(20):4377.
Front Physiol. 2014 Apr 16;5:145.
Dietary Reference Intakes for Calcium and Vitamin D - NCBI Bookshelf

妊娠・プレコンセプションケア (妊娠前の健康管理)
プレコンセプションケア (Preconception care) とは?
コンセプション (Conception) は受胎・妊娠を意味します。プレコンセプションケア (Preconception care) とは、WHO (世界保健機関) によって「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」と定義されており、近年注目を集めています。将来の妊娠を考えながら男女ともに自分たちの生活や健康に向き合うことを意味します。
妊活とビタミンD
ビタミンDは生殖器系の器官を調節する重要な因子であることが分かっています。動物を用いた実験において、ビタミンD欠乏が子宮形成不全、生殖能力の低下、性腺機能低下、卵胞形成障害などを引き起こし妊娠をしづらくさせる可能性が示されています。
妊婦の健康とビタミンD
疫学研究において、血中25 (OH) D濃度が低いと、妊娠糖尿病、子癇前症、低体重児のリスクが上昇することが示されています。ビタミンDサプリメントを単回または継続的に利用すると子癇前症、妊娠糖尿病、低出生体重児のリスクを低下させ、重度の産後出血のリスクを低下させる可能性があること、またカルシウムとの併用で子癇前症のリスクを低減させる可能性が示されています。(しかし、まだ十分なエビデンスがあるとは言えません。)

Reprod Biol Endocrinol. 2019 Jul 18;17(1):59.
BMJ. 2013 Mar 26;346:f1169.
Cochrane Database Syst Rev. 2024 Jul 30;7(7):CD008873.
心血管系 (循環器系) の健康
心血管系 (循環器系) とは?
心血管系(循環器系)は、心臓と血管から構成され、血液を全身に循環させるシステムです。
ビタミンDと生活習慣病 (高血圧症・糖尿病・動脈硬化)
血中25 (OH) D濃度は高血圧症や糖尿病の発症および重症化などいわゆる生活習慣病にも関係することが分かっています。高血圧症や糖尿病は動脈硬化の大きなリスクとなります。疫学研究によって、ビタミンDレベルが低いと心臓や血管の疾患リスクとなることが報告されています。
J Clin Endocrinol Metab. 2024 Jul 12;109(8):1907-1947.
Am J Clin Nutr. 2023 Sep;118(3):697-707
Am J Clin Nutr. 2022 Nov;116(5):1389-1399.
Nutrients. 2024 Nov 1;16(21):3759.

免疫機能
免疫機能とは?
体内に侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体や異物を認識し、攻撃したり、体内の異常な細胞を見つけて排除したりする、体内の防御システムです。
ビタミンDは免疫機能を調節する!
ビタミンDは病原体の攻撃や体内の異常な細胞の排除を促進します。それだけでなく、単球 (白血球の一種)、マクロファージ(単球が分化した免疫細胞で、異物を飲み込み消化する。異物の情報をT細胞へ伝える伝令役でもある。)、Tリンパ球 (白血球の一種で病原体やがん細胞を攻撃する免疫細胞を活性化させる司令塔) などに対して抗炎症効果を示し、免疫応答を抑制します。つまり、病原体への攻撃を助けながら、過剰な免疫反応によって起こる重症化を抑える働きをします。疫学研究において血中25 (OH) D濃度が低いと急性気道感染症のリスクが高いという報告があり、ビタミンDサプリメントの小児への投与、毎日の服用など特定の条件において気道感染症のリスクに予防効果を示したという報告もあります。
Int J Environ Res Public Health. 2019 Aug 21;16(17):3020.
Lancet Diabetes Endocrinol. 2021 May;9(5):276-292.

認知機能
ビタミンD欠乏とアルツハイマー型認知症
ビタミンDは、抗酸化作用、カルシウム調節作用、免疫調節作用、神経保護作用を通じて、認知機能の維持と改善に役立つことが示唆されています。疫学研究でも、ビタミンD欠乏が軽度認知障害やアルツハイマー型認知症のリスク上昇に関係することが報告されています。
しかし、ビタミンDサプリメント摂取と認知症リスクへの有効性を明らかにする研究は十分に実施されていないのが現状です。
Dement Geriatr Cogn Disord. 2024;53(2):91-106.
J Alzheimers Dis. 2024;98(2):373-385.
J Am Geriatr Soc. 2017 Oct;65(10):2161-2168.
Adv Nutr. 2022 Aug 1;13(4):1044-1062.
Cochrane Database Syst Rev. 2018 Dec 17;12(12):CD011906.
Nutrients. 2022 Feb 28;14(5):1033.
Am J Ther. 2020 Dec 26;28(6):e638-e648.

ビタミンDレベル改善のためのアドバイス
日光浴
皮膚に紫外線が当たることで生成
ビタミンDは食事からの摂取だけでなく、皮膚に紫外線が当たることで生成されます。その産生量は紫外線の照射量に左右されます。例えば、秋冬より紫外線が多い春夏や、1日のうち10~15時頃にビタミンD産生量が高まります。曇りの日は晴天時に比べて産生量が低下します。また、肌の色が濃い方や衣服で皮膚を覆っている場合も同様に産生量が低下します。
日焼け止めをしっかり塗ってOK!
日焼け止めを使用するとビタミンDの栄養状態が下がる可能性が懸念されていますが、これまでの研究では変化がない、またはむしろ栄養状態が向上する場合もあるとされています。その理由として、日焼け止めを塗っているつもりでも、肌の赤みが抑えられるレベルでの不十分な塗り方が多く、結果的に屋外活動時に紫外線を浴びる状況が挙げられます。したがって、日焼け止めを適切に使用しつつも日光を浴びる時間を設けることが推奨されます。特に顔は紫外線の照射面積が小さいため、日焼け止めをしっかり塗ることで問題ありません。

食事
お魚、きのこ、たまごはビタミンDのつよい味方! 1日9.0 µg の摂取が目安
ビタミンDの望ましい摂取量は、「日本人の食事摂取基準 (2025年版)」によると、18歳以上では1日9.0 µg (目安量) とされています。ただし、この基準はある程度日光を浴びることを前提としています。ビタミンDの摂取量は日によって大きく異なる特徴があり、その理由の一つとして、ビタミンDを多く含む食品が限られていることが挙げられます。日本人のビタミンD摂取量のおよそ80%は魚類から、次いで鶏卵、乳類、きのこ類から供給されています。また、ビタミンDは油脂と一緒に摂取することで効率よく吸収されるとされています。
食品 | 重さ | ビタミンD含有量 |
---|---|---|
さけ | 1切れ100g | 32.0 µg |
いわし | 中1尾50g | 16.0 µg |
さんま | 1尾100g | 14.9 µg |
かれい | 1切れ100g | 13.0 µg |
うなぎ | 1串100g | 19.0 µg |
にしん | 1切れ100g | 22.0 µg |
いさき | 1尾100g | 15.0 µg |
かわはぎ | 1尾50g | 21.6 µg |
鶏卵 | 1個55g | 1.0 µg |
まいたけ | 生50g | 2.5 µg |
干ししいたけ | 2枚6g | 0.8 µg |
サプリメント
医師と相談して適切な摂取量で活用しましょう!
ビタミンDを多く含む食品は限られており、日によって摂取量が大きく変動しますが、栄養状態を良好に保つためには、継続的な摂取が望ましいとされています。そのため、場合によってはビタミンDが強化された食品の活用が推奨されます。日本では、乳製品や鶏卵にビタミンDを付加した商品が数多く流通しています。また、ビタミンD欠乏のリスクが高い場合、サプリメントの利用を検討するのも一つの方法です。サプリメントでの摂取量としては、主に運動器の健康を維持・向上させるために、紫外線をほとんど浴びない場合で1日20~25 µg程度の用量が推奨されています。

ビタミンDの過剰症
ビタミンDサプリメントの過剰摂取に注意!
ビタミンDの急性過剰症には、高カルシウム血症があります。高カルシウム血症のよくみられる所見としては便秘や倦怠感などがありますが、発見が難しいです。重症化すると、不整脈や意識障害なども引き起こします。急性過剰症をおこす明確なビタミンD摂取量は不明ですが、1,250 µg/日という症例報告があります。
ビタミンDサプリメントは1日100 µgまで
慢性的な高用量のビタミンDサプリメントの摂取は骨折や身体機能低下のリスクを高める可能性が指摘されています。サプリメント利用に際しての注意点としては、1日の耐容上限量(100 µg)を超えないようにすることが重要です。特に、腎疾患のある方やカルシウム製剤・活性型ビタミンD製剤を使用している方、複数のサプリメントを併用している方は、高カルシウム血症のリスクがあるため、医師に相談のうえ利用することが求められます。


監修
大阪公立大学 生活科学部 食栄養学科
教授 桒原 晶子 先生
担当 | 大学院生活科学研究科 生活科学専攻 教授 生活科学部 食栄養学科 |
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所属 | 生活科学研究院 |
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