

プラスチック・高分子
高分子 (ポリマー) は、食品や医薬品の抱剤や工業材料・製品など、様々な分野で幅広く用いられています。高分子材料の物性や機能性は、素材料である高分子の分子量や分子量分布および各種の分子化学構造
(一次構造)、結合の回転角に依存する分子鎖の形態 (二次構造)、分子内あるいは分子間の結晶・非結晶 (三次構造) さらには、これらの集合体としての球晶構造、相分離構造および配向 (高次構造)
などに依存します。高分子の構造や特性、両者の相関関係などを解析・評価して、開発や製造にフィードバックすることは、高分子材料や高分子製品の性能向上や品質管理に非常に重要です。
一方、日本の産業を支える機能性高分子は、高度化・複雑化が進み、そのキャラクタリゼーションは日々困難になっており、多岐にわたる手法を組み合わせた多層解析の重要性が増しています。
本ページは、高分子の分析に利用されているJEOLの装置群およびそのアプリケーションを紹介するものです。
高分子材料分析あれこれ

屋外暴露試験のペットボトルの分析
試験方法
JISZ2381 (大気暴露試験法通則)に準拠
試験種類:直接暴露試験
暴露角度:南面20度
暴露場所:宮古島
サンプリング:0.5年、1年、2年
試験開始:2020年11月

謝辞: PETボトルの屋外暴露試験の劣化評価にあたり、PETボトルリサイクル推進協議会よりサンプルのご提供を受けました。
SEMを用いたPET表面の形態観察
SEMを用いて、新品のPET表面と、屋外に1年、2年暴露した表面について、それぞれの倍率で観察しました。
SEMは電子線を照射源として用いるため、絶縁性の高いポリマー表面を観察する際は、帯電の影響を考慮しなければなりませんが、低入射電圧下で観察することで、試料表面の帯電を緩和し、導電コーティングすることなく、ポリマーの表面形態が可視化できます。また、二次電子像で表面の画像を取得することにより、光学顕微鏡では得られにくい、焦点深度が深い像が得られる他、表面の微細構造を細部まで観察することが可能となります。
試料:PETフィルム表面 (無蒸着)

TEMによる断面観察
透過型電子顕微鏡によりサンプル表面付近の断面観察を行いました。屋外暴露試験の経過年数にしたがい、試料表面1 μmの深さに構造変化が現れることが分かりました。

反応熱分解GC-MSによる劣化解析
PETの主鎖由来の反応熱分解生成物である成分が強く検出されました。これらはUV照射前後で共通成分でした。屋外暴露試験0年と2年の差異分析を行った結果、TICCのRT 11.37 minに屋外暴露試験に特徴的な成分が観測されました。屋外暴露試験により増加したピークは、36ページPETフィルムの紫外線照射により増加した成分と同一でした。成分★のベースピークでEICを作成して、UV照射時間に対する面積値の変化を確認しました (n=3の平均値)。 その結果、屋外暴露照射1年までで急激に増加し、その後は増加幅が緩やかになることが分かりました。



MALDI-TOFMSによる劣化解析
屋外暴露試験前は、主にPETの環状オリゴマー由来のシリーズが観測されました。屋外暴露試後は、光酸化反応由来のカルボキシ末端をもつと推定されるシリーズCOOX/COOX末端 (X=H, Na) が観測されました。これらは36ページで報告したPETのUV照射で観測されたシリーズと同一でした。環状オリゴマーとカルボキシ末端をもつシリーズのイオン強度比をとるとカルボキシ末端シリーズが増加していくのが分かりました。その増加幅は屋外暴露試験の最初の1年に対して、1~2年の増加幅は緩やかになっていることが分かりました。



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